RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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wars1 避けられぬ開戦(前編)

「カーネル・・・ここでテロ活動をしていたレプリフォースは一体?これは・・・お前達の仕業なのか?」

困惑と言う滅多に見せぬであろう感情を露わに己に問いかけて来る友にカーネルは静かに目を閉じる。

「我がレプリフォースの兵がこの様な事をしでかすと思っているのか?・・・と普段ならそう言うであろうが、この状況では強く否定出来ぬな」

周囲に転がるノットベレーの残骸にカーネルは自嘲気味に言う。

「正直な所、こやつらが何者なのか私にも分からぬ。だがお前達が私達を疑うのと同様に我らもお前達に聞きたい事がある」

カーネルにしては珍しく言葉を選びながら彼は逆に総本部襲撃の一件をゼロに問わんとする。

「ここスカイラグーンを我々レプリフォースと思われる者達が襲撃を仕掛けたのと同時刻。我がレプリフォース総本部をドラグーンを名乗る者が大型メカニロイドを使いアイリスを拉致している」

「なっ・・・ドラグーンが?それはあり得ないだろう」

「だが多くの将兵がそう証言し映像などの証拠もある」

イレギュラーハンターの部隊長であるマグマード=ドラグーンがレプリフォース総本部を襲撃するなど、ゼロの言葉通りあり得ない事だ。

と同時にレプリフォースの者がここスカイラグーンを襲うのもまたある筈が無い事だ。

「カーネル・・・どう考えてもこれは罠だな。何者かが俺達の間に亀裂を生じさせようとしてるのは明白じゃねえか」

「・・・だろうな」

ゼロの言葉にカーネルも頷く。

「私個人もお前達との関係もあるし如何に政府の命令であってもそんな事はしないと信頼もしている。そもそも隠密行動に不向きなドラグーンを使わずともアイリスにとって恋人であるお前が彼女を誘い出せば拉致を行うのは容易だと思わないか?」

ドラグーンを名乗るイレギュラーがアイリスを拉致した一件があまりにも不自然である事を己の推論を交え、カーネルがゼロに話す。

「おいおい幾ら上層部や政府の命令とかでもそこまで腐った事はしねえよ」

カーネルの言葉にゼロが心外と不快感を見せつつも口の端に笑みを浮かべる。

「とは言え現場でノットベレー達が暴れていたのは事実だ。レプリフォースに所属する将兵らの出撃記録の確認をイレギュラーハンターとして要請する」

「こちらとしてもドラグーンの行動記録の提出をお願いしようか。本来であれば兵士の出撃記録は機密に当たるのだが、それとこれで交換としよう」

「口約束だが契約成立だな。無理難題に近い要請の受諾に感謝するぜ兄貴」

「なあに細かい事は気にするな。お前は妹が認めた男だ。全幅の信頼を置かずしては私個人の面目も立たないからな」

互いに笑みを浮かべ豪快に笑うゼロとカーネル。

性格的には真逆の両者だが、以前より通じ合う一面を持っている所がある。

妹のアイリスがゼロと付き合う様になってよりその絆は以前よりも強固な物となっている。

何者の策略かは知らないがこの程度の事で自身らの関係が揺らぐ物ではない。

その事を改めて確信した両者は内心で安堵するのだが。

 

ガシャッッ!!

 

周囲の瓦礫を押し退け顔を出すノットベレー達の姿にゼロとカーネルが身構える。

「レプリフォースの名の下に・・・」

「殺せ・・・殺せ人間を!!」

ノイズ交じりの声を響かせ燃え盛る炎の向こうから隊列を作り歩き始めるノットベレー達。

「この様な事を仕出かして挙句レプリフォースの名前を名乗るとは・・・」

破壊活動を行ったノットベレー達に怒りを隠せぬ様子でカーネルがビームセーバーを強く握り締める。

「キシャアアァァァァァ!!」

更にその上空をレプリフォース総本部やスカイラグーンを襲った巨大なメカニロイドが舞う。

「さっさとぶっ潰してやろうぜ」

互いに庇い合う様にして刃を構えたゼロとカーネルは次の瞬間にはノットベレーの大軍目掛けて駆け出すのであった。

 

 

 

「ええいっっ!!カーネルは!!あの若造はどこに行ったあああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーー!!」

 

ドオオオォォォンッッ!!

 

金色の巨人が憤りを露わに巨大な拳を机に叩き付ける。

レプリフォース総本部のメモリアルホールにて響き渡るジェネラルの怒号。

その剣幕にさしもの空軍長官スパイラル=ペガシオンも身をビクリと震わせる。

「カーネルは敵に拉致された妹のアイリスを助ける為にスカイラグーンへと向かったと留守を任されたアテネ殿より聞いております」

海軍提督ブレイバル=ジョーズィの淡々とした言葉にジェネラルは殺気の籠った目を彼に向ける。

三軍の中で今や年長者となった彼はその視線に怯む事は無い。

「カーネルとアイリスの繋がりは開発経緯も含め我らとて知っているでしょう。レーダーを用いずアイリス個人を捜索するにはカーネル以上の適任者は・・・」

「そんな事は知っておる!!だがその奴の行動がこのレプリフォースを危機に陥れておる!!」

ジョーズィの言葉を遮るようにジェネラルは叫ぶ。

レプリフォースの兵士が破壊活動をしたと言うスカイラグーンにカーネルが現れれば人々は自身らにより一層の不信感を生じさせるだろう。

「出撃命令を受けておらぬのに独断でたかが小娘一人を助ける為に動くなど、何が軍人の鏡だ聞いて呆れ果てるわ。カーネルが帰還次第にすぐに軍法会議を開く。あの小僧にこの私の偉大さを思い知らせてくれる」

目を血走らせカーネルを処罰せんと宣言するジェネラル。

厳格な最高司令官でありながらも豪放な性格と思われていたジェネラルが露わにする一面にペガシオンは言葉を失っていた。

「やれやれ久しぶりにこの星に降りてみれば騒々しいのだ」

メモリアルホールに入って来るなり、呆れたとばかりに手を広げるのは宇宙軍総司令のギャラクシー=キリンタイザー。

彼はジェネラルの殺気の籠った視線も意に介さず、ジョーズィやペガシオンに苦笑を向ける。

「たかが一都市が崩壊した程度なのだ。その様な些細な事にいちいち気にする事などあるまい」

ペガシオンも含め軍上層部は彼がこの星で生まれたロボットでは無い事を知っているが、キリンタイザーの価値観はどこかこの星のレプリロイドとは違う。

空中都市が崩壊し多数の死傷者が出ていると言うのに、キリンタイザーはそこに何の感情を浮かべていない様子だ。

「だがスカイラグーンを我々に成りすました者共が襲撃したと言う事が問題だ。更にあのカーネルの小僧が現場に向かえば更にその疑惑を深めてしまう事になる」

「潔白でなのであれば政府に申し開きをすれば良いのではないか?」

歯を軋ませるジェネラルにキリンタイザーはあくまでも冷静だ。

「貴様・・・この私に連邦政府へ頭を下げろと言うのか!?」

「お前の面子が傷つくのかどうかは知らぬがだんまりを決め込めばその疑惑を肯定した事になるぞジェネラル」

「ぬううっ・・・!!」

至極尤もな正論を口にするキリンタイザーにジェネラルが黙り込む。

「まずは落ち着くのだ。ともあれカーネルが帰り次第、今後の方針を我らで決めるで良いではないか」

どこか己を蔑む様な顔のキリンタイザーに拳を叩き付けたくなる衝動をグッとジェネラルは堪える。

「ハァハァ・・・おのれ。カーネルが帰還したらすぐに私の所に来る様に言っておけ!!」

ギリッと歯を鳴らしジェネラルは大股でその場から去っていく。

残されたジョーズィとペガシオンにキリンタイザーは振り返りながら僅かに口元を緩める。

「困った物だな。疑心暗鬼に陥った者を頂きに据えると言うのは」

彼の言葉はジェネラルのみならずレプリフォースその物を馬鹿にしているように聞こえた。

その不遜な性格もあり、キリンタイザーはペガシオンを始めとする若手の将兵に快く思われていない。

「カーネルは妹を助けに行ったのか。普段は私情の為に動くなと言っているあの男が動くとは・・・まああの妹は俺の目から見ても可憐であるから分からんでもないが。だが迂闊であったな・・・馬鹿な事よ」

薄笑みを浮かべるキリンタイザーの前に進み出るのはペガシオンだ。

空軍長官となってから彼も忍耐強くなったのだろう。

昔であれば次の瞬間には拳が出ていたとジョーズィは思った。

「馬鹿な事・・・貴方はカーネルを侮辱したのか?

「馬鹿と思った事を馬鹿と口にして何が悪い?本当の事ではないか」

並の者であれば眼光だけで怯むであろうペガシオンの視線を前にキリンタイザーは怯む事無く、その目と向かい合う。

「フン・・・馬鹿と言った事は取り消そう。今は内輪もめをしている場合ではあるまい」

先に刃を収めたのはキリンタイザーの方であった。

彼は半歩後ろに下がると両手を上げて争う意思が無い事をペガシオンに示す。

「此度のどこからどう見てもレプリフォースの仕業にしか見えぬ事件。これを口実に連邦政府は動くぞ・・・我らを切り崩しにな」

キリンタイザーの言葉にジョーズィとペガシオンは無言のまま頷く。

 

 

 

スカイラグーンが崩壊したその時、エックスは避難をしようとしたが間に合わなかった。

高度が下がると同時に内と外から崩壊を始める空中都市。

無数の悲鳴と爆音を耳にしながら、エックスは崩落してくる瓦礫を避け僅かでも生きる時間を稼ぐしか出来なかった。

やがてエックスが立っていた周囲の床も崩壊し、彼の身は宙の上に投げ出される事となる。

「・・・ッッ」

強烈な風を身に受けながら目を開いた彼が見たのは眼下に聳える摩天楼の数々。

地上の方で住人の避難は完了したであろうか。

どちらにせよ今回の事件で多くの人が死んだ。

その一人に自分も入るのだろうとぼんやりと考えエックスは苦笑する。

今まで多くの死線を掻い潜って来た自身であるがこんなに簡単に死ぬとは思っていなかったのだろう。

どこかそんな自身に可笑しさを感じたエックス。

 

ズンッッ!!

 

徐々にだが己に近づいて来る景色が止まったのはその時であった。

「ギリギリ間に合いましたな」

宙の上で己の腕を掴み取りながらそう笑うのは巨大なカミキリムシを思わせる風貌のレプリロイド。

自身の部下であるジーエン=アンカトゥスである。

「ジーエン!?」

「びっくりしましたかな?とにかく間に合って何よりなんですな」

ジーエンは驚くエックスを抱きかかえると背にある羽で空を飛んでいた。

「第7空挺部隊に居る方々と違ってそこまで飛行能力には長けていないので、少々ご不便をかけますよ」

そう言ってゆっくりとだがスカイラグーンの落下していく地点より離れて行くジーエン。

 

ズウウウゥゥゥゥゥンッッ!!

 

助かった事に安堵した様な息を吐くエックスだが、その足元で響く轟音にハッとなる。

「隊長と一緒に来た皆は既に脱出をしていますのでご安心を」

ジーエンがそう言うがエックスの胸中を駆け巡るのは人々を助ける事が出来なかった後悔であった。

「これはレプリフォースの仕業なのでしょうかな?ジーエン個人はその辺りには少し疑念を抱きはしますが・・・っと」

現場で暴れていたノットベレー達は明らかに異常な様子であった。

短絡的にレプリフォースの犯行と考えるのは、ジーエン同様にエックスもしなかった。

「キシャアアァァァァァ!!」

己らの頭上を巨大な影が横切る。

スカイラグーンを破壊した者達が操っていた巨大メカニロイドだ。

「まだ破壊活動をするのか・・・そんな事はさせない!!」

「了解ですな。では奴を追いましょう」

地上へと向かったメカニロイドを追ってエックスを抱えたジーエンはその羽を広げるのであった。

 

ガキィィィンッッ!!

 

「チッ・・・面の皮だけは厚いか」

自身の振るうセイバーの斬撃を軽々と受け止めるだけの装甲を持つイレギオンにゼロが舌打ちをする。

「下がっていろゼロ!!お前の腕には妹が居るのだからな」

カーネルの言葉にゼロが片手でアイリスを抱えている事を思い出しその場を飛び退く。

「ぬぅぅんっっ!!サンダーブレイカー!!」

気合の一声と共にカーネルの持つ刃より電撃が生じノットベレー達ごとイレギオンを攻撃する。

「最大出力・・・エナジーセーバーだ!!」

続けざまに更に強力な雷鳴と言っても良い電撃をイレギオンに向けて放つカーネル。

「ギャオオオォォォォ!!」

咆哮を響かせるイレギオンにゼロが追撃を仕掛けようとするが。

がそれはイレギオンの振るった巨大な爪によって遮られる。

「なかなかやるじゃねえか!!」

「ギャオオオォォォォ!!」

 

バシュバシュバシュバシュバシュッッ!!

 

ゼロを爪で牽制するやイレギオンは巨大な口を開け無数の光弾を二人に向けて乱射する。

巨大なメカニロイドと言う事もあるが、一発一発がまともに受ければ致命傷を負いかねないだけの威力を持つ光弾が無数に放たれゼロとカーネルは身動きが取れなくなる。

「口腔内の砲の出力は戦艦の主砲並と考えても良いか・・・あれだけの性能を持つメカニロイドなど。余程の技術が無ければ造れん筈だが」

「感心している暇ねえだろ」

物陰に隠れながら思案するカーネルにゼロが呆れた様に突っ込む。

正に軍人を絵に描いた様な彼だが、今の様にどこか抜けている様な所がある。

「ゼロ・・・私が囮になる。お前はアイリスを安全な所に連れていけ」

「だったら俺が・・・!!」

ビームセーバーを手にしカーネルが隠れている場所より出て行こうとする。

そんなカーネルを引き留めようとするゼロだが。

「お前は妹を任せられる唯一の男と私は信じている。なあにアイリスを安全な所まで運んだ後、お前が戻って来てくれば良いだけの話だろう?」

「カーネル・・・お前」

カーネルの言葉にゼロが渋い顔となりつつも、彼の言葉に従いその場を一旦離れようとする。

「来い!!イレギュラー!!」

真っ先に物影より飛び出したカーネルがイレギオンに向かって大声で叫ぶ。

それに対し反応を示したイレギオンが翼を広げ距離を詰めんとした時であった。

「どりゃああぁぁ!!天魔空刃脚ッッ!!」

迫りくるイレギオンを側面より襲い掛かった者の姿を見て、カーネルは思わず身構える。

第14白兵部隊隊長マグマード=ドラグーン。

カーネルからすれば先にイレギオンを操り妹を攫ったと思われる人物だ。

ドラグーンの放った強烈な蹴りにイレギオンは片方の翼を失い背後に倒れ込む。

「おのれ!!鬼畜レプリフォース!!貴様らは何と言う・・・何と言う!!暴挙をしてくれたのだぁぁぁぁ!!」

己の姿を見るなり鋭い視線を向けるドラグーンにカーネルも同じ様な目で睨み返す。

「このデカブツを操っていたのは貴様か!!」

「我が妹を攫っておきながらよくその様な事が言えるなドラグーン」

顔を合わせるなり身に覚えが無い事で怒鳴られた事もあり、カーネルもドラグーンの言葉に喧嘩腰に返す。

「お前の妹?そんな物は知らん!!スカイラグーンを破壊しておきながら、論点をすり替えるとは白々しいにも程があるぞ!!」

全身より闘気を放出し拳を構えるドラグーンにカーネルが腰を低くした時であった。

「グオオォォォォンッッ!!」

瓦礫を跳ね除けながらイレギオンが起き上がる。

巨大な竜の口はカーネルに向かって開かれていた。

「チィ・・・エナジーセイバー!!」

イレギオンに向けてカーネルが電撃を放つ。

「むう・・・?メカニロイドが俺では無くカーネルを襲っただと?」

その様子に首を傾げるドラグーンだが、そんな彼の前にエックスとジーエンが空より降り立つ。

「おおエックス。無事だったか」

「君こそ無事で何よりだよ」

互いの無事に僅かに顔を緩ませる二人だが、エックスもその場にカーネルが居る事を知り僅かに表情を強張らせる。

「あれは陸軍元帥カーネル。ふうむ・・・どういう事ですかな?ジーエンの目にはイレギュラーがカーネルを襲っている様に思えます」

腕を組むジーエンは思案する様に首を傾げる。

「エックスにドラグーンか?」

アイリスを抱えたゼロがエックスらの下にやって来たのはそんな時であった。

「ゼロ・・・それに彼女は!?」

「話は後だ。とにかく奴をぶっ潰すぞ」

ゼロが抱いているアイリスの姿にますます困惑するエックスらだが、ゼロは彼女の身をジーエンに強引に預けると刃を手にイレギオンに向かって行こうとする。

互いに困惑を隠せない顔となるエックスとドラグーンだが、ゼロの言う通りここで思案している暇はない。

彼らは即座にゼロの後に続く。

「それでジーエンは一体何を・・・まあ役得と思いましょうかな」

気を失ったアイリスを抱きながらジーエンは彼らを見送るのであった。

確かにイレギオンの装甲や火力は桁違いの物であったが、所詮はメカニロイド。

エックスやゼロと言ったハンター最強の戦力を前に次第に劣勢に追い詰められていく。

「ぬぅぅぅんっっ!!」

エックスとゼロが作った隙を見逃さずに放ったドラグーン渾身の拳がイレギオンの頭部を叩き潰す。

更にイレギオンの全身をカーネルの放った電撃が駆け巡り、その巨体の装甲が剥がれ落ちる。

「ギャオオオオォォォ!!」

咆哮を上げひしゃげた頭部に残された砲塔をゼロに向けようとするイレギオンだったが、遠距離からのエックスの狙撃によって頭部が完全に破壊される。

「うおおおぉぉぉぉ!!」

その隙を逃さずに放ったゼロの刃がイレギオンの胴体部に突き刺さり、スカイラグーンを破壊した化け物は漸くその動きを止めるのであった。

 

ズウウウゥゥゥゥゥゥンンッッ!!

 

地響きを立て路上に転がるイレギオンの巨体。

暫しの間、身構えていた四人であったがイレギオンが完全に活動を停止したと分かるや息を吐く。

「勝ったか・・・」

刃を収めるカーネルとゼロ。

だがエックスとドラグーンはカーネルに対し身構える。

「ここでのテロ事件は貴様らレプリフォースの仕業か?」

己を追求するように口を開くドラグーンにカーネルの顔が険しくなる。

「確かにここで暴れていたのは我が軍の者だ。だがここで破壊活動が行われたのと同時刻に貴様が先程のイレギュラーを操り総本部を襲撃した挙句、我が妹を拉致したと部下から報告を聞いているぞ」

「なっ・・・俺が貴様の妹を?そんな馬鹿な事があるか・・・お前の妹が如何に非戦闘員とは言え拉致などの工作に関して俺は門外漢だぞ。そもそもその様な卑劣な任務を俺が受けると思っているのか?」

カーネルの言葉に血相を変え否定するドラグーン。

「単純な力であればエックスらを上回る実力を持つと言われるハンター随一の武闘家らしい言葉だ。私個人も妹の拉致を貴様が行うよりもゼロを始めとする第0特殊部隊などが行った方が効率的だと判断している」

冷静に事を見極めようとするカーネルに落ち着きを取り戻したのかドラグーンが唸る。

「・・・ここで事を構えちゃいけない。要点を纏めるべきだ」

若干遠慮がちではあるがエックスが前に進み出て口を開く。

今までの会話を見るにお互いに誤解を抱いている節が見られたからだ。

時系列をはっきりすべくまずはカーネルが総本部であったアイリス拉致の一件を説明し、次に現場に居たドラグーンが状況を説明する。

更にエックスやゼロの証言も交わり四人は事の次第を確認しあう。

「まずに総本部を襲ったドラグーンは偽物である可能性が高いと言う訳だな」

「だから言っているだろう。俺は今日という休日を娘と一緒に楽しんでいた訳だ。娘を証言台に立たせたくはないがアリバイなども監視カメラの映像からはっきりと分かるだろう」

カーネルの言葉にドラグーンが鼻を鳴らす。

彼の言葉通り、スカイラグーンやそこに至るまでの道路などに設置されたカメラからの映像でドラグーンの潔白は証明出来るであろう。

「でもって現場で暴れていたノットベレー達はどこからどう見てもウィルスで精神を侵されていたと」

「俺個人もそうだとしか思えないな」

「・・・・・・」

ゼロとエックスの言葉にカーネルが思案するように腕を組む。

「先にゼロにも言ったがレプリフォースに配備された全兵士の出撃記録を照会すれば、ここで暴れていた者達の詳細も掴めるやも知れぬ」

カーネルの言葉にエックスが驚きの表情を見せる。

「でもそれって君達にとっては重要な機密に当たるんじゃ・・・」

「ここで暴れたのが現在居る兵士ではないと証明できるのであれば安いものだ。データとしては膨大な物となるだろうが・・・」

あっさりとこちらの捜査に協力する姿勢を見せるカーネル。

柔軟な姿勢を見せるカーネルの姿は意外ではあったがこれで事件がレプリフォースの仕業ではないと証明できるとエックスらが安堵した時だった。

「先輩~大丈夫デシか?」

「よっしゃイレギュラー共!!ちょいと遅れたが今から俺が・・・って?」

荒い息に肩を揺らしながら現場に到着するダブルとオージンの二人にゼロが白い目になる。

「もう終わったぜダブルにオデン」

「ええ~そんな~!!」

呆れた様に口を開くゼロにダブルが肩を落とす。

そんな二人に追いつく様にジーエンと共に現場に踏み込んだエックスの部下や他のハンター達も駆けつけてくる。

彼らはレプリフォースの陸軍元帥たるカーネルの姿を見るなりやはりと言うか身構える。

「待って!!ここで行われた事件はレプリフォースの仕業に見せかけた第三者による犯行の可能性が高いんだ」

一触即発の状態になりかねないだけにエックスが割って入るようにして、隊員らとカーネルの間に立つ。

「流石にこのままじゃ騒ぎも大きくなる。カーネル・・・今からハンターベースまで出頭してくれないか?」

「うむ・・・止む得ないだろうな。それに我が妹アイリスの修理も頼みたいしな」

無用な混乱を避けるべく言い放たれたゼロの申し出にカーネルが頷く。

「なあ・・・これってもしかしなくてもレプリフォース製のパーツじゃね?」

大破したイレギオンを調べていたオージンがパーツを手にエックスにこっそりと話しかける。

オージンから受け取った破片の中のチップには確かにレプリフォースのマークが刻まれていた。

エックスがそれを手にし表情を険しくするが、これはあからさまな罠だと判断し騒ぎ立てる事はしなかったのだが。

「おい・・・!?イレギュラーの残骸からレプリフォースのマーク入りのチップが出て来たぞ!!」

オージンが見つけたのはほんの一部に過ぎなかったのだろう。

別の隊員が残骸からチップを見つけこれ見よがしに上へと掲げる。

「ま・・・待って!!君達はレプリフォースを疑うっていうのかい!?」

現場において決定的な証拠が出て来たことで殺気立つ隊員らを押し止めるようにエックスが叫ぶ。

「隊長はレプリフォースの肩を持つんですか!?」

「現場でノットベレーとレプリフォース製のメカニロイドが暴れて。更に指揮官のカーネルまで出て来たんですよ。これを疑わずにどうしろって言うんですか!!」

逆に部下達に言い返された言葉に詰まるエックス。

「とにかくカーネルにはハンターベースに出頭をしてもらう!!お前達はレプリフォースに疑念を抱いているだろうがまずは調査だ!!ある事ない事を口にしているんじゃねえよ」

苛立ったように足元の瓦礫を踏んだゼロが隊員らを一喝で黙らせる。

この場においてはレプリフォースの疑念を晴らす為の材料があまりにも少なすぎる。

なんとかしてこの事件をレプリフォースの仕業ではない事を証明すべくゼロがカーネルを促そうとした時だった。

「やはり駆けつけて正解であったであります。カーネル閣下から離れるでありますよ!!」

灰色の神馬が引き連れる一団の姿に周囲から悲鳴のような声が上がる。

「ぬう・・・スレイプニール」

自らの親衛隊を指揮しその場に現れたアームズ=スレイプニールを見るやカーネルが唸る。

彼らには陸軍本部で待機を命じてあったが、己を救援すべく無断で出撃をし駆けつけたと言う所だろうか。

軍規に逆らってでも己を助けに来る忠義心には感謝したいが、この場においてはタイミングが悪すぎた。

「オイラ達ハンターとやるつもりデシか!?」

ダブルの声に反応するかのように何人かのハンターが銃を構える。

対してカーネル直属の親衛隊に属するノットベレーは無言のまま手にした銃を向ける。

「ちょ・・・お前ら落ち着けっての!!」

慌ててオージンが先程のエックスの様に両者の間に入るが、お互いに流れる空気は非常に危うい。

「ちなみにジーエンの腕の中にはアイリス嬢が居るんですな」

気を失ったアイリスを見せつけるようにしながらジーエンがレプリフォースを牽制する。

「アイリス殿を人質に取るとはやはり連邦政府の差し金でありますかっっ!!」

誤解を生じさせているスレイプニールが激高する。

「スカイラグーンを墜落させておいてよく言うデシ。ともかくカーネルは武装解除してハンターベースに出頭するんだデシ」

「そうだそうだ!!」

ダブルの言葉に続く様に周りの隊員らが声を上げる。

「武装解除・・・武器を捨てろと。我らが主をその様な辱めに合わせる訳にはいかないであります!!」

スレイプニールがハンター達を指差しながらその腰を落とす。

それに連動する様に周囲の親衛隊が身構える。

「まずい・・・このままじゃ」

互いに誤解を重ね合った両陣営はたった一発の銃弾でも放たれれば激突しかねない。

その異常な空気にエックスが何とかしなければと思った時だった。

「お前達、いい加減にしないかっっ!!」

突如カーネルが叫ぶ。

その声と気迫にその場にいる全ての者達が息を呑んだ。

「ここで我らが争った所でこの一件を画策した者達が喜ぶだけだ」

冷静になる様に口を開くカーネルは皆が自身を見るのを待って言葉を続ける。

「先にエックスらとも話したが我らの間には疑念が渦巻いている。その疑念を晴らす為に私はハンターベースに出頭するつもりだ」

「カ・・・カーネル閣下!?何を言うでありますか!?」

カーネルの言葉を信じられないと言った様子でスレイプニールが問い返す。

「だがこのまま私がハンターベースに向かえばお前達の収まりもつかんだろう」

己の為に今にもハンター達に襲い掛かりそうな部下達を見据えカーネルは深々と息を吐く。

「よって・・・現時点で出来る私の回答はこれだゼロッッ!!」

 

ヒュンッッ!!

 

振り返りざまにカーネルに投げつけられる一つの物体。

反射的にそれを手に掴んだゼロだったが、それがなんであるか分かり目を見開く。

スレイプニールも同様のようでその目を驚愕に見開いていた。

「カーネル・・・これは?」

「サーベルは軍人の誇り。手放す時は死する時のみ・・・と常々部下達には言っていたがな」

目を丸くするゼロにカーネルは苦笑を浮かべる。

カーネルがゼロに向けて投げ放った物、それはカーネルが愛用するビームセーバーの柄であった。

「今回の一件でお前は私を信じようとしてくれた。これはそれに対する私からの礼だ」

そういって踵を返すカーネル。

武器を自ら手放し、丸腰になったカーネルだがそれを好機と見て捕縛に動くハンターは誰も居なかった。

「一旦私はスレイプニールらを連れて総本部に帰還する。だがその後で必ずやハンターベース或いは政府本部へと出頭をする。それまで私のビームセーバーはお前に預ける事にする」

「カーネル・・・」

カーネルが示すギリギリの妥協案。

彼は自らの誇りを手放してまで己を信頼しようとしている。

故にゼロもその想いに答えようとした。

「分かった。絶対に来いよ」

「・・・ああ」

ゼロの言葉にカーネルが頷く。

「それと忘れモンだ」

このまま帰っていきそうな勢いのカーネルにゼロは気を失ったままのアイリスを返す。

「流石にこのまま人質にしておくなんざ俺のプライドが許さないからな」

「そうか・・・礼を言う」

妹を胸に抱きカーネルが静かに頭を下げる。

「お前達、撤退するぞ」

「「イエッサー!!」」

カーネルの号令に親衛隊の面々が答える。

それをそれぞれの表情を浮かべながら見送るエックス達であったが。

 

ギロリッッ!!

 

一瞬だがスレイプニールが鬼の様な形相で振り返ってきたのをゼロははっきりと確認する。

彼の視線はゼロは持つカーネルのビームセーバーの柄に向けられていた。

「さてさて・・・どうなる事やら」

嘆息するゼロにエックスも力無く頷く。

後にスカイラグーン事件と称されるこの一件での死傷者は数万人にも上る。

そして当然の様に親類や縁者を失った連邦市民の怒りはレプリフォースへと向けられる事となるのであった。

 

ガンッッ!!

 

廃墟となった街より離れようとしていたカーネルの頭部に投げつけられたのは拳大の大きさもある瓦礫だ。

もしもカーネルが人間であれば打ち所次第では大怪我になっていたであろう。

「レプリフォース・・・レプリフォースだ!!」

カーネルが目を向けた先に居るのは焼け出されたであろう市民の一団。

「お前らカーネル閣下に何をするでありますか!?」

スレイプニールが声を荒げるも全てを失った市民らは、それに動じる様子はない。

「このイレギュラーがぁぁ!!」

「悪魔の軍隊め・・・ここから出ていけ!!」

「私の家族を!!皆の家を返して!!」

口々にレプリフォースへの憎悪を口にする市民達は次々とカーネルらに向かって投石をし始める。

「お前達、絶対に手を出すなよ。これは命令だ」

今にも反撃をしそうな部下達を制止するカーネル。

「で・・・ですがっっ!!」

「謂れ無き事でこの様な屈辱を受けるなど!!」

「もう一度言う・・・これは命令だ」

この屈辱的な仕打ちに対する怒りを口にする兵士らだったが、カーネルにそう言われては何も出来ない。

胸の中に抱いた妹を投石から守る様にして僅かに身を屈めたカーネルは静かに歩き出すのであった。

その後ろを歩くスレイプニールの瞳は暗い。

(カーネル閣下や我らにこれ程までの屈辱を与えたハンターに人間共・・・いつか殺してやるであります)

今にも暴発しそうな怒りを抑えながらカーネルに続くスレイプニール。

そんな彼らを追い立てるように市民らの罵声はいつまでも続くのだ。

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