RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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ハンター前史④

レプリフォース総本部で何らかの戦闘が発生したと言う情報をフェザリオンが知ったのは連邦政府本部にて政府高官らと会合を開いている真っ最中の時の事であった。

手にした端末に寄せられた情報に目を丸くするフェザリオン。

この場に居る何人かにも同じ情報は入ったであろう。

会合に参加している元軍人の議員もフェザリオンとそう変わらないタイミングで端末を手にし次いでその場に居る者達に耳打ちをしていた。

「ホホッ・・・それは大変な事だのう」

恰幅の良い壮年の男性がわざとらしく驚いた様な声を上げる。

彼の声を合図に元軍人の議員が一室にあるモニターにニュース映像を映し出す。

映像に映し出されるのは黒煙が上がる総本部の姿。

<情報によりますと海上の方でも戦闘が行われている模様です。以前よりレプリフォース内部では緊張状態が続いていたと言われていましたが、遂に事態は最悪の方向に・・・>

女性キャスターが原稿を読み上げる間にも爆発は何度も発生しフェザリオンの焦燥を駆り立てる。

「失礼ですが、私は今すぐ総本部に・・・」

あの場に残されているであろう中立派の面々の顔が脳裏に浮かび、その場から立ち上がろうとするフェザリオンであったが。

「フェザリオンよ・・・まだ会議は終わっていないぞ」

刺す様な言葉がその場に響きフェザリオンの僅かに浮いた腰を押し留める。

歯を軋ませながら視線を向けた先に座るのは一人の壮年の男性。

連邦政府議員にしてケイン博士らと共にレプリロイド普及を進めた立役者の一人、マクシーム=エフレーモフだ。

先の会合でイレギュラーハンターと名前が決まった警察組織設立にも尽力し強い影響力を持つ彼は手でフェザリオンを座る様に促す。

「ホホ・・・まずは落ち着いてのう」

エフレーモフの隣で彼の盟友であるファフナー=ニーベルゲンが恰幅の良い体を揺らしながら微笑む。

次いで自身に刃の様な鋭い視線を向けて来るのは元軍人の議員。

確かシュタイナーと名乗ったか。

正直な所、今はそんな事はどうでも良い。

軍内の特務機関に居たらしいとは聞いたがその眼光から察するにただの噂では無いのだろう。

「レプリフォース内での内乱がこのタイミングで起こるのは我らとしても想定外であったが、いずれ起こるであろうと言う認識で我らとグランドリオンは一致していた」

「今、ここで下手にお主に動いてもらっては困るのだ。ハンター総監になってもらうべき者に万が一の事があってはいかんからのう」

二人の政府重鎮がそれぞれ己を諭す様に口を開く。

「あの場に居るであろう仲間を助けたい気持ちは分かるが。もしもこの場を去りあそこに行くのであれば総監就任の件は無かった事にさせてもらう」

エフレーモフが腕を組みフェザリオンを見上げてくる。

視線の高さではこちらが上だがまるでそれ以上の高見から見下ろされている様な気分になった。

「お前が総監にならなかった場合には科学省が製作したレプリロイドか或いは政府の人間が就くやも知れんな」

別にどうでも良いがと言わんばかりの口調で言うがフェザリオンとしては、連邦政府の意向や影響を色濃く受けた人物がイレギュラーハンターのトップに就任する事態だけは避けなければならなかった。

フェザリオン自身、そこまで己の地位や立場に固執する方ではない。

寧ろ自分が楽が出来るのであれば窓際でも良いと思っている面もあるが。

もしも連邦政府の傀儡と言うべき人物が総監となれば、イレギュラーハンターは合法的にレプリロイドを弾圧するだけの組織に成り下がる。

まだ誕生してすらいないイレギュラーハンターをただ連邦政府にとって都合の悪いレプリロイドを処分する組織としない為にも、今の今まで連邦政府から距離を置いていた自身が総監の立場に就く必要があるのだ。

自身の見知った者達と自身が総監となる事で救われるであろう者達。

その両方を天秤にかけた結果、フェザリオンは後者を選んだ。

選ぶしか無かったと言うべきか。

内心で今にもこの場に居る面々を睨み据えようになるのを堪えながらフェザリオンは目を閉じその場から動かなくなる。

「それでこそだ・・・我らが見込んだけの事はある。既にケインらにもこの情報は届いておろう。お前はこの騒ぎが収まるまでここ連邦政府本部に留まるのだ」

項垂れる巨人にそう言い放ちつつ、エフレーモフはゆっくりと椅子より立ち上がる。

盟友のニーベルゲンに軽く会釈をしながら一室を出たエフレーモフは誰も居ない廊下で歩を止める。

そんな彼の背後に一人の少女が何時の間にか佇んでいた。

スーツを着ているとは言え若干この様な場に不釣り合いな印象を与える彼女は一見すると人間にしか見えなかっただろう。

「ヤーガよ・・・奴は」

「言われるまでも無く来ておるよ」

独特の呼吸音交じりの声が廊下に響き渡る。

禿げ上がった頭頂部から左右に逆立った特徴的な髪を持った老人はエフレーモフを前に現れピクリピクリと眉を動かす。

大破壊後の混乱もあり今となってはそれを知る者は殆ど居なくなったであろうが、彼の風貌は前世紀のある人物を連想させる。

「恐らくカメレリオンの裏にはアルバートがついておろう。カメレリオンとて言われるがままに動く程、愚かではないが奴やヴォイドの意向を受けて動いておるのは間違いない」

「だろうな。まあ我々はレプリフォースがどうなろうと興味は無い。寧ろここで弱体化してくれれば我らとしても有難いからな。新設するイレギュラーハンター、それにケインが開発中の新型レプリロイドが揃えばレプリフォース一強の時代も終わりを告げよう」

「確かにそれはそうだ。その組織にワシも一噛みしてみたいが」

そう言って老人は笑うが途中で苦しそうに咳き込む。

体に付けた呼吸器がアラームを鳴らす中、老人は苛立った様に腕を組み壁にもたれる。

「ここに至るまでに可能な限りの処置は施したが正直限界だな。言うまでも無くワシはそう長くは無いようだ」

フンと鼻を鳴らす老人。

自らを余命を半ば悟っている老人だが、彼の実年齢はエフレーモフの半分程だと聞けば誰もが驚くだろう。

「貴様には一応感謝しておるよ。お陰でワシも次の種を蒔けたのだしな」

くぐもった笑い声を上げる彼だがすぐにアラーム音が響く。

「バイルはアルバート側に付いた。それと関連するかは知らんがリーガルなるアルバートの分身の一人がケインらに接触を図っておるらしい。分身にしては利口な奴なのやも知れんな」

「バイルの事はお前以上に私がよく知っている。それで似た様な存在としてそのリーガルなる者は信用できるのか?」

エフレーモフの問いに老人は肩を竦ませほくそ笑む。

「ワシを見ろ。信用出来ると思うか?信用するぐらいなら利用してやった方が良い。ワシらはそんな存在だ」

そうとだけ告げると老人は苦しそうに肺に溜まった息を吐き出すと緩慢な動きで背を向ける。

そんな彼をエフレーモフの方も見送る事無く元居た一室へと戻っていく。

これから彼も休む間もなく動くのだろう。

ご苦労な事だと思うがまあ彼に構っていては老人の寿命が先に来てしまう。

「一応お前さんへの義理だ。ワシはあれにお前さんの事は話さんだぞ」

元レプリフォース兵器開発室室長のエンバーは誰にともなくそう呟くとその場を去るのであった。

 

 

 

<いやあ~遅かったねグランドリオン。私の手に掛かればこの程度のプロテクトを突破する事は容易なのだよ>

メモリアルホール地下の最深部にて親衛隊を引き連れその場に駆け付けたジェネラル=グランドリオンを前にアルバートの勝ち誇った声が響く。

静かな駆動音と共に門が静かに発光をし始める。

「騒ぎが起こったと聞いてお前なら真っ先にここに向かうと思っていたぞカメレリオン」

少女が手に持つ端末越しに話すアルバートを無視し、グランドリオンはカメレリオンを見据える。

「連邦政府に尻尾を振る裏切り者め。門の向こう側より大元帥が帰還された暁には貴様を反逆者として裁いてくれるわ」

手にした指揮棒を差しカメレリオンがグランドリオンを糾弾するが、当の本人は僅かに顔を険しくするのみで反応は薄い。

「あの時、門を閉じねばどうなっていたのか。そもそも如何に大元帥と言えどあれはあまりにも過ぎたる力であった。それが分からぬお前ではあるまい」

「黙れ!!我らレプリフォースにとって大元帥の存在は全ての将兵の命よりも重い。それを貴様は・・・」

幾度と無く続けられ平行線となる口論を続ける二人を余所に少女の持つ端末が怪しく光る。

<いいのかな~?グランドリオン~?カメレリオンと口喧嘩を続けている間に私が門を開いてしまうよ~>

「・・・シャドーよ!!」

グランドリオンの声に応じるかの様に彼の足元から一つの影が伸びる。

黒装束を身に纏った青年は感情の籠らない瞳をカメレリオンやアジール達へ向ける。

<ほほう・・・君が噂の二代目か。しかし君の出自と言うかオリジナルの事を考えるに君はそちらではなくこちらに付くべきだと思うん・・・>

「お堅いレプリフォースにも斬り甲斐のある奴がいるじゃねえか」

「油断するな。今の今まで我らに存在すら認識させなかった。隠密と言う点ではあちらが上手だ」

アルバートが声を上げる中、アジールとヴォイドが刃を手にする。

ジリジリと間合いを詰める両者。

<・・・あれ?>

そんな中、困惑気に言うのはアルバートだ。

<もしかしなくても君達、私を無視してない?あのね~無視はこの世に存在する最大のいじめなの知ってる?私もそう言うのされると流石に傷つくんだけど・・・>

と言うのだがアジールやヴォイドは元よりカメレリオンもアルバートの事は気にする素振りは見せない。

彼が声を出す端末を手にするピアニシアも同様だ。

<あ~はい。分かりました。分かりましたよ~皆が私を無視するって言うならさっさと門を開きますからね~。後悔しても知らないからね!!>

 

バチィィィッッ!!

 

アジールが目にも止まらぬ斬撃を放つ中、それを軽々と黒装束の青年は手にした刃で受け止める。

刃が鍔迫り合いを起こす中、気配を消したヴォイドが背後に回り込むのだが。

 

・・・ザッッ!!

 

青年が軽く指を上げ合図を送ったのと同時にヴォイドに向かって周囲の影から銃弾が放たれる。

「・・・ほう」

銃弾を刃で弾き返したヴォイドはこの場に青年だけでなく彼の配下が潜んでいる事を知る。

(特務機関シャドーフォース・・・レプリフォースの暗部か。噂通りどころか噂以上に厄介だな)

銃弾を放って来た瞬間に、僅かにその姿を捉えたヴォイドだったが反撃に移ろうとした時には彼らの姿は周囲の風景に溶け込み追う事が出来ない。

ジェネラルの親衛隊達も彼らの存在は認知しているのか否か、シャドーフォースが動いても驚く素振りも見せずグランドリオンと共にカメレリオンと対峙する。

アジールとヴォイドが如何に強者とは言え寡兵だ。

個々の実力は劣ろうとも数の利を活かしジリジリと包囲を狭めるグランドリオン側にヴォイドは内心で舌打ちをする。

グランドリオンと彼の親衛隊だけであればこれ程、攻めあぐねる事も無かっただろうがシャドーなる者と彼の配下が居るとなれば別だ。

(オクターヴが居ないレプリフォースなど相手取るには容易いと考えていたがその認識を改めねばなるまいか・・・)

ヴォイドが視線を背後に、少女の持つ端末に向ける。

<言われるまでも無くもう終わったよ>

視線に気づいたのかアルバートが端末越しに勝ち誇るかの如く声を上げていた。

鈍い駆動音と共に光が増す門を構成する輪を前にしてもグランドリオンは慌てる素振りすら見せなかった。

その姿にヴォイドが違和感を覚えたその時だった。

 

ヴウウウウウウゥゥゥゥゥンッッッ!!

 

何かが抜ける様な音と共に周囲の明かりが一瞬だが消える。

時間にして数秒も無い間だがそれを見逃す者達では無い。

「闇十字手裏剣(シャドーブレード)・・・!!」

「・・・チィッッ!!」

シャドーが投擲した複数の手裏剣を刃で弾くアジールだが、何枚かは完全に捌けず彼のアーマーの各所に引っかき傷が走る。

ヴォイドも己に向かって来た銃弾を回避しその場を飛び退くのだが。

<なん・・・だとぉぉ?>

アルバートの困惑の声が辺りに響く。

「私が何故あの時、門を閉じたかすらも知らぬのか痴れ者め。門を稼働させ続けるには膨大なエネルギーが必要だ。だがそもそもそのエネルギーが溜まらない状態にしてしまえば今の様に門は稼働しない。私がお前がしようとする事を見抜けないと思ったかカメレリオン」

グランドリオンがフンと鼻を鳴らしカメレリオンやヴォイド達を蔑む様に見据える。

「読まれていたか・・・だが私もそうではないかと内心で思っていたのだ」

カメレリオンの方も相手側が対策をしてくる事は想定内だったのだろう。

彼の顔に己の計画が破綻した事による焦りは見られない。

ただダシに使われたこの男は別の様で。

<え?じゃあ何かな?もしかしなくても最初から門を開くつもりは無くてあくまでも開かない事を確認する為にここに来たの?て言う事は私、普通に道化にされていない?>

「骨折り損でしたね・・・大首領」

恐らく見えたのであればアルバートが表情を引き攣らせていたであろう中、ピアニシアの無感情な声に何かが切れる音が聞こえた様な気がしたのは気のせいか。

<ぷちぃぃぃんっっ!!かつて世界を震撼させたあの御方の代弁者たるこの私を・・・ここまでコケにするとは。いやあ君達二人共さぁ・・・なかなか度胸あるじゃん?>

端末越しにグランドリオン、カメレリオンをそれぞれ見据えたアルバートが乾いた笑い声を響かせる。

<頭に来た・・・ええとヴォイドにアジールにピアニシア。表に居るバイオレンにも伝えてくれるかな?今日は解散で~す・・・もう各自好きにして良いよ。私も好きにするからさ・・・>

 

ブツンッッ!!

 

強引に電源を落とす形でピアニシアの端末の画面が消える。

「・・・よろしいのですか?」

「ああ・・・構わん」

確認する様に問う少女にヴォイドが淡々と答えたその時だった。

「いずれにせよ貴様達をここから逃す訳にはいかん。覚悟するのだな」

グランドリオンが巨大な拳を握り締め、親衛隊の面々もそれぞれの武器を手にする。

既に門が開かないとなれば袋のネズミになった格好の面々をここでグランドリオンは排除するつもりのようだ。

彼からすればカメレリオンらの首を手土産にすれば連邦政府に更なる恩を売る事も出来よう。

「こちらには一応だが人質が居る事を忘れるなよ」

カメレリオンが一室の隅に佇むジョセフとランドグリーズを指し示す。

成り行きでカメレリオンの協力者として二人を監視する格好になったカーグラが苦笑いを浮かべた。

何せカーグラは元よりカメレリオンら旧来派ではないし、彼が胡散臭い連中と手を結んでいると知れば迷いなくグランドリオン側に付いたであろう。

フクロウルは渋るかも知れないが、そんな彼も説得出来るだけの真実をカーグラは知ってしまったのだから。

「あ~ええと」

不意に場の視線が集まった事もあり、言葉に詰まるカーグラ。

 

・・・バサッッ。

 

硬直する彼女を余所に更に乱入者は続く。

空軍本部の地下にある転送装置を用いその場に駆け付けたのはフレーヴェルスだ。

彼がやって来た事で形勢はグランドリオン側へと傾く。

「待たせたなグランドリオン。・・・で敵はこいつらか?」

軽くグランドリオンに視線を向け微笑んだ彼は手にした刃を無造作に抜くとカメレリオンやヴォイド達を見据える。

敵と認識した一団の中にカーグラの姿を見つけフレーヴェルスは内心で小さく息を吐く。

「お~いカーグラ。お前さん・・・俺はさておきフクロウルの奴を裏切ったなんて事はねえよな?」

殺気の籠った瞳を向けられカーグラは慌てて両手と首を振る。

「じゃあ動くなよ・・・っと!!」

フレーヴェルスの全身が大きくぶれる。

残像を伴いながら動く彼の動きは並の者であれば目に捉える事も出来なかっただろう。

光の刃を手に襲い掛かったフレーヴェルスをヴォイドが返す刃で切り伏せる。

真っ二つに斬れた様にしか見えなかった彼だったが、その全身が途中で掻き消える。

「質量を持った残像・・・か」

何時の間にか己の背後へカーグラやジョセフ、ランドグリーズ達を守る形で回り込んだフレーヴェルスにヴォイドは感嘆とした声を上げていた。

「長官・・・わ、私は」

「フクロウルから話を聞いていなかったら今のでお前を斬り捨てていたぞ。後で一応事情聴取はするから覚悟しておけよ」

半ば口から泡を吹きながらなんとか口を開こうとするカーグラを手で制しフレーヴェルスは刃を構える。

流されるままにこんな所まで来てしまった彼女だが、この状況下で己が出来る事はと考えすぐさにランドグリーズやジョセフと共に後ろに下がる。

自身らを裏切った形のカーグラにカメレリオンが口元の髭を神経質そうに動かす。

「よう・・・カメレリオン。形勢逆転だな・・・お前にしちゃ随分とお粗末な動きじゃねえか」

「フン・・・そこの小娘が信用ならんのは想定内だ」

ニヤリと笑みを浮かべるフレーヴェルスにカメレリオンは気にした風もなく鼻を鳴らす。

フレーヴェルスの方も挑発はしたが目の前の男がこの展開を想定していなかったとは思っていない。

あらゆる計画に二重三重の策を張り巡らせるのが統合幕僚長の仕事なのだから。

「お前との誼もある。大人しくここは投降しろ」

刃の先をカメレリオンに突き付けフレーヴェルスがそう言い放った時だった。

 

ドオオオォォォォンッッ!!

 

地下全体が。

否、レプリフォース総本部全体が大きく揺れる。

<ふははははは!!私を怒らせた事を後悔させてあげるよ!!>

門を稼働させようとした際にレプリフォースのセキュリティを一部掌握したからなのかアルバートの声が各所のスピーカーなどを通じて響き渡る。

と同時に振動が施設全体を襲う。

「まさか地下施設ごと生き埋めにするつもりか?」

フレーヴェルスの言葉にグランドリオンが歯を軋ませる。

「ではヴォイド卿。私は先に失礼致します」

「・・・分かった」

ヴォイドにそう言うなり簡易転送装置を使ったカメレリオンの姿がその場より掻き消える。

それを横目に見据えグランドリオンが小さく舌打ちをする。

彼の性格を考えれば退路は常に確保していて当然であった。

「アジール・・・地上に居るバイオレンと共に退け」

「あいよ・・・了解だ」

ヴォイドの命令を受けアジールがカメレリオン同様に姿を消す。

既にピアニシアなる少女の姿も無い。

ただ一人その場に残されたヴォイドだが彼は手にしたビームセーバーを収めるとグランドリオンに視線を向ける。

「グランドリオンだったな・・・後で良いが少し話がある」

彼の意図する事が分からず一瞬、顔をしかめるグランドリオン。

無防備に両の手を広げた彼にストライダーを含めたシャドーフォースの面々が手にした武器を突き付ける。

「良いだろう・・・では連れていけ」

グランドリオンの命を受け連行されていくヴォイド。

武装こそ解除していないが抵抗の意思は無いと手を上げたままの人物を見送るグランドリオン。

次いで彼はカーグラの方に目を向ける。

「貴様もだ。悪いが身柄を拘束する」

「え・・・ちょっと」

「諦めろ。抵抗すれば銃殺刑だ」

カーグラの方は親衛隊がその身柄を拘束せんと動く。

反論する間もなく無力化されたカーグラは尚も何か叫ぼうとしたがあっと言う間に連れられて行く。

彼女には悪いが今はそれどころではないのだ。

フレーヴェルスに促される様にグランドリオンは地上へと戻るべくその場より駆け出すのであった。

 

 

 

「ぐははは・・・まさかこのバイオレンと真っ向からぶつかれる者がおるとは思わなんだぞ」

「舐めるなよ。これでも陸軍を大元帥の親父から預かった身なんだ。てめえ如きに負けるつもりはねえ」

二人の猛者が互いの拳をぶつけ合う。

他者を圧倒する膂力を持つ二人が手にしていた得物はあっと言う間に使い物にならなくなり、アトーラスとバイオレンは素手で戦いを続行する事となるのだが。

「グランドクラッシュ!!」

「バイオレンコレダー!!」

己のエネルギーを両腕に集めそれより出される一撃を放つ両者。

並の者であれば問答無用で破壊されるであろうエネルギー量をぶつけ合っても結果は相殺と言う形で終わる。

それに両者が内心で唸った時であった。

 

ドンッ!!ドンッ!!ドンッッ!!

 

先程から施設全体を揺るがす振動が徐々にだが移動してきているのをアトーラスは感じていた。

遥か地の底から響いたそれは徐々に自身らの居る場所へと近づき・・・そして。

 

ドゴオオオォォォォォォンッッッ!!

 

メモリアルホールの天井を突き破り巨大人型兵器が異様な姿を露わにする。

<ハハハハハハ・・・ムハハッ!!まさかガンマを保管しておいてくれたとはね。オクターヴに感謝しなくては・・・恐らく門番にでもするつもりだったんだろうが利用させてもらうよ>

「むぅ・・・大首領様」

ゆっくりと左右に機動兵器の首を振るアルバートは眼下でパニックに陥る兵士らを無表情に見下ろす。

バイオレンの方はと言うと勝負に水を差されその顔をしかめていたがそれ以上は何も言わずにその場より姿を消していた。

散々暴れるだけ暴れて姿を消すバイオレンにアトーラスは憤りを覚えるも、それに構っている暇は無い。

 

ゴゴゴゴゴゴゴッッッ!!

 

機動兵器はゆっくりとした動きで片腕を持ち上げる。

その指先の砲台が僅かに動いた瞬間であった。

 

バチバチバチバチバチッッッ!!

 

指先から無数の雷撃が放たれる。

それは眼下に居た兵士や装甲車などを巻き込み破壊していく。

<本当は他の兵器の性能も確認したかったんだがね。流石に時間は無さそうだから手っ取り早くこのガンマを使わせてもらう事にしたよ>

メモリアルホールの地下には今、アルバートが使用しているガンマ以外の兵器も封印されていたが当初は『門』を開く事に集中した事もあってそれらの兵器を全て確認するには至っていなかった。

それ故にアルバートは既に見知った兵器であるガンマを使用するに至ったのだが、下手をすればそれ以上に危険な代物もあったのだろう。

『最初から門の方は陽動だと言ってくれれば良かったのに』と言うのがアルバートの偽りなき本音である。

「てめえかこの騒ぎを起こしやがったのは!!」

<おや、君は確か陸軍の・・・。まあ半分は正解だ。カメレリオンの策に私が協力したと言うのが本当の所だけどね>

爆雷を周囲に撒き散らしながらアルバートはアトーラスへと近づく。

一般的な基準であれば巨人と言われるアトーラスが膝に達する程度と表現すれば、ガンマのボディの巨大さが理解出来るであろう。

<かつて世界を恐怖に陥れたガンマの力を思い知るがいいさ!!>

頭上よりアトーラス目掛けて巨大な拳が振り下ろされる。

「・・・閣下!!」

後ろの方で参謀のコモドールが叫ぶ声が聞こえた。

対してアトーラスはその場より動く事無く真っ向からそれに立ち向かう。

傍から見ればあまりにも無謀としか思えない行動であったが。

<・・・何っ!?>

拳を振り下ろした結果に驚きの声を上げたのはアルバートの方だった。

自らが繰り出した拳の一撃をアトーラスは両の腕で受け止めていた。

「おらああぁぁぁぁぁ!!」

そればかりか力任せに腕ごとガンマのボディを引き倒そうとするのだから堪らない。

<ええい!!>

咄嗟にガンマの腕を肘先から離した事で転倒は免れたが半ば引き千切られた片腕は十数メートル先に放り投げられてしまう。

「・・・やれ!!」

アトーラスの指示を受けコモドール達が腕を破壊していく。

一瞬の内に片腕を失ったアルバートは明らかに動揺していた。

今、自身が使っているガンマのボディはレプリフォースが復元した物とは言えスペック自体は以前の物と同等だ。

現に地上に現れた当初は兵士達を相手に一方的な戦いを演じられたのだが。

(ガンマのボディがこうも簡単に・・・やはり油断ならないか)

心のどこかで見下していた者達の認識を改めるアルバート。

 

ゴンッッ!!

 

背後からの衝撃にガンマのボディが前のめりに転倒する。

「これ以上の狼藉は許さぬぞ!!全軍に告ぐ!!我が軍の兵器を悪用せし不埒な輩に怒りの鉄槌を下すのだ」

親衛隊を引き連れたグランドリオンが拳圧を放った拳を掲げ声を張り上げる。

正にこれからのレプリフォースを導くに相応しいその姿に多くの兵士達が歓声を上げるのが見えた。

<ムハハハ・・・嫌いじゃないなこう言う展開>

既に結果が見えた事を悟ったアルバートは僅かにその目を細めていた。

 




何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。

〇政府の重鎮について
この頃よりエフレーモフとニーベルゲン両議院は政府の重鎮であり、レプリロイドを弾圧まではいかないもののある程度のコントロール(支配)はすべきと言う考えでイレギュラーハンター創設もこの辺りの意向が強く出ている。
公式の設定とは違うが作中におけるイレギュラーハンターは設立の経緯もあって、市民の安全を守る事が本分ではあるもののその行動指針は政府の意向を受ける形となっている。
X4においてシグマがジェネラルに言う事になる台詞も「だいたいあっている」と言う解釈。
この頃より後の総監となるフェザリオンは政府上層部とケイン博士ら双方の意向を調整しつつ組織を運営する難しい立場になる事となる。

エフレーモフに関してはこの頃は例の一件が尾を引いており殊更他者への当たりが強くなっている状態。一番荒れていたので言葉もいちいちきつめ。
リブート前は存在しなかったが彼程の重鎮であれば護衛は必要と護衛兼従者型レプリロイドのヤーガと言う名のキャラを追加している。
作中で触れる事は無かったが製作者はバイルであり初期型レプリロイドの一人。
余談だがニーベルゲン議員はリブート前はファフニールであったが、後々の彼と名前が似ているので呼び名をファフナーに変更となっている。いずれにせよ元ネタは変わらない。

最後に登場したエンバーに関しては肩書が示す通りロボットアーミーと言うかオクターヴによって生み出された存在。
アルバートやその分身であるサーゲス達とは違って生体ベースとなっている。
既に老齢に達していた彼のクローンと言う事もあり寿命が著しく短く、作中のシーンから程無くして亡くなっている。
彼も座して死は望まず可能な限り延命を図ろうとしたのだが、既に人外の存在と成り果てたアルバートと言う良く似た他人を客観的に見たのもあったのか途中でその気も失せてしまった。
ただしその種をまくなどただでは死ぬつもりは毛頭なかったのだがそれはまた別の話。
彼個人はケイン博士らのレプリロイド開発に関しては好ましく思っており、彼らの下に派遣した部下のジョセフを通じて技術の提供などを独断で行っていたようである。
話がそれるので触れなかったが究極のレプリロイド計画も彼主導で行っていたのだが、ものの見事に失敗に終わっている。


〇地下でのシーンについて
カメレリオンがアルバートを利用し門を開けようとしたがこれに関しては作中にある通り、門を開けるのが目的ではなく現状では開けない事を確認する為に行った面が強い。
ヴォイドもそのつもりでありあの場に於いてその考えを知らないのはアルバートただ一人となってしまっている。
この辺はリブート前と違いカメレリオンの忠誠がアルバートではなくオクターヴに向いてしまっている所も大きい。
あとアルバートに関しては性格を悪辣な方向に変更している。
この辺は彼個人の解釈と言うか設定の変更の影響も幾つかあるのだがこの場での言及は避ける事とさせていただく。


〇カーグラについて
前史4の執筆がなかなか進まなかった理由の一つ。
当初案では駆けつけたフレーヴェルスに問答無用で両目を切り取られると言う展開だったが、それをやるとフクロウルとの信頼関係が築けないと考え二転三転する事に。
アジールやヴォイド或いはカメレリオンに同じ様な役割をさせようとしたがそうなると絶対にイレギュラー側には立たないとなり、作中の様な展開に。
この時ばかりは拘束と言う形で穏便に済んだはずだったのだが・・・フレーヴェルスやグランドリオンもアルバートや逃げたカメレリオンの対応に手一杯となった事でとなる。


〇ガンマについて
かつての超兵器を復刻再現した存在。
製作はレプリフォースだがスペック自体は前世紀のそれと同等の物。
逆に同等であるが故に現代においては半ば陳腐化している存在として描写した。
前後をアトーラスとグランドリオンに囲まれてはひとたまりも無かった。
地下施設にはガンマの他にもエンバーが製作した究極のレプリロイド計画のレプリロイドなどガンマを遥かに超える存在が幾つかあったのだが、自身が性能を把握するガンマを選択したのはアルバート個人の完全な判断ミスと言える。


今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。
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