RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
思った以上に長くなりました。
装いも新たにした銀色の巨人が用意された椅子にゆっくりと腰掛ける。
椅子の方は新調された物だが机の方は若干自身のそれとはサイズが合っていない。
その為、事務的な作業の方は手に持った端末の方が中心となる。
後ろ髪を引かれる思いでレプリフォースを後にしたフェザリオン。
カーグラの事なども含め彼が全てを知ったのはジェネラルらへ正式な辞表を出し、空軍内の知り合いに別れの挨拶をしていた時であった。
(またしても私は中途半端に対応し何もできなかったか・・・)
彼女の事が無くてもフクロウルには迷惑をかけっぱなしだったのだが、彼からは直接気にする事は無いと言われてしまっている。
それで『許されて良かった』と思えるほど、フェザリオンの面の皮は厚くない。
イレギュラーに対応すべく新設された治安維持組織イレギュラーハンターの総監と言う地位に就いた彼だったが、この事が何時までもしこりとなる。
「総監、失礼します」
一室に事務官の一人が敬礼をしつつ入って来る。
「あ・・・ああ」
物思いに耽ってしまったのと未だに総監と呼ばれる事に慣れていない事もあり、フェザリオンの反応は遅れる。
「また市民からの苦情です。それと新規に募集するハンターに関する関連企業と各研究施設からの問い合わせなのですが」
自身の持つ端末にあれやこれやと送られてくる資料の数々で思わず眉間に皺が寄ってしまう。
これは後々にも課題となるのだが相次ぐイレギュラー事件に対応すべく出動したイレギュラーハンター達。
彼らの記念すべき初出動は工場に立て籠もったイレギュラーを工場ごと破壊してしまうと言う目も当てられないと言わんばかりの失態であった。
幸いにして人的被害は無かったものの当然の如く工場を所有していた企業への賠償問題が生じる事となる。
(元レプリフォースの面々が中心となって動いているのだから加減が出来ないのも当然か)
内心で溜息を吐くフェザリオン。
それと隊員の殆どが元軍人あがりなのもあって一般市民に対し高圧的に対応してしまう事となり、そこで生じたトラブルもまた苦情として彼の下へ届けられる。
「とにかく成果は出さねばならんがまだ我々は生まれたばかりのひよっこよ。ある程度の躓きは覚悟していた」
目を閉じ呻くフェザリオンに事務官が何か言いたげな顔となるが、彼もまたそれがすぐに解決する問題ではない事を分かっているだけに一礼をし総監室を出て行ってしまう。
(ケイン博士やエフレーモフ議員らの口添えもあり少なくとも三年は余程の失態を仕出かさない限りは連邦政府も見逃してくれよう。来年にはハンター用に製作された高性能レプリロイド達も配備される。それまでは我慢だ)
何時の世も組織の立ち上げ時期には苦難が大きい。
一室の天井を見上げるフェザリオンだが、そこにひび割れと雨漏りの染みを見つけ思わず出るのは溜息だ。
今、ハンター本部として使っているこの施設も旧政府時代にロボットポリスの庁舎として使われていたのを格安で譲り受けたものだ。
イレギュラーハンターの運営が軌道に乗るまでの間はこの老朽化した施設で我慢する他無い。
フェザリオンは端末に映し出される漸く製作の目途が立ったと言うケイン博士製作の新型レプリロイドの設計図を見据え決意を新たにするのであった。
「そうか・・・我々としては貴方が科学顧問を辞してしまうのは誠に遺憾なのだが」
ジェネラルは己に見下ろされながらも堂々と腕を組む老人に深々と溜息を吐く。
「ホー、世辞は止せ。既にワシの様な年寄りの時代は終わりだ。このまま居座り続けても意味はないと判断した」
一連の騒動が一段落し漸くレプリフォースの新体制が始動すると言う中で科学顧問であったジョセフはジェネラルの下を訪れるなり辞表を提出していた。
兵器開発室長のアンバーに続く人材の流出にジェネラルとしては頭が痛い。
ジョセフ自身が年寄りと言ってはいるが彼に代わる人材はそうは居ないのだ。
それとイレギュラーハンターなる新組織にはあのケイン博士が参加しているだけにジェネラルの顔はやや渋い。
「なあにイレギュラーハンターに参加するなんて言う裏切り行為はせんさ。それにワシの開発技術はランドグリーズに全部授けてある」
「それは以前にも伺いましたが・・・」
既に前もって彼の助手であるランドグリーズが開発技術を引き継いでいる事は聞かされていたが不安は尽きない。
第一にして基本的にレプリロイドのみで構成されるレプリフォースにおいて、人間であり連邦政府にも顔が利くジョセフの存在は極めて大きいものであった。
単純に技術だけの話ではないのである。
いずれにしても暫くの間、レプリフォースの科学顧問の座は空位となるだろう。
「引退後は暫くは実家の方でおとなしくしているつもりだが・・・」
ギョロっとした目をジェネラルへと向けるジョセフ。
本物の梟を思わせるその顔にジェネラルは内心で息を吞む。
「実は地元の大学で教鞭を振るってくれないかと打診が来ている。ホー、学生の中で優秀な奴がいたらお前さんらに紹介してやる。悪い話じゃあるまい」
「ジョセフ博士のお眼鏡に適うのであれば優秀な人材でしょう。少々悔しいですが物を作る事に対する独創性や想像力は未だに人類の方が優れているのは間違いありませんからな」
レプリフォースが基本的にレプリロイドだけで構成されている事は何度も付け加えているが、それ故に人間達との接点が少ないと言うのがジェネラルにとって悩み所であった。
科学顧問の職は辞する代わりにジョセフが出した提案はジェネラルにとって非常に有難いものだ。
「それとだが・・・これは年寄りの身内贔屓として聞いてくれ」
ジョセフが懐に収めた写真を一枚ジェネラルに見せる。
そこに写されているのは一人の人間の少女だ。
まだ幼いが褐色肌が特徴的な少女の見た目は、ジェネラルが記憶しているジョセフの妻に似ていた。
「ワシの後を継がずに若い頃のケインの影響を受けて考古学の方に走ってしまいおった息子夫婦の所に出来た孫娘でな。これがワシに似て科学者になりたいと言うようになってな。まだ何年もかかるだろうがもしもここの門戸を叩いた時には宜しく頼むぞ」
「博士の孫となれば才能は十二分にあるでしょう。この件は了解しました。今後の成長が楽しみですな」
彼の孫の才能は未知数ではあるが褒められて悪い気はしないのだろう。
破顔し梟の様な鳴き声で笑う老科学者にジェネラルも束の間の癒しを得たように笑うのであった。
まるで深淵を思わせる闇の中で何かの駆動音が不気味に響き渡る。
その闇の中では漆黒の彼のボディすらも解けて消えてしまいそうであった。
<ご苦労だったねカメレリオン。当初の約束通り我々は君達を歓迎するよ>
闇の中で一人の青年の声が響く。
声の主はアルバートなる謎の人物。
そしてそれを前に跪くのはカメレリオンとソルトコールの二人だ。
世界各地にある秘匿された基地や施設に温存した戦力を分散し終えた彼らは『自身らを含めた組織』を統括する人物の下を訪れていた。
「大首領の力添えもあり万事予定通りに事が進みました。改めましてお礼申し上げます」
「件の海上基地で破壊された我が艦隊の大半は精巧に造られたダミー。誰が造り出したのか知りませんがいやはや感心するばかりで」
恭しく礼を言うカメレリオンの隣で早くも立ち上がったソルトコールが豪快に笑う。
それを横目で制するようにカメレリオンが視線を向けるがソルトコールの方は気にした様子も無い。
「そのダミーを造ったのはワシじゃよ。敗残兵共よ、このワシに感謝するんじゃな」
今の今まで気配を消していた様に高笑いを響かせる黒衣を纏った老人型レプリロイド。
ピクリピクリと眉を動かす老人は尊大な態度を隠さずに両者を見据える。
明らかな挑発だがそれを買うほど、二人とも安い男ではない。
カメレリオンの方は眉一つ動かさず、ソルトコールの方は逆に笑い飛ばす。
それを見て面白くなさそうに老人はフンと鼻を鳴らすと空間の中央部に目を向ける。
<我々は共通の目的でこの場に集いし同志だ。下らないケンカはご法度だよサーゲス>
「申し訳ございませんアルバート様。まあワシの協力が必要になったら何時でも頼むがよい。協力してやらん事もない」
主であるアルバートが窘める中、サーゲスと呼ばれたレプリロイドの態度は相も変わらずだが優れた技術力を持つのは確かなのだろう。
状況次第では言葉通り協力を仰ぐ事も出てくるだろうとカメレリオンらは理解していた。
サーゲスの隣にはいつの間にかもう一人、白衣を纏ったレプリロイドが佇む。
あまり感情を伴わぬ口調で自身らを歓迎する旨を伝えた彼は自らをアイゾックと名乗り、サーゲスとは対照的にカメレリオンらに丁寧な礼をする。
アイゾックの声は先程のサーゲスに酷似した物であったが、レプリロイドである以上同じ音声ユニットを使っている事は別に珍しい事ではない。
<技術的に困った事があれば彼らに相談すると良い。情けない事に我々は纏まった数の実働部隊を持っていなくてね。君達の加入は本当に有難い事だったんだ>
声だけではあるがアルバートが眉を下げたのが分かった。
先の騒動に協力してくれたヴォイドや彼配下の精鋭衆もそうだがあくまでも単騎の戦力に過ぎなかった。
目の前にいるサーゲスやアイゾックなどの有能な科学者こそ有するも軍事力はあまり持ち合わせていないと言うのがカメレリオンの見立てだ。
要するに自身らの合流を組織拡大の一手にしたいという思惑もあるのだろう。
<以前の状態で戦力を増やそうとすれば連邦政府なりそれこそ君達レプリフォースに勘付かれて叩き潰されていただろうからね。君達という戦力を得た事で我々も力を蓄える事が出来る>
「既に量産型レプリロイドの第一次生産分は始まっている。そちら側にも幾つか回す予定でいる」
『確認を』とアイゾックがカメレリオンの端末にデータを転送する。
量産が始まっているというレプリロイドの性能を確認しカメレリオンは僅かに目を細める。
そのレプリロイドの見た目にカメレリオンらは見覚えがあった。
と言っても実際にではなく教本や前世紀における記録映像などからであったが。
互いに目配せする両者。
「如何に性能があろうとも実戦訓練を積まねば何の役に立たんでしょう。この私がこやつらを教育し組織の役に立つように仕上げてみせましょう」
「であれば部隊の指揮はこの私に任せてもらおう。大首領にその配下の者達よ。大船に乗ったつもりでいてくれ」
再びアルバートの声がする方向に頭を下げるカメレリオンと豪快に笑うソルトコール。
そんな二人にサーゲスらはそれぞれの表情を見せていた。
「そうか・・・ケインが新しい治安維持組織を立ち上げたか」
自らの助手からの報告にどこか安堵した様な顔を浮かべる壮年の男性。
ケイン博士と共にレプリロイドを開発し世に送り出したDr.バイルその人である。
既にこの時点で彼は連邦政府から与えられた職も辞し、その消息も半ば不明なアングラ的存在となっていた。
「さて・・・ドップラーよ。例の件だが・・・」
「既にあちら側とはコンタクトを取っております。博士を幹部待遇でお迎えする用意があるとのこと」
ドップラーと呼ばれた緑色のローブを着た科学者型レプリロイドはバイルに対し恭しく頭を下げる。
ケイン博士の下に居る同名の助手とは兄弟機の関係に当たる存在でこちらが兄となる。
彼もまた主のバイルに付き従う形で野に下っていた。
「そうか・・・では引き続きあちらとのコンタクトを取れ」
「・・・ハッ」
バイルの言葉にドップラーは頭を下げその場から立ち去る。
「組織に合流する以上、手土産は必要だ。手ぶらで行く訳にもいくまい」
作業台の上で組み立て途中のレプリロイドを前にバイルは独り言を言いつつ顎に手を置く。
退室したドップラーと入れ替わる様に一室に入ってくるのは無機質な西洋甲冑を思わせる見た目をしたレプリロイド。
この間、完成したばかりのヴァヴァシリーズ記念すべき第一号ヴァインスは無言のままバイルの隣まで進み出る。
「体の調子はどうだ?まだ慣れていない・・・のだろう?」
「動作に問題はありません。既に簡単な作業であれば可能です」
己を気遣うように言葉を発するバイルにヴァインスは頭を振り、両手を開いたり閉じたりといった動作を見せる。
「そうか・・・ではリハビリがてら簡単な作業を手伝ってもらうとしよう。今、作業台に並べている二号機と組み立てすら始まっていない三号機。この二つを早急に完成させる必要があるのだが助手のドップラーには組織との交渉を任せているからな。猫の手も借りたい状況で正直な所、お前の申し出には感謝しかないよ」
バイルが薄笑みを浮かべた時だった。
「へえ、猫の手か・・・じゃあかつての同僚の手はどうだい?」
背後から響く声にバイルは目を見開く。
ヴァインスも身構えるが後のヴァヴァシリーズの機体と違いロールアウトしたての今の彼に武装は何も施されていない。
気配すら感じさせずに一室に現れた人物は戦慄する二人を尻目に丸椅子を見つけるやそこに座る。
室内だと言うのに毛皮のついた厚手のコートを着込むのは狼を思わせる仮面を被った女性。
唯一露になっている口元を面白げに歪めながら女性はその足を見せつける様に組み直す。
「貴様は・・・まさか。い・・・生きていたのか?」
他者に滅多に見せぬであろう動揺を露にバイルは目の前の女性を凝視する。
ヴァインスの方も同様だ。
握りしめた拳が僅かに震えるのが見て取れた。
「ボクも死んだと思っていたサ。でも捨てる物あれば拾う神ありってね・・・一度死んでボクはあの御方に選ばれたのサ」
そう言って女性は己の足で椅子から立ち上がる。
本来であればあり得なかった光景に二人が息を呑む。
「まあ詳しい話はおいおいとね。それはそうとバイル、君はこの手土産にするレプリロイドを早く完成させる必要があるんだろう?ボクも手伝ってあげるよ」
「あ・・・ああ。手伝ってくれると言うのであれば有難いが」
女性はそう言うなり勝手に作業を始めようとする。
以前と変わらず強引な彼女にバイルらは面食らいつつも手順を口頭で確認する。
「ところで今の貴様はどう呼べば良い?」
「そうだね・・・スキュレー。スキュレーと呼んでくれたまえ。それが今のボクの名前サ。逆に君はなんて呼べば良い?昔通りのジョンかな?」
「その名前で私を呼ぼうとするのは今やお前やケインくらいだ。私個人はそれで構わんよ」
相も変わらずなやり取りに内心で苦笑いをしながらもバイルは目の前の女性が、ヒトではない別の何かに変容しているのをひしひしと感じ取っていた。
彼女がその気になれば自身らはあっさりと殺されてしまうだろう。
そんな危険な空気を感じながらもバイルは目の前の作業に没頭する。
暫くして彼が完成したレプリロイド達や長年の研究成果を手土産にアルバート達の組織へと参加するのだが、それはまた別の話となる。
幾つかの年月を経たある日の事。
「よしよしよーし!!今年は連邦政府からの予算も倍増!!各種部隊の編成も漸く形になってきた~!!そして何より!!」
ジャー!!
銀色の巨人、イレギュラーハンターを率いる総監は自室の窓にあるカーテンを勢い良く開け放つ。
窓から見える摩天楼を見下ろし満足げに腕を組む。
「以前のオンボロ施設とは違う新ハンターベースからの眺めは最高ね~。いやもう笑いが止まらない・・・今までの苦労を思えばこその光景よね」
活動も軌道に乗り、連邦市民の多くからその活動を支持されるようになったイレギュラーハンター。
勢いそのままに総監は創設以来の悲願であった新規のハンターベースの建設計画を打ち出し、この度完成の運びとなったのである。
もう雨漏りの事や頻繁に落ちるブレーカーの事も気にしなくて良いだけに総監は歓喜の極みであった。
因みに今までハンターベースとして使われていた場所も近々改修工事を行う予定で、そちらはハンターの訓練生を養成する施設へと生まれ変わる予定である。
恍惚の笑みを浮かべる総監を現実に引き戻すかの様に端末に入室を告げるアラームが鳴る。
慌てて総監は己の椅子へと座ると己の下を訪れた一人のレプリロイドに目を向ける。
「失礼します総監。何やら嬉しそうでしたが・・・」
「いやあ~ねえシグマちゃん。な~にもよ。アタシは何時も通りよ~?」
「外まで声が聞こえていました。ハンターベースがこの度完成し嬉しいのは分かりますがお控え頂きたい・・・恥ずかしいので」
シグマと呼ばれたレプリロイドの指摘に明後日の方向を見つめすっとぼける総監だが、突き刺すような言葉の続きに渋い顔となる。
目の前にいるシグマなる人物はあのケイン博士が自らの最高傑作として生みだした超高性能レプリロイドである。
ハンター創設時に三年後には完成すると言われていた彼だったが、その完成は遅れに遅れイレギュラーハンターとして現場に立ったのはほんの二年前。
既に現在のイレギュラーハンターの形が出来つつあった中で皆の期待を一身に背負った彼。
かく言う総監ですら一抹の不安を抱いていた中、最初の年の活躍で彼はそれらが杞憂に過ぎなかった事を証明していた。
前線に立てばその圧倒的な膂力でイレギュラー達を倒し、作戦指揮においても歴戦のハンター達も舌を巻くほどの軍略ぶりを発揮。
正に彼はイレギュラーハンターの顔であり組織が誇る文字通りの英雄だ。
総監自身も新たに創設される新部隊たる第17精鋭部隊の部隊長に任命する形で彼の功績に報いるつもりであった。
今はまだ気が早すぎるが時期さえくれば総監自身、シグマへと総監の地位を譲り渡すつもりですらある。
レプリロイド工学の父であるケイン博士の最高傑作がイレギュラーハンターのトップとなる。
そんな光景を思い浮かべるに心躍るのは仕方がないであろう。
「それで何か用かしら?」
思い出した様に総監は笑みを向けつつシグマに訪室の理由を問う。
「ハッ・・・既に報告にありましたがまたしても大西洋上においてブリザー軍団の一人であるエイリークの出現を確認いたしました」
「え~・・・前にも倒したじゃん」
シグマの報告に総監の顔が歪む。
総監に言われるまでもなくエイリークなる存在はイレギュラーハンターやレプリフォースが何度も倒しているのだが、倒されて暫くすると何故か復活すると言う不可解な事が続いていた。
「既に第6艦隊が討伐へと向かっているのですが・・・」
そう言ってシグマは数枚の紙ベースの資料を総監の机に置く。
総監から見れば小さな資料が器用に指で持ち上げられる。
その内容を確認するやまたしても総監の顔が渋くなる。
「その第6艦隊内で使途不明金が確認されています。マスコミにすっぱ抜かれる前に対策を・・・」
「りょ~解。またあの子かしらね」
総監の脳裏に浮かぶのはシグマの同期に当たるあの娘。
シグマ同様に実力はあるのだがその問題児ぶりにはあのオクトパルドですら手を焼いているらしい。
本来であれば今頃、クビに相当するだけの問題も幾つか起こしているのだが総監も含めた上層部の腰は重い。
その事にシグマ自身も不審に思いつつも、それは表に出さず自身が得た事実を以って圧をかけていた。
「懲罰委員会にかけるべきと思いますが・・・」
「あ、いやちょっと待ってね。あの子に関しては色々理由があってね」
表情を変えずそう言い放つシグマからは見た目の厳つさもあって総監ですらたじろぐほどの迫力があった。
その両手を広げ仰け反る姿がどこか白々しい。
「確認しますがその使途不明金に関して総監達も絡んでいるのですか?」
「ちょ・・・冗談やめてよ~」
鎌をかけるシグマに笑みを浮かべる総監。
「仮にだけどアタシが不正をする場合は絶対にシグマちゃん達にばれない様にしま~す。そんな他部隊が調べてばれるような雑な事はしませ~ん」
声のトーンを落とし笑みをかき消した顔で総監が言い放つのを見て、シグマの顔に青筋が浮かぶ。
もしも目の前のこの男が総監でなければ拳の一発ぐらい入れていただろう。
「我々はイレギュラーハンターなのです。市民の期待を裏切る事だけはどうか止めて頂くようにお願いいたします」
青筋こそ浮かべたままだがそれ以上は何も変えずに淡々と言い放ったシグマは若干、肩を揺らしながら総監室を出ていく。
場から殺気が四散し総監は疲れた様に息を吐く。
「真面目過ぎよね~もうちょっと色々と飲み込めるようになるといいんだけど」
組織こそ軌道に乗ったがそれはそれで別の問題が次々と舞い込んでくる。
英雄たるシグマも総監から見ればまだまだ青い。
あれではこの世の魑魅魍魎と言える連邦政府の者達に何らかの形でしてやられるだろう。
「まあそれも含めての繋ぎって事よね~」
明後日の方向に目を向けながら誰ともなく総監は呟く。
この時、総監は思いもしなかったであろう。
己がその身を引く事になるのが予想よりも遥かに先になる事に。
何時もの後書きです。
さらっと読み飛ばして頂いて結構です。
〇発足当時のイレギュラーハンターについて
生みの苦しみと言うべきかこの時期のハンターの質は極めて悪い。
後の時代に発足する退役したレプリロイド達による自警団のそれに毛が生えた程度と言ってもよいレベル。
設備も装備も人員もまだまだなのだがやる気だけはあるのが救いか。
この辺は大体連邦政府の意向で出来た組織だった事とケイン博士らが居た事で有力な科学者や企業、団体から高性能レプリロイドの提供を受けれた事で後々解消される事となる。
因みに当時は元レプリフォースの面々が多かったこともありレプリフォース式に倣って陸・海・空の部隊で構成されていた。
イレギュラー処分やそれに伴う活動で必要な部隊や人員が増えて行く事となり、後の部隊制となる。
〇ジョセフに関して
一連の騒動に彼自身思う所があり退職する流れに。
科学顧問を辞した後は地元の大学で教鞭を振るいつつ悠々自適の生活を妻と送っていたようである。
ジョセフの家族構成に関しては基本的に変えていないが、息子夫婦がかつてのケイン博士の後を継ぐ形で考古学を志しているなどが変更点となっている。
孫娘に関してはリブート前が実質ゲスト扱いだったのを思い出し今後の布石とした。
立場的にレプリフォース兵器開発室内でランドグリーズとエステルの間ぐらいに入るポジションの予定。
〇アルバート達について
この時代のアルバート達に戦力らしいものは殆ど無い。あくまでも裏に潜む組織に過ぎなかった。
後にカウンターハンターとなる精鋭衆とそれに付随する実行部隊程度しか持ち合わせておらず仮に活動を開始したとしても早期に潰されていた可能性の方が高い。
今回のシーンより暫くして旧来派はデッドフォースと名を変えるのだが彼らが表前、レプリフォースや政府軍と戦う裏でアルバート達の組織は急速に戦力を整え更には反政府組織などと繋がりを深めて行く事となる。
裏ではあるが活動を始めたサーゲスやアイゾックが各地に隠された或いは放棄された生産拠点などを稼働させていく中でカメレリオンことブラックが製造されたレプリロイドに戦闘訓練を施すと言うのが当初の主な活動となる。
〇バイルについて
本来であればもっと暗躍する予定だったが結果としてケイン博士とは対照的に何もしてない人に。
バイル側にいるドップラーは緑のメガミッションに出てた方、ケイン博士のドップラーとは双子の兄弟機でありケイン博士との共同制作。それぞれ助手として活動した結果、主に影響されたのかかなり正反対の性格となってしまっている。
ヴァインスも若干の設定を変えての登場となった。自分作品におけるバイルナンバーズであるヴァヴァ一号機なのだが彼だけでは手土産としては弱いとバイルは判断していた。
余談だがバイルに関してレプリロイド工学や生物学や細胞学などあらゆる分野に精通し、科学者として正に万能と言ってもよい才能を持つ人物なのだが飽き性と言うかなり致命的な欠点を持つ。ある分野に集中すると一定の成果を収めるのだが何故か途中で飽きてしまい研究が長続きしないのである。自分作品においてはリミテッドなどを生み出しているのだがその研究も途中で投げ出してしまっている。
後に二号機となる彼女を作業台に放置したままであったのもこの辺の面倒くさがりな一面が原因である。
不意にスキュレーが現れた為に慌てる様に作業を始めたが、リブート前のバイルは超然とした印象が強いキャラであったがスキュレーに対し慌てるなど、この時点ではまだ若いと言う事を表現させていただいた。
二号機と三号機のヴァヴァやリミテッドを始めとする今までの研究成果を手土産にバイルは組織へと合流。
人間でありながら組織内にてサーゲスらと同格の立場となるのだが・・・そのあたりはおいおいとである。
〇その後の総監について
エピローグ的な感じでまるっと十年以上は経っているであろう時期となる。
この時点で複数の部隊が編成され各地の支部なども出来始めている。
今回の話は半分くらいレプリフォースの内ゲバなハンター設立前史となったが立ち上げ時期のを書くとそれはそれで長くなるので割愛させていただく。
シグマに関しては見た目は殆ど変わっていないがこの頃はまだまだ若く青い。
一見すると冷静に見えるが内心では激情家で情に篤いというのがイレギュラー化する前のシグマの個人的な解釈である。
彼が第17精鋭部隊の隊長となった段階でイレギュラーハンターと言う組織は一つの完成を迎える事となる。
最後に反省としまして今回の前史、書いてたら思った以上に長くなりました。
まあ毎度の事なのですが現在進めねばならない方をやりつつもわき道を書いてたりしたい次第です。
今回の後書きは以上です。
読んでくださってありがとうございます。