RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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ハンター前史②

最近忙しくてすっかり存在を忘れていたなどと言えばボコボコのギッタンギッタンにされていたであろう。

「聞きましたぞ。何やら連邦政府の口車に乗り新設される警察組織とか言う訳の分からん物に己を売ろうとしていると」

「フクロウル。待て・・・これには深い訳があってだな」

「どうせ流されやすい貴方の事だ。適当に相槌を打つ間に断れずに何時の間にか担ぎ上げられていたのでしょう」

半ば腰を浮かすフェザリオンにフクロウルがにじり寄る。

目の前に居る青年こそ内部分裂の兆しを見せるレプリフォースの危機感を覚え、フェザリオンを対立する二派とは違う第三の派閥の長に仕立て上げようとした張本人なのだが、この件に関しては何度も言うが完全に当てが外れた。

フクロウル自身も半ば強引に担ぎ上げてしまったフェザリオンには多少の負い目はあるが、彼がやろうとしている事は己を含めたレプリフォース内で居心地を悪くしている者達を連れて別の組織への集団夜逃げである。

レプリフォースの主流となった改革派にも属さず、かと言って頑迷にかつての路線で行こうとする旧来派とも距離を置く自身ら中立派がごっそりと組織を去れば、今度こそレプリフォースは真っ二つに割れ内乱となるだろう。

同じ旗の下に集った者達による同士討ちなど結局のところ、一番得をするのはレプリフォースを支配下に置きたがっている連邦政府であろう。

「も~うローちゃんが何を言ってもどうやっても!!あの二つの派閥を争いは止められん」

開き直ったのか目の前の机を叩きながらフェザリオンが甲高い声で叫ぶ。

「それにどうせグランドリオンの改革派が勝つでしょ~が。まあどっちが勝っても私も含めた面々は全員冷や飯食わされるのは分かってるんだから。レプリフォースを去るか新しい所に移った方が上手く行くって!!」

「我々が居なくなればこれ幸いと改革派は旧来派を潰しにかかります。そうなればどうなるか貴方でも分かっておるでしょう」

「ふ~んだ!!どうせ私は風見鶏ですよ~だ」

腕を組み明後日の方向を見ながら不貞腐れるフェザリオン。

その彼の肩の上に一人の少女が何時の間にか腰掛けていた。

ギョッと目を見開くフェザリオンだが、彼女の口から超音波を浴びせられ危うくその場で倒れ込みそうになる。

「キーキー!!でかいだけの臆病者、それでもグランドリオン閣下やカメレリオン幕僚長の同型機なの!?本当に役に立たないんだから」

巨大な顔を左右に揺らすフェザリオンを前に腰に手を当てながら呆れた様に口を開くのはノイジーラ=カーグラだ。

フクロウルと同じ空軍参謀で軍歴で言えば彼の一年後輩にあたる。

小柄な見た目とは裏腹に負けん気が強く、単純な戦闘能力であればフクロウルよりも上なのだと言う。

尤もフェザリオン同様に参謀と言う立場もあり前線に出ると言う事はまず無いのだが。

「ローちゃんもグラちゃんも諦めようよ~。三人で警察組織に入って理想の組織を作りましょ?」

「お断りします。ここまで来て無責任に何もかも捨てる程、私は薄情者ではありませんので」

「てかその警察組織って連邦政府肝入りの組織なんでしょ?連邦政府の犬になり下がるぐらいなら改革派の言う程良い距離を保ったままの方が良いし、正直私個人は中立派でも旧来派寄りの考えだかんね」

フェザリオンとて彼らを新設される警察組織に引き抜けるとは思っても居なかったが、もしも彼ら二人を引き抜いていれば後にイレギュラーハンターと呼ばれる組織はこの三人の手で牛耳られただろう。

「旧来派のやり方はオクターヴ大元帥と言う巨大なカリスマあっての物だ。一個人の才能に頼り切るやり方はいずれ破綻するのは人間達の歴史が証明している」

「だからと言って改革派の言う様に連邦政府がこのまま私達と言う巨大な武装組織をこのままにしていくとは到底思えないわ。グランドリオン閣下は上手くやると言ってるし現に多くの協力は取り付けているけど」

中立派の顔と言うべきフクロウルとカーグラがこれまで何度も繰り返されてきた話をする。

この二人の場合は口論と言うよりかは議論だが、創設者であり偉大な指導者であったオクターヴ大元帥亡き今、このレプリフォースがどうなるか誰も予想できないのだ。

互いに疑心暗鬼にもなれば我こそが組織を引っ張らねばと思うのも無理は無い。

その誰が組織を束ねるかという過程で派閥争いが起こり今や暴発寸前なのだが。

「こ・・・ここだけの話だが。警察組織の新設は一見すると連邦政府主導に見えるが、実際はレプリロイドの生みの親であるケイン博士が主導者の一人だ」

無駄とは思いつつフェザリオンは二人に向かって己が話せる内容を言う。

「ホーホー!!ケイン博士がその組織に参加するのであればある程度連邦政府からの独立性も担保されるでしょう」

「でもでもケイン博士と言えば何年か前に自分が製作したレプリロイドのアスールがエフレーモフ邸での惨劇を引き起こして社会的信用を失っているわ。正直私達レプリロイドの父と呼ばれるだけの功績が無かったら二度と表舞台に出れないわよキーキー!!」

「あの・・・私の肩でそれぞれ話すのはいい加減に勘弁して欲しいのだが」

止まり木の様に自身の両肩に乗る両者に左右から声を出されフェザリオンは耳を押さえるしかない。

そんな自身の事などお構いなしに互いに口論交じりの議論を続ける二人はさておきとフェザリオンも天井の隅に視線を向け思案する。

実際カーグラの言う通りケイン博士の社会的信用は数年前に起こったアスールが引き起こした事件もあって大きく失墜している。

(確かにあの事件はケイン博士のみならず我らレプリロイドの信用すらも大きく揺らいだ一件だったからな)

フェザリオンの脳裏に惨劇による犠牲者の画像が浮かぶが彼は慌ててそれらを電子頭脳内の隅に追いやる。

アスールによる事件が起こる前からレプリロイドによる人間への殺傷事件は幾つか発生していたのだが、それらは全て電子頭脳に故障を生じさせたが故に発生した不幸な事故とされていた。

いずれは技術的な問題が解決すれば故障者は発生しなくなると言うのがレプリロイドの普及を推進させる連邦政府の公式な見解であり建前であったのだが。

(馬鹿馬鹿しい・・・であれば大破壊より旧連邦政府から独立し自らの組織を維持し続けていたオクターヴ大元帥も故障者と言う事となる。そもそも人間的思考を持つのだ。居丈高に命令されれば腹も立つ・・・張り倒したくなる時だってあろう)

とまあ当のレプリロイドであるフェザリオン自身がそう思うのだから件の一件は起こるべくして起こったのだろうが、起こった場所もそれによって生じた被害も最悪過ぎた。

レプリロイドの生みの親であるケイン博士が開発設計した本格的な人間的思考を持つレプリロイド第一号と世間では認知されていたアスール。

その彼が突如として暴走、ケイン博士にとってパトロンの一人でありレプリロイド普及に政治的なアプローチで多大な貢献をした政府議員マクシーム=エフレーモフの邸宅で使用人や彼の家族を惨殺したのだ。

犠牲者の一人でエフレーモフの妻であったイリヤ=エフレーモフは近年ではレプリロイド開発から身を引いていたと言うが、ケイン博士と共にレプリロイド開発に携わった人物としても知られていた。

いずれにせよレプリロイド第一号がレプリロイド普及に尽力した人物の家族を殺傷すると言う痛ましい事件は、社会に大きな衝撃を与えケイン博士も最近まで表舞台に出てくることが出来なかった程だ。

(考えてみれば・・・訳の分からない女性の口車に乗せられ社会的信用を失った人物と一緒に怪しい組織を設立しようとするなど。もしかしなくても危なすぎる橋を渡ろうとしているのでは?)

今になって場の空気に流されるままだった自身の軽率さに血の気を失っていくフェザリオン。

(今からこの話を断るか・・・いやもうフレーヴェルスのせいで他のレプリフォースを抜けたがっている者達にまで話が広まっている。ここで降りたら間違いなく私は彼らに殺される)

慌てて逃げる方向に思考を巡らせるも既に話は治まりがつかない所にまで進んでしまっている。

退路が無くなった事実に青くなるフェザリオン。

そんな彼など余所に両肩で議論をしていた二人も言いたいことを言い終えたのか一息を付く。

「まあ良いでしょう。貴方がグランドリオンの同型機と言う事で過度な期待を抱いてしまった私にも非がある」

溜息を吐き床へと降り立つフクロウル。

「私とてこの状況が嫌で逃げ出す者の気持ちは痛いほど分かる。フェザリオン参謀長、出来るだけ多くの仲間を連れてその組織へと行かれると宜しいでしょう」

彼自身もその流れは止められない事を悟っているが故に憤りはすれど、それ以上はフェザリオンを責める事はしない。

尤もそんな彼の言葉もすっかり頭が真っ白になっているフェザリオンには届かないのだが。

「全く図体だけで役に立たないわね」

「彼なりの処世術なのだろう。周囲に良い顔をするあまり風見鶏過ぎるのがあの人の欠点だ」

彼の私室を出た廊下で鼻を鳴らすカーグラにフクロウルが何度目かの溜息を吐く。

各派閥の衝突を避けるべく軍内を駆け巡っている二人だが、その成果ははっきり言って思わしくない。

前線での個人的な武勇が何よりも評価される傾向にある陸軍や海軍の面々の多くは、一幕僚に過ぎない二人の話など聞こうともしない。

 

<残念だがフクロウル。お前に・・・いやこれは私もそうだが我らにグランドリオンやアトーラス達の様に戦場の前線で仲間を鼓舞し奮い立たせるような能力は無い。まあ凡人よりかはあるかもだがそれでも天性の才を持つ者には敵わん。無理に無い物を望むよりもある物を伸ばせ。それがお前の武器となろう>

 

士官としての教育を受ける中で幕僚長であり教官でもあってカメレリオンの言葉が脳裏を過る。

若い頃の自分はその言葉に憮然とした表情を隠せず次の瞬間にはカメレリオンに笑われたものだった。

(せめて私が多少なりとも前線で功績を積んでおけば、今以上に多くの者達が話だけは聞いてくれたやも知れん)

その多少なりともの実績を持つカーグラを横目にフクロウルは碌に前線に出てこなかった事を後悔する。

同じ空軍における参謀であるフクロウルとカーグラだが、その性格もあってか前線に飛び出す事も多く失態もあるがカーグラは前線において幾つかの功績を上げており、槍働きで目立った武功の無いフクロウルよりかは話には応じてもらっている印象がある。

「ようし・・・決めた!!」

拳を握り締め頷くカーグラにフクロウルが怪訝な顔で振り返る。

「キキキキ・・・私、旧来派に潜り込んでみる」

「なっ・・・!?」

カーグラの提案にフクロウルは目を丸くする。

「正直このままやっていても満足な結果は得られないと思うんだ。なんか最近旧来派の動きが分からなくなってるんだよね。な~んか嫌な予感がするからさ」

「だが幾ら何でも危険すぎる。ここは私が・・・」

「頭でっかちのローがそんな器用な事出来るの~?それに私と違って理屈だけで動くアンタが『仲間になりたい~』とか言って近づいてきても逆に怪しく思われるのがオチだよ」

「まあ・・・そうだろうな。私がカメレリオン幕僚長であれば間違いなく潜り込んできたスパイと見るだろう」

落ち込む様に視線を落とすフクロウルの両肩に手を置くカーグラ。

白い歯を見せながら自身に微笑む彼女の姿に知略や武勇と言った物とは違う、持って生まれた才或いは魅力と言う物がこの世に存在する事を教えられる。

「安心して。やばくなったらローの所に逃げて来るから。だからローは今まで通りにしてて。時々手に入れた情報も教えるからさ」

「ああ分かった。だが本当に身の危険を感じたらすぐに旧来派から離れるんだぞ」

「キキキキ・・・心配してくれるんだ。嬉しいなあ」

「当たり前だ。私にだって理屈やら軍規などのしがらみよりも優先し守るべき物はある」

フクロウルの真っ直ぐな言葉にカーグラはまるでからかう様な表情を浮かべたものだった。

「あれ?もしかしてこれってプロポーズ~?」

己の胸を肘で衝いてくるカーグラにフクロウルは照れた様に顔を逸らしていた。

「正直出会った頃からお前の事は気に入らん。だが一緒に居て退屈はしない。私からすれば騒がし過ぎるが・・・」

「よ~しじゃあ続きはこれが無事に終わったらね。早速だけど行って来るね~」

珍しく口籠るフクロウルにカーグラは指を立て黙らせるとそのまま走り去っていく。

そんな彼女を止める事が出来ずフクロウルは見送る事しか出来ない。

どこまでも不器用な自身に歯噛みするしかないのだが、まさかそれがフクロウル自身、レプリフォース内においてカーグラを見た最後の姿になるとは思いもしなかったのである。

 

 

 

(あ・・・やば)

と思った時にはもう遅かった。

何時もの様に連邦政府本部での組織設立に向けての話し合いをせんと本部内の一画で待機していたフェザリオンであったのだが。

目の前の席に腰を下ろす壮年の男性にフェザリオンは静かに息を呑むしかない。

「既に話はケインから聞いている。間も無く連邦政府からの正式な組織設立の認可も受けよう。レプリフォースからお前や合流した者達を引き抜く訳だがその件に関しては私からグランドリオンには話を通しておく」

「お・・・お手数をお掛けします」

緊張のあまり平服せんばかりに頭を下げるフェザリオンだが、そのボディよりも小さい相手である都合上、己の頭は彼の頭上にあった。

「レプリロイドの故障者・・・イレギュラーと呼ばれる者を狩る者達。警察と言うよりかはまるで狩人だな」

「狩る者(ハンター)・・・ですか」

「犯罪を犯したレプリロイドは故障者。人間の様に逮捕し刑務所に送って更生させる必要は無い。そもそも人間でも更生しようがない者は己の命で罪を償うのが古来よりの習わしだ」

彼の言葉を聞くまでも無くフェザリオンもイレギュラーに対しては破壊するしか解決方法は無いと思ってはいたが、実際に言葉として突き付けられると戸惑いを覚える。

「破壊・・・処分するしかない。それは理解してはいますが」

「原則イレギュラーは破壊し処分とする方向だ。欠陥が見つかった機械はリコールせねばなるまいからな。やはり同族殺しは心理的に負担か?」

「いえ・・・滅相も。先の事件はニュースで耳にし心を痛めました。今後、このような犠牲を少しでも減らす為には新たな組織を創る必要があると思ってはおりました」

思わず口にした言葉に刺す様な言葉で返されるがフェザリオンは再び頭を下げる他無い。

既に述べたがイレギュラーによる殺傷事件で既に何人もの人間が犠牲になっている。

その数は日に日に増加の一途を辿っているおり、それに伴う犠牲者の遺族や関係者による声を受けレプリロイド全体の風当たりも同時に強くなっていく。

「私個人の事は気にするな。私もケインを利用しレプリロイドを普及させる事で己の政治基盤を固めたのだからな・・・ある程度の報いとは思っている。だが同時にそのレプリロイドを世に広めたと言う事に対し無責任な立場でいる訳にはいかん。それ故に関係各所への根回しには協力させてもらった」

「エフレーモフ議員に置かれましてはご協力の数々本当に感謝致します」

エフレーモフとフェザリオンに呼ばれた男性は鋭い眼光を静かに閉じる。

「お前はまだ利口だろうから言っておく。お前はこれから警察組織設立を経て一種の特権的な力と権限を得る。だが我々連邦政府に逆らおうなど夢にも思うな。お前が考える以上に連邦政府は・・・人類と言うのは強かだぞ」

「・・・はっ、ははあぁっ!!」

いちいち言われるまで無く連邦政府がかつて同様にこの地球上において強大な力を持っているのはフェザリオンも理解している。

そもそもケイン博士らがレプリロイドを新しい世代のロボットをこの世に復活させ世界に普及をさせた時点で大破壊以前のロボット製造技術を唯一有していたレプリフォースのアドバンテージは失われている。

現時点において軍事力では連邦政府を上回るレプリフォースではあるが、経済力を始めとする軍事力以外での分野で勝る連邦政府に対し全面戦争を仕掛けた所で最終的には膝を屈する事となろう。

と言うのがフェザリオン個人の見立てだ。

ケイン博士が製作中の超高性能レプリロイド然りそれ以外にも政府或いは民間主導で数多くのレプリロイドが開発、製造されようと言うのだ。

ただの軍隊組織に過ぎないレプリフォースがそれら全てを相手取るのは不可能だ。

内心で最悪のケースを考えるフェザリオンの思考を読んだのか否か、僅かに口の端を歪めるとエフレーモフは席から立ち上がる。

「まあ我ら人類の安定と繁栄の為に働いてくれる事を祈っているよ」

言うだけ言ってその場を去るエフレーモフにフェザリオンは頭を下げ続ける他無い。

彼の姿が消えても暫くの間、頭を下げ続けていたフェザリオンだったが、後ろの方で咳払いの音が聞こえた事で漸く顔を上げられた。

随分と前からそこに居たのか白衣を着た壮年の科学者がバツの悪そうな顔でフェザリオンに笑いかける。

彼の傍らにはドップラーなる助手型レプリロイドもおり、彼の方も主と同じように苦笑いを浮かべていた。

「貴方達と話をするつもりがとんだ大物に捕まってしまいましたよ」

「いやあ済まない。彼の事は悪く思わないでくれ。昔はもう少し人当りは良かったんだが」

溜息交じりに話すフェザリオンにケイン博士とドップラーは席に座ると手にした端末に幾つかの画像を表示させる。

警察組織設立に向けての手続きやらスポンサーとなる企業からの支援やら進捗状況の確認と何度もここで繰り返されてきた地味な作業だ。

「色々と都合があっての。お主とレプリフォースから合流する者達を集め可能な限り早く組織設立に動きたい」

「設立は来年の年明けを予定していましたが・・・それを早めるのですか?」

フェザリオンからレプリフォースから合流する者達のデータを受け取ったケイン博士が額を押さえながら言う。

「年末・・・と言うかクリスマスより前の11月の月末までにはとの事です」

ドップラーの言葉にフェザリオンが目を丸くする。

「11月!?もう半年も無いではありませんか、短期間にレプリフォースから大量の離脱者を出せば改革派と旧来派がどの様な動きを見せるか分かりませんぞ」

何度も説明しているがレプリフォース内の情勢は不安定であり、中立派の存在もあって辛うじて組織としての体を成している状態だ。

フェザリオンを始め中立派或いは派閥争いに嫌気が差している者が一斉に動き出せば、その辺りのタガが外れるのは誰の目にも明らか。

「既にエフレーモフ議員らが改革派には話を付けている・・・と言う事になっております」

冷や汗を浮かべながら話すドップラーと僅かに渋い顔となるケイン博士を見据えフェザリオンは勘付く。

「まさか・・・警察組織の設立も含めそれに伴う我ら中立派の動きも何もかも・・・貴方がたの掌の上での事だったのか!?」

「いや待って欲しい。決して私達は君達を嵌めた訳ではない。それだけは信じて欲しい」

その顔を青くするフェザリオンに慌ててケイン博士が口を開く。

憤りのあまり今にもその場から立ち去らんフェザリオンであったが。

「・・・待て」

刺す様な声と共に場の空気が僅かに凍り付く。

何時の間にか己の真横に居た女性がゆっくりとした足取りで近づいてくる。

確かフィーネと名乗った女性だ。

彼女とはこの一件が始まる切っ掛けとなって以来の遭遇だ。

「私とケインが組織設立を急いでいるのは連邦政府の意向もあるがそれだけではない。結果としてだがグランドリオンらとの利害の一致もあった・・・そしてお前達の動きも利用したのも事実だ」

フィーネは黄金の髪を軽く手に触れながらフェザリオンに向かい合う様に席に座る。

「大首領(マスター)アルバート・・・彼の者が旧来派のカメレリオンと接触を図っている事実をこちらは掴んでいる。本格的に旧来派と奴が協力関係を築く前に改革派には彼らを叩いてもらわなければならないのだ」

「な・・・アルバート?何者ですかな?私はその様な下らない荒唐無稽な話など信じませんぞ」

今まで耳にした事すらない人物の名前を出されフェザリオンは思わず薄笑みを浮かべてしまう。

何を話すかと思えば子供が作り出したかのような陰謀論を話されればフェザリオンでなくとも、その話題をした相手を馬鹿にしてしまうだろう。

「そうだろうな。奴の存在を知る者などこの世でほんの一握り・・・」

「下らない。実に下らない。あまりにも馬鹿げた話だ」

相手の言葉を遮りフェザリオンは椅子から立ち上がる。

「今日の所はこの辺で・・・私も色々と忙しいので」

ケイン博士らに一礼をしつつその場を去るフェザリオン。

苛立ちもありその巨体を横に揺らす彼の背をフィーネは無言のまま見据えていた。

 

 

 

「フェザリオンが中立派を中心とした面々を引き連れレプリフォースを抜けるのに合わせ奴らは行動を開始するでしょう」

レプリフォース総本部内にある一画、幕僚長の私室で漆黒のボディを持つ巨人が静かに口を開く。

グランドリオンやフェザリオンらと同じ顔を持ちながら、常に浮かべるその険しい表情もあり他者に与える印象は彼らとは異にする人物。

統合幕僚長にして旧来派を率いるジェネラル=カメレリオンだ。

彼は目の前の少女が持つ端末越しに向こう側の相手と話を続ける。

<改革派がフェザリオンやケイン達の足を引っ張らないのを見るに既に政府から彼に話が行っているのだろうね。先手を打たれてしまったか・・・>

端末から若い男の声が響く。

「申し訳ございません。先の一件でも支援をして頂きながらレプリフォースの主導権をグランドリオンから奪う事は敵わず・・・」

<いやこればかりはどうしようもない。我々からしてもオクターヴの事は想定外だったんだ。十分な支援を出来なかった事を詫びよう>

「ですが不幸中の幸いかソルトコール以下海軍の半数は私に従うでしょう。いずれ起こる戦いを前にソルトコールには長期間潜伏をする拠点の準備を急がせています」

端末の向こうに居る人物にカメレリオンは恭しく頭を下げる。

<うん・・・それが良い。真っ向から戦って玉砕するよりかは逃げ延びて戦い続ける方が良いと私は思うよ>

姿こそ見えないが相手が僅かに目を細めたのがカメレリオンには分かった。

<既に何人かは送り込んではいるが君の下にある程度の戦力を差し向けよう。好きなように使ってくれたまえ>

「はっ・・・アルバート様のご厚意に感謝いたします」

増援を送ると告げ通信を切るアルバートなる人物にカメレリオンは再び一礼する。

 

パタンッ。

 

通信が終わり折り畳み式の端末を閉じた少女が静かに頭を下げる。

機械のボディである事から自身と同じレプリロイドなのだろうが、一切の感情を見せずまるで人形の様な彼女にカメレリオンは不思議な感覚を覚えるが彼女の事を詮索している暇は無い。

「援軍か・・・あまり期待しない方が良いぞ」

一室のソファーに腰掛けていた黒衣を纏った少年が感情の籠らない声を発する。

「元より私の策に外部からの戦力は入れておりません」

少年に対するカメレリオンの言葉もどこか素っ気無い。

「ほう・・・では私もか」

「貴方がヴォイド卿と言えど我らレプリフォースからすれば部外者である事には変わりありません」

ヴォイドと呼ばれた少年の目深に被った黒衣のフードから僅かに垣間見える眼光が揺らめく。

「個人的にアルバートよりかはアテにしてもらいものだがな」

僅かに肩を竦めた少年は部屋の隅に向けて合図の様に手を上げる。

当然だが端末を閉じ部屋の入り口付近に移動した少女に向かってではない。

「・・・アジール。お前はカメレリオンの命令に従って動け」

「ハァ・・・了解しました」

気配さえ発さずにその場に現れた長身の人物にやる気無さげに返答する。

何時もの事なのかその態度に特に反応は示さず、ヴォイドの姿は現れた時と同様に消え去ってしまう。

その彼に付き従っていた少女も同様だ。

一室にアジールなる人物と二人きりとなり場の空気が張り詰める。

「確かカメレリオンさんでしたなぁ。俺の名前はアジール。まあ見ての通りのモンですよ」

バイザーでその瞳を隠した男は唯一露わになっている口に笑みを作り、自身よりも巨大なカメレリオンを見上げる。

この場を去ったヴォイド以上に胡散臭い男だが、底知れぬ実力を持つのはすぐに分かる。

下手な戦力が援軍に来るよりも強力な存在と言えよう。

尤もそれはこの男が自身の為に本当に動いてくれればの話なのだが。

「大量の敵を相手に大立ち回りって言うのは俺の相方の方が得意でしてね。今はそいつは居ないんで俺は俺の得意な事で旦那のお手伝いさせてもらいますぜ」

言動から粗野で品位の欠片も無いアジールだがその彼の気配が言葉と共に変質していく。

数々の戦いを経験したカメレリオンでも滅多に感じぬほどの底冷えする殺気に身が僅かに震える。

「最近旦那が鬱陶しいと思ってる奴はいませんかい?居たら俺がそいつにちょいと挨拶に行ってきますよ」

そう言って笑みを浮かべるアジールにカメレリオンは数秒ほど思案する。

次にカメレリオンは眼下のアジールが浮かべている笑みと同種の物を向け向かい合うのであった。




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇フクロウルとカーグラについて
若い頃の彼らの関係性は後のフレイヤとイヤズィークのそれに近い。
両者に加え後の総監であるフェザリオンの三者が策謀面で空軍を支えていた。
フェザリオンの肩にそれぞれ乗り、止まり木の様にして口論に近い議論をするのはよくある光景であったらしい。
前線には滅多に出ず後方での司令官の補佐や代理での艦隊の指揮などを主に担っていたフクロウルは戦場での武功はこの時点でほぼ無いと言っても良い。
そのせいで軍内における武断派から見下されていたようだ。逆にフクロウルの方も武断派を単細胞扱いするなどしていたのは付け加えておく。
そんな彼とは違いカーグラの方は参謀でありながら前線に出て直接戦闘行為に及ぶ事もあり、その分失敗もあり出世争いではフクロウルに負けていたが前線に出る兵士達からの信認は厚かった。
人望面ではフクロウルよりも優れていたと言えよう。
性格的にも正反対であった両者はお互いに足りない所を補い合う名コンビであった。

二人が口論気味の議論をしている際の台詞でも分かるが、フクロウルは中立派の改革派寄りで。
カーグラの方は中立派の旧来派寄りで彼女の方は若干連邦政府に対する警戒感を持っている。
勝手に夜逃げしそうなフェザリオンを見限る形で行動を開始する二人だったのだが、まだ若い両者にとって事態は思わぬ方向へと進んでしまう事となる。
因みに言うまでも無いが相思相愛。もしも一連の出来事が無ければ・・・無事に添い遂げていただろうが世は理不尽である。

〇エフレーモフについて
後の話に出て来る彼は年月も経ち多少丸くなっているのだが、この時点ではアスールの一件もあり人当たりが非常に悪く高圧的となっている。
特にレプリロイドに対しては差別意識を隠す事無くフェザリオンに言い放っているが、誰かに八つ当たりをせねばやってられない精神状態であり、フェザリオンもそれを理解しているが故にあまり強く反感を抱けない辺り彼も彼で人が好過ぎた。
とは言え後のハンター設立に向けての政治的な根回しは積極的に行っており、ハンター設立において中立派の面々が多く参加する事を利用しグランドリオンこと後のジェネラルに旧来派を攻撃する口実を与えようとしていた。
一連の動きはジェネラルも同意しており、フェザリオンは秘密裏に動いているとばかり思っていたようだ。

彼の妻であるイリヤ=エフレーモフだがリブート前はアスールの殺されたと言う設定しか情報のない人物であったので今回から色々と変更。
この辺りはケイン博士らによるレプリロイド開発話にも繋がるのだが、ライト博士とワイリーと言う二大巨頭によるロボット開発が源流と言えた20××年代と違いケイン博士らは友人であるバイルを始めとする多くの科学者などが携わるチームでレプリロイド開発を行っている。
イリヤもその内の科学者の一人であり、ケイン博士から見ると同僚兼パトロンで友人マクシームの妻でもあった。
いずれにせよケイン博士がチームの中心であったことからケイン博士がレプリロイド工学の父とされていると言う設定。
チームで共同で開発したと言うのはレプリロイド誕生からその普及速度を鑑みるとアリなのではと思い設定した。
いずれにせよイリヤはアスールによって息子と一緒に殺害されているのだが・・・あまり書きすぎるとネタバレなどになるのでここらで割愛させていただく。

〇アルバートについて
この時点では現実にもはびこる陰謀論が信じてそうな存在。
ただ実在すると言う点では現実の陰謀論よりも厄介か。
レプリフォースの派閥争いにも裏で介入を行っており、ヴォイドなどを通して度々情報交換を行っていたようだ。
あとアジールに関してはこの時にはイレギュラーハンターが存在しないために当然の事ながらカウンターハンターを名乗っていない。
ただのアルバート傘下の怖い人である。
岩本版の初期単行本モチーフも兼ねて柄が悪いチンピラな感じとした。
と言うかバイザーで顔を隠しているなども含め、彼は後にカウンターハンターとして恐れられるアジールから見て先代に当たる人物なのであしからず。
この世界では実は相方も含めアジールと言う呼び名は襲名制だったりする。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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