RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

17 / 22
番外編(後編)

(あれ・・・俺死んでた?)

とどこかぼやけた視界の中、ビストレオは呑気な事を考えてしまっていた。

全身の力が入らず視界すらピントボケしており、音も聞こえてこない。

(なんでこうなった?)

己の身に何が起こったのか分からぬままビストレオは不意に暗くなった視界に何度か瞬きする。

その時になって左目が一切機能していない事に気づく。

何で片目が見えないのか記憶の糸を辿り寄せるや己の独房に急に入って来たザリガンダの姿を思い出す。

自身らを捕虜として連れて来た時と違い無表情でそれでいて鬼気迫る雰囲気を醸し出す彼の姿に反射的に命の危険を感じ取るがもう遅い。

独房に入って来るなり、奴が己の左目を鋏で突き刺してきた事を認識した時には眼球ごと鋏が引き抜かれていた。

悲鳴を上げる暇も無い。

理由を問う間も無く次に脇腹を刺されていた。

この時点でアテネが悲鳴にも似た声を上げたがザリガンダは一向に構う様子もなく一心不乱に己を痛めつけて来た。

(なんだっけ・・・なんだったけ?昔、聞いたヤバい噂。海軍の上層部に発作的に部下や捕虜を殺したりする奴が居たって言う・・・)

それが目の前の男の話だったのかと悟るビストレオの意識は一瞬だが吹き飛ぶ。

「や・・・やめて」

普段の声に比べればかなりか細い声でザリガンダを止めようとするアテネだが、そんな声で相手が止まる訳は無く。

「運が悪かったな。大事な戦いの前に発作がきちまった。小娘・・・てめえはまだ士官だから価値があるからどっちにしろ殺すのは後だ。先に捕虜として価値のねえこいつを殺して・・・スッキリする!!」

 

グンッッ!!

 

頭を掴まれ何かを引き千切られた所でビストレオの意識は完全に飛んでいた。

ある意味で飛んでいて運が良かったのだろう。

とりあえず分かるのは自分が半分は死にかけていると言う事。

痛みとかが無いよりも感覚が無いと言うのが不気味だった。

ぼんやりと宙に視線を泳がせるとそこにピントボケして映るのは見知らぬ一人の少女の顔。

(あの世かな?)

そんな事を考えた瞬間、ビストレオの意識は現実に戻される。

「いってえええぇぇぇぇぇぇ!!」

突然全身を襲う激痛に思わずその場で飛び跳ねたビストレオはそのまま後頭部を強打し、更に悶絶する。

数秒ほど、痛みに悶えていた彼だったが自分を覆う感触に目を見開く。

「どうせ死ぬ時には女子に抱かれ死にたいってキバトドスとは話したけど・・・まさかアンタにそれされるなんて冗談きついぜ」

「馬鹿・・・もう駄目かと思った」

ヘラヘラと冗談交じりに笑うビストレオの胸に顔を埋め嗚咽するアテネ。

そしてそんな二人を無表情で見下ろすのはピアニシアだ。

<彼の修理は終わったかい?>

「はい・・・ただいま」

端末より響く声に一礼する少女。

ビストレオを拷問と言うよりかは一方的に暴行を加えたザリガンダが兄であるソルトコールの通信に呼ばれ、その場を後にしたのと入れ替わる様に独房に入って来た少女。

彼女はアテネの目から見ても殆ど手の施しようがない状態まで破壊されたビストレオのボディを神懸かり的な腕前で修復してしまっていた。

恐らくザリガンダの暴行が始まった辺りから外に居たのだろう。

独房に入って来た彼女は手にしたアタッシュケース以外に幾つかのパーツを手にしていた。

「彼がレプリフォース所属で助かりました。内部のパーツの規格がデッドフォースの方々の物と合いましたので。尤も中枢の機構などを見るに中途でレプリフォースに入った在野の方と見受けますが」

「て・・・てめえ、なんでそれを」

「中のパーツを見れば分かります。最初からレプリフォースに配属すべく製作されたレプリロイドは基本的に特注パーツで製作されていますので」

己の出自をあっさりと見破るピアニシアに驚くビストレオ。

冷や汗を拭う様に額に触れるビストレオだったが、それよりもアテネに抱き着かれている事に気づき顔を赤くする。

「おい・・・少佐。とりあえず一応は大丈夫だから・・・お前!!言っておくけど俺とこの人はそう言う関係じゃ」

未だにすすり泣くアテネに目を向けつつ、ピアニシアに指を突き付け自身らはそう言う仲ではないと強調するビストレオ。

何時もの調子であればアテネを押し倒して立ち上がっていただろうが、生憎起き上がれそうに無い。

「なんで助けた?・・・俺らは敵だぞ」

雰囲気から少女が味方では無くイレギュラー側だと判断したビストレオが困惑気に問う。

ザリガンダの突然の凶行は問題があるかもしれないが、イレギュラーである彼女らが連邦政府側に所属する自身らをわざわざ修理までして助ける義理などどこにも無い。

仮にレプリフォースやイレギュラーハンターがイレギュラーの捕虜を取ったとして必要な情報を聞き取り次第処分するだろう。

キバトドスの様なケースは極一部の例外でしかない。

「貴方が死にそうだったから・・・では理由になりませんか?」

無表情のまま口を開くその顔からは一切の感情が読み取れない。

『う~ん』と声を出し彼女は困った様に首を傾げるが表情は変わらない。

<君は四度目の計画で必要だからね。ここで死んでもらっては困る・・・>

端末から再度響く声にその場に居た一同が顔を向ける。

「・・・誰だ?」

<私かね?私の名前はアルバート・・・他人は私を大首領(マスター)アルバートと呼ぶ。デッドフォースを含めた数多のイレギュラー組織を管理運営する存在と言えば分かるかな?>

「ア・・・アルバートだと!?」

ビストレオよりも早く反応を示したのはアテネの方だ。

逆にビストレオの方はアルバートの存在が良く分からないと言った様子で怪訝な顔となる。

イレギュラーハンターやレプリフォースを含めた連邦政府に敵対するイレギュラー組織。

当初こそそれらの多くは横の繋がりも無く単発的なテロ事件を起こす程度の存在だったのだが、何時しか個々に散らばっていた筈の組織が連携を見せるようになる。

一時期は元レプリフォース参謀長のジェネラル=カメレリオンことブラックがその正体ではと噂も立ったが、彼が築くにしてもそのネットワークはあまりにも広大かつ緻密な物であった。

その頃からであった。

大首領アルバート・・・全てとは言わないが多くのイレギュラー組織を統括する何者かの存在が噂されるようになるのは。

最近になって実在する事が確認されたカウンターハンター同様に半ば都市伝説の様な存在として知られていた人物が端末越しにとは言え話をしている事にアテネは衝撃を覚える。

「貴様がアルバート。まさか存在していたのか・・・」

<別に私は隠れているつもりは無いけどね。泣き虫のお嬢さん>

泣き腫らした目のままキッと端末を睨み据えるアテネに対しアルバートを名乗る人物が冗談めかした声を上げる。

「私は・・・泣いていない!!」

<アハハハ!!そういう気の強い女子は嫌いじゃない>

殆ど言葉だけの強がりを口にするアテネにアルバートが更に笑う。

<しかし今回、君は手酷くやられたねえ。レプリフォースはなまじ大所帯かつ連邦政府からの豊富な援助もあって、どうも補給面で粗雑な所がある。それに加え典型的な士官学校出のエリートである君はその驕りもあって敵に裏を掻かれた。そこの彼の方がまだよく動けていた方だ。まあ勝手に物資を横領していたのはどうかと思うが・・・>

アルバートの言葉に仰天したのはビストレオの方だ。

一体どのような手段を用いてかは分からないがアルバートなる人物はビストレオらが勝手に物資を持ち出していた事を詳細に語りだす。

咄嗟に否定しようとするも本当の事だけにビストレオの顔が青くなる。

ジロリとアテネに横目で見据えられるが何の反論も出来ず。

それを見てアルバートがまたしても笑い声を上げる。

次いでアルバートはアテネと違い同じ様に奇襲を受けながらも最小限の被害に抑えたと言うカーネルの事を話し出す。

その話を聞くにアテネの顔が険しくなるがアルバートの言っている事は事実だけに何も言えない。

<もう少し君は頭を柔軟にした方が良いし、現場の事を良く見ておくべきだ。そうだ・・・とりあえず彼の話だけは聞く様にすれば良い。いずれにせよ君が余計な事をしなければ虜囚の身にもならなかったし、彼が重傷を負う事も無かったのだからねえ>

『ちょっと説教臭くなったかな?』と付け加えアルバートは片目を閉じる様な間を生じさせる。

わざとらしく咳払いをし大首領は端末の向こうで息を整える。

<既にデッドフォースはここを引き払うつもりだ。独房の扉は開けておくつもりだからさっさと君達は脱出したまえ。いずれにせよブラックが歪獣ファルザーを起動させるだろうから、そうなるとこの遺跡そのものが崩落する危険性がある・・・君達も生き埋めになりたくはないだろう?>

アルバートの話の最中にも関わらずピアニシアが端末を手にする。

無表情の彼女はビストレオらに一礼すると端末と共にアタッシュケースを手にクルリと背を向ける。

<おや、そろそろ時間かい?まあ君も早く脱出しないと・・・>

「・・・・・・」

尚も話を続けようとするアルバートの声が響く端末の電源を落とし、少女は現れた時と同じようにその姿を消していた。

暫しの間、呆然としていた二人だったが開け放たれたままの扉を見るや慌てて立ち上がる。

「とにかくこっから逃げるぜ。あの野郎が言っていた話が本当ならやばいぜ」

「あ・・・ああ」

ビストレオの言葉にアテネは頷くと慎重に外へと飛び出すのであった。

 

 

 

「ところで坊や。私達デッドフォースの成り立ちって知ってる?」

耳元で囁かれる声にペガシオンは小さく呻く。

カーネルに勝手に従う形で遺跡内部に同行したペガシオンはデッドフォース大幹部の一人カーグラと激突するのだが。

 

ブンッッ!!

 

声がする方に反射的に拳を振るうもそれは虚しく空を切る。

代わりにバットンボーンが飛び去る音が僅かに聞こえるのみだ。

(しまった・・・)

と内心で己の失態を認識したと同時に両肩に圧が掛かる。

グイッと体が押し込められる感覚が生じ頭上を見上げたペガシオンが見たのは己の両肩に鋭い鉤爪が付いた両足を食い込ませるカーグラの姿。

次の瞬間、勢いよく宙で一回転したペガシオンは床目掛けて放り投げられる。

もしもここで方向感覚を失えば床に叩きつけられていただろう。

激突する寸前で辛うじて体勢を立て直し、両手を床に突き付けながら起き上がるペガシオン。

「やるじゃない。坊や、なかなか見どころがあるよ」

暗闇の向こうからカーグラの嘲笑が響き渡る。

「く・・・降りてこい!!」

 

バサッッ!!

 

相手がどこに居るかは分からないが恐らくは頭上に居ると思い天井部に向かって声を上げるペガシオン。

カーグラとぶつかり彼女の相手をする形となったペガシオンだが、些か分は悪いと言うか悪すぎる。

気付けば眼下で戦っていた筈のカーネルらとはぐれる形になったし、遺跡内と言う飛行能力を活かせない屋内に加えこの暗闇だ。

文字通り今のペガシオンは彼女の術中に完全に嵌っている状態だ。

「え~と・・・スパイラル=ペガシオン。開発者は兵器開発部の部長ランドグリーズ博士か。へぇ・・・彼女も出世したもんだね」

どこからともなくカーグラの声が響いてくる。

生みの親の話をされ思わず問い返したくもなるが、それをすれば更に彼女に主導権を握られると思いグッと堪えるしかない。

「ホラ吹きのフクロウルやフレーヴェルス長官にも認められる若手のホープって奴?そんな将来も安泰なエリート君がここに来るだなんて随分と迂闊な事をしたもんだね」

 

・・・スッ。

 

柱の影からゆっくりと仮面を被った女性が姿を現す。

彼女の姿を見るや拳を突き出したペガシオンは己の形をした残像を眼前に向けて放つ。

「・・・へえ」

と己の脇をすり抜けた衝撃に驚いた様に声を上げるカーグラ。

確かに当たっていた筈の一撃を外してしまい目を見開くペガシオン。

「チチチチチッッ。若手の坊やには何が起こってるのか分からないだろうから教えたげる」

 

バサバサバサバサバサッッ!!

 

己の肩口に止まるバットンボーンを指で寄せながら、カーグラは頭上や周囲の壁に集まる無数のバットンボーンをペガシオンに見せつける。

「キミの目を眩ませているのは何も暗闇だけじゃない。この子達と私が発する妨害電波にキミの方向感覚は狂わされているんだよ」

「なっ・・・」

「僅かにおかしくなってるだけだから言われるまで気づかなかったでしょ?狂わせるのは僅かでも戦いの場においては致命的さ」

そう言って指を立てるカーグラの全身が大きくぶれる。

彼女の形をした残像が己に向かって来た事でペガシオンは慌てて腕を振るい払い除けるのだが。

「それは長官直伝の・・・」

「そう疾風。キミも使えるみたいでちょっと嬉しいよ。って私が元空軍所属だった事を考えれば使ってくる奴が居るのも可能性に入れるべきだよ」

フレーヴェルス直伝の技を使われ狼狽するペガシオンの真横でカーグラが微笑む。

僅かに息を吸う様に口を開いた彼女から生じるのは確かな殺気。

「ノイジーシャウト!!」

カーグラが口から発する超音波を至近距離で受けたペガシオンの意識は文字通り消し飛ぶ。

 

ドシャアアァァァァ!!

 

一瞬だが意識を失い遺跡の壁に叩きつけられたペガシオン。

並のレプリロイドであればこれだけで致命傷であっただろうが、頑強なペガシオンのボディは辛うじて耐えきっていた。

だがこの状況で追撃を受ければ確実に死ぬ。

起き上がろうとするペガシオンだが、至近距離でカーグラの超音波を受けた事もあってか思う様に力が入らない。

 

バサッッ!!

 

背の翼を羽ばたかせ地面へと舞い降りるカーグラ。

絶体絶命の状況下で死を覚悟するペガシオンであったが。

「いい加減に出てきたらどうだい?こっちはアンタが居るのが分かっていて坊や相手に集中出来なかったんだからさ~」

動けないペガシオンは無視する形で誰かに向かって叫ぶカーグラに返答は無い。

その状況に舌打ちをしつつ殺気の籠った視線をペガシオンに向けた時になって、彼女が思い描いた人物は姿を現す。

「・・・・・・」

無言のまま柱の影から姿を現すのはフライトユニットを身に付けたノットベレー。

確か自分と共に地上に降り立った者の一人だとペガシオンは記憶していた。

とは言え遺跡内部に侵入するには実力不足とし、何より自身の独断にこれ以上付き合わせる訳には行かず引き連れた者達は地上で待機を命じている筈だったのだが。

「・・・あれ?」

戦いの場だと言うのに間の抜けた声を上げるペガシオン。

あの時は独断で動く事を優先していたあまり気にもしなかったが、この場に居るノットベレーは何かがおかしい。

フォルムこそ似てはいるが所々でまるで間に合わせたかのようなアーマーを着込んでおり、よく見ると隙間から別のボディが垣間見える。

「昔にも言ったけどそれ・・・バレバレだよ」

呆れた様に口を開くカーグラにノットベレーは被っていたメットを放り投げる。

次いで弾かれる様に外れるアーマーの下から現れるのは。

「フ・・・フクロウル准将!?」

目の前に今回の作戦の指揮官であるストーム=フクロウルが現れ驚愕の声を上げるペガシオン。

ノットベレーに偽装する形でペガシオンの独断に付き合う事となった彼は溜息を吐くと鋭い眼光をカーグラへと向ける。

「あまり出世するのも考え物だな。バレバレの変装とは言えこんな事でもせんと前線に出れんのだから」

「アンタみたいなホラ吹きにはお似合いの境遇だと思うけど。そもそもアンタが出たぐらいで戦況が変わる様な状況な時点で負け確さ」

「確かにな。しかしホラ吹きか・・・少々複雑だが策謀を巡らす者として悪くはない言われようだ」

ペガシオンを守る様にカーグラと対峙しながらフクロウルは続ける。

「私自身、フレーヴェルスやアトーラス達の様にたった一人で戦況を動かせる働きが出来んのは重々承知している。そして実力は劣ろうともそこのペガシオンの様に動く事もな」

深々と溜息を吐くフクロウル。

レプリフォース創設期より活躍する名参謀であるフクロウルだが、彼らの常識外れの強さが故にもたらされる諸々の問題に常に頭を悩ませてきた。

はっきり言えば理解出来ないと言える存在なのだが、それ故に彼らに対する羨望じみた想いが胸に宿るのも事実。

「だったら奥で引っ込んで怯えていな」

「臆病者でホラ吹きの私でも前に出なければならん時もある」

チラリと背後のペガシオンを次いで正面のカーグラに目を向けるフクロウル。

「結果としてそこの少々短慮だが有望な若者を助ける事が出来た。そしてかつての友であるお前を止める事が出来る」

「ハッ・・・実際にそうなる前に結果だけを見るなんて時期尚早だよ。アンタが私を止める?出来るのかい?」

「ああ・・・全力で止めさせてもらう。それこそ三分以内にな」

次の瞬間、二人の姿がその場より消え去る。

「ノイジーシャウト!!」

「ダブルサイクロン!!」

遺跡の天井部で二人の必殺武器が炸裂したのが分かる。

この時になって漸く立ち上がれたペガシオンだが、視界の悪い周囲では何が起こっているのか彼には分からない。

「ホオオオォォォォォウウウッッ!!」

「チチチチチチチッッッ!!」

ダブルサイクロンとビームの散弾で弾幕を張られ動きを止めたカーグラの隙を逃さず、彼女の両肩を掴み近くの壁にフクロウルが叩きつける。

対してカーグラも即座に己の残像を飛ばすやフクロウルの脇腹を削り取る。

 

バサバサバサバサバサッッ!!

 

続けざまにカーグラの操るバットンボーン達が大挙しフクロウルの視界を覆う。

(その手は既に想定済みだ・・・)

全身を風のバリアーで覆いながらフクロウルは一旦彼女との距離を取る。

カーグラの方も天井部に逆さで張り付くとその動きを止める。

「フフッ・・・」

「・・・チチチッ」

お互いに同じ事を考えたのだろう。

笑みが零れるのを抑えきれない。

何せ二人からすれば何度も見た光景だったからだ。

それは戦闘シミュレーターでもあったし実際に口論となった末でもあった。

こうして実際に敵味方と分かれてもである。

「前よりも動きが悪くなったんじゃないの?でも嬉しいよ・・・こうして戦える機会は無いと思っていたからさ」

「嬉しいのは私もだ。こうしてお前に詫びる事が出来る」

フクロウルの言葉にカーグラの笑みが固まる。

「詫び・・・る?」

彼女の言葉にフクロウルは軍帽を取り静かに頭を下げる。

「あの時は本当に済まなかった。私は・・・」

 

ザンッッ!!

 

言葉を遮る様にフクロウルのボディに裂傷が走る。

片腕にビームクローを発生させ一撃を見舞いカーグラの顔に浮かぶのは確かな憤り。

「今更アンタが謝ってももう遅い・・・アンタは私を裏切った。その事実は変わらないんだからさ」

「た・・・確かにそうだ。だが話を聞いて欲しいのだ」

「何の話を聞けっていうのさ!!」

至近距離で放たれる超音波にフクロウルの体が吹き飛ばされる。

ペガシオンと違いその特性を理解していたのかすぐさに復帰したフクロウルは迫りくるバットンボーンの群れをビームで撃ち落としていく。

(裏切ったか・・・私はあの時彼女を)

不意に脳裏に映るのはかつての光景。

今にして思えば自身にとって最も充実した時期であったのだろう。

「フクロウル准将!!」

己に追撃を仕掛けんとしたカーグラの側面を衝く形で巨大な竜巻を発生させたペガシオンの一撃にカーグラの身が呑まれる。

「チチチチチッッ!!やるじゃないか坊や」

不意を衝かれたとは言えカーグラも流石だ。

竜巻に呑まれながらも自身の手傷を最小限にしながら逆に大技を放ったペガシオンの顔面に強烈な蹴りのカウンターを仕掛ける。

頑強なペガシオンの額を僅かに亀裂を生じさせるに留まったが、並の者であればそれだけで頭部を破壊されていただろう。

 

ガシィィィィッッ!!

 

その場を離れようとしたカーグラの片足をペガシオンが掴み取る。

「・・・!?」

空いている方の足の鉤爪でペガシオンに蹴りを叩き込むカーグラだが、ペガシオンはその手を決して離そうとしない。

必死に拘束から逃れようとするカーグラだが、文字通りの馬力で言えばペガシオンに軍配が上がる。

 

キュイイイイィィィンッッ!!

 

眼前で口を開くカーグラの姿が見える。

超音波で己を吹き飛ばすつもりだと判断したペガシオンは迷う事無くその拳を握り締める。

彼の拳と超音波を放ったカーグラの一撃が真っ向からぶつかり合う。

 

ドゴオオオォォォォォンンッッッ!!

 

一瞬視界が飛び退くが拳を突き出した事である程度威力が軽減されたのだろう。

先程の様に後方の壁に叩きつけられる事無く、ペガシオンは数メートルほど後退しただけで事無きを得る。

「ぶ・・・無事か?」

自身の前に降り立つフクロウル。

心配そうに己を見るフクロウルにペガシオンは鋭い視線を返していた。

「准将、自分は准将と彼女の間に何があったのかは知りませんが。今、我々は奴らと戦っているのです。相手を悠長に説得している暇など無い筈です」

自身の助けに来たとは言え、フクロウルの動きは明らかな躊躇いが垣間見えた。

レプリフォースが掲げる正義の為であれば私情を捨てよと軍規に示される通り、今まで自身達に指導してきたフクロウルらしからぬ失態と言えよう。

彼の指導を受けて来たペガシオンからすればその様な姿は見たくないと言うのが本音だ。

「お前達に偉そうに説教してきたが、私も心あるレプリロイドの一人だ。血も涙もない殺戮マシーンではない・・・迷う時も後悔する時もある。そして今の様に判断を誤る時だってある」

若干歯切れ悪く言うフクロウルは起き上がったカーグラに目を向ける。

「彼女との因縁は後でゆっくりと話すとしよう。但し他言は無用でな」

ペガシオンの言葉もあってか僅かに吹っ切れた様な顔となるフクロウル。

「チチチチ・・・やってくれるじゃないか!!」

ペガシオンの拳を受け顔に付けていた仮面が粉々に砕けた事もあり、カーグラの醜く焼け爛れた素顔が露わになる。

当然だがペガシオンの拳によって生じた傷ではない。

その顔を見るやフクロウルが息を呑んだ事からも、その因縁絡みの傷なのだろう。

「カーグラ。悪いがこれ以上君の好きにさせておくつもりは無い」

フクロウルが押し殺す様な声で彼女に言葉を投げかけた時だった。

 

ズドドドドドドドドドドドドドッッッ!!

 

突如として遺跡全体が大きく揺れる。

ハッとなるペガシオンとは対照的にカーグラの方は僅かに目を細めたのが分かった。

「カメレリオン閣下が歪獣を起動させた様ね」

薄笑みを浮かべるカーグラの言葉にフクロウルは只ならぬ気配を感じ取っていた。

 

 

 

「ゾオオオオウウウッッ!!」

巨大な牙にかち上げられたカーネルに追撃を仕掛けんとするガネシャルヴだったが、逆に空中で体勢を立て直したカーネルに額を割られ大きく後退する。

「ハァハァ・・・」

荒い息を吐きながらビームセーバーを支えにゆらりと起き上がるカーネル。

戦いは元の実力差もあり終始ガネシャルヴが優勢で進むが、ギリギリの所でカーネルは食らいつき先程の様に思わず不覚を取りかねない場面が徐々に増えて来る事となる。

ガネシャルヴの方も早期に彼を始末せんと動くのだが、そう簡単に行く相手ではないと

「小僧・・・やはり強いな。敵ながらあっぱれだゾウ」

「『血煙の魔侯爵』と呼ばれたガネシャルヴ少将閣下にそう言われるとは・・・光栄の極みだ」

冷や汗を掻きつつも称賛の言葉を投げかけるガネシャルヴ。

カーネルの方も肩で息をするもまだ闘志は揺らいでいない。

「少将か・・・懐かしい呼び名だ。アトーラスには羨ましい限りだ。こんな才能ある若者を従えているのだからな」

手にした複数の腕を振るい巨大なランスを持ち直すやガネシャルヴはアトーラスと対峙するソルトコールと目配せする。

「フン・・・そろそろ案内してやろうか。ガネシャルヴ、お前は先に退け」

「・・・了解」

ソルトコールの言葉にガネシャルヴはカーネルに向き直る。

「カーネルだったな。また次の戦場で会おう。その時を楽しみにしているぞ!!」

 

シュンッッ!!

 

簡易転送装置を使いその場より離脱するガネシャルヴ。

本来であればそれを阻止せんと動けていただろうが、今のカーネルにそんな余力は残されていない。

「来いアトーラス。貴様に面白い物を見せてやる」

「おう、見せて貰おうじゃねえか」

互いに得物をぶつけ合いながら後方に退き始めるソルトコールを追いかける形となるアトーラス。

「閣下だけを先に向かわせる訳には・・・」

痛む身を堪え後を追うカーネル。

「おらあぁぁぁ!!」

「死ねええぇぇぇ!!」

オアンネルのビームトライデントがザリガンダの腹部に突き刺さると同時にザリガンダのビームシザースがオアンネルの左半身をズタズタに切り裂く。

互いに致命傷になりかねない一撃を受けながらも両者は揺らがない。

「兄貴が下がりやがったか。じゃあここでのお楽しみは終わりだな」

「おい・・・逃げんのか?」

アトーラスが奥に行ったのを見るやザリガンダが大きくその場より飛び退く。

挑発気味な言葉を口にするオアンネルにザリガンダは殊更残忍な笑みを浮かべる。

「楽しみが無くなったら帰るしかねえだろ。てめえらも逃げねえと生き埋めになるぞぉぉぉ!!」

『ギャハハハ』と下卑た笑い声を響かせながらザリガンダもまたその姿を消してしまう。

舌打ちをしつつ手にした武器の刃を仕舞うオアンネル。

「あ~痛え。これだからあの野郎の相手は嫌だったんだ」

見れば周囲には誰もおらずオアンネル一人が残される事となる。

「後はアトーラスのおっさんに任せて帰るか。骨折り損だぜ・・・ったく」

やる気を無くした様に大欠伸をし、オアンネルは誰に言う事も無く来た道を勝手に引き返すのであった。

その途上でシグマとすれ違う形となる。

「こりゃあ・・・まさかこんな所でアンタと合えるとはな」

別組織の彼がこの場に居る事を特に咎めずオアンネルはさっさと出口を目指して歩き出す。

「アンタみたいな英雄は都会のオフィス街がお似合いと思っていたが、珍しい事もあるもんだ」

「そう思われていると思い場違いな環境に対応すべく南米で演習を行っていたのだ。まあそこの問題児を鍛え上げる意味合いもあったのだが」

オアンネルの軽口に眉一つ動かさずシグマは答えると傍らのライドアーマーに乗ったままのレプリロイドに目を向ける。

そちらの方は終始不機嫌と言った様子で銜えていた煙草をその場に放り投げていた。

イレギュラーの基地に改造されているとはいえ古代遺跡の内部で煙草のポイ捨てなど、些かモラルが問われる行為なのだがオアンネルもそれを咎めるつもりは無い。

オアンネルの方もそれ以上は何も言わず、シグマらも先を進む。

途上で負傷したカーネルと遭遇し、何度目かと言う具合に自身らが協力を申し出た経緯を話し都合三人で奥を目指す事となる。

「おらぁぁぁ!!顔出しやがれカメレリオンッッ!!」

十メートルほど先で大音量の声が響く。

言うまでも無く声の主はアトーラスだ。

彼は後ろからカーネルと共にシグマらがやって来た事に驚くも詳しい事は聞かずに視線を前に戻す。

 

ズンッッ!!

 

暗闇の奥の方で巨大な足音が響く。

それと同時に一旦退いていたソルトコールが顔を出し彼の方もシグマらを見るやその単眼を細める。

 

タンッ!!タンッッ!!

 

電源が入る音と共に周囲の空間が光源に照らされる。

「相変わらず騒がしい奴だ。だがそう言う所は嫌いではないぞアトーラス」

漆黒の装束を身に付けた巨人が片目を閉じながら僅かに頬を歪ませる。

「ぬう・・・あれがジェネラル=ブラック」

自身らの最高司令官ジェネラルと瓜二つの外見を持つイレギュラー組織最高幹部の姿にカーネルが呻く。

ハンター総監もそうだが、同型機でありながら異なった雰囲気を纏う人物に動揺が隠せない様子だ。

「シグマに貴様は確かヴァヴァだったか。我らが姫をかどわかしたと聞いているぞ・・・お陰で計画を前倒しにする必要性が出て来た」

ブラックの言葉にヴァヴァは何本目かの煙草を放り投げる。

その行為にカーネルが僅かに不快気な顔をするがヴァヴァは気にも留めない。

「ところで姫は息災か?」

「今頃、ラグズランドでバカンスでもしてんじゃねえのか?」

嘲る様に問うブラックにヴァヴァは掌を広げながら冗談とも本気とも取れない答えを返す。

対してブラックは僅かに片方の髭をピクリピクリと動かすのみ。

「いずれにせよアトーラスばかりでなく英雄殿まで来てもらったのだ。これを見るがよい!!」

手にした指揮杖で祭壇に鎮座する巨大な猛禽類の姿をした兵器を指し示しブラックは薄笑みを浮かべる。

「歪獣ファルザー。我らが総力を挙げて生み出しし秘密兵器。その猛威を存分に味わうが・・・!!」

 

バッッッ!!

 

ブラックが言い終わらない内に動いたのはシグマ。

一瞬の内に距離を詰めるや抜刀したビームセーバー『シグマブレード』を振り下ろさんとする。

対してブラックも腰に収めたビームセーバーを掴むやそれを振るう。

「キエエエェェェェイイッッ!!」

気合の一声と共に両者の間に火花が散る。

互いに弾かれるシグマとブラック。

 

ビシッッ!!

 

シグマの肩口が僅かに弾け飛ぶと同時にブラックの頬に裂傷が走る。

「・・・・・・」

「見事な太刀筋だと言っておこう。だがそう簡単にこのブラックの首は取れんぞ」

ニヤリと笑みを浮かべ指揮杖をファルザーへと向けるブラック。

(双方の動きが・・・見えなかった)

内心でシグマとブラックに驚愕する他無いカーネル。

まだ若い彼からすれば二人の動きは殆ど神業のそれに近い。

今やイレギュラーハンターのみならずレプリロイド最強とも謳われる英雄シグマ。

彼の強さはカーネルも聞き及んでいるが短い手合いの中で、その噂が間違いでは無かった事を知る。

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!

 

そんなカーネルの思考を遮る様にファルザーの瞳に光が宿る。

それと同時に遺跡全体が揺れ動く。

ファルザーの発するあまりのエネルギー量に遺跡地下の崩落が始まったのだ。

「目覚めよファルザー!!こやつらにその力を見せつけるのだ!!」

「キシャアアアアアァァァァァァァアッッッ!!」

ブラックの言葉に答える様にファルザーが甲高い声を響かせる。

翼を含め全長数十メートルはあろうかと言う巨体をむくりと起き上がらせシグマらを睨み据える。

 

ブオオオォォォォオォッッ!!

 

巨大な竜巻をシグマら目掛けて放つファルザー。

その猛攻にシグマらも回避行動を余儀なくされる。

「カァァバラァァァ!!ファルザーは起動した。これにより我らの役割は終わりよ」

「ではな。機会あればまた会おう!!」

シグマ達が後退したのを見るや簡易転送装置を使いソルトコールとブラックの姿が掻き消える。

 

ボワアァァァァァ!!

 

息を吸い込むや巨大な火炎を吐き出すファルザー。

アトーラスが舌打ちをして下がる中、シグマとヴァヴァが弾かれる様にして動く。

「幸いここは屋内だ。奴も飛行能力を活かす事は出来ん」

「・・・だな」

自身に迫る敵を見るや巨大な翼を羽ばたかせるファルザー。

そによって生じる突風で後方に飛ばされるシグマだが、壁を蹴り上げると頭上のファルザーの頭部まで瞬時に肉薄する。

「おらあぁぁぁぁ!!」

ファルザーの注意がシグマへと向いた隙を衝き、ヴァヴァが真下から銃弾を撃ち放つ。

その殆どはファルザーの装甲に無力化されるが、それでも僅かに動きを止める事に成功する。

「キシャアアァァァ!!」

シグマの一撃を受け片目を傷つけられたファルザーが悲鳴のような声を上げる。

「歪獣だか何だか知らんが図体がでかいだけだ。一気にやるぞ!!」

アトーラスの言葉にカーネルも頷く。

「インパクトウェイブ!!」

「エナジーブレイカー!!」

アトーラスの衝撃波とカーネルの放つ電撃がファルザーに直撃する。

 

ドッゴオオオォォォォンンッッッ!!

 

駄目押しとばかりにシグマ達の攻撃も受けファルザーは崩れた壁に埋もれた形でその動きを止めてしまう。

「む・・・勝てたのか?」

あまりにも拍子抜けな光景にカーネルは困惑気に言う。

対してシグマとアトーラスは静かにその首を振っていた。

「幾ら何でも歯ごたえが無さ過ぎる。あの二人があそこまで言ったんだ。まだなにか・・・」

ライドアーマーに乗ったヴァヴァが言い終わらない内にファルザーが瓦礫を押し退け立ち上がる。

と同時にファルザーの全身より殺気が生じる。

反射的にヴァヴァがライドアーマーから飛び退いたのとファルザーの鉤爪が一閃されたのは殆ど同時であった。

胸元を大きく傷つけられたヴァヴァが地面を転がる。

そんな彼以上にズタズタに切り裂かれたライドアーマーが爆発四散する。

<フフフ・・・ハーッハッハッハッハッハ!!>

ファルザーより青年の声が響く。

<屋内での自律モードでは性能の高さを活かし切れないか・・・これは今度改良する必要がありそうだ>

己の身を確かめる様に翼を広げたり閉じたりするファルザーの動きは明らかに人間臭い。

と言うよりファルザーより響くその声にはヴァヴァとシグマには聞き覚えがあった。

<久しぶりだねヴァヴァにシグマ。北米支部での一件以来じゃないか>

「大首領アルバート。やっぱりてめえか」

ファルザーのボディを介して己に話しかけるアルバートにヴァヴァが吐き捨てるようにして言う。

<まだ障壁を展開してはいないけど、君達の攻撃に一応は耐えられると言うデータも採集出来た。まあ傷を負った所でこの通り・・・>

 

パキパキパキパキッッ!!

 

一同の前で傷ついた箇所を修復させていくファルザー。

<ここでこれ以上戦ってファルザーが地下に埋もれたらシャレにならないからね。ここいらで撤収させてもらうよ>

巨大な翼を広げるファルザーが頭上を見上げる。

「・・・させんっっ!!」

シグマが刃を構えるのに続きアトーラスらも動く。

カーネルやヴァヴァも加えた四方からの攻撃にファルザーは反応を示す事も無い。

 

バチンッッ!!

 

何かが弾ける音と共にファルザーの周囲が大きく歪む。

ファルザーの周囲に展開された不可視の障壁は彼らの攻撃を尽く受け止めていた。

<さらばぁぁぁぁ!!もう一体の歪獣グレイガと共に今度は遊んであげるよ!!ハーッハッハッハッハッハ!!>

 

ドオオォォォォォンッッ!!

 

嘲笑うアルバートの声と共にファルザーは頭上を突き破りそのまま外へと飛び出してしまう。

と同時に遺跡全体が揺れ動き崩落が一気に始まる。

元々地盤が怪しい所もあったが、一連の戦いやファルザーの起動によって遺跡全体が崩れようとしているのだ。

「しゃあねえ。とにかく脱出だ!!」

アトーラスの言葉に促される様に一同は命からがら崩壊する遺跡から脱出する事となる。

 

 

「・・・くっ」

大きく崩壊した遺跡の瓦礫に持たれながらペガシオンが小さく呻く。

遺跡の天井部が落下した際に地上への脱出口を作る為、最大出力でウィングスパイラルを放った事もあり片腕の感覚が無い。

本来であれば無事に生還出来た事を安堵する所なのだが、近くに気を失ったフクロウルと多少傷を負ったのみで佇むカーグラが居た事もありペガシオンは痛む体に鞭を打ち動こうとするのだが。

「止めておきな。その体じゃ私は倒せないよ」

「勝てないのは百も承知だ。だがこの身に代えても閣下だけは守る!!」

己に笑みを浮かべ忠告するカーグラにペガシオンが拳を構える。

気を失っているフクロウルはまだ目を覚まさない。

「馬鹿だねえ。大人しく後ろに居れば良いのにさ・・・こんな子を守る為に前に出て来るなんてね」

フクロウルの傍らにしゃがみ込むカーグラ。

その動きを阻止せんと足を動かそうとするがペガシオンの体は思うように動かない。

彼女がその気になればフクロウルや自身に止めを刺すのは造作も無い事。

だが次に彼女が取った行動はペガシオンの予想とは違う動きであった。

 

ピタッ。

 

意識の無いフクロウルに頬に己の唇を付けるカーグラ。

全く以って予想外の展開とそれを行ったカーグラが次に自身を見て来た事もあり、逆に恥ずかしさを覚え赤面するペガシオン。

その青すぎる反応にカーグラは屈託無く笑う。

「そんなんじゃ好きな子が出来ても付き合えないぞ~」

からかう様に口を開くカーグラに何も言えないペガシオン。

次いでフクロウルを見下ろしたカーグラは何故か落胆した様に大きく息を吐くのであった。

「デスクワークし過ぎだよロー。そんなんじゃ私は倒せない・・・謝る気があるんだったら一から鍛え直しな」

そう言って翼を広げるとカーグラは後方へと飛び退く。

周囲に隠していたバットンボーンを回収するや彼女も転送装置を用いその場から姿を消す。

脱力した様にその場に腰を下ろしたペガシオンは程無く周囲を捜索していた味方に救出されるのであった。




何時もの後書きです。

〇ザリガンダの発作について
レプリフォース海軍において常軌を逸した残虐性を持つザリガンダだが、彼個人の素は基本的に冷静であり己が狂っている事は認識しているが残忍な行いを止められない体質。
本来のイレギュラーの定義である電子頭脳の故障あるいは一種のバグを生まれながらに持ってしまったと言うべきか。
ネガトータスやジャガールら仲間達は怖いけど面倒見の良い人と認識している為、この破壊衝動さえなければと思われている。
余談だが同じ海軍のシザーズ=シュリンプファーも同じ様な性質。
発作が起こると目に映る物を破壊しないといけない破壊衝動を苛まれる為、それの解消の為にザリガンダは海軍時代から港湾地区などに居る特に悪さをしていないイレギュラーを殺害する悪癖を持っていた。
ジョーズィが腕を切り落とされたのもその悪癖を咎められたからである。
作中ではビストレオに対し執拗に暴行を加えまだ利用価値があると思われるアテネには指一本触れなかったが、これはまだ発作が出始めた所だった為、発作が本格的に出ていれば彼女の方にも危害を加えていただろう。
ザリガンダ自身、後々にメタ化するまでこの悪癖と付き合い続ける事となる。

〇ピアニシアとアルバートについて
フルボッコにされた彼を介抱したピアニシアだが、アルバートが言った様に今後の利用価値ではなく彼女自身の意思による所が大きい。
言い方は悪いがビストレオの代わりは幾らでも居るのである。
アルバートの存在については一般将兵などからすると一種の陰謀論で出て来る名前程度の扱いであり、アテネもまさか本当に居るとは思わなかったようだ。
カウンターハンターも含め、この時代のイレギュラー組織は未だに全容が掴めていない扱い。
まだ名前が知られているデッドフォースですら、今回のようなケースが無ければ滅多に表に出て来る存在ではない事を付け加えておく。

〇フクロウルとカーグラについて
カーグラとの戦いは遺跡内の暗闇の中での戦いと言う事もありペガシオンが終始押され気味と言う結果となる。
作中でも描写したが暗闇と言うアドバンテージに加え、カーグラの放つ超音波に半ば方向感覚を狂わせられている事もありこの時点でのペガシオンが敵う筈も無かった。
リブート前から設定していたがペガシオンが使う疾風は空軍長官直伝の技と言う設定。
カーグラも同様の技を使用でき、彼女の場合実体のある残像を生み出す事で更に相手をかく乱させる事が出来る。
彼女自身は正統派のペガシオンと違い空中戦も出来る暗殺者と言った所が正確な所か。

中編より他の面々にはバレバレだったがノットベレーの一人にフクロウルが偽装し一向に加わっていた。
他の面々と言うかペガシオンだけが気づかなかった辺り彼の真面目さ故の鈍感さが際立つ結果に・・・。
フクロウルの方はカーグラと渡り合えていたが、これは彼女の癖を知っている為にある程度方向感覚を狂わされてもフクロウルがその狂いを計算しつつ動いていたからである。
因みにだが以前から彼よりも彼女の方が実戦での成績は上であった。

〇ブラックについて
何だかんだでアトーラスとは古い友人との会話になってしまうブラック。
性格は真逆と言える二人だがそこまで関係性は悪い物では無かったらしい。
シグマの刃を相殺した所からも分かるが巨体に似合わぬ速度から放たれる居合の一撃は至近距離の飛び道具と言っても良く、気づけば斬られているレベル。
その気になればまだまだ戦えた彼らだったが元々撤退前提での作戦であったので早々引き上げてしまっている。
ヴァヴァに対する台詞で言及されているが、彼女は既に組織を抜けており現在はあの魔女の居る島で一時的に保護されている。

〇ファルザーについて
長々と描く事も出来たが屋内と言う場もあったので話として早々に切り上げる事となる。
普段の自律モードではただの大型メカニロイドとしか言えないレベルなのだが、悪のエネルギー由来の無尽蔵のエネルギーを纏っており自己再生能力もあって半ば不死身に近い兵器。
それにアルバートによる操作が加わる事で並の軍勢を凌駕する脅威となる。
本来は起動したものの制御が利かず暴走し遺跡からそのまま外へと飛び出してお開きとなるのだが、それだとブラックらが間抜けすぎるので今回の展開となった。

〇フクロウルとカーグラについてその2
描写は省略したが遺跡全体が崩れその崩落に巻き込まれる形となった事もあって、その場で一旦矛を収めた両者とペガシオンが天井部に向かって最大出力で技を繰り出した結果、ああなってしまった。
ペガシオンの方は意識があるが体が動かず、フクロウルの方も完全に意識を失ってしまうという状況。
逆にカーグラは負傷してはいるがまだ動けるという実質ペガシオンらの負けと言う結果となった。
彼女からするとここで止めを刺そうとするのは無粋と判断したようだ。
現在はホラ吹き呼ばわりだが、以前は彼の事をローと呼んでいたらしい。

今回の後書きは以上です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。