RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
「ハッハッハッハ!!どうよ!!」
「どうよってお前なあ・・・」
南米での戦いで重傷を負ったビストレオ。
特にザリガンダによって抉られた左目の傷は根深く、その奥にあった電子頭脳の一部にまで損傷を生じさせる程の物であった。
『普通だったら死んでいた』とは修復作業に当たった医療班の言葉である。
そんな彼だが損傷した左目を換装し眼帯状のパーツにしており、復帰するなりそれを陸軍のオフィスに居たキバトドスらに見せつけて回っていた。
「熱源感知やらその他最新鋭のレーダーを内蔵した最高級のアイパーツ。どうせ付けるんだったらフレーヴェルスの爺さんっぽくしてくれって言ったんだぜ」
「そ・・・そうかい」
ヘラヘラと笑うビストレオだが、キバトドスや先程から渋い顔のカーネルは知っている。
本来であれば損傷した箇所のパーツを入れ替えるだけで元通りとなるのだが、電子頭脳の一部を損傷したビストレオには修復不可能なエラーが生じてしまっており、元のパーツを取り付けてもその視力が完全に戻る事が無かったのだ。
正確には片目から色を認識する事が出来なくなってしまっており、今回取り付けたパーツはそれを補う為に取り付けられた物だ。
本人は男の勲章程度に思っている様だが、今後の不自由さを思うとカーネルですらも騒ぎ過ぎと注意出来ない。
「・・・・・・」
そんなビストレオを先程から遠目で見つめるのは彼よりも早く復帰したアテネだ。
敵の罠に嵌り指揮する部隊を行動不能にさせる失態を演じた上、一時的に虜囚の身となった彼女。
この一件で上層部から作戦指揮能力に疑問符を抱かれ少佐から大尉への降格並びに暫くの配置換えの処分が下っている。
有り体に言えば陸軍内の出世争いから脱落したと言う事である。
逆にカーネルの方は作戦自体は成功として大佐の地位に昇格しており、文字通りの明暗が分かれた形となった。
「お、アテネ少佐じゃないッスか。見ての通り元気になったんで気にしちゃ駄目ですぜ」
「あ、ああ・・・そうみたいだな。それと今は降格して大尉だ」
アテネの姿を見つけるなり遠慮なく近寄るビストレオ。
対してアテネの方は申し訳無さげに呟くと視線を合わせられない様子であった。
「あの・・・そのだな。結果として私のせいで負傷をしてだな・・・お前が気にしないと言ってもだ私が気にするんだ」
何時もの高圧的な態度とは裏腹にモジモジとした様子で口を開く彼女。
何とか言葉を紡ごうとするのだが、どうも上手く行かない。
この辺は彼女の陸軍女子と言う所か『ええい』と歯を軋ませるやビストレオに向かってこう言い放つ。
「こうなってしまった責任は取る!!だから今度の『最後の休み』に私に付き合え・・・これは上官命令だからな」
最後の方は殆ど怒鳴り声に近い形であったが思わぬ命令にビストレオは呆然とする。
「それってデ・・・いやいやそこまで気にしなくていいし大体俺は本来はカーネルの大将の部隊で」
「ンンッッッ!!」
狼狽するビストレオにカーネルがわざとらしく咳払いをする。
「なかなか言い出しにくかったのだが。今回の件でビストレオ、お前とその配下の分隊は懲罰部隊送りになった」
「はぁ~!?」
思わぬ形で己に下された処分にビストレオは素っ頓狂な声を上げる。
「俺が何をしたって言うんスか!?」
「軍の物資を横領していたんだろ?これは立派な軍規違反だ。本来であれば問答無用で処分されてもおかしくなかったのだぞ。だがそれをアトーラス閣下の温情により懲罰部隊送りで済ませたのだ。言っておくが拒否権は無いぞ」
抗議の声を上げるビストレオだが、カーネルに真顔で言われてその場に項垂れる他無い。
やはりと言うかあの作戦の後、無駄に物資を持っていた事がばれてしまったビストレオ率いる分隊は上層部から詰問を受けてしまい、それに対し副官のグレンはあっさりとその事実を認めてしまっていた。
愕然とするビストレオにアテネが緊張した顔で頭を下げて来る。
「そしてその懲罰部隊を指揮する事になったのが私だ。今後とも宜しく頼む」
「え・・・アンタが指揮するの?て言う事はアンタの部下になるってこと?」
アテネの言葉にビストレオが呆然となる。
懲罰部隊と言うのは文字通り軍規違反などを犯した軍内のはみだし者が集まる場所だ。
問題児ばかりの環境の上、性根を叩き直す意味合いもあり通常以上に厳しい軍務が課せられる地獄の様な待遇が待ち構える最悪の所と言うのがビストレオの認識である。
「・・・と言う訳でビストレオの異動を祝して今夜送別会するから。まあ達者でな」
半笑いで己に言い放つキバトドス。
「嫌だ~!!懲罰部隊なんて絶対に嫌だ~!!超特急で逃げてやる~!!」
ライオンモチーフなのに脱兎の如くその場から走り出そうとするビストレオだが、その動きが不意に止まり逆にアテネの下に磁力で引き寄せられる。
「せ・・・責任は取る。し、死なない程度に・・・一緒に頑張ろう」
己の首根っこを掴むや引き攣った笑みを浮かべるアテネ。
何やら色んな意味で危険を感じるのは気のせいだろうか。
「うわあぁぁぁ!!助けてくれぇぇぇ!!」
陸軍オフィスで哀れなるビストレオの絶叫が響き渡るのであった。
「あ~骨折り損だったぜ」
副官のアーバレスト=ダックスビルを伴い海軍提督の執務室を訪れたオアンネルは簡潔に南米での一件を報告する。
「空軍との協力の下、ファルザーの行方は追ってはいるが未だ発見には至らずか」
溜息を吐くのは獰猛な鮫の姿とは対照的にどこか穏やかな印象を与える人物。
現海軍提督のブレイバル=ジョーズィだ。
前提督のソルトコールがレプリフォースを離反しデッドフォースを結成するに至り、主だった人材を喪失した海軍内においてオアンネル同様にノンキャリアで元技術士官の彼が現在の海軍提督を務めている。
目の前のオアンネル同様に本来であればその地位に就く事はまず無かった人物であり、その事が海軍内での権力構造に歪さを生み出している。
「そういやザリガンダの野郎、元気にしてやがったぞ」
オアンネルの言葉にジョーズィの顔が若干渋くなる。
彼にとってザリガンダはかつて片腕を奪った憎い存在だ。
「彼から悪巧みでも持ち掛けられたかい?」
「おう一緒にてめえを殺さねえかって相談されたぜ。まあ断ったがな」
皮肉気に返すジョーズィにオアンネルも悪意を隠そうとせず口を開く。
「お前相手にクーデターなんぞ起こしたら俺がジェネラルや他の連中に処されちまう。だったらザリガンダなりソルトの親父を討ち取った功績でてめえを追い出した方が穏便に話は進むってもんだ」
下卑た笑い声を響かせるオアンネル。
一応は上司であるジョーズィに対し本来であれば何らかの処分すら下される物言いだが、このオアンネルが海軍内の武断派を率いているのも事実。
もしも己を拘束なりすれば武断派の者達が逆にジョーズィを糾弾し、それこそデッドフォース結成の二の舞である。
彼が自身に手を出せない事を知っているが故にオアンネルの態度は横柄な物となる。
「オアンネル。別に私は今の地位に固執する気は無いよ。時期が来れば後任の者に海軍提督の地位は譲るつもりだ」
深々と溜息を吐くジョーズィ。
『だったらすぐに譲れ』とばかりの表情を浮かべるオアンネルだが、そんな彼にジョーズィは静かに首を振る。
「私も君も所詮は次世代の『繋ぎ』に過ぎない事を自覚すべきだ」
「あの高慢ちきな小娘共に譲れってか?やなこった」
己の忠告を耳に入れようとしないオアンネルに内心で溜息が出る。
彼が言う『小娘』とは最近士官学校を次席で卒業した才媛アクアヴィル=シーラの事だ。
丁度空軍におけるペガシオンの同期に当たり、彼も含めこの世代は豊作であったと言えよう。
オアンネルの言う通り今はキャリア組特有の高慢な面が多々見られるが、一皮剥ければ自身らを凌駕する逸材となると目星をつけている。
「まあてめえは好きにすればいい。俺も好きにするからよ」
大きく鼻を鳴らしながら執務室を後にするオアンネル。
彼の副官であるダックスビルが去り際に苦笑を浮かべたので、ジョーズィも似た様な顔で送り出していた。
「そうか彼女と会ったのか」
同時刻、空軍長官執務室にて傷が癒えたフクロウルはカムシーム=フレーヴェルスに事の経緯を報告していた。
報告を終えたきり黙り込むフクロウルの姿にフレーヴェルスは静かに微笑む。
そんな彼の視線に気づいたのかフクロウルはやや憮然とした顔となり、執務室の窓から見える風景に視線を移す。
「『大空の参謀長』ともあろう者が未だに昔の事を引き摺り続けるなど・・・若い者達に知られればとんだ笑い話ですな」
「少なくとも私はお前を笑ったりはせんよ。彼女の一件は私個人にも責任があるからな・・・」
フレーヴェルスの言葉にフクロウルが振り返る。
「聞くまでも無いだろうが諦めてはいないのだな?」
「当たり前だ。彼女には例え首を差し出してでも詫びなければならない。あの時、私はそれだけの事を仕出かした・・・結果として無実であった彼女を陥れてしまったのだから」
二人の脳裏を過るのは忌まわしきとしか形容出来ぬ苦いかつての記憶。
「とは言えお前ほどの者が考えも無しに前に出るのはどうかと思うが」
軽率であった己の行動を咎められフクロウルが唸りながら視線を落とす。
そんな滅多に無い友の姿にフレーヴェルスは椅子より立ち上がるとフクロウルの肩を力強く叩く。
「まあ次に機会があれば私も連れていけ。私とて無関係ではないのだ。何なら一緒に彼女の前で頭を下げようではないか」
「ありがとう。礼を言うぞ友よ」
「お前の為なら土下座なんて安いものだ。どうせタダだしな~ハッハッハッハッハ!!」
どこか能天気に言い放つフレーヴェルスにフクロウルは恥ずかし気に顔を背けるのであった。
ひとしきり笑った後、話題を変える様にフレーヴェルスが手をわざとらしく叩く。
執務室に備えられた端末を操作すると彼は一体のレプリロイドの設計図をフクロウルに見せる。
「おお・・・これは」
「お前達が南米に行っている間に兵器開発部のランドグリーズ博士より届いてな。ペガシオンの妹に当たる高性能レプリロイドだ。問題が無ければ来月から開発が始まり今年度中にも試験運用が開始されるそうだ。これとは別にもう一体、ペガシオンの余剰パーツで開発設計された同型機は我々も含めた三軍で取り合っている状況だ」
「同型機はさておき妹か・・・最近の流行りですかな」
フクロウルの言葉に『触発されたのかもな』とフレーヴェルスは付け加える。
既に一部の高官のみが知っている話としてカーネルの妹に当たるレプリロイドがロールアウトしているとの事だ。
最終的な確認もありまだ兵器開発部の研究所から外には出てないそうだが、近々皆の前にお披露目されるだろう。
「カーネルもそうだが例の失敗した計画からよく一つのレプリロイドの形に出来たものだ」
「こちらはこちらで思い出したくない話ですな」
彼らの脳裏の中で過るレプリフォース未曾有の危機。
「その娘、見た目とは裏腹に暴走するとかは考えたくありませんな」
「全くだ・・・また総本部が半壊する所など見たくないぞ」
嘆息するフクロウルにフレーヴェルスが同意とばかりに頷く。
「その妹の配属先は我が空軍と言う事で確保しているのだが・・・」
フレーヴェルスが端末を操作し別の画像に差し替える。
それを見るや途端にフクロウルの顔が険しくなるのだから、フレーヴェルスは笑いを堪えるしかない。
「大戦艦ジェネレイド。件の妹を確保する代わりにこれを採用せよとジェネラルからの命令だ」
「・・・姑息な手を。まあ良いでしょう。但し採用しても活躍の場があるかは分かりませんがなと伝えておいてください」
「ハハハ・・・流石に私の所で握り潰しておこう」
現在の最高司令官たるジェネラルだが元を正せば陸軍出身と言う事もあり、生粋の空軍出身者であるフクロウルとはとにかく馬が合わない。
フクロウルからすれば空軍の部隊運用にあれやこれやと口を挟んで来るのが気に入らないと言った所か。
彼の許可を得たと言う事で早速フレーヴェルスは端末の画面に己のサインを入れるとそれをジェネラル宛てに転送し直す。
「我が飛行艦隊の長所は短時間で現場に駆け付け、即座に部隊を展開し敵を粉砕する機動力にあります。無駄に装甲と火力を増すあまり速度に劣る巨大戦艦など何の役に立ちましょうや」
「見た目がカッコいいからではないか?ほら海軍の船はでかくてごついしな」
「ましてその戦艦の名前に己の名前を付けるなど。我こそは空軍を顎で使うと言う意図もあるのでは・・・ああ気に入らない」
「じゃあこの際、これの弐番艦辺りに私やお前の名前でも付けようじゃないか」
「ご冗談を。ニュースの記事に『フクロウル轟沈』などと書かれては恥ずかしくて表を歩けなくなります」
自身がモットーとする運用方針とは異なる兵器の導入を進めようとするジェネラルにひとしきり悪態を衝くフクロウル。
茶化す様に言うフレーヴェルスを尻目に愚痴が止まらないフクロウルに何時もの調子が戻って来たと彼は内心で安堵していた。
一方、そんな愚痴を言われている事など露も知らないジェネラルの方は。
「せめて一つ断りは入れて欲しかったものだな」
最高司令官の執務室でジェネラルは腕を組み合わせ見下ろす様に机に備え付けられた端末の画面に目を向けていた。
画面の先に居るのは色が銀色な事を除けば己によく似た姿のレプリロイド。
イレギュラーハンターの総監である。
<ごめんなさいね~兄さん。ほら兄さんも見たでしょ。フランスの首相の護衛の一件。あれのせいで色々と炎上しちゃって、事態の鎮静化も兼ねてシグマちゃん達を南米に行かせただけなのよ。報道管制もしたからあそこにシグマちゃんが居た事自体無かった事になってるから安心してOKよ~>
身振り手振りを交えハイテンションに話す総監にジェネラルは目を細める。
総監が話すのは北米を訪れたフランスの首相への襲撃未遂事件の際に起こった一件だ。
さしものジェネラルもその一件は把握しており、彼の言葉を信じるならたまたま南米に居たシグマが独断で動いたのだろう。
恐らく総監の方も事後報告でシグマの動きを知ったのだろうと判断する。
「飼い犬に首輪ぐらい付けておけ。でなければ手首を噛まれるぞ」
<は~い善処致します~>
差す様に言う自身の言葉に気の無い返事をした総監が端末より消える。
暫し何も映らない端末を見据えていたジェネラルだが大きく息を吐くと巨大な椅子に大きくもたれる。
「歪獣ファルザーであったか。恐らくカメレリオンの事だ。あれ以外にも策は考えておるはず・・・しかも『廃棄物のセキュリティは万全にしておけ』とは。まさか『アレ』か・・・いやそれとも」
ブラックが己に残したと言う伝言を反芻する。
長年の宿敵である彼が次に何をするのかジェネラルは頭の中で己の考えられる限りの予測を立てる。
「シャドー、シャドーはおるか?」
ややあって目を開いたジェネラルの言葉を合図に彼の足元の影が盛り上がる。
「・・・ここに」
「兵器開発部に出入りしておる者達や企業のリストを集めてくれ。それと件の廃棄された者達が眠る場所と・・・念の為に『アレ』の様子も」
足元の人型の影、特務機関シャドーフォースの長官ストライダー=シャドーに命令を下す。
「・・・承知」
シャドーと呼ばれた己の懐刀は囁くような声で頷くやそのまま影の中に消える。
その彼と入れ替わる様に執務室に顔を出すのはもう一人の懐刀。
ブラスト=アジュタンテスと呼ばれる青年は恭しく頭を下げると何枚かの書類を己の前に差し出す。
「ペガシオンの後継機を引き換えにフクロウルも漸く折れたか。全く奴のせいで空軍の改革が十年も遅れたわ」
何枚かの書類に認可のサインをしつつ、ジェネラルは小さく舌打ちをする。
アジュタンテスの方は何時もの事なのか特に表情は変えずジェネラルから返された書類を己の懐へと入れる。
「それでペガシオンの同型機の配属先は如何致しましょうや。空軍は勿論の事、陸軍と海軍も希望しておりますが」
「既に後継機の配備を決めた空軍にはあれ以上はやれん。かと言って海軍に送ってあのオアンネルのシンパになってもらっても困る。ここは無難に陸軍に行かせ将来的にはカーネル辺りの右腕になってもらおう。まあ私だけの考えだけで決められる話ではないがな」
青年の言葉に己の考えを伝えつつ、ジェネラルは腕を組み唸る。
たかが一人のレプリロイドの配属先で何を悩むのかと思われるかもしれないが、将来が有望な高性能レプリロイドの配属先を一つ誤れば、各軍のバランスが大きく崩れる事となる。
自らを史上最強の軍隊を称するレプリフォースだが、何か一つ手違いを起こせば暴発する危険性がある不安定な組織だとジェネラル個人は認識している。
(そもそもが大元帥のカリスマ性だけで成り立っていた組織なのだ。後を引き継いだ私は私なりのやり方で組織を存続させる他無い)
内心で気弱になりそうな己を奮い立たせジェネラルは『この件は次の会議で決める』とアジュタンテスに告げ、彼は敬礼しその言葉を復唱するとその場を去る。
悩める最高司令官を一室の壁に掲げられた前任者の肖像画は静かに見下ろしていた。
<おらあぁぁぁぁ!!気合い入れていけぇぇ!!>
あくる日、シミュレーター内で響くアトーラスの怒号にカーネルすらも歯を軋ませビームセーバーを振るう。
南米でのデッドフォース討伐の任務が終わり、その疲れを癒す休暇が終わるやアトーラスは若造達を鍛え直すと銘打ちで総本部内にある戦闘シミュレーター室に各軍の士官達が一斉に集められる事となる。
流石にシミュレーターである事もあり実際に傷つく事は無いが、長時間に及ぶ訓練には流石のカーネルも根を上げそうになる。
あくまでもデータ上の存在とは言え軍属時代のガネシャルヴやザリガンダと言った格上の敵相手に何度も戦わされれば嫌にもなろう。
<次は空軍とハンター選抜チームだ。さっさと準備しろぉぉぉぉ!!>
「あか~ん。もう無理やで~!!」
何時に無く気合の入ったアトーラスの声が響く中、既に疲労困憊なカセウェードらがフラフラしながらシミュレート室へと入って行く。
対するイレギュラーハンターから研修に来た面々も同じ様な顔だ。
ただ第7空挺部隊の副隊長だと言うハリケーン=アルバルドだけは別だったが。
「これ懲罰部隊送りと殆ど変わらないですよね」
と部下の一人がぼやくのに思わず頷きそうになるカーネル。
懲罰部隊と聞いて思い出したがアテネとビストレオは中東の方で危険な任務に従事させられているらしい。
キバトドスが時折大声で彼の事を他の者達と話しているのを聞くのである程度は把握している。
そのキバトドスも顔を真っ赤にして廊下に出て来るやその場にへたり込んでしまう。
「マジで勘弁してくれ・・・もう無理だ~」
「今回の件で我々若手の弱さも露呈した。何時までもアトーラス閣下らに頼りきりではいかんのだ。次の戦場で相まみえた時に我らだけでの手でデッドフォース幹部を討ち取る。その気概が必要となるのだ」
弱音を吐くキバトドスを諭す様にカーネルが口を開く。
何時もであれば反論の言葉が出ただろうが、キバトドスは明後日の方向を見据えるのみで答えは無い。
「我らレプリフォースは・・・」
<カーネル、休んでる暇はねえぞ。次の相手はソルトコールに設定した。さっさと動け!!>
カーネルの言葉を遮る様にアトーラスの声がスピーカー越しに響く。
僅かな休憩に小さく唸りながらカーネルも一室に入ってしまうのであった。
「ガハハハハハ!!相手はあくまでもデータだ。遠慮はいらねえからぶつかれぇぇぇ!!」
シミュレートの管制室でアトーラスが豪快に笑いながら檄を入れる。
その隣の席でマイクを手に指示を出すのはフレーヴェルスだ。
彼ら二人に遠慮する様にやや後方に座るのはジョーズィ。
三軍の長である彼らはそれぞれが多忙の中、アトーラスの申し出を受けこの合同訓練を実施しそれを監督するに至っている。
<ちょっとわたくし達がなんでこんな所で戦いますの!?>
「私たち海軍の主戦場は海の上だけじゃない。敵地に逸早く辿り着き味方の上陸を援護する任務だってある」
海軍若手で有望株の女性士官がジョーズィに対し抗議の声を上げる。
それに対しやんわりと状況を説明し苦笑するジョーズィ。
彼女らが戦場として設定された場所はどこぞの都市部をモデルにした場所だ。
しかも敵に包囲されたと言う設定の為、四方八方から砲弾が飛び交う泥臭い戦場となる。
士官学校の試験でも恐らくふざけて設定でもしない限りこの様な戦いの場になる事はまず無い。
「味方の増援が駆け付けるまでそこを防衛するんだ。極めて難しいだろうけどシーラ・・・流石にこれは君には荷が重い設定だったかな?」
若干意地悪く言うジョーズィにシーラと呼ばれた女性の顔が見る間に真っ赤に染まる。
<わたくしに荷が重い?そんな事ありませんわ!!ええ・・・ええ!!言われずともエリートであるこのわたくしが守り切って見せますとも>
「ハハ・・・それでは頼むよ」
己の挑発に乗る形で奮起するシーラに苦笑を浮かべつつ、ジョーズィはフレーヴェルスに視線を向ける。
「ペガシオン、敵の陣地を突破し包囲されているシーラを救え。早くせぬと彼女に恨まれるぞ」
<了解っっ!!>
シーラと同じ戦場シミュレーター内に放り込まれたペガシオンに指示を出すフレーヴェルスの声色には幾分かの笑いが含まれていた。
「なあフレ公。後でデータの振りしてあいつらの相手してやろうぜ」
「それは面白い。何ならジョーズィ、お前も一緒に来ると良い。三軍の長が揃い踏みなど滅多に無い光景だろう。奴らの驚く顔が目に見える」
「いや流石にお二人と違い私では少々役不足では・・・」
「ガハハハ。謙遜するんじゃねえ~お前も海軍提督だろ?幾ら元技術将校と言えど若造共に後れを取る事はねえ筈だ」
自身が今回の訓練で実際に戦うとは想定していなかったのか渋るジョーズィだが、アトーラスら二人は有無を言わさぬ雰囲気を醸し出す。
老いても尚、型破りな二人に溜息をしつつジョーズィは了承をするしかない。
(今はヒヨッコの集まりだが確実にこいつらは強くなっている。これからが本当に楽しみだ・・・)
内心で彼らの成長を噛みしめながらアトーラスは今や敵となった者達の顔を思い出す。
(時代は変わる・・・儂らが鍛え上げた次世代のこやつらで貴様らを倒す。それが敵となった貴様らへの儂なりの手向けだ)
彼らへの誓いを胸に秘めながらアトーラスは巨大な拳を握り締める。
じっと食い入る様にモニターを見据えながら彼は若者達に何度目かの檄を飛ばすのであった。
以下はエピローグ後書きとなります。
〇ビストレオの傷について
ビストレオの片目が何で眼帯状のパーツなのかと言う事に対する自分なりの考えで作中の通りに。
電子頭脳に少なからずの損傷を負った事で左目で色を認識する事が出来なくなってしまっているのだが、ビストレオ自身はもう片方の目で色が認識できる事もあってそこまで深刻には思っていないようだ。
逆にアテネからすると彼に対する負い目になってしまうのだが、この男がそれに気づく事は無い。
軍の物資の横領がばれた事で実質失脚したアテネ共々懲罰部隊送りになったビストレオだが、美女と野獣なコンビで良いのではと思っている。
リブート前より内心でこの組み合わせを考えていたのだが、なかなか形にすることが出来ず今回漸くと言う訳である。
アテネの能力が磁力に変わった事で文字通りの地雷・・・もとい逃げても引き寄せられる磁力系彼女となったビストレオの明日はどちらに向かうのだろうか。
〇海軍について
オアンネルとジョーズィについてはリブート前から変わらずである。
オアンネルが悪態を衝く様にジョーズィの方も彼に関しては皮肉を隠そうとしない。
元はノンキャリアと言う事もあり二人とも所詮は繋ぎである事は言うまでも無い事なのだが、一応二人とも形だけとは言え士官学校に通い直しているのであしからずである。
現状海軍の内部構造が歪なのもあって、この二人は書いていると楽しい次第である。
〇空軍について
フクロウルとフレーヴェルスに関して普段はフクロウルが敬語だが、素になると砕けた口調になる形に。
前半は私的な話で後半は公的な話と言う感じである。
この辺の公私は二人とも場面に応じて使い分けている。
今回の話では語られないがカーグラの顔の傷も含め、若い頃のフクロウルのしくじりが原因である。
フレーヴェルス自身、若干能天気な所もありこの辺は彼の欠点とも言えるが一緒に土下座もしてくれるそうだ。
ペガシオンの後継機とはフレイアの事である。
余談だが彼女に関してもアテネ同様若干属性的に変わりそうな所がある。
彼女の配属を条件に以前からフクロウルが導入に反対していた巨大戦艦ジェネレイドを採用せざる得なくなる。
フクロウルの戦術が高速戦をモットーにする所もあって、速度に劣る大型艦は彼の戦術にそぐわないものである為に何度も要求を突っぱねていた経緯がある。
そもそもジェネラルが自分の名前を冠した戦艦を建造しようとする辺りがフクロウルからすると気に入らないようである。
このジェネレイドの元ネタはX4に出たフクロウルステージの中ボスジェネレイドコアから。戦艦の中のトラップとすると描写が難しいので大艦巨砲主義な巨大戦艦と言う形となった。
残念ながらこのジェネレイド、フレーヴェルス時代は勿論の事、ペガシオンが長官になった際にも速度の遅さと燃費の悪さから観艦式などの式典以外ではあまり使用されず結局本格的に使われるのはレプリフォース大戦時であり、フクロウルがこれを手土産にする形でクーデター派に合流するのだから何とも皮肉である。
〇ジェネラルについて
釘を刺すジェネラルに対しのらりくらりとする総監。
表立って事を荒立立てたくはないのだが二人とも水面下では結構バチバチである。
ヴァヴァがやらかした一件は、簡潔に言うとテロを起こした暴漢から首相を守った際に首相のヅラを公衆の面前で取ってしまった事が原因。
その場に駆け付けたシグマにヅラを手に「お前の?」と言ってしまった事から、ネット上で受けてしまいハゲだった首相含め炎上する羽目に。それとシグマはただの被害者である。
南米に演習で居たのはその辺の炎上が収まるのを待ちつつ、ヴァヴァの根性を叩き直す意味合いがあった様だ。
因みにジェネラルもその動画を見た時は噴き出したらしい。
懐刀の一人であるシャドーに関してはマーシャルからストライダーに。同じカプコン製ゲームのキャラからと言う訳で。
特務機関シャドーフォースはレプリフォース版第0特殊部隊なのだが、公然の秘密として存在している第0特殊部隊に対しシャドーフォースは存在自体が同じ軍内であっても殆ど認知されていないと言う扱い。
半ば都市伝説と化している為、存在的にカウンターハンターなどに近い。
忍んではいるがあくまでもハンターである第0特殊部隊に比べシャドーフォースはジェネラルと言うか最高司令官の私兵であり、あまり動けないジェネラルの耳となり目となる存在である。
シャドーが裏の懐刀ならと言う事で表の懐刀としてブラスト=アジュタンテスを設定した。
名前の通りジェネラル直属の副官で参謀であり、ハンター総監に対するシグナス的な位置づけ。
但しシグナスと違い戦闘能力は高く、彼自身が親衛部隊を指揮している。
スレイプニール自身、その汎用性の高さからどの軍も欲しがっていたのだが政治的な判断もあり陸軍所属となった。
ジェネラルの読み通りの成長を遂げる彼だが、その後の暴走までは流石に予見出来なかった。
因みに海軍に所属していればオアンネル派の重鎮もしくは海軍内カーネル派筆頭になっていただろう。
どちらにせよ彼の存在自体が爆弾であった。
〇最後の合同演習について
デッドフォース幹部相手にかなりの損害を負った事に危機感を覚えたアトーラスが他の軍に呼び掛けて行われた演習。
演習と言ってもシミュレート内での事なので肉体的な損傷こそ無いものの、ほぼ休み無しの連戦と言う実戦さながらの過酷さを伴うものであった。
結果的にカーネルを含めぬるま湯につかりがちなエリート達が意識を改める事となり、演習自体は成功した模様。
今回出番が無かったのでここで出したがこの頃のシーラはまだ傲慢さが抜けていない。
ジョーズィに上手いこと乗せられている辺り、まだまだこれからである。
因みに三軍の長が勢揃いした最後の締めとなるシミュレートだが、流石に相対したカーネルらにすぐさに本物だとばれたらしい。
当初こそ圧倒的な力で蹂躙した三人だったが、今回の演習でしごいて来た本人達にやり返せるという事もあって普段以上の力を発揮したカーネルらに予想以上の苦戦を強いられる事となる。
最終的にはアトーラスらが勝ったのだが、その結果も含め本人らは上機嫌だったそうだ。
今回の後書きは以上となります。
最後の今回の番外編ですが、後々にリブート後のヴァヴァ編に入れようと思っています。
たまには別のをと思い本来の連載とは別口で書いてしまったのですが、自分でも予想以上の長さとなってしまいました。
今回のを反省としつつ、本編の方を早く進めていきたいと思っております。
長々と続き申し訳ありませんでした。