RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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wars4 激突する拳

「ぬおおぉぉぉ!!波動拳!!」

両腕を構えドラグーンが撃ち放って来た光弾を跳躍して避けるエックス。

「待ってドラグーン。こんな事をしている場合じゃ」

尚も説得を続けようとするエックスだが、一向に攻撃の手を緩めないドラグーンに苛立ちを覚える。

『例え大破させてでも連れ戻せ』と言う総監の言葉が脳裏を過る。

このまま何もしないままでは逆にエックスの方が大破させられる。

そう判断したエックスは息を整え身構える。

「・・・ぬ?」

エックスの変化を見て取りドラグーンが動きを止める。

「装着・・・フォースアーマーだ!!」

 

ピカアアァァァァァ!!

 

「ぬう・・・新型のアーマーだと?」

エックスが身に纏ったアーマーにドラグーンが目を剥く。

ラグズランド島での事件でエックスが老人より受け取った新たなアーマー。

最新型のアーマーであるフォースアーマーだが、ラグズランド島での戦い以降は殆ど使う機会が無かった事もありドラグーンが驚くのも無理は無い。

 

ザッッ!!

 

真横へと駆け出すその瞬発力も先程より遥かに向上している。

恐らくは防御力もそしてバスターの威力もアーマーを纏った事で、かなり向上したと言えよう。

些か血が上り過ぎていた所もあるが、目の前の英雄と呼ばれる者の力を前に怒りよりも歓喜が湧き上がる。

己が喧嘩を吹っ掛けたとは言え、あのエックスとシミュレーション上の味気無い物ではなく本当に戦いをしている。

その事実にドラグーンの武闘家としての本能が沸き立った。

「灼熱波動拳!!」

両腕に生じさせた巨大な火炎弾をエックスへと向けて撃ち放つ。

それを避けられるのは百も承知。

跳躍したドラグーンが残空波動拳を撃ち放つや天魔空刃脚でもって追撃をしエックスを宙へと誘導する。

足元の地面を砕きながら拳を構えるドラグーンはほくそ笑む。

「降りて来た所を我が拳で砕いてくれる」

昇龍拳の構えとなったドラグーンからすれば、エックスは彼の術中に嵌った事となる。

この辺りは最強格のハンターらしい老獪な戦術と言える。

だが本来であれば降りてくるタイミングでも宙に浮いたままのエックスの姿にドラグーンは眉を吊り上げる。

一応と言うかエアダッシュなる空中での移動もドラグーンは考慮に入れていた。

がエックスの身は宙に浮き続けている。

「これがこのアーマーの能力だと?」

フットパーツより噴出したバーニアの炎を見てドラグーンは呻く。

「ハイパーXブラスター!!」

 

バシュッッ!!

 

上空と言う死角を取られる形で放たれた光弾をドラグーンはまともに受けてしまう。

通常のチャージショットである筈の一撃もパーツの恩恵か、威力が数段以上アップしていた。

「むうっっ!!」

背後へと吹き飛ぶドラグーンだが、辛うじて地面に倒れ込む事無く踏み止まる。

「やはりと言うか油断ならぬか・・・」

呻くドラグーンが更に闘気を放出させる。

対してエックスもまたドラグーンの実力の高さに内心で呻いていた。

かつてはあのシグマに並び称され、現在においてイレギュラーハンターで最も実力がある人物と言えるドラグーン。

エックスにとってはシグマ同様に雲の上の存在である彼だが、今までの戦いの経験や新型のアーマーのお陰で互角以上の戦いを演じられている。

その事に手応えを感じつつもエックスは、未だにドラグーンが本気を出していない事を察してしまう。

まだドラグーンの戦い方には余裕が感じられた。

「波動拳!!波動拳!!」

合わせた手からではなくそれぞれの腕から光弾を放つドラグーン。

両手で放つのに比べ威力は落ちるが、逆に連射性ではこちらが勝る。

反射的にそれらを避けたエックスだが、突然発生した風に足を取られそうになる。

「竜巻旋風脚!!」

 

ボアアアァァァァァ!!

 

宙で独楽の様に回転し強引に風を起こしたドラグーンがエックスを飲み込まんとする。

このまま風に引き寄せられれば相手からの無数の蹴りを食らう事となる。

如何にアーマーで防御力がアップしたとて、そうなれば致命傷となりかねない。

エックスはフットパーツの出力を全開にし外へと駆け出す。

自身の風を物ともせずに抜け出そうとするエックスだったが、それはドラグーンにとっては想定の範囲内。

「そう来ると思ったぞ天魔豪斬空!!」

 

バシュバシュバシュバシュバシュッッ!!

 

体の回転を止めたドラグーンが上空より無数の光弾を撃ち放つ。

「うわあぁぁぁぁ!!」

降り注ぐ光弾の何発かはその場で凌いだエックスだったが遂には耐えきれなくなり後方に吹き飛ばされる。

意識が遠のきそうになるのを堪え起き上がったエックスが見たのは、地面を蹴り己に接近戦を仕掛けてくるドラグーンの姿。

恐らくは一気に決着をつけるつもりなのだろう。

「ハイパーXブラスター!!」

エックスが放った光弾をドラグーンが流れる様な動きで回避する。

「阿修羅閃空!!」

残像を残しながら移動をするドラグーンの秘技たる阿修羅閃空。

エックスの威力ある攻撃を無効化しつつ接近する意図があったのだろう。

チャージショットを使うには当然の事ながらエネルギーのチャージをする必要がある。

一度外してしまえばこの状況では、エックスは接近するドラグーンを前に後退する他無い。

そんな相手との間合いを更に詰めここで勝負をつける。

と言うのがドラグーンの思い描いた光景であったのだろう。

遠距離戦を得意とするエックスからすれば、自身の様なタイプとの戦い方を知っていると言える。

ハッキリ言ってかなりやり辛い。

「ハイパーXブラスター!!」

だがドラグーンの思惑はエックスの放った二発目の光弾で崩される。

「ダブルチャージショットだと言うのか?」

目を見開きながらも阿修羅閃空で回避するドラグーンの移動先に再びエックスが光弾を放つ。

三発目と驚く間も無く四発目が放たれそれが彼の身を捉える。

そして駄目押し気味の五発目を受けドラグーンは膝を衝くのであった。

「連続して五発のチャージショットを撃つとはな・・・」

「ストックチャージショット。一発の威力があまり変わらないのが欠点だけど。君の様な相手への牽制には十分だよね」

互いに笑みを浮かべるエックスとドラグーン。

両者の頭の中からは当初の目的は少しだけだが忘れられていた。

それだけ目の前の戦いに全思考を巡らせていたと言う事なのだが。

「そしてこのアーマーのバスターはこれだけじゃない。もう一つある・・・!!」

 

シュウウウウウウッッッ!!

 

エックスの片腕に集まるエネルギーにドラグーンは目を開きながら、その腰をゆっくりと下ろした。

「来い・・・!!」

両腕を構えるドラグーンの全身にもエネルギーが高まっていく。

「プラズマチャージ・・・ショット!!」

 

シュバアアァァァァ!!

 

エックスのバスターより巨大な光弾が放たれたのを見るやドラグーンも両手を広げる。

「真空ッッ・・・波動拳!!」

 

ドガアアアァァァァ!!

 

エックスとドラグーンの放った光弾は両者の間で炸裂し、凄まじい余波を周囲に撒き散らす。

「まだ・・・終わっていない!!」

光弾の名残が通り過ぎる中、エックスが拳を突き出しながら駆け出す。

先程以上のエネルギーを身に纏うエックスにドラグーンも驚いた。

「まだ高まるのか?」

驚きながらドラグーンも迎撃の構えを見せる。

「ノヴァストライク!!」

それは正しく光の矢。

光その物と言える姿となったエックスにドラグーンは静かに息を吸い目を閉じる。

一瞬の後、カッと目を見開いたドラグーンの全身にエックスは違う色合いの光が包む。

「むぅぅん!!瞬獄殺!!」

 

ズガガガガガガガガッッ!!

 

ドラグーンの放った無数の拳がエックスの身に当たる度に拡散していく。

彼が身に纏ったエネルギーは一種の障壁でもあったのだろう。

並の者であれば破壊されていたであろう拳を叩きこんでも、エックスの身には傷一つ付かなかった。

 

ズンッッカッッッ!!

 

ドラグーン自身も何発目か分からぬ拳を叩き込んだ所で漸くエックスの光を掻き消す事が出来た。

それは時間にして僅かに一秒あるか無いかの刹那の間。

 

バキィィィィッッ!!

 

エックスの拳がドラグーンの顎先を直撃するが、その威力は普通のパンチと何ら変わらない。

 

ガシィィィッッ!!

 

「捕まえたぞ・・・これで俺の勝ちだな」

顎先に伸ばされたエックスの腕を掴みながらドラグーンは笑う。

動きを封じられたこの状況ではエックスに勝ち目はほぼ皆無である。

次の瞬間にはドラグーンの拳が己の動力炉を貫くと言うのが本来の戦いであれば起こった光景だろう。

だがドラグーンがそんな事をする筈は無かった。

そんな時になって自分が何をしていたのか思い出してしまう。

「ハハハハハ・・・これ以上は冗談抜きで殺し合いになるな」

エックスの腕を離しながら屈託の無い笑みを浮かべるドラグーン。

その顔には達成感にも似た物が浮かんでいた。

(穏便に連れ戻しに来たのに俺はドラグーンと本気で戦ってしまった?)

あちらが当初は怒り狂った事もあり、止む無く戦いとなったのだがエックス自身もドラグーンと言う強敵を前に勝つ事を優先して動いてしまった所がある。

本来であれば望む筈がない戦いを知らず知らずの内に続けてしまっていた事にエックスは衝撃を覚える。

「俺とした事がコレクションの価値をお前に否定された事で頭に血が上ってしまうとはな。まあ途中で冷静になれたのだが、折角本気でお前が戦いを挑んできているのだからキリの良い所まで続けようと思った訳だ」

「俺はてっきり君が冗談抜きで我を失ったと思ってしまったよ」

安堵するエックスにドラグーンがましても笑った時だった。

「しかしあの声の主は一体・・・それにここでレプリフォースの連中を攻撃したのは一体誰なのか」

「やっぱりあれをしたのはドラグーンじゃないんだね」

腕を組み唸るドラグーンの言葉にエックスは頷きつつも怪訝な顔となる。

前線基地を造ろうとしていたレプリフォースの部隊を壊滅させるなど、幾らドラグーンが強者と言えども難しい所もあり更には兵士らの残骸を見るにドラグーンが行ったにしては何というかあまりにも無残に破壊し過ぎている所があった。

ドラグーンが独房内で聞いたと言う声の主の事の存在も不気味だ。

「エックスさんにドラグーン~」

後ろから響く声にエックスらはハッとなる。

見ればあのソレイユが白竜号に乗りながら笑顔でやって来る所であった。

どのような手段を用いたかは知らぬが、ソレイユはあの白竜号の背に乗る事を許されたようだ。

「おおっ・・ソレイユ。お前にも迷惑をかけたみたいだな」

愛する妻の姿にドラグーンは僅かに目を伏せるのだ。

対してソレイユはドラグーンを無視し彼の後ろにある瓦礫の山へと白竜号を進ませる。

「夫婦なんだから迷惑なんて思わないけど・・・ドラグーン?」

ニコニコと笑みを浮かべるソレイユの空気が変わったのをエックスは肌で感じた。

対してドラグーンの喉から低い悲鳴の様な声が聞こえたのは聞き間違いだったのだろうか。

「これ・・・なんですか?」

白竜号から降りつつ、貸し倉庫の残骸から辛うじてそれがなんであったか分かる物体を手にするソレイユ。

「待てソレイユ。これは・・・そう。俺じゃない別の奴の物であってな。色々あって我を忘れかけていたが・・・」

エックスは知らぬが何かのアニメかマンガのキャラと思われるポスターの切れ端にドラグーンは目を逸らす。

「ドラグーンは言ったよね?私と結婚して子供も出来たから、整理しきれないコレクションは処分するって」

「いやいやこれはまだ整理するか否か決めかねている物で処分決定となった訳では・・・」

 

グシャッッッ!!

 

コレクションの中で奇跡的に残っていた一枚のケースがソレイユによって握りつぶされたのはその時だった。

メディアが入ったと思われるそれがバラバラになって地面に落ちる。

「それは前々世紀の90年代ゲーム!!しかも希少なオリジナルディスク・・・」

口の端から泡を吹いたドラグーンの全身が大きく揺らぐ。

何やらかなり希少な物であったようだがエックスにはその価値は分からない。

「・・・座りなさい」

底冷えする声で言い放たれドラグーンはその場にあっさりと膝を折る。

そしてそのままイレギュラーハンター最強とも言われる男は両手も地面に付けるのであった。

「や・・・約束を守れなかった俺が全部悪かったです。独身時代に集めたこれらを手放すのは本当に忍びなく・・・」

「確かにドラグーンが物を大事に思う心は理解できます。でも私が許せないのは・・・私達に貴方が嘘をついていた事です」

全身より殺気を放出するソレイユにドラグーンは完全に怯えていた。

「も・・・もう嘘はつきません!!それに俺にとってはコレクションも大事だけどそれ以上にお前達家族の方が・・・」

後ずさるドラグーンに怒れる妻が殺気を放出する。

「ファイナルアーツ!!スプリング・・・ヘルッックラッシュッッです!!」

 

バキバキバキバキバキバキッッッ!!

 

無数の拳の連打をまともに受けドラグーンが地面を転がりながら吹っ飛ぶ。

「あがががが・・・」

完全にノックダウンしたドラグーンが足をピクピクさせながら呻くのを見て、ソレイユは小さく鼻を鳴らした物であった。

「もしも今度私やドラゴンニュに嘘をついたら、南鳳星グループに居る鈴鳳様達に言いつけますよ」

「そ・・・それだけは勘弁を」

ある意味でこの世で最もドラグーンが恐れている人物の名を上げられ、彼は妻に頭を下げる。

「えと・・・ドラグーンも反省しているみたいだしこの辺りにしておこうよ」

エックスの言葉にソレイユは漸くドラグーンを解放する。

ある意味で完全にノックアウトさせられた彼にエックスは苦笑いを浮かべるしかない。

見た目とは裏腹に自身でも勝てなかったドラグーンを撃沈させるのを見るに、ソレイユの恐ろしさを感じのだが彼女の兄があのアルバルドである事を考えるにある意味で当然と言うべきなのだろうか。

「・・・小娘如きの尻に敷かれるか」

 

グウウッッッ!!

 

どこからともなく響いた声と共に発せられる殺気。

「情けないものだな・・・我が弟よ」

「ぬうっ・・・危ない!!」

次に響いてきた声から相手のいる場所を察知できたのはドラグーンだけであった。

彼はエックスとソレイユの身をそれぞれの腕に掴むとその場より跳躍する。

 

バシュウウウッッッ!!

 

彼らが先程までいた場所を通り過ぎるのは巨大な漆黒の光弾。

「くっ・・・!!」

辛うじて回避は出来たが光弾の一撃はドラグーンの片足の踵を傷つけていた。

膝を衝くドラグーンは漆黒の軍馬に跨る魔竜の化身を睨み据える。

「情愛や甘さは命取りとなるだけだぞ・・・こ奴らなど捨て置き自分だけ逃れるべきだったな」

黒龍号に跨りながらリュウオーはほくそ笑む。

「リュウオー・・・貴様が何故」

突然現れた兄に問いかけをしようとするドラグーンだが、その途中で言葉を切る。

彼を目の前にしてドラグーン自身が疑問に思っていた幾つかの事が氷解したからだ。

「その顔は幾つか理解をしたと見るぞ。まあ大体が貴様の思う通りだ」

喉を鳴らすリュウオーに身構えながらエックスが問いかける様にドラグーンを見る。

「エックス・・・レプリフォースの本部を襲いアイリスを拉致したのは」

「その通りだ弟よ。スカイラグーン墜落の際にドラグーンに化け奴らに幾らかの協力をしたのはこの我だ」

思わぬ形で判明した事件の首謀者。

悪びれる事無く口を開くリュウオーにエックスは言葉を失う。

「お前があの街や眼下に住んでいた大勢の市民を・・・」

「愚劣極まる者共が何人死んだところでそれがなんだと言うのだ?」

あの時、救えなかった人々の顔が声が脳裏を過り怒りを露わにするエックスにリュウオーは眉一つ動かさない。

「ともあれ我や我に協力を要請した者共の思惑通り次なる大戦は起こる。その火蓋を切る狼煙が為に贄となったのだ。弱者など所詮は強者の糧にしかならぬとすれば寧ろお釣りが出るぐらいであろう」

あれだけの事をしておきなら平然としているリュウオー。

その姿にエックスは有無を言わさず駆け出していた。

「うああああぁぁぁぁぁあ!!」

「我を前に怒るか・・・随分と安い感情よな」

迫り来るエックスを前に馬上のリュウオーは構えようとしない。

「ハイパーXブラスター!!」

 

バシュバシュバシュバシュッッ!!

 

連続して放たれる光弾を前にリュウオーは僅かに息を吸う。

「ぬぅぅぅんッッ!!」

カッと目を見開いたリュウオーによって放出された闘気はエックスの光弾を一瞬の内に掻き消していた。

「プラズマチャージショットだあぁぁぁ!!」

「温いな・・・豪波動」

 

バチンッッ!!

 

エックスが放った巨大な光弾はリュウオーが無造作に放った漆黒の光弾によって相殺される。

先程奇襲を掛けた時よりも小さな光弾でもってリュウオーは、エックスの一撃を完全に防いでいた。

 

シュボォォッッ!!

 

「・・・ほう」

目の前で弾け飛ぶ光弾の名残に反射的に目を逸らすリュウオー。

フォースアーマーのアームパーツによって放つ事が出来るプラズマチャージショットは、その光弾の威力だけではなく着弾と同時に場にプラズマを形成する事でさらに追加ダメージを与える事が出来る。

この時は結果的にそうなっただけではあるが応用次第では目晦ましにも利用できる。

(・・・今だ!!)

隙が生じたリュウオーに対し側面へと回り込んだエックスは片腕の拳を握りしめる。

「いかん・・・エックス!!」

必殺の一撃を叩きこまんとするエックスに対し、ドラグーンが警告の声を上げる。

だがその警告は間に合わない。

「ノヴァアアァァァストライク!!」

光の矢となりリュウオーへと向かっていくエックス。

ドラグーンですらも奥義を尽くさねば相殺できなかっただけに、構えさえ出来ていないリュウオーには確実に通用すると言う自信がエックスにはあった。

 

ガキィィィィィッッッ!!

 

リュウオーの身へと突っ込んだと思った瞬間、己の視界を黒い物体が阻む。

「そ・・・そんな!!」

己の前進を阻むものがリュウオーの巨大な手と分かったエックスの顔が驚愕に歪む。

「アーマーの恩恵か?それとも更に場数を踏んだからか?以前に見た時よりも強くなったのは間違いなさそうだな」

徐々に掌の中で消え失せていく光を見据えながらリュウオーが笑う。

「だがまだまだよ。その程度の実力では我に傷一つつけられぬ。そこの情けなき弟の方がまだ楽しめると言うものよ!!」

空いた腕を握りしめリュウオーがエックスの背にそれを勢い良く叩きつける。

 

ドガアァァ!!

 

「がはっっ!!」

地面に倒れ伏し呻くエックスの背に更なる圧力が掛かる。

黒龍号に足蹴にされる形となったエックスはそれ以上、動く事が出来なくなってしまう。

「伝説の英雄の名が聞いて呆れるわ。そもそも冷静さとやらを失った時点でうぬの負けよ」

エックスを蔑む様にリュウオーが口を開く。

「エックスさん!?大丈夫ですか!!」

今にも潰されそうなエックスにソレイユが声を上げる。

「それにしても・・・だ。そこの小娘が貴様の妻か」

チラリとソレイユに目を向けるリュウオーにドラグーンは痛む足を堪え起き上がろうとする。

「聞けば鈴鳳らは我らの最新型を貴様らの娘にしたそうだが・・・」

ククッと喉を鳴らすリュウオーに嫌な予感しかしなかった。

「あの・・・リュウオー義兄さんですね?私がソレイユで娘はドラゴ・・・」

こんな状況で自己紹介をしようとするソレイユをドラグーンが守るように押し退ける。

「果たしてどうすべきかな?その娘とやらを我が下へと連れ去り新たな修羅とするも好し。或いはそれらを全て我が手で抹殺し、お前を魔道に堕とすのとどっちが好い事となるか」

首を傾げる様にして己の考えを口にするリュウオー。

それにどう答える事も出来ずドラグーンは押し黙る。

そんな弟の姿にリュウオーはまたしても笑う。

「まあそれは今後の楽しみにしておこうか。もう間も無く起こる史上最大の大戦・・・我らの思惑通りに事は進んでいるぞ」

そう言って黒龍号を操作しエックスを解放するやリュウオーは一同に背を向ける。

「ハンターベースに戻りお前達が我が語った事実を公表した所でもう遅い。既に狼煙は上がったのだからな」

「ヒイイィィィィンッッ!!」

黒龍号の手綱を操り揺れが更に激しくなった大地を駆けるリュウオー。

修羅の姿が見えなくなった後、ドラグーンは小さく呻く。

「早く・・・この事を皆に知らせないと」

ソレイユに支えられた起き上がったエックスにドラグーンは頷く。

彼らはその後、後方で待機していたコウフォーゲルに連絡を取り彼の操る飛行艇に回収される事となる。

 

 

「詳しい説明は後でするよ・・・」

「処分なら幾らでも受ける。とにかく総監に報告せねばならぬ事があるのだ」

ハンターベース近くの空港に降り立ったエックスとドラグーンは、周囲への説明もそこそこに総監の下に向かう。

総監室に辿り着いた時、彼らを出迎えたのは何時に無く険しい顔をした総監であった。

彼がここまで感情を露わにするなど、余程の事と言える。

一室に居るのは総監ばかりではない。

ゼロは勿論の事、チャージャー=グラホッパーやハリケーン=アルバルド、アナグロム=ルジャーノンなどの現在ハンターベースに詰めている部隊長が居並んでいた。

「あ、エックスにドラグーン隊長も」

エックスとドラグーン見るなりホッと胸を撫で下ろすのは副隊長のスノウアー=アイビスだ。

彼女に軽く会釈をしつつ、エックスが総監に報告を行おうとした時であった。

 

ダンッッ!!

 

総監が自らの机に巨大な拳を叩きつけたのを見てエックスとドラグーンが全身を震わせる。

「ええと・・・総監。ドラグーンの脱走の件は後で説明します。それよりもイエローストーン公園でスカイラグーン墜落の犯人が判明・・・」

「・・・そんなのは後で良いわ」

口を開こうとするエックスに総監が鋭い視線でもって黙らせる。

エックス自身、報告をしなければいけないと気負って居た事で気づかなかったが総監らの様子は明らかにおかしかった。

見れば彼の後ろの方では参謀のシグナスらを初めとする裏方の面々が慌ただしく動いている。

<由々しき事態ですぞ総監。先程政府の方に確認を行いましたが、レプリフォース海軍本部近海において海軍同士の間で艦隊戦があったのは事実のようです。大統領は緊急会議を開くとの事で私もそれに参加しますので何か分かり次第連絡を入れましょう>

一室のモニターに映るその顔を引き攣らせるのは化学顧問のジャーク=ケイン。

確か彼は政府本部がある欧州に出向いている筈なので、そちらから通信を行っているのだろう。

「はいはい~こっちも裏取れました。それとだけど周辺住民が海軍同士が戦っている映像や写真をネット上に上げてるわ。空軍の方は海軍みたいに同士討ちはしていないけど一部の部隊が艦隊を組んで総本部に集結する動きがみられると・・・」

クィンビーが気だるげに総監に報告を行う。

<こちら中東支部のエレファッツだ。石油プラント周辺でレプリフォース陸軍が動いていると住民から通報があった。ハッキリ言って嫌な予感がするぜ>

第4陸上部隊副隊長ナパーム=エレファッツが渋い顔で総監に言う。

「第4部隊は現状のまま待機。それと住人の避難誘導もお願いするわ」

<了解した・・・政府軍の方にも協力を要請しておくぜ>

総監の言葉に頷きエレファッツは通信を切った。

「あの・・・総監。これは一体・・・」

「レプリフォースが。いや正確には最高司令官ジェネラルとそれに従う者共が連邦政府に対しクーデターを起こしたと見て間違いないだろうな」

恐る恐る問いかけるエックスに参謀のシグナスが代わりに答える。

「しかもジェネラルと共に反乱を主導しているのがあのカーネルなのだからな」

「待て・・・カーネルはそんな奴じゃ」

シグナスの冷淡な言葉にゼロが食って掛かろうとするが。

「いい加減に目を覚ましなさい!!ゼロちゃん。貴方はこの状況をどう説明しろと言うの!!約束の日時を過ぎてもカーネルちゃんは出頭しない。それどころかレプリフォース全体が陸軍を中心に不可解な動きを始めてるのよ。これらの事実を見てクーデターと判断する他無いわ」

滅多に出さぬ総監の怒声にさしものゼロも唸る。

彼自身も自らが言っている事が事実と乖離しているのか分かっていた。

もはや彼らとの争いが避けられぬ状況下でゼロを絶望の淵に叩き落さんとばかりに、世界中に回線を通じ映像が映し出される。

<親愛なるレプリフォースの兵士諸君。今や我らレプリフォース全体がイレギュラーと決めつけられた!!>

それは連邦政府に対し宣戦を布告する為に、最高司令官ジェネラルが行った演説であった。

金色の巨人の傍らに映し出される一人の軍人の姿を見た時、ゼロは思わず眩暈を覚えた。

そして総監もまた己と同じ顔を持つ者を無言のままで睨み据えるのであった。

 

 

 

レプリフォース最高司令官ジェネラルが行う演説が響く中、薄暗いラボの一室で白衣を纏った女性がほくそ笑む。

「あら?カーネルも結局は台本通りに参加したのね。本当だったら確かスカイラグーンの時点で強情にハンターの要求を突っぱねるって聞いていたからちょっと不安だったのよね」

「どう足掻いても無駄だ。所詮は我らの掌で動く人形に過ぎぬ。仮にカーネルが参加せずとも代役は幾らでも居たのだからな」

ランドグリーズ=ノルンの前で淡々と口を開くのは黒衣を纏った少年。

「史上最大の軍隊であるレプリフォースが連邦政府にクーデターを起こす。まるで映画みたいな展開ね」

「元より定められた事だ」

ニコニコと笑うランドグリーズにヴォイド=バスの言葉は素っ気ない。

まるでこれから起こる事に興味がないと言わんばかりの態度だ。

「それで私はこれから何をすれば良いのかしら?」

「好きにしろと言いたいがお前もゴスペルの幹部としての顔もあるだろう。それ故に貴様に手足となる一軍を預けるとしよう」

「一軍・・・ってエインシャントフールズはもう壊滅した筈じゃあ無かったかしら?」

自身の言葉に首を傾げるランドグリーズにヴォイドはチップを掌の上で跳ねさせた後、それを彼女に放り投げる。

「これを何時使うかはお前の判断に任せよう。それと・・・」

チップの中身を確認し始めるランドグリーズにヴォイドは視線を何もない場所に向ける。

「ダークエルフ・・・そこに居るか?」

「・・・?」

聞き慣れぬ名前を口にするヴォイドにランドグリーズは怪訝顔となる。

彼女が手に持つ端末にチップの詳細が表示されるが、それ以上にその名前の主が誰なのか気になった。

 

ヴヴヴヴヴヴヴッッッ!!

 

ヴォイドの言葉に反応するかの様に空間の割れ目よりローブを纏った人物が現れる。

「大戦中はそこのランドグリーズの指示に従え。私はアポロゴーストと共に計画を進めるとする」

「ええ・・・分かったわ」

ローブの人物は声色から女性である事がすぐに分かった。

次にローブの女性が現れたのとは逆に空間の割れ目にヴォイドが姿を消した事もあり、一室にはランドグリーズと女性が残される。

「ええと・・・ダークエルフさん?でしたっけ?記憶に違いが無ければ初めましてなんだけど」

「そうよ。こうして会うのは初めてね。今回の大戦中、お世話になりますね」

若干困惑気に問うランドグリーズにダークエルフと呼ばれた女性は、ローブのフードを払い除ける。

フードの下に隠された彼女の素顔にランドグリーズは言葉を失う。

(成程ね・・・びっくりしたけど面白くなってきたじゃないの本当に)

そしてその意味を知るや白衣を纏った魔女は、その顔に笑みを張り付ける。

彼女が手にする端末に表示されるデータと目の前の女性を交互に見つめ、彼女は思考を巡らせるのであった。

「一軍って言ったけど首領も人が悪いわね。これって下手をしたら万の軍勢よりも戦果を期待できるじゃないの」

端末のモニターに映し出される移動要塞の姿に、ランドグリーズはその目を細めていた。

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