RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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番外編(中編)

「デッドフォース大幹部が二人も・・・そうか」

陸軍本体の野営地にてアトーラスが前線からの報告に嘆息する。

彼の隣には端末からもたらされる情報を整理するコモドールの姿がある。

「恐らく残りの一人、ザリガンダもこの地に派遣されているのでしょう。恐らくはソルトコールも」

「フレ公も一緒に呼んでおくんだったな。まあ大幹部連中が出たとなっちゃ儂も踏ん反り返ってる暇はねえ」

得物の戦槌を手にアトーラスが立ち上がる。

そんな時に下士官の一人がその場を訪れ来客を告げる。

その言葉に反応を見せる前に姿を現すのは半魚人の姿をした一人の海軍将官だ。

「ようアトーラスのおっさん。話は道中で聞いたぜ」

歯を見せ豪快に笑うのはタイダル=オアンネル。

此度のデッドフォース討伐に海軍から派遣された人物だ。

「大幹部も出たらしい。お前からすれば出世のチャンスだな」

「言われるまでも無く正にジョーズィを蹴落として海軍提督になる絶好の機会だ~とでも言うと思ったか~?おっさんよ~」

年長者で階級も上である自身をどこか小馬鹿にするように口を開くオアンネルにアトーラスはフンと鼻を鳴らす。

デッドフォースの首領が前海軍提督と言う事もあり、デッドフォース参加者には海軍に属していた者が多い。

他の大幹部からも分かる通り、デッドフォースは各軍から抜け出した者達で構成されているが、主要な面々を引き抜かれた海軍の戦力低下は組織としてかなりの痛手だった。

主だった士官や将官が居なくなってしまった為、技術屋上がりの参謀であったブレイバル=ジョーズィを次期海軍提督に任じる他無く。

更には目の前のノンキャリアの成り上がりを将官として採用せざる得なくなっている。

現在はカーネルから見ると後輩にあたるアクアヴィラ=シーラなど、若い人材が育って来てはいるが、海軍が他の軍と違いやや歪な構造となってしまっているのは否定できない。

「そんな簡単にソルトコールの親父が倒せるかよ。まあいいさ・・・とりあえず助けに行こうぜ。話によりゃカーネルはさておき小娘の方は手酷くやられたそうじゃねえか」

オアンネルは品の無い顔で己の部下の失態を面白げに語る。

アトーラスも礼儀には五月蠅くない方だが、どうもこの男の態度や言動にはイラッと来る所がある。

「どっちにしろ敵が攻撃を仕掛けて来た事で大方の敵の位置は分かった。援軍のお前らも来たんだ一気に片を付けるとする」

「まあ任しておきな」

「フン・・・正直任せたくないがな」

アトーラスの言葉にオアンネルは品の無いにやけた笑みを向けていた。

 

 

 

「陸軍の増援に向かったカセウェード少佐の部隊がガネシャルヴ及びカーグラと交戦を開始しました」

「・・・ふむ」

飛行艦隊の旗艦のブリッジにてフクロウルはオペレーターからもたらされる情報に耳を傾ける。

「乱戦状態では爆撃が出来ん。そして現在地上で発生している通信障害はカーグラによるものと推測できる。何とかしてあの女を対処せねば・・・」

独り言の様に呟くフクロウル。

もしもここにフレーヴェルスが居れば部下達を引き連れ降り立っていただろうが、生憎フクロウルはそう言う事が出来るタイプではない。

当然ながら並のレプリフォース将校よりかは強いが、友人であり上官のフレーヴェルスの様に他を圧倒する程の戦闘力は持ち合わせていないのだ。

(オアンネルも到着したと聞く。恐らくアトーラスも救援に動くであろう。それに今回の作戦では我々は陸軍の援護をする為に派遣されているに過ぎない。あまり勝手に動いては却って他軍の邪魔にすらなる)

内心でそう思いこの場での待機を命じるフクロウル。

視界も悪い眼下の密林が主戦場と言う事もありフクロウルら空軍が出来る事は殆ど無い。

次に何をすべきかと思案する様に腕を組んだ時であった。

「准将。我が軍に通信が入っております」

「ジェネラル閣下からか?であれば作戦行動中だと・・・」

「あ、いえ。それがイレギュラーハンターからで」

オペレーターの一人が自身の思考を中断する様に口を開く。

上層部の無茶振りかと思ったのもあり、フクロウルの顔が険しくなるが通信を入れてきた相手は予想外の者達。

「であれば尚の事、作戦行動中だと言いたいが・・・回線を回してくれ」

部外者からの通信に溜息を吐きつつ、フクロウルは目の前のモニターに目を向ける。

恐らくここ南米支部に配備された第9レンジャー部隊か第11強襲部隊辺りからだろう。

事前に彼らにはデッドフォース掃討作戦を行う旨を伝えてはいるが、その手伝いを申し出るつもりか。

フクロウルからすれば組織の恥でもあるデッドフォースは可能な限りレプリフォースの手で討伐したいが、だからと言って面子に拘り協力を拒否する程、愚かではない。

「こちらレプリエアフォースを指揮するフクロウルである。そちらの要件を言われよ」

咳払いをしつつ己の名を名乗るフクロウルだが、モニターに映し出されたのは彼にとっても予想外の人物。

モニターの向こうに佇む人物は恭しく礼をするとフクロウルに向き直る。

<第17精鋭部隊隊長のシグマだ。南米で演習を行っていた最中であったのだがデッドフォースを掃討すべく貴軍が動いていると知り通信を入れさせてもらった>

レプリロイド工学の父と言われるケイン博士の最高傑作にして、並み居るイレギュラーハンターの中でも最強と名高い人物にフクロウルは内心で驚く。

<簡潔に言えばイレギュラー組織の壊滅は我々にとっても最優先事項。であるが故に貴方がたの作戦に協力を申し出る。決して貴殿らの手柄を奪うつもりは毛頭ない・・・本来であればアトーラス陸軍元帥に許可を得たかったのだが>

「現在戦場となっている地上では通信障害が発生している。上空に居る我々にしか繋がらんだろうな」

シグマの言葉に簡潔に現場の状況を伝えつつ、フクロウルは一瞬だけ思案する。

先にも言った通り部外者の手は借りたくないが、そこに拘り味方の被害を増やすのはあまりにも愚かだ。

それに目の前の男がレプリフォースの功績を奪うつもりでは無いのは、彼自身の日頃の評判や態度からも分かる。

「ではアトーラスに代わり私が許可をしよう。とは言え地上は乱戦状態だ。誤射されても文句は言わないでいただきたい」

<承諾を感謝する>

警告も混じったフクロウルの言葉に簡潔に答え通信を切るシグマ。

そんなやり取りをする中、負傷者を収容する任務を終えたペガシオンが報告を行う為にブリッジに戻って来る。

「ご苦労であった。お前達は指示があるまで待機せよ」

「待機・・・ですか」

フクロウルの言葉に若干不満げな顔となるペガシオン。

この辺の表情が出てしまうあたり青いと言えるのだが、彼の不満も分からないでもない。

自身の先輩であるカセウェードが部隊を率い地上の援軍に行く中で、今回の作戦での任務が負傷者の収容だけで終わったとなると血気盛んな面もあるペガシオンからすれば些か不完全燃焼と言えよう。

「准将、自分も何か別の新しい任務を。決して負傷者の救出が重要ではないとは言わないのですが・・・」

「しかし現状地上との通信も障害でままならん。ワンセットの艦隊しか率いていない我々に出来る事は殆ど無いのだ」

自分はまだ動けると次の任務を求めるペガシオンだが、フクロウルはやんわりと彼の申し出を退ける。

フクロウルからすればアトーラスから見たカーネル達と同様に次代の後継者と見ている彼にあまり無理はさせたくないと言うのが本音だ。

それに何度も言うが今回の任務で空軍は限定的な戦力しか連れてきていない。

やれる事は限られていると理屈で説明をしようとするのだが。

「今、この瞬間にも仲間達が命を懸けて戦っているのです。そんな中で安全な後方でただ椅子を温めてばかりなんて・・・」

あまりにも臭く青すぎる台詞を口にするペガシオン。

だがその視線は彼らしく真剣な物であった。

「上官への口答えは処分の対象となるぞ」

フクロウル付きの副官がペガシオンを叱責するが彼は一歩も退かない。

「カーネル達の様に華々しく戦いたいか?」

「は・・・はい!!」

自らの問いに慌てる様に答えるペガシオン。

「その様な絵に描いた様な戦いなどこの世には存在しない。所詮は殺し合いだ。しかも元同志達とのな・・・」

苦々しく言い放たれる言葉にペガシオンは己が気負い過ぎていた事に気づき反省する様に視線を下げる。

(少々気が荒いのが欠点だが、すぐに過ちに気づける利発さはある。場数を踏めば大きく化けるだろうな)

内心で己が見出した青年に僅かに目を細めるフクロウル。

「ペガシオン。・・・我々は現状のまま待機だ」

己に背を向けるフクロウルの言葉にペガシオンは無言で敬礼を返す。

ブリッジから去る若者の背に宿る何かを感じ取りながら、フクロウルは大きく溜息を吐く。

「全く・・・懐かしさを感じるとは。私も年を取ったな」

暫くその場で黙り込んでいたフクロウルであったが、思い出した様に立ち上がると断りを入れて席を立つのであった。

 

 

 

一方、ジャガールとネガトータスと激闘を繰り広げていたビストレオとアテネの二人。

互いに必殺武器を繰り出し一進一退となった頃合いであった。

「マグニティフィールド!!」

アテネの磁力に引き寄せられるのは敵である二人では無くビストレオだ。

「超特急ぅぅぅぅでぇぇぇぇぇ!!」

磁力で引っ張られた事もあり一瞬だけ驚いた顔をしたビストレオだが、すぐさにその意図を察した彼は両手のビームクローを交差させ全身のバネを大きく引き伸ばす。

ギリギリまで引き絞られた弓の弦を引き抜くが如く、アテネは敵目掛けてビストレオを一気に押し出す。

「合体!!マグニティィィッッ!!」

「スラシャアアァァァ!!」

 

ズシャアアァァァァァ!!

 

磁場の嵐を身に纏いながら放たれる全力の一閃が受け止めようとしたネガトータスの甲羅に亀裂を走らせる。

「メラアァァァァ!!」

ジャガール共々後方に吹き飛ばされその場に倒れ伏す両者。

呻きながらも起き上がる二人を見据えビストレオとアテネが追撃を仕掛けようとした時であった。

 

パチパチパチパチパチッッ!!

 

不意に側面から響く拍手の音に四人の注意が向く。

そこに居たのは今の今まで様子を窺っていたザリガンダその人。

「まさかこの二人を追い込むとは予想外だったぜ。レープリフォースの若いモンも活きの良いのが育ってきてやがるなぁ」

残忍な笑みを顔に浮かべジャガール達を守る様に立ち塞がるザリガンダ。

「さっき合体とか言ってやがったが即興で考えた技だろ。俺には分かるぞ」

ザリガンダに図星を衝かれビストレオが小さく唸る。

「さてさてさてぇ・・・こいつらと戦って消耗してる所で悪いが俺と続けてやるか?それとも~白旗上げて降伏するか?」

「ふっ・・・ふざけるな!!降伏など誇り高きレプリフォース一員である我々が行うと思っているのか?そんな事をするくらいなら」

 

「・・・死ぬか?別に良いぜ~女を生きたままバラすのは俺は大好きだからな」

 

今までどこかおどける様な態度を取っていたザリガンダの顔から感情と言う物が消え去る。

底冷えする声と共に隠していた残忍性を露わにするザリガンダにアテネの顔が青ざめる。

「あ・・・くぅ!!」

「グハハハハ!!ビビったか~?言っておくが今時くっ殺なんぞも流行らねえぞ。悪い事は言わねえから大人しくぅ~」

恐怖のあまり歯が噛み合わず悲鳴らしい声も上げれぬ自身を嘲笑うザリガンダ。

本来であれば身動きさえ取れなかっただろうが、この凶悪なイレギュラーに己のプライドを傷つけられた事で僅かに生じる怒りからアテネは片手を広げる。

掌から発せられる磁力でザリガンダを引き寄せようとするアテネ。

先程ネガトータスですらその動きを緩慢にさせた磁力を受けてもザリガンダのボディはピクリとも動かない。

 

ヒュンッッ!!

 

暫しの鍔迫り合いの様な間が生じた後、ザリガンダの装甲の一部が剥がれる。

一見すればアテネの磁力で剥がれた様に見えるだろうが、それはザリガンダの鎧であると同時に武器でもあるブレードビット。

先端にビームの刃を形成したビットは吸い込まれる様に飛び込んだアテネの片手をズタズタに切り裂いていた。

「お・・・おい!!」

突然の出来事に慌てて駆け寄るビストレオに言葉を返す事すら出来ずにその場にしゃがみ込むアテネ。

「あ~あ~自慢の磁力を逆に利用されるとは思わなかっただろ?」

ビストレオとアテネを覆う様にザリガンダがその巨体で影を作る。

「まあ捕虜にしたところでどっちにしろ殺すけどよ~。どうせ死ぬなら面白いモン見てから死なねえか」

殊更残忍な笑みを浮かべながらザリガンダはそう二人に言い放つのであった。

 

 

 

「だぁぁぁ!!」

声と共に上体を起こしたキバトドスに彼の頭部の修復をしていたメットールが転がる。

「キバトドス殿。無理に動いてはいけません」

頭部に出来た傷をそのままに起き上がろうとするキバトドスをカーネル付きの副官、確かベリットと言う名前の人物が押し止める。

「何が・・・あった?」

半ば朦朧とする意識の中でキバトドスは記憶の糸をたぐる。

圧倒的なパワーを誇るガネシャルヴともう一人の大幹部カーグラを前にキバトドスとカセウェードは防戦一方に追い込まれる。

一人だけでもこちらよりも格上の相手に加えもう一人いるのだからどうしようもない。

至近距離でカーグラが放った超音波を受け人間で言う所の脳震盪に近い状態になったキバトドスの頭部にガネシャルヴ渾身の一撃が決まったのだ。

吹き飛ばされ意識を失う寸前にカーネルの声を聞いた様に思ったが。

「あ・・・あかーん!!」

周囲の木々と共に超音波で吹き飛ばされたカセウェードが悲鳴を上げながら地面に叩きつけられる。

空軍内でも上から数えた方が良いぐらいの格闘能力を持つ彼女を逆に圧倒するカーグラ。

慌てて彼女に駆け寄る陸軍兵士らに対しカーグラがけしかけたバットンボーン達が襲い掛かる。

「チチチチ・・・力押しの脳筋程、やりやすい相手は居ないねぇ」

木の枝に逆さに張り付きながらカーグラはほくそ笑む。

次に彼女が見るのはカーネルと戦うガネシャルヴだ。

先程のキバトドスとは違いカーネルはガネシャルヴを相手に若干押されながらも、互角に近い戦いぶりを見せていた。

寧ろ下手をすればガネシャルヴの方が負ける可能性すらある。

そんなギリギリの状態での戦いであった。

尤もそれはあくまでも一対一であればの事。

自身が加わればこの若者も容易く倒せる。

そうカーグラは判断し翼を広げた時だった。

 

フッッ!!

 

まずに感じ取ったのは風が奥に吸い込まれる様な感覚。

それを感じ取るや反射的に後方に下がるカーグラとガネシャルヴ。

と同時に彼らの居た場所を衝撃波が通り抜け、木々が根元から薙ぎ倒される。

 

ズドドドドドドドドドドッッ!!

 

「グフフ・・・この攻撃アトーラスか?」

薄笑みを浮かべるガネシャルヴの前にビームトライデントを手にしたオアンネルが真横から飛び込んで来る。

半ば奇襲気味の動きだが、それにガネシャルヴが落ち着いて対応する。

先程のカーネル以上に互角の鍔迫り合いを始める両者を余所にカーグラが奥に視線を向けると陸軍本隊を引き連れたアトーラスの巨体が目に入る。

「少々不利だゾウ」

「そうねえ。一旦退いた方が良いわね」

ガネシャルヴの言葉を受けデッドフォースの兵士が慌てて通信を入れようとする。

「チチチチチ・・・各員退きなさい」

兵士らに退く様に命令しながらカーグラが周囲に不可視の音波を放つ。

一瞬だけとは言えその場に居た者達の動きが止まったのを見るや、デッドフォースの兵士達は一斉に退き始める。

密林の中に姿を消したデッドフォースを追うべく何人かの者達が動こうとするが。

「待て、今は態勢を立て直す必要がある。ここで深追いをすればまた手痛い損害を被るぞ」

カーネルの一声に飛び出そうした者達の足が止まる。

己の指示が行き届いた事に安堵しつつ、オアンネルらに向き直ったカーネルは軍帽を取り、静かに彼らに頭を下げる。

もしも彼らが来ていなければやられていた可能性すらあったからだ。

「まあ反撃開始と行こうぜ」

ニヤリと笑みを浮かべるオアンネルに若干の嫌悪感を抱きながら、カーネルは静かに頷く。

 

 

 

「言い忘れていたがぁ~ここに居る大幹部は俺だけじゃねえ」

古代遺跡を改造した拠点に連れていかれるなりそう言い放たれビストレオは首を傾げる。

彼の隣では使い物にならなくなった片腕を押さえたアテネが唇を噛みしめ佇む。

「ここには首領の兄貴やカメレリオン参謀長も居る~。お前らは俺らの罠にかかったのさ」

『ギャハハ』と笑うザリガンダの言葉に二人の顔が青ざめる。

捕虜としてザリガンダに敵拠点内部へと連行されるビストレオとアテネ。

彼らの前に広がるのは予想以上に規模を誇る軍事基地。

「こんな所に何時の間に・・・」

呻くビストレオを前にザリガンダが面白げに笑う。

「兄貴や参謀長を舐めんなよ。デッードフォースの拠点は何も深海だけじゃねえ。こういった拠点は世界中にあるんだからな・・・例えば」

得意げに己の組織の力を誇示しようとするザリガンダだったが。

「ザリガンダよ。喋り過ぎだ」

背後から響く声にザリガンダの体がビクリと震える。

彼が苦笑いを浮かべ振り返った視線の先に居るのは若干呆れ顔のソルトコール。

元海軍提督にしてデッドフォースの首領だ。

「貴様らアトーラスの配下の者か」

既に報告を受けていたのか敵を連れ込んできたザリガンダはさておきとソルトコールが問う。

思わぬ人物の登場に息を呑むビストレオ。

もう一人のアテネの方は怪我もあってすぐに反応出来ない。

「おい兄貴が聞いてんだぞ。答えやがれ」

背後から背を蹴られアテネが地面を転がる。

慌ててビストレオがその身を支える中、同じ様に手を伸ばすのは敵である筈のソルトコールだ。

「ザリガンダ、もう少し捕虜は丁重に扱え」

「致命傷じゃねえのは分かってるんだから良いだろ兄貴」

「それでもだ・・・我らは腐っても軍人だ。憎き敵と言えど礼節を忘れてはいかん」

そう言ってアテネを立たせるとソルトコールは近くに居た者に指で何かを指示する。

「愚かな真似をしないのであれば捕虜として丁重に扱おう。一先ず弟の無礼は詫びよう」

ザリガンダから入れ替わる様にソルトコールの先導を受けるビストレオ達。

その途上、一際大きな空間が眼下に広がり、その下で猛禽類を思わせる巨大な兵器が佇むのが見えた。

「あまり見ない方が良いぞ」

一言、ソルトコールから警告を受けビストレオは慌てて視線を逸らす。

ややあって辿り着いた一室に放り込まれるビストレオ達だが、それに前後してソルトコールの指示を受けた医療用メカニロイドがアテネの腕に応急処置を行う。

流石にこの状況で抵抗出来る筈も無く、応急処置を終えたメカニロイドは一室から出て行ってしまう。

「やべえな・・・どうするよ」

思わずそう呻くも答えなど返って来る筈も無い。

隣に座り込むアテネも無言のままだ。

応急的に繋がれたとは言えズタズタになった腕は使い物になりそうに無い。

元の状態に戻すにはレプリフォースの基地で本格的な修理を行わなければならないだろう。

尤もその機会があればの話だが。

「せめて誇りを・・・自決を選ばせてくれるだろうか・・・」

漸く口を開いたアテネの言葉にビストレオは拒否感を露わに首を振る。

「首領のソルトコールはあんな事言ったけど、相手はイレギュラーですぜ。羨ましい事に奴らは俺らみたいに軍規も糞もねえ。銃殺とかなら可愛い方でボコボコのリンチの末にだったり」

ビストレオの言葉にアテネが声にならない悲鳴を上げる。

彼からするとあくまでも想像を口にしただけであり、別に彼女を怖がらせるつもりは無かったのだがちょっとだけ可愛いと思ってしまった。

「或いは・・・フフッ。私とて自分が女なのは分かっている。こんな薄暗い所で・・・あんな事やそんな事を」

「それ何かの見過ぎじゃないッスか?いやでも・・・」

自分の事ながら良からぬ事を考えてしまい目を泳がせるアテネ。

対してビストレオはフォローする様に口を開くも、ふと考えを変えてアテネの体を見つめる。

あくまでも風の噂だが、そのきつい性格から同性の女子人気もあまり無いと言われる彼女。

とは言え見た目は十分美人の部類に入るし、スタイルも良い。

もしも自分が彼女を捕虜にしたらと考えるとちょっと鼻の下が伸びそうになる。

「お・・・お前!!いやらしい目で私を見るな」

顔を真っ赤に怒り出す彼女にビストレオは笑みを隠す事が出来ない。

「海軍の連中に聞いた話だとあのザリガンダ。当時参謀だったジョーズィ提督の腕を切り落としたばかりか気に入らないオペレーターを頭から食べたとかなんとか・・・」

「おまえ・・・そっそんな事を言って私を怖がらせ・・・ようとしても」

ビストレオも当然世代的に聞いただけの話だが、海軍時代のザリガンダのイレギュラーに一歩手前の凶行の数々は殆ど伝説と言っても良い。

アテネの方も昔あった話としてその事は耳にはしており、自身がその対象になった事で涙目となる。

「あ、いや・・・ちょっと調子に乗っちゃいました」

不意に我に返ったビストレオが慌てて彼女を宥め、気まずそうに視線を逸らした時だった。

己らが入れられた独房を外から覗く巨人が居た事に気づいたのは。

「おわあぁぁぁ!?」

思わず声を上げるビストレオ。

そんな彼に見上げるばかりの巨体を誇るレプリロイド、ブラックはフンと鼻を鳴らす。

まるで値踏みする様な視線を向けて来るブラックの外見はレプリフォースの最高司令官ジェネラルの瓜二つだ。

イレギュラーハンターの総監がそうである様に同型機なのだろうが、同じ顔なのに浮かべている険しい顔もあって印象は大きく変わる。

「捕虜であると言う自覚は持っておけよ。子供の様にギャアギャア騒ぎよって」

「・・・すいません」

同じ顔と言う事もあって真っ当な指摘についつい謝ってしまうビストレオ。

「う・・・裏切り者のカメレリオン。ソルトコールだけでなくお前まで居るとは、ここで何をしている?」

思わぬ人物の登場にアテネが彼に鋭い視線を向ける。

「月並みの質問で些か失望するな。冥途の土産とばかりに私が正直にそれを話すと思っているのか?」

当然の事ながらブラックが己らの目的を話すつもりは毛頭無い。

彼からしても捕虜を連れて来たと言うので確認に見に来ただけに過ぎない。

「もしもここを生き延びたらアトーラスかグランドリオンに伝えておけ。『廃棄物のセキュリティは万全にしておけ』とな・・・」

ブラックの言葉に首を傾げる二人。

そんな二人を無視し踵を返すブラック。

がその途中で思い出した様に首だけ振り返る。

「あ、そうそうお前らが騒いでいたザリガンダの噂だが」

(このオッサン、結構最初の方から黙って見てたのかよ)

相手の言葉にビストレオが内心でそう突っ込みを入れる。

「オペレーターを頭から食べたのは本当の話だ。せいぜい気を付けるのだな」

薄笑みを浮かべその場から去るブラック。

その途上で若干イラついた顔でザリガンダが歩く姿が見える。

『例の発作か』とブラックは内心で思うが口にはしない。

(運の悪い若造共だ)

と僅かばかりの同情こそ抱くがそれらの思いはブラックの中からすぐさに消え去る。

己の背後の独房から何やら悲鳴のような声が上がったが、その辺りは彼の関与する事ではない。

「歪獣ファルザー。アイゾックめが開発しているグレイガと合わされば地球上の敵戦力を駆逐して尚、お釣りが出る」

眼下で眠るファルザーを見下ろしブラックが独り口を開く。

そんな折、己の下に一人の少女が音も無くやって来る。

表情を一切変えずに己に頭を下げた少女は手にした端末の電源を入れる。

<やあ・・・計画は順調のようだねブラック>

端末より響くのは青年の声。

その声にブラックは恭しく頭を下げる。

「ハッ・・・後はファルザーの稼働実験を行うのみでございます。予定通りここにレプリフォースの者達を誘き寄せサンプルと致しましょう」

<それで良いと思うよ。あ、それとなんだけどどうもイレギュラーハンターの一部が動き出した様だ。たまたま何だけどこの南米にシグマが来ていたらしい>

「シグマが・・・少々厄介ですな」

相手からの情報に舌打ちをするブラック。

<うん・・・君の事だから大丈夫だろうけど。撤収は予定よりも早めておいた方が良いと思うよ>

「御意にございます」

青年からの指摘にブラックは更に深々と頭を下げる。

端末の電源が落とされ画面に映っていた『W』の文字が消える。

現在の主である大首領アルバートとの話を終え、ブラックは端末を手にする少女に視線を向ける。

「ピアニシア様も早めにお帰り下さい。首領補佐である貴女に万が一の事があれば堪りませんからな」

「お気遣いありがとうございます。ブラックおじ様達もお気をつけて」

ブラックの言葉に無表情のまま答える少女。

一見すると分からないが首領補佐なる地位に就くピアニシアは組織全体で言えば、最高幹部であるブラックよりも上位の存在だ。

感情がある筈のレプリロイドにしては希薄な印象を与える彼女は、言い得て妙ではあるがまるで人形の様で若干不気味ですらある。

とは言え自身らに何か嫌味などを言ってくる事も無く、ブラックからすればサーゲスやアイゾックらよりかはまだマシな存在だ。

一礼しクルリと踵を返しそのままどこかへと行く少女を見送り、ブラックは思案する様に掌に指揮棒を叩きつけていた。

 

 

 

「ペガシオン少尉、本当に宜しいのですか?」

「構わない。責任は全部僕が取る」

副官のサージェが困惑気に口を開く中、ペガシオンと彼率いる部隊は小型艦メタルホークから突入用の装備を取り出し眼下の敵基地への突入を慣行せんとしていた。

フクロウルの前では引き下がったペガシオンだが、そこで大人しくしている彼ではない。

今もこの地上で仲間達が戦っていると言うのに自分達だけ頭上で見物など、若いペガシオンにとっては我慢なら無かった。

それ故に彼は仲間達を呼び寄せると抜け駆けを行わんと準備を進めるのだが。

「貴様ら・・・何をしている?」

『ハァ』と溜息交じりに己に問うてくるのは空軍士官の一人エアレイド=プテライド。

カセウェード同様に空軍内で名の知れた猛将であり、参謀であるフクロウルに代わり実質的に現場の指揮を執る人物だ。

ペガシオンらの様子から彼が何をしようとしているのかすぐさに悟った彼は渋い顔のまま、ペガシオンに近づく。

「命令違反はご法度だぞ。我ら軍人は理不尽な命令であろうとも上官からそう命じられれば従わねばならん。それを知らぬお前ではあるまい」

場の空気が張り詰める中、ペガシオンがぐっと拳を握り締める。

「プテライド中佐。僕は仲間と一緒に戦いたいのです。例えそれが命令違反でも・・・」

「ふうむ・・・」

ペガシオンの真摯な瞳にプテライドは怒るでもなく小さく唸る。

その間にフライトユニットを背に取り付けたノットベレー達がペガシオンの真横に居並ぶ。

「準備~かんりょ~うで~す」

やたら甲高い声を上げたノットベレーが敬礼をする。

それに目を向けるプテライドは一瞬目を見開くが、ペガシオンは気づかない。

「ん・・・んん~まあ私も高見の見物には思う所がある。見逃してやっても構わんが後で懲罰房行きは覚悟しろ。それで良いなら・・・」

「あ、ありがとうございます。よしお前達行くぞ!!」

「お・・・おい。話はまだ」

プテライドが己を止める気が無いと知るや彼が言い終わらぬうちに次々と外へ飛び出して行くペガシオン以下の面々。

「せっかちな若者だ。まあ・・・なんとかなるか?」

最後にその場を後にする甲高い声を発したノットベレーに敬礼を向けつつ、プテライドは大きく溜息を吐いた。

 

 

 

「行くぞ貴様ら~!!」

カーネルらと合流した陸軍元帥アトーラスの行動は早い。

アテネの部隊を回収しに向かわせたコモドールから、彼女やビストレオの所在が不明である事が伝えられたのもあってアトーラスは即座に編成を終えると自身を先頭に一気にケリをつけるべく動き出す。

既に敵拠点の位置の目星はついているのだ、ここまで来ると後は単純だ。

「おらああぁぁぁぁぁ!!」

愛用の戦槌を手にアトーラスが軍勢の先頭を行く。

 

ドガアアァァァァァァンッッ!!

 

地面に叩きつけられた戦槌から衝撃波が放たれ射線上の木々が薙ぎ倒されていく。

<閣下、あまり人工林を傷つけますと>

「やかましい。木なんぞ後で儂らが総出で植えれば良いだろうが」

参謀のコモドールが端末越しに苦言を呈するがアトーラスが聞く耳を持つ事は無い。

よくよく見れば木々や茂みなどに潜んで配置されていた罠やメカニロイド達が残骸となって転がっていた。

「儂らの進軍を止めれるものなら止めてみせよ!!」

老いてなお最強クラスの実力を持つアトーラスの進撃を止められる者など居る筈も無い。

 

グオォォォンッッ!!

 

強引に前を行くアトーラスの体に触れたピアノ線が千切れ、先端に爆薬を取り付けた巨大な丸太がアトーラスの顔面に直撃するもこの男は揺るがない。

「ガハハハハ!!まだジェネ公のパンチの方が痛ぇわ!!」

口から黒い煙を吐き出しながら尚も前に行くアトーラスに追従するオアンネルやカーネルらは苦笑いを浮かべるしかない。

「全くもってバケモンだな」

「さ・・・流石は閣下です」

それぞれの言葉を発する二人はさておきである。

「カーネル中佐!!援護します!!」

頭上よりペガシオンが部隊を率いてやって来る。

彼と彼率いるノットベレー達は的確に隠れ潜む敵を発見し次々と破壊していく。

「礼を言うぞ」

軽く手を上げペガシオンに笑みを浮かべるカーネルの隣でオアンネルが面白くなさげに鼻を鳴らすのだが。

「・・・?」

まずに気づいたのは皮肉な事にオアンネルだった。

次に彼の視線に気づいたカーネルが察する。

「中佐に閣下、何をしているんですか?」

急に足を止めた二人に頭上からペガシオンが困惑気に声を上げるも、その様子から彼が全くその事に気づいていない事を悟る。

「あ~そこの坊主。ええと・・・」

「う・・・うむ。あ、いや・・・そのだな」

何かを言おうとしている二人にますます純真な目を向け首を傾げるペガシオンにカーネルとオアンネルの歯切れは悪い。

次に何かを言おうとした段階で敵が一斉に遺跡内部に引き上げていくのが見え、アトーラスは足を止め小さく唸る。

チラリとオアンネルと目を合わせ頷き合う両者。

「逃げに入りやがったな」

舌打ちをしながらオアンネルはその場に腰を下ろすとエネルギーパックを口に入れ始める。

オアンネルに言われるまでも無く、敵の抵抗が殆ど無くなった事はカーネルにも分かる。

「奴らはここを引き払うつもりと・・・」

「ああ・・・だろうな」

カーネルの問いにオアンネルは唸る。

デッドフォースが他にも存在するイレギュラー組織の中でも一際厄介と言える点は、彼らが持つ多くの拠点が深海などの人の手が入りにくい場所にあると言う事。

そして一度、不利を悟ればそれらの拠点をあっさりと捨てて息を潜めてしまう所だ。

それ故にデッドフォースの討伐は困難を極め、現在レプリフォースは彼らの討伐を至上命題としている所がある。

「お前達はここを確保しろ。儂やカーネル、オアンネルら腕の立つ連中は集まれ。間を置かず一気に叩き奴らに多少なりとも損害を与えるぞ」

戦槌を手に最も大きな遺跡の入り口に足を進めるアトーラス。

カーネル達もその後ろに続くのだが。

緊張を以て敵の拠点内に足を踏み入れ十数分した後にカーネルは気づく。

(我々は殆ど閣下の後ろをついてきてるだけなのでは・・・)

何せこの男の歩みを止めるものは殆ど無く、進路が無くなれば遺跡内に仕掛けられたトラップごと壁などを破壊し強引に道を作る等々、とにかく滅茶苦茶なのだ。

<閣下・・・古代遺跡をみだりに破壊しては>

「細かい事は気にするな。そもそもこんな所に拠点を築くデッドフォースが悪い」

参謀のコモドールが端末越しに苦言を呈するもアトーラスが気にした様子もない。

<全く・・・相変わらずな奴だ>

ビームバリアーで覆われた扉を強引に破壊した先で待ち構えていた球体状のメカニロイドから呆れた様な声が響く。

「その声はソル公か。久しぶりじゃねえか」

『ガハハ』と豪快に笑いながらアトーラスはメカニロイドを指差す。

<出来れば会いたくは無かったがな・・・まあ良い。これ以上貴様にこの遺跡を破壊されるのもどうかと思ったんでな。罠を恐れぬならついて来い>

溜息交じりの声と共にメカニロイドが先を進む。

それに迷う事無くついて行くアトーラスにカーネルが慌てて止めようとする。

「アトーラス閣下。幾ら何でも危険なのでは?」

「危険も何も今、奴と戦えるのは儂だけだ。じゃあ行くしかねえだろ」

己の言葉を受け真顔でそう返されカーネルは黙る他無い。

そしてそのままメカニロイドに案内され辿り着いた先には。

「カーバーラー!!よく来たなアトーラス」

遺跡内の巨大な空洞内に設けられた祭壇を思わせる場に腰掛けるのはソルトコール。

イレギュラー組織デッドフォースの首領にして元海軍提督。

レプリフォースを裏切った存在であれど、その功績は面識の無いカーネルら若い者達でも知られている。

一見すると落ち着いている様にさえ見える彼だが、全身から時折発せられる空気に眩暈さえ覚えそうになる。

もしも目の前の敵と戦っても自分は勝てない。

そう悟らされるだけの実力差があるとカーネルは痛感する。

「なかなかに若い人材も育って来たようだな。羨ましい限りだ・・・」

ちらりとカーネルを見据えソルトコールが笑う。

「なんならお前も海軍に戻って育ててみたらどうだ?今なら一緒にジェネ公の所に行って頭下げてやるぞ」

「ハハハハハハ!!それは良い。あのグランドリオンの驚く顔が見れそうだ」

互いに敵同士だと言うのにまるで久しぶりに友人と出会ったかの様に話し始める両者。

「それはそうと最近はどうだ?どうせ今のお前達は連邦政府に体良くこき使われているのだろう」

「確かにうぜえな。やれ災害復旧だ。やれどこぞでテロが起こっただのてめえの失敗の尻拭いばかりしてくる」

「だから言ったであろう。我々はオクターヴ大元帥が提唱した様に連邦政府から独立したまま、己の正義の為だけにそこにあれば良いのだ」

「てめえの正義ねえ。だがそれも何時も正しいとは限らねえ。それにその正義とやらを示してくれたオクターヴの親父はもういねえ」

親し気に話すアトーラスとソルトコールだが、その会話は平行線に終わる。

「久しぶりの再会もあって話過ぎたか。そろそろやるべき事をするとしよう」

大きく伸びをし立ち上がったソルトコールがビームハルバードの柄を握り締める。

もう片方の手にはビームシールドを内蔵した楯が見える。

場に満ち始めた殺気に吐き気さえ覚えながらカーネルもビームセーバーの柄を手にする。

「グフフフ・・・!!」

「チチチチチ」

そんな自身らを取り囲むようにガネシャルヴが真横から、カーグラは頭上の天井に姿を現す。

 

ドンッッ!!

 

ガネシャルヴから反対側の壁に隠された扉から最後の大幹部ザリガンダも姿を現す。

どう言う訳か返り血の如きオイルを全身に被っている状態であったが、いちいちその事を問う時間は無い。

「ようオアンネル。久しぶりだな~変わらずせこい事やってんのか」

「そのオイル、誰のだ?変わらずの人格破綻者ぶりにはドン引きだぜ」

敵の中に顔馴染みのオアンネルを見つけるやザリガンダは嬉々として話しかける。

「てかジョーズィはどこだ?もしかしなくても・・・」

「あいつがこんな所に来る訳ねえだろ。会いたかったら今からでも海軍本部に来やがれってんだ」

互いに嫌悪する者の姿を脳裏に浮かべ苦々しい顔となる。

「あんな奴が海軍提督とは世も末だな。俺と手を組んであいつをぶっ殺さねえか?」

「ハッ!!そりゃ良い!!だがそんなばれたらやべえ事するよりもてめえを討ち取れば、その功績で海軍提督の座を奴から奪えそうだ」

売り言葉に買い言葉とばかりの応酬に『やれるモンならやってみな』と叫び、ザリガンダが巨大な鋏を振り回す。

紙一重で振るわれる刃を回避するオアンネルだが、彼の近くに居た兵士が巻き込まれ体を両断される。

「おのれ・・・撃て撃て!!」

慌てる様に兵士らが至近距離でビームガンを発砲するも、強固な装甲を持つザリガンダには傷一つ負わせられない。

逆に無造作に鋏を振るわれバラバラにされてしまう結果に終わる。

 

ブンッッ!!

 

ビームトライデントから放たれた衝撃波を背に受け、僅かに前のめりとなるザリガンダ。

「てめえの相手は俺だ。雑魚ばっか相手にしてんじゃねえ」

オアンネルが品の無い笑みを浮かべる中、ザリガンダは無言で振り返るやその鋭利な刃を振るうのであった。

 

ドゴオオォォォォンッッ!!

 

アトーラスが振るう戦槌の一撃を真正面から受け止めながらソルトコールは満面の笑みを浮かべる。

「フハハハ!!面白い!!」

飛び退きながら次々と光弾を放つソルトコールが腰を大きく落とす。

最強クラスの実力者として君臨する両者の実力は殆ど互角と言っても良い。

見ればカーネルも先程の再戦とばかりに他の兵士らと共にガネシャルヴと対峙していたし、カーグラの方は恐らく空軍所属と思われる者と交戦を開始している。

(互いに敵を見つけ戦いを始めておる。時間稼ぎは成功と見るべきか・・・)

ファルザー起動まで一時間も無い状況下でソルトコールは己らの勝ちを確信する。

かの歪獣の力を以てすればこの場に居る者達ですら軽々と倒す事が出来よう。

そんな考えを中断させるかの様にアトーラスが巨大な拳を叩きつけて来るが、ソルトコール自慢の装甲は地面すら抉る一撃を軽々と受け止める。

「我ら以外にもカメレリオンもここに居るのだ」

「・・・やっぱりな。てめえ何を考えている」

ぼそりと言い放たれる言葉にアトーラスは目を見開く。

そんな彼にソルトコールは言い放つのであった。

「仮に我らを倒しても、その疲弊した身でカメレリオンは倒せまい。この場においては我らの勝ちだ」

 

 

 

確保した遺跡前の陣地にて待機を命じられたコモドール。

アトーラスらが大幹部達と交戦を開始した事を知り、彼個人は不安を覚えるがだからと言って参謀の彼に出来る事は限られている。

そんな折、自身の下に来客が来た事を告げられ彼はその対応に追われる。

「第17精鋭部隊隊長のシグマだ。既にフクロウル准将には連絡を入れたのだが」

「空軍経由で話は聞いている。いずれにせよ助力感謝する」

コモドールは簡潔に現在の状況を伝えつつ、自身の端末からシグマへと遺跡内部の見取り図を送る。

「全てではないが、一応な」

自身に小さく礼をするシグマはマントを翻すや後ろに居た面々に目を向ける。

「丁度研修の成果を出すには良い機会だ。早速だがレプリフォースの足を引っ張らずに頑張るとしようか」

どこかわざとらしくシグマは不機嫌そうに煙草を吸う、無機質なヘルメットを被ったレプリロイドに向かって言うのであった。




何時もの後書きです。
例によって長いです。

〇各人物の設定年齢について
オアンネルがアトーラスをおっさん呼びしているがそもそもレプリロイドなので見た目と外見年齢は一致しない事は理解する必要がある。
あくまでもこの小説内の設定として稼働年数の多さから精神的な老いが始まるが、先も言ったが歳を取ったからと言って外見や言動が老人になる訳ではないのであしからず。
参考までに元含むレプリフォースだけで見ると
・前世紀世代(ロボット)・オクターヴ 人間で言えば長老
・第一世代(レプリロイドかロボットかは敢えてぼかす) ジェネラル、カメレリオン、総監等 人間換算で50~60ぐらい?若くても40後半
・第二世代(ここからはレプリロイド) アトーラス、ソルトコール、フレーヴェルスら 40半ば~50半ば
・第三世代 ジョーズィ、オアンネル、フクロウル、コモドール ザリガンダらデッドフォース大幹部もここ まあ40前半から半ば
・第四世代 カセウェード プテライド スミロドーム ゴルゴーナ 30代~ギリ40前半 
・第五世代 カーネル アテネ ディノレックス キバトドス、ビストレオ等 主要な面々がこの世代 20半ばから30前半まで
・第六世代 ペガシオン シーラ 今後のホープ世代 アイリスもここに属する 10代後半から20前半
これにスレイプニールなどが後々に七世代目で続くのだがここでは割愛。
あくまでも参考であり、何時までも若々しい人物はフレッシュなので設定年齢と考えて頂けると有難い。

〇フクロウルについて
ジェネラルからの通信と思い渋い顔となるがこの辺も色々とややこしい所がある。
アトーラスとフレーヴェルス、後のカーネルやペガシオンの様にトップ同士は関係が良好なケースが見られるが、組織としての陸軍と空軍は半ば伝統的に仲が悪いのが特徴。
最大兵数を誇る陸軍に関して空軍が三軍の中で最も数が少ないがエリート意識も高いので、陸軍に多くいるノンキャリアともめ事を起こすケースが多々ある。
陸軍からすれば気障ったらしいいけ好かない連中。
空軍からすれば話にならない単細胞の集まり。
と言う認識になりがちなのと何だかんだで活躍が注目されるのが陸軍だったりするのも空軍からすると面白くないらしい。
生粋の空軍出身者であるフクロウルからすると元陸軍のジェネラルから居丈高に命令されていると言う印象もあってか、内心での反感も強いようだ。
因みにハンターからの通信であった為に取ったが無視できるなら無視するつもりだったらしい。

〇ビストレオとアテネについて
合体技を披露しているが指摘された通り、その場で即興で考えた技であり磁力で引っ張ったビストレオを敵に投げつけると言う単純すぎる技。
一応勢いは増しているのだが、そこまで逆転が狙える技かと言われると微妙である。
ザリガンダに捕まり捕虜となったアテネが自分の身によからぬ事が起きると妄想するのだがこの小説では残念な事にそう言う事にはならない。
とは言え発作が起こったザリガンダが独房に向かっていったので一悶着あるとだけは付け加えておく。

〇カーネルの実力について
ガネシャルヴに押され気味と書いたが十分に逆転を狙えるぐらいの僅かな実力差である。
とは言えカーグラが居る事もあり、あのまま戦い続ければカーネルが負けていただろう。
この辺の実力はカーネルの方がアテネやビストレオ等の人物よりも頭一つ分抜けている形で設定した。
因みにオアンネルの実力はデッドフォース大幹部レベルなので一応は彼よりも強いと言える。

〇ペガシオンについて
この時期の彼はまだ若い。基本的に優等生だが功を焦ってしまう面もある。
今回の場合は功と言うよりかは自分らだけ高みの見物と言う状況からの申し訳無さなのだが。
いずれにせよ命令違反なのは付け加えておく。

〇アトーラスについて
彼が来た時点で勝ち確と言うべきか基本的な彼の戦い方が作中のそれである。
アトーラス自身も良く無い事は理解しているが、仲間の犠牲を減らす為にはやむ無しと思っている所があるらしい。
いずれにせよ勢いに乗った彼の進撃を止めるのは非常に難しいと言えよう。
敵方で言えばソルトコールやブラックをぶつける必要が出て来る。
デッドフォース側もその辺を理解しているのか、彼が来た時点で撤収準備に入っており、防衛システムやメカニロイドなどを使っての時間稼ぎに終始している。
まあその時間稼ぎも想定通りできたのかと言われれば微妙なのだが。

〇最後のシーンと首領補佐について
遂にあの男登場と言うべきか。
たまたま南米で研修をしていたシグマ以下の面々が現地に到着する形となった。
シグマからするとレプリフォースの邪魔をするつもりは無く。あくまでもイレギュラーを倒せれば今後の被害が減ると言う考えからである。
ソルトコールらの後ろに控えている面々を考えるとちょっとだけ援軍が必要と考えての登板となった。フレーヴェルス登場も考えたが、それだとレプリフォース側が全戦力を投入している形となり格好がつかないと思ったのと、じゃあ政府軍となるとそれこそレプリフォースの面目丸潰れである。
なので勝手な独断と言う形でハンターの彼がとなった。
一応問題児の彼も居る。

ピアニシアは今後設定の変更があるかもだが一応首領補佐と言うメッセンジャー的なポジションとした。
ヴォイドが通信を入れていた先に居たのが彼女である。
立場上首領や大首領の名代となる為にその地位は最高幹部であるブラックよりも上となる。
あくまでも今回は顔見せ登場となった。


今回の後書きは以上です。
本文含め異常に長くなってしまいましたがここまで見てくださりありがとうございます。
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