RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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wars2 避けられぬ開戦(中編)

<レプリフォースと思われる犯行グループが引き起こしたスカイラグーン事件の現場では懸命の救出作業が続けられています。また行方不明者の情報提供は以下の避難所で・・・>

 

ガチャッッ!!

 

スカイラグーンがあった北米大陸より離れた欧州の地。

端末から流れてくるニュースを鬱陶しげに切りながら巨大なレプリロイドは自宅の庭先で鼻を鳴らす。

拙い事になったと彼はその一報を聞くなり不安を募らせた。

自身が陸軍元帥をやっていた時期でもこれだけのスキャンダルは聞いた事が無い。

「いずれにせよジェネ公はクビだな」

そう独り言を呟いた時、彼は足元に人が居た事に気づく。

「ン・・・ナンナか?今日は学校じゃなかったのか?」

「今日は祝日だから休みだって昨日言っていたでしょ」

ナンナと言う名前の養女は若干吊り上ったその目を見上げるばかりに巨大なアトーラスへと向ける。

「そうだったか?ガハハハ・・・忘れたぜ」

「全く・・・いつもだったら覚えてる癖に。あの事件からすっかり上の空じゃないの」

豪快な笑い声で上げとぼけようとするアトーラスだが、聡明なナンナにはその内心がバレバレなのであった。

「私にはあんまり分からないけど陸軍のトップだったんでしょ?ウジウジするんだったら何時もの様に五月蠅い声で怒鳴りに行けば?」

「一度退いた筈の儂が今回の件に顔を突っ込めば余計にややこしい事になる。まあ厳正な調査とやらの末に連邦政府が最終的な処分を決めるだろうよ」

ナンナに対し渋い顔をしながらアトーラスが呻く。

「全くらしくないわね。お父様は何時もの様にちょっと下品な笑い声を上げてればそれで良いのよ」

「下品か・・・まあ儂に品性と言うものが欠如しているのは分かってるがもうちょっとだな」

「オブラートに包んで言ってもそれこそお父様には通じないでしょ」

「ガハハハ!!そりゃそうだな」

若干生意気で素直ではないがナンナなりに自身を慕ってくれるその心がアトーラスの気持ちを和らげる。

歯痒くもあるが事は成り行きに任せるしかない。

それ故にアトーラスは悩むよりも普段通りに過ごそうと思った時だった。

「あ、お父さん・・・」

休みと言う事もあり買い物に出かけていた次女のラケシスがアトーラスを見るなりポツリと口を開く。

その後ろには三女のメルも居るが少し様子がおかしい。

「お姉ちゃん~!!」

ナンナを見るなり泣き出しながらその胸に飛びついてくるメルにアトーラスの異変に感づいていた。

別に怪我などをした訳ではないが、ラケシスの着ている服には泥の様な汚れがついていた。

「・・・何があった?」

目を見開きながらラケシスに問うアトーラス。

「あのね・・・街を歩いてたらね。知らない学校の男の子達に囲まれて・・・」

事情を説明し始めるラケシスだったが、その時の事を思い出したのか徐々に体が震え出す。

「お前の父親は何万人も殺したレプリフォースの軍人だって。イレギュラーの子供だって言われていきなり泥とか石を投げてきて・・・」

「お父様がレプリフォースの軍人だったのは何年前の事よ。ハァ~呆れて物も言えないわ」

ナンナが苛立ったように眉を吊り上げる。

要はアトーラスが内縁の父親である事を理由に同年代の男子が彼女らをからかったと言う訳である。

現在の所、正式には決まっていないが彼女らはここカンパネラ公国の公位を継承するかも知れない立場にあり、その姿を見た別の大人達がすぐに男子達に注意をし追い払ったのだと言う。

「クソガキ共がぁぁ・・・ようし!!この儂が行って懲らしめてきてやる!!」

愛する娘をからかわれた事もあり、怒りを露わにするアトーラス。

「そんな事をすれば余計に立場が苦しくなるわよ。今度出かける時は私が一緒について行くから。それとこの事はお母様に内緒ね」

ナンナに制止され唸るアトーラスを横目に長女の彼女は妹達を宥め、彼女らの汚れを取る為に洗濯等の準備を始める。

「チッ・・・まさか儂のせいで娘が苛められるなんてな。ええい・・・ここは我慢だ」

忍耐力と言う点においては他者よりも劣ると言う自覚があるアトーラス。

彼は唸りながらもその日は普段通りに過ごす事を心がけるのであった。

そんな彼に暫くしてからある人物から連絡が入る。

その人物の名前はフレーヴェルス。

彼からの連絡にアトーラスは事態が最悪の方向に進みつつある事を知るのであった。

 

 

 

「成程ね・・・つまりはあちらもこっちを疑ってると」

ハンターベースにある総監室で巨大な椅子に座った総監が腕を組み唸る。

「スカイラグーンで破壊活動をしていたのは確かにノットベレーだが、今回の一件は明らかに俺達とレプリフォースを対立させる何者かが仕組んだ罠だ」

帰還したエックスやゼロ達の報告を聞いた総監は眉間にしわを刻む。

「由々しき事態ですな。今回の一件で市民によるレプリフォースの反感は増す一方。ゼロ君達の報告を聞くまでも無くこの様な事をレプリフォースがしても何の得にもならない事は考えてみれば分かる事なのですが」

総監の傍らで化学顧問のジャーク=ケインが眉を吊り上げながら言う。

何時もであれば浪々とした態度で口を開く彼も今回ばかりは険しい表情を浮かべていた。

「市民達からはレプリフォースをイレギュラー認定すべきと言う意見が沢山挙がっていますが・・・『善良な市民達』の声に総監は如何お考えで?」

そんな中で事態を面白げに口にするのはニードル=クィンビーだ。

彼女は悩ましい視線で総監を見上げる。

傍らでゼロが彼女に対し舌打ちをするがクィンビー自身は気にした様子もない。

因みに彼女の兄でゼロの右腕を務めるエクスプローズ=ホーネックは、現在は理事で元隊長のファントム=フィーネと共に連邦政府本部へと出向いており不在だ。

実質的にゼロに代わって部隊を指揮するホーネックだが、彼からすれば自身が不在でも妹がいれば不測の事態に対応が可能と判断したのだろう。

とは言えその彼女とゼロの間には溝の様な物が生じており、それはそれで大いに問題があるのだが。

「各地にあるレプリフォースの支部基地周辺では連日に渡って市民団体が抗議のデモを続けているとの事ですが・・・」

総監付きの参謀であるシグナスが端末を手に今、入ってきた情報を口にする。

その間、総監は口を開く事無く沈黙を通す。

暫しの間、一室の主が考え込むように黙り込んだ事で場には重苦しい空気に満ちる事となる。

「カーネルちゃんを現場で抑えられなかったのはちょっと下手だったかもね」

やがて口を開いた総監の言葉にエックスとゼロが僅かに顔をしかめる。

「ですがあれはあの場を穏便に済ませる為に・・・」

「エックスちゃんにゼロちゃんにドラグーンちゃん・・・ハンター組織を代表とする特A級ハンターが三人も居たんだから。仮にカーネルちゃんが暴れても捕縛は出来たわよね」

弁明をしようとするエックスに総監が鋭く言い放つ。

基本的に現場の事には口出しをしない総監だが、今回ばかりはそうも言ってられないという事だろうか。

「あの場では部下の手前、すぐに出頭する事は出来なかったが。奴は必ず来る・・・俺に預けてくれたこれが何よりの証拠だ」

彼にとっては軍人の誇りその物であるカーネルのビームセーバーを手に語るゼロだが、それをどこか白い目で見るのはシグナスだ。

「そんな物よりもせめて現場に何故か居たカーネルの妹。確かアイリスだったか・・・彼女を人質にして出頭を迫れば良かったと思うがな」

「何だとてめえ!!アイリスを人質に奴に出頭を迫る様な卑怯な真似が出来るか」

「卑怯だろうとなんだろうとイレギュラーの嫌疑が掛かった相手に情を見せるなど、ハンターにあるまじき失態だと私は言っている」

感情を露わにするゼロに対しシグナスはあくまでも淡々と答える。

その澄ました態度にゼロが怒鳴りそうになった時だった。

「はいはい・・・まあ過ぎた事を言っても仕方がないわね」

自分が切り出した事もあり、総監がわざとらしく手を叩きながら両者の睨み合いを中断させる。

「え~まずに我々としましてはレプリフォースへの対応は連邦政府の意向を確かめた上で決めるとします。その間、カーネルちゃんの出頭を待つと共に現場検証と可能な限りでの調査や関係者への事情聴取を行う事で宜しいかしら?」

総監の言葉にエックス達は頷くしかない。

エックス達同様に総監もすぐさにスカイラグーン墜落の一件をレプリフォースの犯行と断定する気はないようだ。

「私個人としては思う所があるけど、相手の出方を見極めましょう。ああ・・・それとなんだけど」

相手が相手だけに下手に出るしかないのだが、その状況を快く思わないと言った風の総監は思い出した様に手を叩く。

「一応私達にも嫌疑が掛かっている訳だし。世間には自浄作用があると言う事を示さないとね」

総監が言わんとしている事が分かったのか、クィンビーはその口の端を僅かに緩める。

そしてそれはクィンビーの手によって迅速に行われた。

 

 

 

「何故俺がこんな目に遭わなきゃいかんのだ!!スカイラグーン墜落は奴らの仕業だろうが!!」

手枷を付けられた両腕をわなわなと震わせながら廊下を歩くのはマグマード=ドラグーン。

マスメディアは基本的にスカイラグーンの一件はレプリフォースの仕業と報道しているが、一部のネット上のニュースなどでは現場に現れたドラグーンそっくりなイレギュラーの事も挙げられており、中には今回の一件はイレギュラーハンターとレプリフォースが共謀して起こした事件と勘繰る者達も少なからずいる。

そもそもかつて英雄であったシグマによる反乱で多数の犠牲者を出しているハンターとしては、再びスキャンダルを起こす訳にはいかないのだ。

「はいはい・・・とにかく疑いが晴れるまでは暫く大人しくしてなさいな。本当にしてないんだったら尚の事ね」

ドラグーンの両脇に並ぶハンターの後を追う形で歩くクィンビーが、ドラグーンの抗議など聞いていないかのような口調で答える。

「貴方そっくりなイレギュラーがレプリフォース総本部とスカイラグーンで暴れたせいでハンターも疑われているの。イレギュラーハンターは身内相手にも温情も与えずに身柄を拘束して厳しい取り調べをしている。そう世間に印象づかせるのが総監の狙いよ」

耳元で息を吹き掛ける様にして話しかけてくるクィンビーにドラグーンが呻く。

少女のボディから大人びたボディへと換装した彼女はその一動作一動作がどこか悩ましい。

男を魅了すると言えば聞こえは良いが、ドラグーンからすれば迂闊に触れればその毒が全身に回るのではと思わせる危険な香りを漂わせる。

「取り調べって言っても隊長にはもうメモリーの提出はしてもらってるから、後は事が済むまでの間の拘束って事ね」

身柄を拘束し厳しい取り調べを行っている云々はあくまでも建前なのはドラグーンも分かっている。

手枷を嵌められた姿は屈辱的だが、ドラグーンは自身ができる最大限の妥協をしこの屈辱を甘んじて受ける。

「言う必要はないと思うけど脱走とか馬鹿な事は考えないように。折角結婚もして子供も出来たんだから、もしもお父さんがイレギュラーになったら娘さんが泣いちゃうかもよ」

どこか自身を嘲笑うかのように言い放つクィンビーにドラグーンは僅かに殺気を生じさせてしまう。

「その口調で娘にある事無い事を吹き込んだらタダじゃおかんからな」

 

ガシャンッッ!!

 

背を向けながら言い放った言葉がクィンビーに届いたかは分からない。

「あの・・・何かあったらインターホンを押してくださいね」

看守の隊員が遠慮がちにそう言ったのに短く頷くとドラグーンは暗闇の中で床に腰を下ろす。

己の中に吹き上がる激情を抑える様にドラグーンは瞑想を行うのであった。

 

「伯父上~!!伯父上の力で父上を助けてください」

 

第7空挺部隊のオフィスで己に泣きつく少女に部隊長のハリケーン=アルバルドは困った様子で唸る。

「まあまあドラ子。別にドラグーンはイレギュラー嫌疑が掛かってる訳じゃなし。あくまでも世間体を気にした上での身柄拘束だって。別に何もされちゃいねえよ」

アルバルドが姪っ子を宥めるが、彼女としては尊敬する父に疑いが掛かっている事が信じられないのだろう。

「この忙しい時にごめんなさいね兄さん。ドラグーンとこの子が一緒に居た事もあって、自分のせいだと思ってるみたいなの」

申し訳なさそうに頭を下げる妹のソレイユにアルバルドは口の端を緩める。

「なあに俺が昔にあのヴァヴァとかと一緒に馬鹿してた頃に比べれば可愛いモンだ」

イレギュラーハンター始まって以来の問題児として名を馳せたアルバルドだけに、身内が突然オフィスを訪問する事ぐらいは何てことはないのだろう。

「しっかしどうもな・・・今回の件はキナ臭い。あからさまにレプリフォースに疑いが向くように何もかもが動いてねえか?」

アルバルドの言葉にライジング=クローディアが反応を示す。

言われてみれば彼の言う通り、各メディアもハンター側の疑惑であるドラグーンの件は小さく扱い、あくまでも現場で暴れていたノットベレーを擁するレプリフォースへの疑惑を強める報道ばかりが目立つ。

「では隊長は今回の一件は政府が仕組んだ事と?」

「流石にそれはねえよ。だがスカイラグーン墜落を上手い事利用しようとしている魂胆が見えるって事だ」

クローディアの問いにアルバルドがそう答える。

「お忙しい所、失礼するッス!!」

敬礼をしながら一室に顔を出すのは駝鳥の姿をしたレプリロイド。

A級ハンターのソニック=シュトラースだ。

「連邦政府議会は先程賛成多数でジェネラルとカーネルに事実確認の為の出頭を命じたみたいッス」

端末に目を向けつつ報告を行うシュトラース。

「近々特別査察局も動くと言うがもっぱらの噂ッス」

「基本的に調査を拒む事が出来ない厄介な機関かか・・・こりゃあレプリフォース的に詰んだな。特にジェネラルはもうお終いだな」

部下の言葉を聞いたアルバルドの顔にはどこか状況を楽しんでいる様にも見える。

「ん~」

間の抜けた声で唸るアルバルド。

「どう考えても詰んだのが分かるだけに何が起こるか分からねえ。他所に分からねえ程度に俺達第7空挺部隊は何時でもでかい事件が起こっても動けるようにしておけ」

「りょ・・・了解ッス!!」

隊長の指示を受け慌てて駆け出していくシュトラースを見送ったクローディアは不安げな顔となる。

「隊長はまた戦いになると思っているのですか?」

「ああ・・・最悪の展開となればな。こういう時は悪い方向に物事は考えておけばいいさ。万が一の時は補佐の方をよろしく」

クローディアの華奢な肩を叩くアルバルド。

副隊長にシューター=ククルウーが就任した後もクローディアは以前同様に隊長補佐と言う、微妙な名前の役職となっている。

今となっては有名無実化した役職だが、副隊長として別動隊を率いることが多くなったククルウーと違い、クローディアはこうしてアルバルドと居る事が多くなった所がある。

そう言う意味ではアルバルドを支えねばならないだけに生真面目なクローディアはその重圧に気が重くなってしまう。

「さて・・・どうなるかねえ」

オフィスの中でアルバルドは明後日の方向を見て呟いた。

 

 

 

「貴様・・・何をしてくれたのか分かっているのか?」

わなわなと震える全身を抑えきれずその指先をカーネルへと突きつけるのはジェネラルだ。

スレイプニールらと共に陸軍本部に帰還したカーネルに対し、即座にジェネラルは己の下に召喚すると彼を厳しく問い詰める。

「貴様の軽率な行動のせいで我らレプリフォース全体がイレギュラーの嫌疑をかけられておる!!たかが小娘の一人の為に貴様が無断で出撃したせいでだ!!」

ヒステリック気味に叫ぶジェネラルの隣で苦笑を浮かべるのは宇宙軍総司令のギャラクシー=キリンタイザー。

普段からこの地球に居ない事もあり、彼はレプリフォースの事でも他人事の様な態度を取るが今回はその傾向が更に強く見える。

「民衆共は事件をレプリフォースの仕業と疑っていないようだ。それでどうするのだ?民衆の怒りは日ごと増すばかりだぞ?」

キリンタイザーの言葉にジェネラルが歯を軋ませる。

「無断での出撃の件は平に謝罪する他ありませぬ。常日頃より軍規を重視しておきながら敵に拉致された妹アイリスを救う為にじっとしている事が出来ませんでした。そしてその事でジェネラル閣下のみならずレプリフォース全体にあらぬ疑惑を市民に抱かせたのはこのカーネルの責任であります」

ジェネラルを前に深々と頭を下げ己の非を詫びるカーネル。

そんな彼の姿を見てもジェネラルの怒りは収まるどころか寧ろ増す一方だ。

「かくなる上は疑念を晴らす為に私自らがハンターベース或いは政府本部に武装解除した上で出頭を行おうと思います」

誠実な青年らしいカーネルの言葉にジェネラルの顔は更に険しくなる。

「しゅ・・・出頭だと!?現場でのテロを指揮した疑いのあるお前が武装を解除し出頭すればそれこそレプリフォースの仕業であることを世間に認めた事になるではないか!!」

響き渡る怒号を前にカーネルは怖気づく事も無くまっすぐな瞳でジェネラルを見上げる。

「ですが私はゼロやエックスらと必ずや出頭をすると約束をしました。今回の一件が無実である事は明白なのです。であればレプリフォース軍人の誇りに恥じぬように堂々と出頭に応じるべきです」

カーネルは頑なになっているジェネラルを説得すべく口を開く。

彼は現場においてエックスやゼロなどは犯行が自身らの仕業ではない事を理解している事、現場で暴れていたノットベレーは明らかに様子がおかしく、現在レプリフォースに属する者達との照合を行えば必ずそれに偽装した者達である事が分かる事を説明するのだが。

「取り調べを受けてもエックスやゼロ達が我らに有利な証言を・・・つまりはイレギュラーハンターが弁護をしてくれると?それはあのローシャリオンに私が頭を下げるという事ではないか!?ましてや最後に私達を救ってくれる事となるは連邦政府・・・我らは奴らの風上の下に完全に置かれる事となる」

頭を抱え机の上に突っ伏しそうになるジェネラル。

カーネルからすれば例えイレギュラーハンターに頭を下げてでも、丁寧に状況を説明すれば事は解決すると判断している。

当然それだけで疑惑は解消されないだろうが、イレギュラーハンターらの協力の下、自身らに罪を被せんとする黒幕達を調査で暴けば此度の件で失墜したレプリフォースの信頼は取り戻せると確信している。

己のプライドに拘るあまり正常な判断が出来なくなっているジェネラルに自身の想いは伝わらない。

そのあまりにも愚かとしか断じれないトップの姿にカーネルの顔からは失望感が滲み出る。

「確かに此度の一件は以前からの連邦政府の動きにはこのカーネルも思う所があります。ですが此度の一件を一滴の血も流さずに解決するには武装解除した上で私が出頭を行う他ありませぬ」

「駄目だ!!その様な事は絶対に許さん!!これはレプリフォース最高司令官であるこの私の命令だ。出頭などする必要はないと政府やハンターには言っておけ!!」

血走った目を泳がせながらカーネルの言葉を退けるジェネラル。

それを横目にキリンタイザーが僅かに口元を歪めるが、この場に居る二人は気づかない。

「閣下!!いい加減に目をお覚ましください・・・もはや貴方は正常な判断さえ出来なくなりましたか!?」

「黙れ!!私は今この時を以っても極めて正常だ!!最高司令官に・・・上官に対しその様な口を利くとは軍法会議物だぞ」

自身に震える指先を再び突き付けるジェネラルにカーネルはもう溜息しか出ない。

「軍法会議でもなんでもお掛けください。全ての事が終わってからではありますが・・・」

そう言ってカーネルはジェネラルの前で一礼をした後、踵を返す。

「待て・・・話はまだ終わって」

「これより私は部下達に説明をした後に出頭を致します」

押し止めようとするジェネラルの言葉を遮るようにカーネルは出頭の意思を示す。

「貴様・・・私の命令が聞けないと言うのか!?」

「此度ばかりは閣下の命令とは言え聞けませぬな。もしも私を止めたいのであれば・・・」

呻くジェネラルにカーネルは凄みを利かせつつ顔だけ振り返る。

暗に実力で止めてみろと言われジェネラルは歯を軋ませる。

ジェネラルとて単騎の実力であれば軍内屈指と言えるが、年若くも陸軍のトップであるカーネルと戦えばただでは済まない。

事に最近では前線で実戦を行う事は少なくなっているジェネラルに比べ、カーネルは数多くの戦いを経験している。

下手をすればこちらが負けると思わせるだけの実力を目の前の青年は有するようになっている事は、ジェネラルとしても認めるしかない。

相手の実力を推し量るという点ではまだジェネラルは正常な判断を下す事が出来た。

キリンタイザーが加勢してくれれば確実にカーネルを下すことは出来るだろうが、彼がこの場において味方になってくれるかは些か微妙な所がある。

「それでは失礼します」

そう言って一室から出て行くカーネル。

彼に続くようにキリンタイザーも己に背を向ける。

「まあ好きにするが良いのだ。プルートや宇宙軍の者達には一応だが準備をするように言っておこう」

笑いながら去っていくキリンタイザーの姿がそこから消えるとジェネラルは机の上に拳を叩きつけた。

「ぐぬぬぬ・・・カーネルめ!!キリンタイザーめ!!この私をどこまで馬鹿にするか・・・」

机の上にあった書類を床の上に撒き散らすジェネラル。

まるで子供がするような八つ当たり同然の行為にただただ虚無感だけが生じてしまう。

「私がこのジェネラルが最高司令官だぞ・・・しかしこのままではカーネルが出頭をしてしまう。そうなれば私は最高司令官の地位を。いやその前にレプリフォースが創立以来保ってきた独立性を失う事に・・・」

立場に固執する己を何とか組織を守るという方便で取り繕うとするが、その言葉もどこか空しい物である。

「ハァハァ・・・私の為に動いてくれる者。動いてくれる者は・・・」

思考を巡らせるに損得勘定なしに己の為に動いてくれる者など軍内には誰もいない。

気心知れた友と言う友は悉くが退役し軍を去っている。

それ故に生じた孤立感から疑心暗鬼に陥っている事にジェネラルは気づていない。

そしてかの者らを重宝すればする程、その袋小路に陥っている事にも。

「シャ・・・シャドー!!シャドーはおるか!?」

ここに至って漸く脳裏に浮かんだ唯一己の命令で動く者の名前をジェネラルは叫ぶ。

「ハッ・・・ここにおります」

自身の背後の影が蠢きそこから声が響く。

「カーネルを・・・あの小僧を何としてもここから出すな。どんな手段を使っても構わん。奴を・・・政府の下に行かせるな」

「御意・・・最高司令官の意のままに」

ジェネラルの言葉に頭を下げながらシャドーと呼ばれた人物は現れた時の様に影へと溶け込む。

椅子の背もたれに身を任せたジェネラルは疲れ切った様に息を吐く。

その血走った目はここではないどこかを見据えていた。

 

 

 

<事情はイレギュラーハンターより詳しく聞いておる。連邦政府上層部も此度の一件はレプリフォースの仕業に見せかけた何者かの犯行と見ている。当然この私もな>

己の執務室に戻るなり、カーネルはある人物とコンタクトを取っていた。

モニターに映る初老の男性にカーネルは深々と頭を下げる。

男性の名前はシュワルツ=シュタイナー。

連邦政府の軍務大臣であり自身の生みの親であるエステルの父。

カーネルからすれば祖父同然ともいえる人物だ。

「ハッ・・・今回は全てこのカーネルが至らぬが故に起こった事。ともあれまずは先に送りました物を確認して頂きたいと」

<うむ・・・陸軍の全兵士の出撃履歴を収めたディスクは先程政府軍の諜報部が回収したと聞いている。解析には暫くかかるであろうがこれで疑いは晴れよう>

レプリフォースの陸軍本部へと戻るなりカーネルはジェネラルからの召喚が行われる前に、信頼できる者を使って連邦政府側に陸軍に属する全兵士の出撃履歴が収められたディスクを政府側に渡している。

当然ながらそれは軍の機密であり、カーネルが行った事は背信行為であるのは言うまでもない。

だが同時にそこまでせねば今回の疑惑は晴れないと考えたカーネルに迷いはなかった。

何より政府上層部には身内として信頼に足るシュタイナーが居ると言う事がカーネルにとって、その迷いを消す大きな要因となっている。

<それでジェネラルは・・・>

「申し訳ありません。頑なとなったジェネラル閣下を説き伏せる事は出来ませんでした」

シュタイナーの問いかけに無念を露わに頭を下げるカーネル。

モニターの向こうでシュタイナーが考え込むように腕を組むのが分かった。

<奴とは長い付き合いではあるが、どうも今の奴は自らの地位に固執し過ぎている節があるな。何が原因で頑なになっているかは知らぬが>

「シュタイナー大臣・・・」

<奴も昔は聡明で豪放磊落とも言える性格の持ち主であった。だがそれも今となってはレプリフォースを迷走させる老害に近い存在となり果てた。若いお前には分からんだろうがこれが老いると言う事だ>

普段はその感情を表に表さぬ彼だが、モニター越しにとは言えその顔に自嘲気味な物が含まれているのがカーネルには分かった。

<組織を動かす者が老いればその四肢となる者達もおかしくなる。アトーラスやフレーヴェルスもそうなる前に後任に後を譲ろうとしたのだろう。まあ私も人の事は言えんか>

溜息を吐く初老の男性は話が逸れてしまったと再度カーネルを見据える。

<カーネルよ。可能な限り早めの出頭をお願いする。但し出頭をするのは政府本部ではなくハンターベースの方が良いであろうな。私からローシャリオンには連絡を入れておくからまずはハンターベースに向かうように>

「ハンターベースに・・・分かりました」

モニターの向こうに居るシュタイナーに向かって敬礼をするカーネル。

彼の言う通りハンター側にはエックスやゼロなどの自身を弁護してくれるであろう者達が数多い。

一旦は彼らの下に行き出撃履歴を含めた詳細な情報を提供し、調査を行う方が政府本部に向かうよりかはカーネル個人の心情的にも幾分マシと言えよう。

自身らの言葉に耳を傾けてくれるばかりか、細やかな配慮も忘れない祖父の想いにカーネルの胸は熱くなる。

「それと母の事ですが・・・」

<エステルは・・・今回の件で頭を痛めているだろうが。なあに気にする事は無い。あれはああ見えて図太い神経を持った娘だ。息子のお前も分かっているだろうが>

「はは・・・全く以ってその通りで。アイリスの修理に研究所に赴きましたが、早く大臣達に事情を説明しろと言われましたよ」

傷ついたアイリスを見て血相を変えるも、浅い傷と分かるやすぐに冷静になり彼女の修理を始めた母の姿を思い浮かべながらカーネルは笑う。

「では失礼します」

そう言って通信を切ったカーネルは先程から来訪者を告げていた端末の画面に指を触れる。

このタイミングで自身の下を訪ねようとする者が誰かと考えれば自ずと見当はつく。

 

ガチャッッ!!

 

現れたのがカーネルの予想する通りの同じ顔をした二人のレプリロイドであった事もあり、彼は内心で二人に気付かれぬ様に溜息を吐いていた。

「スレイプニールから聞いたよカーネル」

その声や動作から表面上は冷静さを保っているが今にも爆発しそうな怒りを溜め込んでいるのが分かった。

空軍長官スパイラル=ぺガシオンのこう言う所はまだまだ彼が年若い青年である所が大きい。

「アイリスの拉致も含めこれは・・・」

「連邦政府の陰謀だと言いたいのだな?」

ぺガシオンの言葉を遮りながらカーネルは口を開く。

出鼻を挫かれる形となったぺガシオンは呻きながら黙り込むしかない。

「仮に連邦政府が我らを潰そうとするのであれば今回の様な稚拙な事はしない筈だ」

「カーネル閣下はハンターや連邦政府を信用し過ぎでありますよ。濡れ衣であるというのに閣下に武器を捨てる様に要求したばかりか、市民共は罵詈雑言を投げかけてきた上に石を投げてくる始末。これらの所業、許す訳にはいかないでありますよ」

スレイプニールが声を荒げ己の怒りを口にする。

それに同調するかのようにぺガシオンも頷く。

「今、世界各地の支部では政府に扇動された市民団体が連日の抗議を行っている。中には地方政府によって武装解除を命じられている所もある。今まで治安維持に努めてきた僕達に対するこんな仕打ちを見過ごす訳にはいかない」

「カーネル閣下!!今すぐにでも軍を出撃させ連邦政府に対し抗議を行うでありますよ」

屈辱と怒りから冷静さを失っている二人にカーネルは軽い頭痛を覚える。

思うに少し前の自分もこんなのであったのかとさえ思ってしまい、彼は思わず苦笑を浮かべていた。

「お前や私が軍を率い連邦政府本部前に出向けば世間はどう見ても我らがクーデターを起こしたと見るだろうな」

カーネルの言葉に臨むところと言った態度を見せるぺガシオンだが。

「そうなれば我らは正真正銘のイレギュラーだ。我らは勝とうが負けようが武力によって己らの主張を通そうとクーデターを起こしたイレギュラーと、その後の歴史においても語り継がれるだろう。それこそお前達は自分の母親と何ら変わらぬ存在になると言う事なのだぞ」

言い放たれた『イレギュラー』と言う言葉に反応を見せたのはぺガシオンだ。

ハッとした顔となった彼は目まぐるしく視線を動かした後、額に冷や汗を滲ませる。

恐らく彼の頭の中では母がイレギュラーと判明した一件からの出来事が過ぎ去っているのだろう。

次に顔を上げたペガシオンの顔には先程とは違い本来の冷静さが垣間見えていた。

彼の変化に内心で安堵しつつ、カーネルはペガシオンに向き直ると小さく息を整える。

「ペガシオン。私はこれより武装を解除しハンターベースに出頭をするつもりだ。スカイラグーン墜落の件の疑いを晴らすにはそれしか方法がない」

「・・・!?」

「な・・・そんな事、駄目でありますよ!!」

カーネルの言葉に目を見開くペガシオンの隣でスレイプニールが驚きの声を上げる。

「スレイプニール。お前も現場で聞いておるだろう。私はゼロに出頭を行うと約束をしたのだ。妹アイリスの想い人であり義弟とも言える男にだ。その約束を反故にするのは私の流儀に反する」

自身に対し諭す様に話すカーネルにスレイプニールは黙り込む。

カーネルは先にジェネラルに対してした様に状況は自身らに不利ではなく、寧ろこちら側に有利な事を説明する。

同時に一時の我慢さえすればレプリフォースの潔白は証明されるのだと、彼は両者に理解を求めた。

「一時の激情で理性を失ってはいかん。我らは史上最強の軍隊なのだ。その軍を指揮する者が他者から侮辱を受けたからと子供の様に騒ぎ立てるなどあってはならん事だ。二人とも・・・苦しいだろうが今は耐えてくれ」

共に敬愛する人物であるカーネルに肩を叩かれた二人の兄弟は、それ以上は何も言えずに一室を後にする。

「一時の我慢か・・・僕も早くそれを身に付けないとな」

レプリフォースを支える三軍の長となって日の浅い自身が持っていない物をカーネルが持っている事を改めて認識しながら、ペガシオンはスレイプニールに微笑みつつ廊下を歩いていく。

この場では落ち着きを取り戻した彼だったが、その隣にいる弟が表に出さぬ激情を宿していた事には気づく事は無かった。

「自分であります。すぐに主だった者を集めるであります」

兄を見送った後、スレイプニールはすぐさにカーネル派の若手将校を集め始めるのであった。

この場において彼が思い浮かべたのは出頭をしようとするカーネルの行動を阻止する事。

強引に拘束をする事は難しいが、数頼みのバリケードを作るなりすればカーネルの動きを止める事は十分に可能だろう。

カーネルのオフィスから本部の出入り口まで見取り図を端末に表示させ、どこに人の壁を作るべきか思案するスレイプニールであったのだがそれはある意味で徒労に終わる。

小一時間後にオフィスから出てきたカーネルを外に出さぬ様にビームシールドを構えた兵士らが廊下を遮らんとしたのだが。

そのカーネル自身が兵士らに向かってこう言ったのである。

「我らの誇りを傷つけそればかりか魂と言える武器を差し出せと言うイレギュラーハンター並びに連邦政府に我らの力を見せつけるぞ」

「・・・は?」

口調こそ静かではあったが、怒りを多く含んだカーネルの言葉に呆気に取られたのは四本の副腕を含め、合計六個の鋼鉄製の楯を手にしたスレイプニールである。

先程とはまるで正反対の言葉を言うカーネルに彼を説得し出頭を思い留めんと意気込んでいた一同はその目を点にしてしまう。

「これは連邦政府が我らを潰さんとする明らかな陰謀である。このカーネルと志を共にせんとする者は我に続け。ジェネラル閣下に我らの意思を示すのだ!!」

「え・・・なんだか良く分からないでありますが。カーネル閣下が決心されたであります!!皆、続くであります」

「「オオオォォォ!!カーネル!!カーネル!!」」

カーネルの言葉に声を上げそのまま一団となって廊下を進むカーネル達。

彼らが過ぎ去ったのを確認し、怪訝顔で姿を現すのは獅子の姿をしたレプリロイド。

「どう言うこった?」

「カーネルの野郎。急に考えを変えやがっただと・・・一度決めたらまず修正なんてしない石頭の奴が掌を返すなんてありえねえだろう」

首を傾げるスラッシュ=ビストレオの隣で腕を組むのはフロスト=キバトドス。

カーネル派の馬鹿達がカーネルの行動を阻もうとしていると言うのを聞きつけ、彼の進む道を確保せんと潜んでいた二人だがそのカーネルの思わぬ心変わりに困惑する他無い。

「事態とやらは最悪の方向に動いているかも知れんな」

いつの間にかその場にいたソルブライト=アテネが口を開く。

思わぬ人物の姿にその場を飛びのく二人だが、アテネの方はいつも以上に険しい顔のままその場を去っていく。

彼女が去っていった方向とカーネルが向かっていった方向を交互に見つめ、二人の猛将は互いの顔を見合わせるのであった。

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