RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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なんか書いたら一話分できたんで上げます(汗)




ハンター前史①

天衝くと言うと大袈裟だが見上げるばかりの銀色の巨人は大きく息を吐く。

時間にして昼に入った頃合い。

連邦政府本部で働く職員らが昼休みに入ろうかと言う時間帯に建物の一画で物憂げな巨人が居れば気にもなろう。

そんな彼を道行く者達は物珍しそうに見つめるが彼の方はそれにいちいち反応する余裕は無い。

チラリと視線を移せば承認のサインが書かれた電子書類が端末に映し出されていた。

来年度のレプリフォースの予算配分に関係する書類のサインをもらってくる。

確かに重要な仕事ではあるが、はっきり言えばそこらの士官にでも任せれば良いような仕事だ。

(まるで子供の使いだな・・・)

今の己の役目を内心で自嘲しつつ、ストラテジスト=フェザリオンは静かに目を閉じるとゆっくりと椅子より立ち上がる。

当然だが用意された椅子ではない。

と言うか当たり前だが人間の職員が多くいるこの場に於いて、規格外と言える大きさのボディを持つ彼が座れる椅子などある筈が無い。

持ち運びがしやすいように折り畳める自分専用の椅子だ。

レプリフォース総本部より早朝に出て、午前中にはもう仕事が終わってしまった事で今日は何もする事が無い。

これでも一応は栄えあるレプリフォースの幕僚の一人なのだが、今の彼は軍内ですっかり浮いてしまっている存在だ。

言うなれば干されていると言えよう。

オクターヴ大元帥と言う組織の創設者にして巨大なカリスマが居なくなったレプリフォースは今、未曾有の危機を迎えている。

現最高司令官ジェネラル=グランドリオン率いる改革派と総合幕僚長であるジェネラル=カメレリオン率いる旧来派の争いは、一時の鎮静化を以て互いの衝突は避けられない状況下となっているからだ。

そんな中で組織の状況を憂いたフェザリオンは双方の衝突を何とか回避すべく何人かの同志らと共に動いたのだが、双方の仲介に失敗。

今思うに自身の同型機である二人が出来るのであれば自分も似た様な派閥を作れると言う驕りもあったのだろう。

どっちにもつかないなどと言う中途半端な考えでは仲間も集まらないし、一般兵士らの支持もイマイチだったと思う。

いずれにせよ現在は自分は空軍の参謀長と言う本来の任を解かれ、こうして今の様な小間使いをやらされている。

(衝突は避けられない。まあそうなった所で連邦政府の支持を取り付けたグランドリオンの勝ちは間違いないだろう)

実際に連邦政府から距離を置く旧来派のやり方はオクターヴが居てこそのやり方であり、彼が居なくなった以上は膨大な資金を持つ連邦政府の協力を取り付けるのは組織存続に不可欠だと思う。

どれだけオクターヴ大元帥のやり方をと叫んでも、そのオクターヴが居ないのだ。

策謀に優れるカメレリオンでも彼の代わりは出来まい。

(尤もそれは私も一緒なのだが)

内心でまたも自嘲気味に笑いながらフェザリオンは目当てのカフェを見つけるやそこに腰を落ち着ける。

本部内でも中心から外れた場所にある事もあり、ここの人の出入りはまばらだ。

何より自分の様な巨大なレプリロイドが座ってもまだ余裕のある広さがあるので有難い。

連邦政府本部に出入りする中で見つけた場所なのだが、何度も出入りしている事もあり、今やすっかり常連扱いだ。

己を見るなり店で働くレプリロイドが会釈してくる。

「何時もので」

そう一言、告げるやフェザリオンは自分の椅子を足元に組み立てる。

己の前に置かれた小さなテーブルにこれまた小さな紅茶が注がれるのだが、サイズの差で目くじらを立てるつもりは無い。

器用に指先でカップを掴むや注がれた液体を喉の奥に流し込む。

あっと言う間に無くなってしまう訳だが、文字通り一息付けると言う点で先程まで居た場所に留まるよりかはマシだろう。

このまま帰った所で両派の争う姿を見るだけなのは分かっており、フェザリオンの腰は重い。

どこぞの石像宜しくこの店のオブジェと化していた時であった。

「失礼だが・・・相席宜しいかな?」

不意に声を掛けられ慌てて視線を下ろすフェザリオン。

見れば己を見上げる一人の女性の姿があった。

輝く様な黄金の髪を肩まで伸ばした彼女は『ハァ』と気の無い返事をした自身に僅かに微笑むや向かい合う様に座る。

目の前の女性が美しかったのもそうだが、周囲にはまだ幾つも空いている席がある中でわざわざ己の前に座る彼女の行動に困惑を隠せなかった。

(誰だ・・・彼女は人間。いや生体反応は無い・・・レプリロイドなのか?)

一見すると人間にしか見えない漆黒のスーツを身に纏った女性。

自身も含めた人型レプリロイドは数多く居れど、ここまで人間に酷似したレプリロイドも珍しい。

話によれば最近は技術革新もあって、レプリロイドの造形をより人間に近づけようとする傾向にあるようなのだが。

にしても女性の行動は不可解だと勘が告げる。

いやそもそも以前からどこかで見られていたような気さえしてきた。

既に紅茶を飲み干し、後は席を立てばよいのだが何故か体は動かない。

目の前の小さな女性を注視するあまりに動けないのだ。

そんな己に気づいたのだろう。

口にしていたカップをテーブルに落とし女性が微笑む。

「ストラテジスト=フェザリオン・・・で間違いないな?」

改めて確認する様にあちらから声を掛けてくる。

僅かに歯を軋ませフェザリオンは小さく頷く。

「もしもレプリフォースと何らかの取引をするのであればグランドリオン最高司令官を通して頂きたい。私は彼の小間使いに過ぎないのですよ。まあ伝言程度なら承りますが」

女性が連邦政府からの使いと判断しフェザリオンは苦笑を浮かべながら手を振るのだが。

「いや用があるのはグランドリオンではない。新しい最高司令官に小間使いに使われて燻ぶっているお前だ」

(この女・・・一体何を考えている?)

そう言うや己を真っ直ぐに見据え不敵に笑う女性にフェザリオンは反射的に身を構える。

連邦政府はグランドリオンに不満を抱く己を囲い込もうとしているのか。

オクターヴに比べ幾分連邦政府に対し恭順の意を示したジェネラルだが、レプリフォースは指揮系統含め半ば独立した存在だ。

自らを史上最強と謳う機械だけの軍隊が存在する事に連邦政府が脅威を覚えるのも無理は無い。

がフェザリオンもレプリフォースの幹部の一人である。

「残念ですが私は貴方がたに従うつもりは一切無い。脅しも買収も無駄ですよ」

ギロリと頭上から己を睨み据えるフェザリオンに少女が笑う。

「脅しも買収も無理か・・・そうでなくてはな」

「であるからして。これ以上の話は・・・」

『無駄だ』と言い放ち立ち上がろうとしたフェザリオンだったが、それを遮る様にわざとらしい咳払いの声が場に響く。

目の前の女性に意識を集中させていたせいか何時の間にか近くに居た壮年の男性が、女性の横の席に笑みを浮かべながら腰を落とす。

その男性の顔には見覚えがあった。

と言うか今現在においてレプリロイドの父と言われる男の顔を知らない者は居ないであろう。

「Dr.ケイン・・・貴方の様な方まで私を懐柔しようと言うのですか」

彼の友人であったエフレーモフ家の者ならさておき、政治的な活動には無縁と思われていた人物の登場にフェザリオンは心底失望した様に言い放つのだが。

「話は最後まで聞いてもらいたい。その上でお主の判断に委ねるとしよう」

僅かに残った頭頂部の髪を掻きながらケイン博士が人の好さそうな屈託無い笑みを向けて来る。

「組織内でお主が干されている事も知っておるしレプリフォースが今、改革派と旧来派で分裂の危機に陥っている事も知っておる」

「まあ我々からすればそんな事はどうでも良い」

ケイン博士に続き女性は冷たく言い放つ。

「それはさておきだ・・・何時ぞやの閣議決定でレプリロイドの故障者をイレギュラーと呼称する事になったのは知っておるな?」

「人間がそうである様にそれを模したレプリロイドに異常者が居るのは当然でしょう。私からすれば自身らに都合の悪いレプリロイドにレッテルを貼ろうとする連邦政府の意図も垣間見えましたが」

前世紀からそうであったらしいが同じ工場で同規格、同設計のレプリロイドを製造しても人間的な思考を持った弊害でどうしても個性と言う物が発生する。

良い形での個性なればそれはそれで構わないのだが、悪い形での個性の発現・・・他者への殺傷、窃盗を始めとする犯罪に手を染める者も割合で言えば人間よりも低いが出てしまうのだ。

それらレプリロイドの異常者を世間では何時からイレギュラーと呼称し恐れる様になった。

当然それはレプリフォース内のレプリロイドも例外ではなく、何人かの問題行動を起こす連中の顔がフェザリオンの脳裏に思い浮かぶ。

「いずれにせよだ。現在民間レベルでそのイレギュラーに対応出来る組織が存在していない事をそこのケインと私は憂慮していてな」

「レプリロイドへの信頼が失われれば、再び前世紀の悲劇を繰り返してしまう。お前達レプリフォースや政府軍でもイレギュラーの対策には乗り出しているがなまじ軍隊と言う物は命令が無ければ動く事が出来ん。日々増加するレプリロイドの犯罪にレプリロイドをこの世に広めた者として大きな責任を感じているところだ」

せめて相手が軍団規模で活動をしてくれれば良いのだが、突然凶行に走り所謂通り魔的な犯行を行うイレギュラーに対しレプリフォースなどの軍隊組織はどうしても後手に回ってしまう。

市民からの通報を受けて警察組織も出動をしてはいるのだが、如何せん暴走したレプリロイド相手には荷が重く多大な犠牲を生じさせているのが現状だ。

「確かに・・・かと言って少々の武装をした警察では暴走したレプリロイドの相手は荷が重い。まあイレギュラーを取り締まる専門的な警察組織が居れば話は別ですが」

二人の話に合わせる形で己の考えを口にしたフェザリオンは反射的に口に手を当てるが、思わず口に出してしまった事を無かった事には出来ない。

「まさかとは思いますが」

「そのまさかだ。私とケインは続発するイレギュラーに対処する新しい警察組織を創ろうとしている。既に連邦政府の認可は受けた。後はその組織を指揮する者や現場で動く者達を選定するだけなのだが」

相手が言わんとしている事を理解しフェザリオンは大きく首を振る。

「膂力や人望ではグランドリオンに劣り、策謀やそれを実行する覚悟ではカメレリオンに決して敵わないこの私にその認可だけ受けただけの組織に参加せよと?如何に冷や飯を食わされようとも、先の不透明な組織に参加するつもりは一切ありませんぞ。何よりケイン博士はともかく貴女の様な正体も分からない胡散臭い存在の言葉など信用に値しませんな」

巨大な指を突き付けるフェザリオンに女性は不敵に笑うと同時に頷く。

「そう言えば名乗り忘れていたな。私の名前はフィーネ。端的に言えばロボットだ」

「ロボット・・・?」

自らをそう称するフィーネなる女性に怪訝な顔を向けるフェザリオン。

本格的にレプリロイドの存在が世に知られる様になり自らをかつてのロボットと呼ぶ者が果たしてどれだけ居るであろうか。

フィーネの態度からその口ぶりが決して嘘ではない事を悟ったフェザリオンは額に嫌な汗が浮かぶのを感じる。

(本当にロボットであればこの女性は大元帥らと同じく前世紀の生き残りなのか?)

観察する様に視線を向けるフェザリオンだが笑みを浮かべたままのフィーネからは感情は読み取れない。

「私の事を詮索するのは後だフェザリオンよ。単刀直入に言うが我々はお前を新たな警察組織の代表に据えたい。グランドリオンへの根回しは当然行うからその点は安心して欲しい。どうだ?このまま冷や飯を食い続けるよりも多少は良い思いも出来るやも知れんぞ」

笑みを浮かべ己の前に甘い言葉と共に飛びつきそうな餌がぶら下がるが、フェザリオンはすぐに飛びつこうとはしない。

この手の話に安易に乗って馬鹿を見る気は毛頭無い。

先も言ったが例え冷や飯を食わされようとも己が安泰であればそちらを選択するのがフェザリオンの生き方だ。

「その様な甘い言葉で私を調略しようと言うのであれば片腹痛い。仮にレプリフォース内で孤立する私をトップに据えた所でそんな男の下で誰が働きたいと思うのか?・・・はっきり言って思う筈が無い」

「だろうな。私達もお前個人の能力にそこまで期待はしていない」

「であれば話は終わりですな。適当な誰かをトップに据えればよろしいかと」

自嘲気味に顔を歪ませたフェザリオンが席を立ち上がろうとした時であった。

ケイン博士が手にしていた端末をフェザリオンの方へと向ける。

そこに映し出されていたのはレプリロイドの設計図を思われる画像だ。

「まだ設計段階だが私は自らの最高傑作としてこいつを開発しようと思っている」

本来であれば決して表に出す訳にはいかない物なのだろう。

レプリロイド工学の父として謳われるケイン博士だが、彼自身が製作したレプリロイドは意外にも数少ない。

件の『アスール』が引き起こした一件で一時は表舞台から退いていた事もあるが、現状において最もレプリロイドの開発技術を持つと言われる彼が自らの最高傑作と銘打って一体のレプリロイドを製作しようとしている。

それが何を意味するのかは門外漢のフェザリオンでも分かる。

「仮にこのレプリロイドを警察組織のトップに据えて組織運営をするのも一つの手ではあろう。だがそれではレプリロイドを取り締まる組織がケインやそいつの思い通り動く私兵組織に成り下がる危険性すらある。その最高傑作とて感情がある・・・己に与えられた権限と力に増長する可能性はゼロではあるまい」

「つまり私の様な者を敢えて上に立たせる事で組織内で相互監視を行えと?」

「そう言う事になる。私とて人間だからのう・・・私情に走らないとは言い切れん」

冷や汗を掻くフェザリオンにケイン博士が片目を閉じる。

「とりあえず今回は話だけだ。どうせまたここに足を運ぶのだろう?今後私やその協力者が君に接触を図ると思うから返事はその時にでも」

屈託無い笑顔を見せケイン博士とフィーネは席から立ち上がりその場から立ち去る。

暫し黙り込んでいたフェザリオンが息を整え椅子から腰を上げるのだが。

「・・・!?」

我が目を疑うとはこの事なのだろうか。

先程まで周囲にあった筈のカフェがそこで談笑していた他の客達が忽然と無くなっていたのである。

今思えばこの様な場所で話す様な内容ではなかったが。

(とんでもない者達に目を付けられたのかも知れん)

胸の動悸を覚えつつフェザリオンは足早にその場を後にするのであった。

 

 

「いやあ申し訳ない。本日はケイン博士は別件でしてな」

あくる日、同じ様に小間使いに連邦政府本部に向かわされたフェザリオンを待っていたのは初老の男性の姿をしたレプリロイド。

白衣を纏ったその姿から明らかに科学者型と分かる。

自らをドップラーと名乗ったケイン博士の助手は端末をこちらに向け画面に幾つかの資料を映し出す。

「極東の南鳳星グループにミレニアム社。これらの企業まで組織設立に協力をしてくれると?」

「水面下ではありますが中東のアブラダラー財団や欧州のクロイツェル工業にも声を掛けています。いやはやどこも高性能なレプリロイドを製作してもそれの使い道が無く持て余していたようで。そちらのレプリフォースは勿論、政府軍の方も軍規格の特注パーツを使う必要あるやらで制約が多いですからな」

思わず端末を取り上げそうになるフェザリオンに主を思わせる笑みを浮かべドップラーが言う。

現在はレプリフォースでも民間企業が製作したレプリロイドの受け入れが始まってはいるが、レプリフォースの規格が合わないレプリロイドは例え性能が高くとも採用されない。

ケイン博士らが作ろうとしている警察組織はそれらの制限を取り払う事で、今まで日の目を見る事が無かったレプリロイドの受け皿になろうと言うのか。

「実はですね私も考えていましてね。これですよ~」

ドップラーが端末の画像を切り替えレプリロイドの設計図を見せて来る。

「アミダーバAA・・・ケイン博士に見せたら設計し直せって言われましたけどね」

『ハハハハ』と能天気に笑うドップラーは尚も聞いてもいない話をし続けるのだが、フェザリオンは気の無い返事を返すだけだった。

若干不毛な内容の時もあったが次にミレニアム社の社長であるモナークと会談した時には冷や汗を掻きまくりであったし、フェザリオンは政財界の重鎮とも会合を重ねていく。

フェザリオン個人はケイン博士らの警察組織設立にはっきりと参加するとは一度も言っていないのだが、己には不相応な話が次々と舞いこんだ事で思考が麻痺していた所もあったのだろう。

尤もただでさえ目立つフェザリオンがその様な事をしていれば周囲に自ずと知れ渡る訳で。

 

「・・・コホン」

 

空軍本部の廊下でわざとらしく背後で咳払いする声が響き渡るを聞くやフェザリオンは腰に下げたビームセーバーを握ろうとするも、それよりも前に己の後頭部に刃を突き付けられてしまう。

「今日も随分と遅かったな~。連邦政府本部で人生相談でもしていたか?」

どこか己をからかう様な口調で話すのは大柄な鷲の姿をしたレプリロイド。

「フ・・・フレーヴェルス長官」

ある意味で一番厄介な相手に声を掛けられフェザリオンの血の気が引いていく。

カムシーム=フレーヴェルス、レプリエアフォースを統括する空軍長官でありグランドリオンら改革派に属する人物だ。

一応今も空軍参謀の身ではあるフェザリオンにとって上司に当たる。

「何時ぞやは中立派を立ち上げようとして失敗したかと思えば。今度は連邦政府の連中と何を・・・企んでる?」

声こそ笑いを含んでいるがこの男が笑顔で他人を斬り捨てる事が出来るのは誰もが知る事実。

返答を間違えれば問答無用で殺される。

僅かに息を整えながらフェザリオンは両手を上げ振り返る。

「正直に話しましょう。ですから話は最後まで聞いて頂きたい」

「良いだろう。お前との仲だ。流石に俺もお前がレプリフォースに害を成そうと思ってはいないのだけは分かるからな」

そう言って長官の私室がある方向を指差されフェザリオンは彼の先導に従う他無い。

彼の部屋に入るなりフェザリオンはフレーヴェルスに連邦政府本部にてケイン博士らに持ちかけられている話を洗いざらい白状する。

それと勝手に話が進められているが、自分はその組織のトップに収まる旨にはっきりと返答をしていない事も付け加えておいた。

「お前がその警察組織のトップに?ハハハハハ、とんだ白羽の矢が立ったもんだ。こりゃ面白い」

「全く以って面白くありませんぞ。先も言いましたが勝手に話が進められるわ。今も貴方に殺されそうになった」

「そりゃあ悪い悪い。お前の事だからそんなモンだとは思ったが万が一もあるから・・・なあ」

冷や汗を掻く己に対し悪気も無く言い放つと大笑いするフレーヴェルス。

軍内でも屈指の剣客でありながらその扱う能力が如く掴み所の無い性格をした彼は不意に唸ると顎に手を置いたまま黙り込む。

次の瞬間にも『やっぱ殺すわ』と言いかねないだけにフェザリオンは独り固唾を呑む。

「・・・でお前はどう思うんだ?その話はよ~」

「私の身の振り方云々はさておき。現状、暴走したイレギュラーに対して今ある組織だけでは対処は難しいと思っています。遅かれ早かれ民間レベルでの活動も可能な警察組織は設立されたでしょう」

「だな。俺もそう思っていた。グランドリオンにも睨まれてるしここに居てもしゃあねえ。お前もナーガリオン同様にここ辞めてそっちのトップになっちまえよ」

「あの人の様に軍を辞めろと?」

「知ってるか~あいつ政府軍に鞍替えしたってよ。それを知ったグランドリオンがお冠で今度予定してた政府軍との合同演習が無しになった。グランドリオンからすれば自分に反目するソルトコールを退けて海軍の参謀長だったアイツを海軍提督にするつもりがその予定がご破算になっちまったんだからな」

アドミナル=ナーガリオン・・・フェザリオンらグランドリオンの同型機で海軍の参謀長だった人物だ。

元来より人嫌いで偏屈な性格であった彼は派閥争いが激しくなった今のレプリフォースを見限り、早々にその行方を晦ましている。

彼の性格もあり表舞台に戻ってくる事は無いと思っていたのだが、ナーガリオンは政府軍の極東司令部の司令官に就任したとの事だ。

これ以上の話はフェザリオンも知らないしフレーヴェルスも同様だろう。

「まあナーガリオンもそうだがお前含めこの派閥争いに辟易としてる連中を連れて警察組織を創っちまえば良いんじゃね?知ってるか~ナーガリオン派だった連中がな旧来派が大多数を占める海軍内で随分と肩身が狭い思いをしてるらしいぜ」

「わ・・・私はまだ正確に返事はしていなくてですな。と言うか仮に私がその組織のトップになったとして中立派の面々を引き抜けば確実にレプリフォースとの軋轢を生みましょう」

ナーガリオンの一件からも分かるがグランドリオンと言うかレプリフォースに睨まれてはその警察組織も思うように動く事は出来ない。

創立時点で軋轢が出来るぐらいなら、自分がそちらに参加する訳にはいかないと言うのが彼の本音だ。

「任せろ~い!!その辺は俺がフォローしてやるぜ。とりあえずグランドリオンにはばれねえようにアトーラスにも伝えて来るからよ。ついでにさっき言った海軍の連中にも教えて来るわ。よ~し善は急げだ。早速行って来るわ~ハハハハ」

「あ、いやあの!?」

と呼び止める間も無くフレーヴェルスは一室を後にしてしまう。

「と・・・とんでもない事になってしまった」

この後、何が起こるのか想像しますます血の気が引いていくフェザリオン。

自室に戻った後も眩暈は止まらない。

 

ガタンッッ!!

 

己の一室の扉が勢い良く開けられフェザリオンはその巨体をビクリと震わせる。

扉のロックを掛けていなかったのも迂闊であったが、自室であると言うのに訪問者に怯えるなど間抜けにも程がある。

「ハァハァ・・・」

息を荒げその場に現れたのはアンモナイトの姿をしたレプリロイド。

海軍所属と思われる将校に血走った目を向けられフェザリオンは僅かに身構えるんだが。

「お見苦しい姿を・・・先程フレーヴェルス長官に話を聞きまして。居ても経っても居られずにやってまいりました」

自らをサブマリン=アンモナーと名乗った人物は興奮気味にフェザリオンに迫る。

「今秘密裏に進められていると言う警察組織に是非ともこのアンモナーをお加え頂きたい。先に海軍を退役した友人のオクトパルドにも声を掛けます故に是非に!!」

「あ~・・・そのだな」

まくしたてる様に話しかけられ言葉に詰まるフェザリオン。

 

コンコンッッ!!

 

そんな己を追い立てる様に扉を叩く音が響く。

扉から顔を出したのは陸軍参謀の一人エイジス=ポーキパイン。

フェザリオンよりも古株でまだレプリロイドの呼び名が定着していなかった頃から軍を支えていた人物だ。

「もう派閥争いとか言う歳ではないんでな。どうじゃワシを相談役で雇わんか?」

不敵に己を売り込むポーキパインに続く様に陸軍からはタスカー=スミロドームらが己にコンタクトを取ろうとしてくる。

フレーヴェルスが知っていたぐらいなのだから既に軍内で噂は広がっていたのだろうが、フレーヴェルスが勝手に軍内に話を言いふらした結果、フェザリオンの下にはかつて中立派を旗揚げしようとした時以上の人数が集まる事となる。

恐らく程無くグランドリオンの耳にも入るだろう。

その先に待っているのは確実な粛清だ。

(終わった・・・色んな意味で死んだ)

完全にお通夜モードとなったフェザリオンであったが、彼はすっかり忘れていた。

ある意味で己が行おうとしている事にグランドリオン以上に怒りを覚えている人物が居る事に。

「貴方は・・・一体何をしておられるのか」

机に突っ伏していた自身を見上げ怒りに震える拳を握り締めるのは梟の姿をした青年将校。

燃え上がる怒りの炎を背に宿し自身を見据えるストーム=フクロウルにフェザリオンはその巨体を恐怖に震わせていた。




何時もの後書きです。

〇時期について
時系列的には21××年代の中では一番古い話となる。
人間的思考を持つロボットの製造技術が失われてから改めてレプリロイドが誕生して20~30年経つか経たないかで漸く民間にも普及が始まって来た時期。
レプリロイド誕生以前は諸々の混乱で旧連邦政府が崩壊した事もあってロボットアーミー(後のレプリフォース)が唯一人間的思考を持ったロボットの製造技術を有する存在となっていた。
オクターヴ大元帥の下でロボットアーミーは治安維持活動等、新たに設立された連邦政府の求めに応じて活動はしていたが事実上独立した存在であり、居丈高に命令できるものではなく時には連邦政府の要請を拒否する事もあった。
ケイン博士らが前世紀のロボットを発見するまでその状態は続き、その間新連邦政府はロボットアーミーに逆らえなかった。
ロボットがチェコ語で奴隷を意味する蔑称であった事からレプリロイドと言う名前となった事でロボットアーミーも組織名をレプリフォースに変更している。
以下細かい所はケイン博士らの話となるので省略する。

〇フェザリオン以下リオンシリーズについて
旧名はジャッジメント=ローシャリオンだったが改めて設定する上でストラテジスト=フェザリオンの名前に変更。
後のハンター総監でありジェネラルの同型機、色はグレー寄りの銀色で当時は空軍の参謀長(少将)だった。
フェザリオンの名前は現在はカーグラとなったキャラの名前だったが、この辺も含めて色々と変更されている。

当時の彼の動きとしては対立が深くなる両派を止めようと中立派を立ち上げようとするも全く以って人が集まらず、グランドリオンに呼び出されて叱責された上で屈服させられる形に。
同型機が派閥形成出来るのであれば自分もと言う考えがあり、フェザリオンの能力自体も低い物ではないが、人望ではグランドリオン以下、策謀面ではカメレリオン以下と中途半端なものなので結果は目に見えていた。
一応フォローすると生真面目なのが評価できる点だが打算的、理屈寄りで現実が見えない所もあり、作中にある通り場の空気に流されやすい面がある。
後にシグナス含めた優秀な参謀達を自身の補佐に集めたのはこの辺の苦節と自分の能力的な限界を知っている為だったりする。

レプリフォースにおけるリオンシリーズは各軍に配属された大型レプリロイドを指す。
ゲームに登場するジェネラルはジェネラル=グランドリオンで陸軍所属。色は金。
後のブラックことジェネラル=カメレリオンは参謀本部に属する統合幕僚長。色は黒。
アドミナル=ナーガリオンは海軍の参謀長。色は銅。
登場はしていないがコスモリオンは宇宙軍の参謀長となる。色は白。
事の経緯は作中の通りとなり陸軍元帥であったグランドリオンが連邦政府の支持を取り付け最高司令官となっている。
後任のアトーラスはリオンシリーズのマイナーチェンジ版。
彼ら含め初期型のレプリロイドは大型化の傾向にある。

〇警察組織について
後のイレギュラーハンター。この頃は影も形も無い。
作中でも述べられている様に相次ぐイレギュラーの発生にレプリロイドに対する信頼が揺らぎ始めている事もあって、イレギュラーの対処を専門にする組織の設立が早急に求められる事となった。
ケイン博士が組織設立を提唱しイレギュラーの定義等を法律で定めた上でだったのだが、如何せん準備も資金も人材も何もかもが足りない状況であった。
当面の組織の指導者としてフェザリオンに白羽の矢が立ったのは作中の通り、イレギュラーハンターが設立した当初に活動したレプリロイドはフェザリオンを含めた中途採用者や間に合わせの急造品な者達が中心となっている。
作中で開発、設計中のケイン博士の最高傑作や他の製造企業が製作する高性能レプリロイドなどが完成するまでの繋ぎな人選であるのは言うまでも無いが、イレギュラーを現行犯で処分できる事もあって組織の暴走が懸念される為に外部から指導者を選んだともいえる。
いずれにせよ暴走したアスールの一件もあってケイン博士が製作したレプリロイドが組織の長となるのは、連邦政府も懸念を示していた事は付け加えておく。

〇フレーヴェルスらについて
この頃はまだ若いので一人称は俺。
フェザリオンの上司で関係も良好だが若干サイコパスな面がちらつく。
後年は落ち着いた事もあって殆ど見せなくなったが、この頃の彼独自の危うい空気は書いてて楽しかった。
フクロウルも同上、彼もまたこの頃は青年であった。彼とカーグラが渋るフェザリオンを押し立て派閥を創ろうとしたのだが当てが外れた。

後書きは以上となります。
例によって書いてしまったので上げますが次回更新は未定です。
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