RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
前線近くのレプリフォース駐屯地にてスラッシュ=ビストレオは苛立った様に指令室内を行ったり来たりしていた。
「ビストレオ少佐。お気持ちは分かりますが・・・」
「前線に送る物資が足りねえ。物資の搬入に遅延は厳禁だって言ってただろうに。とにかく・・・第4輸送部隊の奴らは懲罰房送りだ!!」
副官のグランベレーのグレンが宥める様に口を開くが、ビストレオは苛立ちを隠す事無く指令室で叫ぶ。
前線への物資搬入の催促をしたのが三日前、本来であれば昨夜の内に届く筈の物資は正午を回ったと言うのに未だに届いていない。
「奴らまさか輸送路の途上にある街で遊んでたんじゃねえだろうな」
先程、陸軍のとある部隊が占領した都市で乱暴狼藉を働いたと言う一件があっただけにビストレオは、件の部隊に何があっても期日までに物資を届ける様に指示を出していた。
念には念を入れて指示を出していただけに元より短気なビストレオが激怒するのは当然と言えよう。
因みにだが都市で住人達に乱暴を働いた部隊だが、騒ぎを聞き駆け付けたヴォーダンが直々に制裁を加えている。
ビストレオからすれば決して信頼できない存在だが、少なくとも組織の和を乱すつもりは無いらしい。
その点だけは彼を見直したと言うのがビストレオの本音だ。
「しかし連邦政府に反旗を翻した事で名実共にイレギュラーとなった訳だが、前線の兵士らの一部にゃ、市民の人間やレプリロイドに対し好き勝手する連中が増えてるって話だな」
「頭が痛い限りです。元々人間に対しては不満が無かった訳ではありませんが」
「必要以上に恨みを買うなってか。一連の蛮行に士官の小僧共・・・カーネル派の連中も加わってるらしいからな。普通だったら俺らみたいなのがするって言うのによ~どうなってやがんだ」
眉間に皺を寄せるグレンにビストレオも舌打ちをする。
しかも聞く所によると親衛隊の面々まで事件を起こしていると言うのだから救われない。
思うにこの戦争が始まる前から狂い始めていたのか、徐々にだが己らの組織が歪み出す現実に二人は思わず天を仰ぎたくなる。
戦争が始まってより別件の任務で会っていないフロスト=キバトドスの顔が脳裏に浮かぶ。
「あいつは別ルートで欧州に進撃か。さっさとハンターベースを潰して俺もあっちに乗り込みたいもんだぜ」
「物資輸送の遅延はありますが我らは政府軍並びにハンターに勝利を重ねています。先の戦いもドラグーン率いる部隊を撤退に追い込んだではありませんか」
溜息を吐くビストレオを元気づける様にグレンが胸を張りながら言う。
彼の言葉通り、数時間前に彼らは駐屯地を襲撃しようとしたハンター達を迎撃し、見事に撤退へと追い込んでいる。
如何に単騎で圧倒的な実力を誇ろうとも所詮は単騎。
当初の奇襲を見破られたと判断するやドラグーンは彼にしてはあっさりとその場を退いている。
エックスやゼロに次ぐ名のあるハンターに勝利した事で、レプリフォース陸軍の士気は今や鰻登り。
それだけに今回の件がビストレオには引っかかる。
「こうなったらカーネルの大将直々に前線に出てもらわねえとな。じゃねえと前線の奴らが制御出来ねえ」
「ハンターベースでの決戦に必ず駆け付けてくれるでしょう。なんならジェネラル閣下の出馬もお願いしますかな?」
「幾らなんでも・・・いや有りかもな」
半分は本音である事に冗談交じりに口にし、笑い合う二人であったのだが。
「・・・ビストレオ少佐!!」
指令室へと声を上げながら入って来るのは確かカーネル派の者だったと記憶している女性士官。
「オセロー中尉。如何致しましたか?」
グレンにショット=オセローと呼ばれた女性士官は深刻そうな顔でビストレオに向き直る。
その表情から事態を察したビストレオが顔を険しくする。
「消息不明となった第4輸送部隊を我が軍の捜索隊が発見したのですが・・・」
息を整えつつオセローはビストレオに予想外の事態を告げるのであった。
「何者かの襲撃を受け部隊は全滅・・・輸送予定の物資は全て奪われていました」
「・・・んだと!!」
オセローの報告にビストレオはその場にあった椅子を蹴り飛ばしていた。
『鋼の破壊王』の異名に違わぬ殺気を見せるビストレオにオセローの顔が青ざめる。
「イレギュラーハンター或いは政府軍の伏兵ですか?」
「いやいや・・・奴らの戦力で前線以外に出せるだけの余裕があるとは思えねえ。だからと言って夜盗紛いのイレギュラー共に負ける俺らじゃねえ」
グレンの言葉を否定しながらビストレオはお世辞にも良いとは言えない頭を必死に回転させる。
「誰だ・・・誰が輸送部隊を襲いやがった!!」
半ば血走った目を虚空に向けながらビストレオは答えの出ぬ事態に頭を抱える。
一方である。
ビストレオ指揮下の輸送部隊を壊滅させた者達は己らが本拠とするドッペルタウン跡地へと舞い戻っていた。
「へえ・・・なかなか良いモンじゃねえか」
運び出せる限りの物資を奪い取り、その中に新型ライドアーマー『ライデン』を見つけ満足げに微笑むのは一匹の鬼。
「ドップラー事変の時に実戦配備されたんで思わず心躍ったぜ。純粋な戦闘用ライドアーマー、洗練されたフォルムだ」
まるで玩具を見つけた子供の様にメットの奥の目を輝かせるヴァヴァに騎士然とした鎧を身に着けたレプリロイドが低く唸る。
「貴様、本当にライドアーマーが好きだな。まあお前がライドアーマーを実戦で初めて使用した事は知っているが」
「お前も前はライドアーマーに近いボディだったんだから、これの良さが分からねえのか」
恍惚気な顔でコクピット内のレバーを触るヴァヴァにムスピルス=サナトスは呆れ果てる他無い。
「分からんな。確かに装甲は厚くや出力はあったが小回りが利かん。通常のレプリロイドのボディと違い汎用性では劣るボディと認識している」
「それは使い方が下手なだけだ。その気になれば俺はライドアーマーで瓶の蓋も開けられるんだからな」
ライドアーマーの汎用性の高さを逸早く見抜き、実戦で使用した自負もありヴァヴァはサナトスに対し如何にライドアーマーが有用か説明するがサナトスの方は明らかに興味無さげだ。
と言うより元々感情が希薄なサナトスに何かに感動してもらおうと言うのが無理な話なのだが。
「大体これを力任せに操縦するって発想が・・・ゴホゴホッ」
尚も熱弁を振るおうとするヴァヴァだが、不意に咽込むとサナトスに背を向けてしまう。
応急処置を施したに過ぎない今のヴァヴァは殆ど動けるだけでも不思議な状態だ。
一刻も早くベルカナが用意したコピーボディに電子頭脳を移すべきなのだが、ヴァヴァはそれを固辞しそれとは別に新規のボディを造らせようとしている。
サナトスには何を考えているのか分からないが、彼自身が決めた事なので口出しはするつもりは無い。
「流石は大首領直属の四駿の一人だった男だカメ。俺達の出る幕が殆ど無かったカメね」
旧組織の首領を務めたアトミック=ギガトータスがサナトスに感嘆とした表情で言う。
「ゲストロンベレー達の見た目もあって接近が容易だった。これにより奴らも反応が僅かに遅れたのが作戦成功の一因と考える」
「レプリフォースに偽装するのは俺らの十八番カメよ。そもそもゲストロンはレプリフォースから生まれた組織カメ」
予め輸送ルートの線路を破壊し、輸送列車の動きが止まった所を襲撃したサナトスらであったが、後方から援護する形となったギガトータスの砲撃によって無線装置を積み込んだ列車の車両を破壊した事で輸送部隊は陸軍の駐屯地への通信を妨害される形となる。
レプリフォース兵に偽装したゲストロンの面々に加えカーネルに酷似した顔と声を持つサナトスの存在も、輸送部隊の混乱に拍車を掛けたのは言うまでもない。
かつて究極のレプリロイド計画によって生み出されたサナトスは、手に入れた新たなボディの性能を余す事無く発揮し殆ど単騎で部隊を壊滅に追いやっていた。
「しかしヴァヴァよ。恐らく次に同じ手は通用しないだろう。警備の強化率を計算するまでも無い」
「だろうな・・・暫くは大人しくだ。ドップラー研究所の地下施設も漸く本格的に稼働し始めたからな。暫くエネルギー供給で困る事はねえ」
流石に相手も馬鹿ではない事はヴァヴァも百も承知であり、これに味を占めて二度目の襲撃をと考えるつもりは無い。
「手に入れた武器は俺らが管理しても良いカメね?レプリフォース製の武器の扱いは俺らに一日の長があるカメ」
「ああ・・・それで結構だ。また頃合いを見て物資を頂きに行こうや」
資材やエネルギーパックの入ったコンテナと武器などをその場で分ける兵士らを見つめながらギガトータスが言う。
手に入れた武器を独占する様な形となり、危うくもある彼の提案をあっさりと受け入れるヴァヴァ。
「良いのか?奴らが反旗を翻す可能性もあるぞ」
「俺らじゃ上手く使えんだろう。ああ・・・ライドアーマーは一台だけ俺に寄越せよ」
横目で危険性を指摘するサナトスにヴァヴァはあっさりとギガトータスらに武器の管理を一任してしまう。
旧イレギュラー組織であり長年に渡って潜伏を続けてきただけに、元ゲストロンの者達の実力は認めざる得ないがここにおいては新参者と言うのがサナトスの認識だ。
しかも今回の大戦の発端となったスカイラグーン墜落事件を引き起こした張本人だけに、どれだけの厄介事を抱えているのか分かった物ではない。
「俺らを裏切る様な奴じゃねえよ。それにお互いに利用し合わなきゃ生き残れねえのは俺もギガトータスも分かっている筈さ」
見た目こそ廃墟のままだが徐々にだが、拠点が築かれていくドッペルタウン跡地を背にヴァヴァがほくそ笑む。
ドップラー事変の後、連邦政府より打ち捨てられてしまったこの地で一匹の獣は静かに牙を研ぎ続けていた。
レプリフォース宇宙軍にミレニアム社と言った者達の力も借りながらではあるが、既にドップラーが築いた地下研究所の何割かが稼働をし始めている。
「陸軍の輸送部隊を襲ったと聞いたが・・・本当の様だな」
地下研究所の中枢部であった作戦司令室に入るなり、レプリフォースの制服を着た一人の士官が渋い顔でヴァヴァを出迎える。
秘密裏にヴァヴァ達に支援を行っている宇宙軍は連絡要員として彼を派遣している。
「ああ・・・ちょいと物資が欲しかったんでな。お仲間を攻撃した事に怒ってるのは理解してるが俺らの性分だ。まあ諦めな」
悪びれる事無く自身らの犯行を認めるヴァヴァに士官は呆れたと言った様子で顔を横に振る。
「少なくとも我が軍への攻撃は止めてもらおうか。と言うよりそんな事をすれば・・・」
「ここはデスフラワーの砲撃で消し飛ぶってか?幾ら俺でも勝てねえ相手には喧嘩は売らねえよガニメデ」
ガニメデと言う名前の猛禽類を思わせる姿の士官は何度目かの溜息を吐きながらヴァヴァに向き直る。
「まあ陸軍の馬鹿共が慌てふためくのが想像出来るだけに奴らへの攻撃は一向に構わんよ。だが程々にとだけ言っておこう」
レプリフォースにおいて各軍の仲は常に険悪と聞いていたが、ヴァヴァの想像以上に根は深いらしい。
仮にも味方が被害に遭ったと言うのにガニメデは嫌味そうな笑みを顔に浮かべていた。
空軍以上に傲慢と言われる宇宙軍士官らしいと言えよう。
わざとらしく咳払いをしつつガニメデは一室にあるモニターに北米大陸を中心とした地図を表示させる。
「破竹の勢いで進む陸軍はハンターベースへの包囲網を狭めている。第6艦隊を中心とした政府側の海軍戦力ではオアンネル率いる海軍の進撃を阻むのは不可能だ。空軍も同上・・・と言うまでも無いか」
「だろうな・・・仮に俺やシグマ達が居た時でも戦力の差はどうしようもねえ」
ガニメデを通じる形ではあるがヴァヴァ達の下にはリアルタイムで各地の戦況の情報が入って来る。
開戦に反対する一部の者達の造反もあって戦力を減らしたレプリフォースだが、それでも史上最強の軍隊を称するだけに戦力は圧倒的だ。
エックスやゼロ達も必死に抵抗を続けているが僅かに足止めするのが精一杯の状況だろう。
「このまま力押しでハンターベースに迫るつもりか。随分と手緩いな・・・」
サナトスが抑揚の無い声で言う。
「スカイラグーンの一件で連邦政府に核兵器を始めとする大量破壊兵器を凍結させられたからな。非効率ではあるが力攻めをせざるえない状況だ」
渋い顔で言うガニメデにサナトスは首を傾げる。
「それこそ宇宙軍のデスフラワーを使えば良いだろうに」
「カーネルを始めとする陸軍はこれを軍人の誇りを取り戻すべく起こした聖戦と位置付けている。仮に凍結されなくても大量破壊兵器などの使用は卑劣であり許されないとの事らしい」
ある意味で当然と言えるサナトスの指摘にガニメデが苦笑を浮かべる。
カーネルの原型と言えるだけに酷似した顔を持つサナトスだが、その考えは真逆であり可笑しく思えたのだろう。
「馬鹿だな・・・軍需産業に関係する企業から手を切られたのだから短期決戦に挑まねばレプリフォースは負けるぞ」
「今はまだ物資にも在庫があるらしいがな。陸軍の良識派が物資を破壊する騒ぎもあったし、貴様らが強奪をするしで奴らも内心で大慌てだろう」
淡々と口を開くサナトスにガニメデが同意とばかりに頷く。
元より連邦政府の支援の下で勝者の側に立ち続けてきたレプリフォースには、兵站の維持や物資の管理を軽んじる傾向があった面がある。
「このまま攻め込めばハンタベースは陥落出来るとして、欧州に渡って政府本部に辿り着くのが精一杯か?政府軍も無能ではあるまい。簡単に勝てる筈が無い」
「キリンタイザー様もそう判断している。何せ今回のクデーター以降、兵の一部が市民に乱暴を働く事件も発生しているのだ。まあ軍隊組織としては末期状態だよ」
サナトスの言葉にガニメデが渋い顔となる。
「ハンターを捨て石にして守り勝つつもりか・・・連邦政府は」
ククッと喉を鳴らしながらヴァヴァは司令室を後にしその奥にある研究所へと向かう。
かつてドップラーがナイトメアポリスを始めとする超高性能レプリロイドを製作した場の新しい主となったのは、妖艶な魔女の姿をしたレプリロイド。
「あら・・・ヴァヴァちゃん。サナトスちゃんは無事に帰って来た?」
端末を操作していた魔女ことベルカナはヴァヴァに気づくなり、外の様子の事を問う。
「当たり前だ。今の奴のボディを造ったのはお前だろうに」
「まあそうなんだけど。一応は初めての実戦だったから」
見た目とは裏腹に細かい所を気にするベルカナにヴァヴァは溜息を吐く。
彼女は彼女で端末をヴァヴァに手渡しつつ、一緒にそれを覗き込む様に隣へと回り込んでくる。
「今度のヴァヴァちゃんのボディだけどこれで良いかしら?」
端末の画面に映し出されるのは、現在制作中のヴァヴァの新たなボディ。
「ああ・・・素材や時間も十分にある。俺の要望にも応えてくれて頭が下がるな」
メットの向こうで白い歯を見せるヴァヴァにベルカナも屈託無く微笑む。
そんな彼女の肩を掴み強引に引き寄せながらヴァヴァは耳元で囁く。
「それで俺らの息子の方はどうだ?」
「そっちはボディの方は出来ていたから、後は精神プログラムの方を細かく設定するだけよ。こ・・・子供の方だけどヴァヴァちゃんは何か要望はある?」
引き寄せられ僅かに頬を赤くさせながらベルカナはヴァヴァに問う。
彼女が製作したボディに元より問題は無く、精神プログラムも同上でありこのまま起動させても良いぐらいの状態と言える。
ヴァヴァは低く唸りながら己の子供たる存在へ望む物を思案する。
ややあってヴァヴァの脳裏にある一つの事が思い浮かべられる。
「そういや一つだけ・・・自分の子供に与えたい物があったな」
ベルカナを真正面に見据えながらヴァヴァは静かに口を開く。
「息子を泣ける様にしてやってくれ。他のレプリロイドの様にな・・・」
「ヴァ・・・ヴァヴァちゃん」
正真正銘のイレギュラーと言える男が口にするにはあまりにも意外過ぎる言葉に困惑するベルカナだが、そう言い放った彼の顔に大きな影が映りこむのを感じすぐさに頷く。
「せめてそれくらいは親として与えてやらねえとな。結構不自由なモンだ・・・出来ないってのは」
肩を震わせ寂しげに笑うヴァヴァにベルカナはその美貌に憂いの表情を浮かばせるのであった。
「なんだと!!では我々の支援は打ち切ると!?」
<当たり前です。連邦政府に反旗を翻した貴方達に我が社が支援をする謂れはありません>
総本部の一室にて金色の巨人が美しいブロンドを持つ女性レプリロイドにモニター越しにではあるが声を張り上げる。
対する女性の方も毅然とした態度でジェネラルに反論を口にする。
<この様な馬鹿げた反乱はすぐにお止めになるべきですジェネラル閣下>
「連邦政府は我らの誇りを踏み躙ったのだぞ!!かつて人類からの独立を宣言したロボット王の娘であれば、我らの思いも分かる筈だ!!そうであろう!?」
己に説得を行おうとするロゼ=ミレニアムにジェネラルは拳を己のデスクへと叩きつけながら叫ぶ。
血走った目で己を見据えるジェネラルにロゼは深々と溜息を吐く。
<民の支持無く行われたそれは革命ではなくただの反乱です。そもそもが・・・>
憂いの籠った瞳で説得を続けようとするロゼだが、今の彼にどの様な言葉を口にしても届かぬ事を悟り言葉を切る。
<ともあれ私は人類を見限る事は出来ません。かつての貴方であれば何もかも分かっている筈です>
一方的に切られる通信にジェネラルは苛立った様に拳をデスクに叩きつける。
「おのれ・・・あの小娘め。我々を見くびった事を後悔させてくれる!!」
顔を大きく歪ませながらジェネラルは端末の画面を切り替え、現在の各軍の状況を確認する。
ジョーズィの離反やペガシオンの不参加などのトラブルはあったが、経過は極めて順調だ。
単純な武力において自身らレプリフォースに敵う存在など地球上には存在しないのだ。
数ヶ月もしない内に北米の東海岸にあるハンターベースを陥落させる事は出来るであろう。
問題はその後である。
欧州に本部を持つ連邦政府は徹底的に抵抗をしてくるであろうし、ジェネラル自身も戦力を増強し続けてきた政府軍の戦力を舐めてはいない。
「北欧を経由してカンパネラ公国を突破し政府本部を目指すか。それともアフリカを占領しあそこの支部基地に居る武装解除したペガシオンを説得し仲間に引き入れるべきか・・・」
今後の方針を決めるべくジェネラルは唸る。
本来であればこの様な事は他の幕僚らと共に決めるべきなのだが、今の彼はカーネルは元よりフクロウル達の事を全く信頼していない。
(もしも以前であれば・・・)
カーネルと違う陸軍元帥であった男の顔を脳裏に浮かべ、何を思い出しているのかとジェネラルは歯を軋ませる。
「アトーラスめ。現役時代に私が連邦政府に尻尾を振り過ぎていると詰め寄って来ておきながら、此度の蜂起に連絡の一つも寄越さぬ。この私に力を貸そうともしない恩知らずめ。フレーヴェルスもペガシオンが離反したのも大方、奴のせいであろうに・・・」
自己弁護を含めつつジェネラルはここに居ないアトーラスへの憎しみを募らせていく。
そもそも前陸軍元帥のアトーラスがジェネラルに詰め寄ったのは、政府の命令が無ければ動かないなどの消極的な動きを見せたからであって、此度の様な事を起こせなど言う筈が無い。
だが今のジェネラルには己が思い描いた事が半ば真実となり果てる。
正常な思考能力さえ失われつつあるのではと思わせる彼の近くに仕える者は殆ど居ない。
「ハンターベースへの総攻撃の際には、ローシャリオンを討つ為にこの私自らがいかねばならんだろうな。レプリフォースを指揮するのはカーネルではない最高司令官たるこのジェネラルである事を将兵らに知らせねばならん。レプリフォースを率いるのはこのジェネラルでなければいかんのだ!!」
一室で己に言い聞かせる様にして言い放つジェネラル。
ガタンッッ!!
そんな折、自身の一室の扉がノックも無しに開け放たれた事もありジェネラルは反射的に拳を握り締める。
と同時に彼の巨大な影の下でも幾つかの気配が動く。
ジェネラルを守護する特務機関シャドーフォースの面々が身構えたのだ。
「失礼・・・ご機嫌麗しくは無いようですな」
一室に入り深々と一礼するヴォーダンの姿にジェネラルは苛立ちを隠さず椅子に深々と座り直す。
「貴様には前線での兵らを監視を命じた筈だが・・・」
「それに関して色々とトラブルがありましてね。既に報告が挙がっていると思いますが将兵らの乱暴狼藉に物資強奪となかなか頭の痛い案件があるのですが」
ジロリと睨み据えてくるジェネラルに臆する事無く、ヴォーダンは慇懃な態度で言葉を一旦切る。
「カーネルがゼロに一騎討ちを申し込んだ事はご存知ですか?そして既にメモリアルホールで相対しているみたいですよ」
「なに・・・?カーネルがゼロを!?」
ヴォーダンの言葉にジェネラルは思わず目を剥く。
「成程・・・やはり知らされていませんでしたか」
「あの若造め。私に無断でその様な・・・事を!!ゼロと言えばエックス、ドラグーンに並ぶハンターの実力者。奴を討てば我が軍の勝利も盤石となると言うのに!!」
ドォンッ!!
笑みを浮かべるヴォーダンにジェネラルは拳を机に叩きつける。
「ゼロもそうですがそれよりもそのゼロを救出せんと地下施設の転送装置を使いハンターベースからエックスを含めた者達がやって来ていると言う事実です。ハンターベースに居る私の仲間からの確かな情報です」
地下施設と聞きジェネラルは思わず呻く。
自身でもすっかり失念していた事だが、レプリフォース総本部はアンダーアルカディアなる地下に造られた場所を経由してハンターベースや旧連邦政府本部と繋がっている。
この時、宇宙軍の関与を知らないジェネラルはゼロがこの場に来れたのも地下施設の転送装置を使ったからに違いないと判断した。
「ゼロばかりかエックスまでもがか・・・フハハハ。であればすぐに軍勢を差し向け奴らを討ち取るべきだ。飛んで火にいる夏の虫とはこの事よ・・・シャドーフォースも動員し殲滅してくれるわ」
高笑いを上げながらジェネラルは椅子より立ち上がる。
「ヴォーダンよ。貴様も軍勢を率い地下の転送装置の確保に迎え!!私は親衛隊を率いメモリアルホールに赴くとする」
自らに指示を飛ばす総司令官に再び一礼をしつつ、ヴォーダンは静かに笑みを浮かべていた。
メモリアルホールへと向かったエックス達が見たのは周辺を取り囲む宇宙軍の兵士達の姿であった。
彼らはエックスらを見るや一斉に身構える。
「おや・・・貴方達は」
宇宙軍を指揮する士官クノーラはエックスを見るや若干驚いたように眉を吊り上げていた。
「ここは通してもらうぞ」
「既に我々と貴方達は敵対関係にある。互いの同意など必要ないのでは・・・?」
掌より刃を出すフィーネにクノーラは皮肉気に笑みを浮かべるのだが。
・・・サッ。
軽く手を挙げて周囲の兵士に合図を出すクノーラ。
それを見るや兵士達は構えを解き道を開け始める。
困惑するエックス達にクノーラはクスリと笑ったものだ。
「アース中佐とは以前の戦いで恩がありましてね。何より貴方達が来た場合は何もせずに通せとキリンタイザー閣下より命令を受けております」
屈託の無い笑みを浮かべつつ、クノーラは一団の中にアイリスが居るのを見て小さく溜息を吐いた。
「閣下がゼロを連れてホールに入ったのはもう一時間以上は前になります。恐らくはまだ決闘は続いているでしょうが・・・」
エックス達に一礼をしつつクノーラはメモリアルホールを振り返りながら語る。
「それとどうやら他の軍の方々も気づき始めた様子。お気をつけて・・・」
忠告とも警告とも取れる言葉を耳にしながらエックス達はアイリスを伴いメモリアルホールへと足を踏み入れる。
ザンッッ!!
アイリスの視界が両者を捉えたのと同時に彼らは互いに一太刀を浴びせる。
カーネルの方は胸部をゼロの方は肩を大きく抉られる光景にアイリスの大きな瞳が見開かれる。
彼女は見開かれた瞳を閉じると可能な限り息を吸い込むと、彼女としては出せる限りの声でホール全体に響けとばかりに叫ぶのであった。
「兄さん!!止めて!!」
ここまで見て頂きありがとうございます。
2020年1月末現在で書き上げているのは以上までです。
この続きはキラーズ編にWFWにヴァヴァ編と今までのエックスの小説のリブートなどが終わり次第にしておこうと思っています。
マイペースにしていきますので気長にお待ちくださいまで。