RockmanX4 War of Repliforce   作:グルルre

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wars7 暴走する軍隊(後編)

「レプリフォースからの正式な回答は勿論。カーネルの出頭は未だに見られずか・・・どちらにせよ此度の一件を理由にジェネラルの解任は確実ではあったが」

渡された資料に目を通しながら車椅子に腰かける老人は口を開く。

それに対面するは純白のスーツを着た女性型レプリロイド。

イレギュラーハンターの理事の一人であるファントム=フィーネは連邦政府本部の一室で、元議長マクシーム=エフレーモフと議会前の打ち合わせを行っていた。

状況は著しくレプリフォース側に不利だ。

世論はスカイラグーン事件を引き起こしたのはレプリフォースである事を信じて疑わず、それに押される形で連邦政府はレプリフォースを処分せざる得ない状況となっている。

「我々としてはカーネルの出頭を待っている状況だ。あの男が約束を違えるとは思えないが・・・」

「奴個人の事はあまり知らんが。伝え聞くところによるとそうなのだろうな」

フィーネの言葉にエフレーモフは感心なさげに口を開く。

かつてはケイン博士と共にレプリロイドの世界的普及に尽力した人物であるが、今の彼は反レプリロイドの立場を持つ政府派閥の長老格である。

言葉の端々に棘の様な物が垣間見られるが、その辺りをフィーネ個人が気にする事は無い。

「だが奴は来ない・・・しかもレプリフォースに怪しい動きがある。私個人は連邦政府に対する反逆の意思があると見ているが総監達はどう見ている?」

「お言葉だがレプリフォースは連邦政府にこれまで多大な貢献をしてきた。まさかこのタイミングで反乱を起こすなどあり得ない」

ジロリと老人に見据えられレプリフォースが反乱を起こす可能性についてフィーネが一笑に付すのだが。

「普通に考えれば反乱など起こす筈が無い・・・前世紀のロボット王の時もそうであったな。そして大首領の時やシグマ、ドップラーの時もだ」

エフレーモフの指摘にフィーネは小さく唸る。

極めて冷静に務めている彼女だが、長らく連邦政府で議員を務めあげたエフレーモフを前にしては若干分が悪そうに見える。

「レプリロイドに対する我々人類の不信感は極めて大きくなってきている。第一次イレギュラー大戦の英雄であったシグマや人類との共存を謳い平和都市を築いていたドップラーの反乱とあれだけレプリロイドのイレギュラー化が続いたのだ。ロックマンエックスなる新たな英雄も担ぎ上げられているが正直我々は何を信じていいのか分からん」

エフレーモフに指摘されるまでも無く人間達がレプリロイドに対する不信感が強くなってきているのは、フィーネ自身も感じている所だ。

「連邦政府の権限強化の為に半独立組織であったレプリフォースを一時的に解体およびジェネラルの解任。そしてその後釜にカーネルを・・・と言うのが最近の上層部の考えであったのだが」

「な・・・なんだと」

「イレギュラーハンターに関してはローシャリオン自身が我らに従順であるからにその必要は無いと判断されていたがな。ともあれ我ら直属の政府軍の規模を拡大し代わりにレプリフォースを縮小するつもりであった」

『だが上手くはいかんな』とエフレーモフは驚きの表情を見せるフィーネに向かって自嘲気味に笑う。

フィーネからすればなんとなくレプリフォースを冷遇する様な風潮は感じられていたが、本気でレプリフォースの弱体化を図ろうとしていたのは初耳であった。

「そもそもレプリロイドとはロボットとは何の為に生み出された?答えは一つ・・・我々人類を豊かにする為だ。理不尽であろうとも我らの命令には従うのが道理。人の役に立たぬレプリロイドに存在価値は無い」

創造主である事の傲慢さを垣間見せながらも、有無を言わせぬ威厳と迫力に満ちた声でエフレーモフはフィーネに言い放つ。

 

「先人達はロボットとの共存に失敗しました。でもその失敗を知っている私達は今度こそきっとロボット・・・ああそれを言うとケインが怒るんだった。ええと確かレプリロイドと呼ばれる新しい世代の機械と共存できる世界を創れる筈です。いや創らなきゃいけないんです。その時にはフィーネさんにも協力をお願いしますよ」

 

今となっては遠い昔に人類とレプリロイドが共存する世界を夢見た青年はどこにも居ない。

自身の表情から感情を読み取られたのだろう。

エフレーモフが僅かに表情を緩める。

「今となってみれば同じ失敗をしてしまったな。大破壊からの世界の復旧を進める必要もあったがとにかく急ぎ過ぎた・・・レプリロイドの発表をもう少し遅らせてイレギュラーの発生要因を少しでも減らす様に努力しておれば」

そう言って笑うエフレーモフの顔とあの時の青年の顔が一瞬だが重なる。

溜息を吐く様に車椅子の背もたれに体を預ける老人にフィーネは僅かに顔を伏せていた。

「ともあれこれから始まる議会で政府はレプリフォースに対する一時的な解体も視野に入れ組織全体の武装解除及び関係者の拘束を承認する意向だ。どちらにせよイレギュラーハンターには従ってもらうぞ」

「ああ・・・分かっている」

次に顔を向けた時、エフレーモフは何時もの感情の読めない顔となっていた。

彼から発せられる言葉にフィーネははっきりと頷く。

連邦政府のやり方は強引だが、イレギュラーハンターとしてそれに逆らう道理が無い。

レプリフォースには悪いがカーネルが出頭に応じない以上、彼らを弁護する事も出来ないのだ。

「・・・それにしても体の方は大丈夫なのか?」

用件は済んだこともあり、椅子より立ち上がるフィーネが車椅子に座っているエフレーモフに声を掛ける。

対してエフレーモフは僅かに口の端を歪めるのみ。

彼の年齢を考えれば仕方がない事だが、年齢の割には丈夫な肉体を持っていたエフレーモフもここ数年で一気に老け込んだと言うのが多くの者が抱く偽りなき感想だろう。

「ああ・・・そうそう」

思い出した様にエフレーモフはフィーネを呼び止める。

「今度私の孫のスフェーリアがシュタイナーの孫に当たるマーセルと正式に婚約する事になったのだ。私の屋敷でパーティーを開くつもりなのでエックスや総監、それにケインには出席を検討しておいてくれと伝えてくれないか?」

「・・・了解した」

政治の話は終わった事もあり、屈託なく笑顔を見せるエフレーモフの顔は好々爺のそれであった。

その笑みに先程までの憂鬱な思いを若干吹き飛ばされたフィーネも同じ様な顔で答え退出する。

「ふう・・・」

再び背もたれにもたれるエフレーモフ。

話し合いが終わったのを確認した一人の青年が一室に入ってくる。

「レプリフォースの兵器開発室室長のエステルが父であるシュタイナー大臣と兄のフレデリック准将と面会をしているそうだ。無駄な事をするものだ・・・」

囁く様に耳元でエフレーモフに話しかけるのはエナミスだ。

「それとマスカレーズの報告によれば既にレプリフォースの武装蜂起は避けられない見通しとの事。一部将校らがそれに反対の意を示し離脱する動きもみられているらしい」

「レプリフォースの弱体化は図らずも成功という訳か。だからと言って無用な犠牲が出る戦争は望まぬがな」

息子のマックス=エフレーモフことエナミスの言葉にエフレーモフは疲れ切ったように息を吐く。

そんな父にエナミスが抱く感情は複雑だ。

年齢を考えれば予兆は幾らでもあった。

議会や派閥の会合が夜間まで続いた疲労もあったのだろう。

エフレーモフは帰宅した自宅の玄関先で足を滑らせ転倒、幸いな事に骨などには異常は無く外傷も見られなかったのだが、その日を境にして長時間歩く事が困難となり今の車椅子の使用を余儀なくされる状況が続いている。

『最近、移動の際に休むことが多くなった』とは姪のスフェーリアの言葉だが、些細な事を切っ掛けにしてエフレーモフは年老いてしまった。

「戦争は望まぬが回避出来ぬのであれば犠牲を最小限に抑える方に尽力するとしよう。マックス・・・貴様の子飼いの者達の力も借りさせてもらうぞ」

「その為に偽装をさせてまで民間軍事会社を設立した。彼らの力を存分に利用すべきだ」

一瞬だけ鋭い視線を向けて話す父にエナミスは囁く様にして言う。

不死身の肉体を得た事もあるがその若さ故の自信過剰な一面を見せる息子の姿にエフレーモフは自嘲気味な顔となる。

「お前が何を考えているのかは私には分からぬ。だがこの年寄りから一つ忠告するのであれば・・・私の様に失敗するなよ」

「生憎だが私はかつての貴方の様にレプリロイドと共存する世界を創ろうなどと言う夢想は抱いていない」

年寄りの忠告を鼻で笑うエナミス。

「失礼します!!」

慌ただしく一室に入ってくる職員の姿に二人が目を向ける。

「レプリフォースが。ク・・・クーデターです!!我々連邦政府に反旗を翻しました」

職員が告げるレプリフォース蜂起の報にエフレーモフは深々と息を吐いた。

「・・・始まったか」

そう呟く彼の隣でエナミスは薄笑みを浮かべていた。

 

 

「分かっている・・・カーネルもアイリスもレプリロイドとは言え娘であるお前の子供には違いない。誰が自分の孫を陥れて喜ぶものか」

ソファーに身を埋めながら初老の男性が滅多にこの家に顔を出さない娘に話しかける。

軍務大臣である父シュワルツ=シュタイナーの言葉に安心したようにエステルは微笑む。

「俺も親父と同意見だ。何度も言っているがこれは一時的な処置だ。レプリフォースの身の潔白を証明し真犯人を探さねばならん・・・その間だけでもカーネルらが堪えてくれれば寧ろこちらから詫びねばならんだろうよ」

軍服の上着を脱ぎながら隻眼の人間の将官・・・兄であるフレデリック=シュタイナーが口を開く。

エステルの説得に促される形で軍務大臣に政府軍将官である彼らは政府に対し働きかけを行うであろう。

そもそもがエフレーモフ派を中心とする連立政権が政権与党となっている時点で、エステルらにひいてはレプリフォース側には有利な状況だ。

彼らこそが長らく政府を運営してきた政党なのである、レプリロイドにはやや高圧的と言う難点もあるがそれでもそれ相応の付き合いをしてきた実績がある。

エステル自身、何を焦っていたのだと苦笑してしまう。

今すぐには無理だろうがそれでもこれ以上、事態が悪くなる事は無い・・・そう彼女が確信した時であった。

 

ガタンッッ!!

 

「あなた・・・大変よ!!」

突然、慌ただしく部屋へと入って来る女性。

シュタイナーの妻であるセシリーが血相を変えて彼の下へと駆け寄る。

普段はマイペースと言える彼女がここまで慌てるのをエステルも見た事が無かった。

「准将!!お話の所、スイマセン!!緊急事態です・・・!!」

もう一人のフレデリック付きの下士官もフレデリックへと近づく。

それぞれが耳打ちをするようにその事実が伝えられたのはほぼ同時だった。

「・・・・親父」

「・・・うむ」

二人の声は完全に狼狽の色を隠せないものであった。

「第一戦闘配備だ・・・欧州司令部を含めた政府軍ならびにフェデラルセイバーズに号令をかけろ。私もすぐに司令部に向かう」

「・・・イエッサー!!」

フレデリックの言葉を受け下士官は復唱をしながら駆け出していく。

「な・・・何が起こったの?」

妙なまでの胸騒ぎがしエステルが二人に問いかける。

それに答える代わりにシュタイナーが部屋のテレビの電源を入れる。

 

<我が勇敢なるレプリフォースの兵士諸君!!>

 

そこに映されるは金色の巨人の姿。

他ならぬレプリフォース最高司令官ジェネラルだ。

<今や我々レプリフォース全体がイレギュラーと決めつけられた>

「決めつけてねえし・・・ええい馬鹿者どもめ!!人の好意を踏み躙りよって!!」

ジェネラルの演説など聞きたくないとばかりに苛立った様子で立ち上がるフレデリック。

エステルもその事態を悟っていた・・・最悪なまでの事態が起こってしまったのだ。

「私も議会に向かうとする。程無くあそこに居る者共にイレギュラー認定が下されるであろう」

シュタイナーがそう話すのを愕然と聞くエステル。

テレビの向こうにはあろう事かカーネルの姿まで見える。

「ま・・・待ってよ。父さんに兄さん、これは何かの間違いよ。私がもう一度言って説得をするから」

震える声で動き出そうとする二人を押し止めようとするが彼らの動きが止まる筈もない。

「クリスティーナか?機動兵器の準備は・・・そうか。ようしプレオン達もすぐに出動出来る様にしておけ」

自身の副官に対し端末越しに号令をかけるフレデリック。

彼は妹のエステルをわざと見ないようにしながら指示を出していく。

妹の顔を見てしまえば決心が揺らぐような気がしたからである。

「私ですアッシュ補佐官ですか?既にエフレーモフ前議長も向かっておりますか、私もすぐに向かいますので・・・ええ。詳細は後ほど・・・それとレプリフォース海軍と空軍の一部に離反者が?了解・・・・・彼らに関しては監視付きで一時的な拘束を行いましょう」

端末の向こうに居るであろう補佐官に話しかけながらシュタイナーは屋敷から出て行こうとする。

フレデリックもまた屋敷の敷地内に停めてある部下の運転する軍用車に乗るつもりのようだ。

「敵は逆賊レプリフォースだ。とにかく私が来るまで持ちこたえるのだぞ!!我ら政府軍の・・・人類の意地を見せてやれ」

身内を逆賊と言い放つ兄の姿に現実味が全く無かった。

「兄さんっっ!!私の話を聞いてよ!!」

完全に取り乱した様子で涙ながらにしがみ付いてくる妹の姿にフレデリックは隻眼を細めるが。

「エステル・・もはや話し合いで済むと言うレベルでは無い。レプリフォースは政府に反旗を翻した・・・即ちそれは我ら人類に敵対をしたと言う事だ」

<だがこれは人類への敵対ではない。自由と安全それら正当な権利を主張する為の物である>

皮肉にも自身の言葉を否定するようにジェネラルが主張をするもそれがただの戯言である事は明白だ。

戦争と言う手段を選んだ時点で多くの者達が傷つき死んで行くのだ。

「もはや我らには戦うしか道は残されていない。ならば我らの力を見せつけるのみよ。今からレプリフォースに戻るなんて馬鹿な気は起こすなよ・・・お前はこの屋敷に居ろ。我らとしてもお前が人質にされてはたまらんからな」

わなわなと全身を震わせるエステルを押し退ける様にフレデリックはシュタイナーに続き外へと出て行く。

「・・・・・馬鹿な事を」

歯を軋ませながらシュタイナーは玄関に佇んだままの娘を見据えていた。

「あの・・・お義姉様?」

茫然と立ち尽くしたままのエステルに若い女性が声をかける。

腹違いの妹である彼女ウェンディ=シュタイナーはエステルを気遣う様に伏し目がちだった。

「これ嘘じゃないよね?レプリフォースがイレギュラーになんて・・・カーネルどうしてなの?」

「・・・・お義姉様」

その場に崩れ落ちながら涙を流す姉の姿にウェンディはどう声をかけていいのか分からずただその姿を見つめる他無かった。

 

 

 

既にその放送は全世界を駆け巡っていた。

自身と同じ顔をした者が人類への反旗を翻す演説を行うのを総監は不快感を露わにして見ていた。

ドラグーンを連れ戻したエックスは総監室で繰り返し放送される演説に驚きを隠せなかった。

<先程開かれた緊急議会で連邦政府はレプリフォースの行動を人類に対する敵対と判断。クーデターに関わった全ての将兵のイレギュラー認定を行うように通達があった>

「は~い・・・こっちにも今届いているわ」

モニター越しにフィーネと会話をする総監の目の前に大統領及び関係閣僚の連名で書簡が送られてくる。

非常に大きな溜息を吐きながら総監は手にした電子ペンの先をデスクの画面に触れさせる。

「あの野郎共・・・」

ゼロにしてはあまりにも弱々しい声を発しながら、祈る様な思いで彼は総監を見上げる。

周りに居るエックス達も同じ様にして総監の決断を見守るしかない。

(皆してそんな顔しなくてもいいじゃないの・・・ま、連邦政府に逆らえないから私はサインしますけどね)

総監はモニターの書簡に自身の名前でサインをするのであった。

モニターのボタンを押し書簡を政府本部に送りつつ、デスクの上に印刷されたもう一枚の書簡を手に総監は椅子より立ち上がった。

「今、この瞬間を持ちましてイレギュラーハンター総監ジャッジメント=ローシャリオンの名の下に、今回のクーデターに関わったレプリフォース将兵のイレギュラー認定を行うものとします」

大統領達と自身のサインが記された書簡を見せつける様にして、総監はエックス達に正式にレプリフォースのイレギュラー認定を行う。

「シグナスちゃん。これの写しを各支部に転送・・・政府軍と歩調を合わせて動いて頂戴」

「は・・・はっっ!!」

参謀のシグナスに命じながら総監は茫然と立ち尽くす部隊長やハンター達に溜息を吐く。

「何をしているの!?貴方達には皆を守る仕事があるでしょ!?普段は暇でも有事の際には私達はとっても忙しくなるんだから・・・そこで突っ立っていると邪魔だから出て行ってくれるかしら!?」

「は・・・はいっっ!!」

滅多に上げぬ総監の怒鳴り声に追い払われる様にしてエックス達は総監室から逃げる様にして立ち去る。

「やべえな・・・ともあれどうすっか」

アルバルドが欠伸をしながら一番前を歩く。

「ドップラーの反乱の時と同じようにこの街が戦場になる可能性がある。万が一の時を考え都市の防備計画を立てねば」

グラホッパーの言葉にドラグーンが頷く。

「相手はレプリフォースだ。今までのイレギュラー組織とは格が違い過ぎる。奴らが全力を出せばこのハンターベースの陥落もあり得る」

ハンター随一の実力者であるドラグーンの言葉にエックスらの顔も引き締まる。

「不幸中の幸いなのは全ての将兵が今回のクーデターに賛同しなかった事ね。海軍提督と空軍長官はクーデター反対派を纏めて政府軍に投降の動きと政府本部に居る兄から連絡が入っているわ」

この事態をどこか楽しむようにクィンビーが言う。

彼女の態度にゼロが鋭い視線を向けるが、クィンビーの方は意に介さない。

「どちらが主導したにせよクーデターの中心にいるのは陸軍元帥カーネルと彼を担ぎ上げるカーネル派と呼ばれる者達ね。案外スカイラグーンの一件も・・・」

 

ガッッ!!

 

扇で口を隠しながら笑いだしたクィンビーだがその胸倉をゼロに掴まれた事で言葉を切る。

「カーネルは俺に自分の誇りである武器を預けてくれた。奴はスカイラグーンの一件を説明するために投降すると約束したんだ!!」

「そんな物・・・ただの道具じゃない。何時もの隊長らしくありませんよ?如何に自分の彼女の身内だからって私情で判断を鈍らせるなんて新人ハンター以下なんじゃないですか?」

カーネルとの約束を未だに信じようとするゼロにクィンビーが嘲笑う。

彼女の嘲りに顔を引き攣らせるゼロ。

このままでは拙いとエックスが彼を押し止めようとするが、その前にドラグーンがゼロの腕を掴む。

「お前の気持ちは分かるがゼロ。既にカーネルが反乱を主導する立場にあるのは明白だ。もしもカーネルがクーデターに賛同していないのであればジョーズィやペガシオンらの様に脱出を図っている筈なのだからな」

「んだと・・・お前もカーネルを疑うのか!?」

冷静にゼロを諭そうとするドラグーンだが、それを事実と認めたくない心がゼロを激情に駆り立てる。

クィンビーから手を離したゼロはその苛立ちを今度はドラグーンに向ける。

「・・・ゼロッッ!!」

咄嗟にエックスが止めようとするが逆にドラグーンに手で制止させられる。

「理由はともあれお前とは戦いたかったが・・・」

口の端を緩めたドラグーンは挑発する様にゼロに向けて手招きをする。

ここまで頭に血が昇っては誰にもゼロは止められない。

殆ど言葉にならない声を上げ殴りかかって来るゼロにドラグーンは静かに構え。

 

・・・フッッ!!

 

一瞬の内にドラグーンの姿が掻き消える。

高速移動術『阿修羅閃空』だと判断した慌てて振り返った先にあったのは突き出されたドラグーンの拳。

「・・・ぐっ」

「今のが実戦なら俺はお前の頭部を砕いていたぞ」

冷徹なドラグーンの言葉にゼロは完全に冷静さを失っていた事に気づく。

呻くゼロにドラグーンは深々と溜息を吐く。

「冷静になれゼロ。お前がカーネルを信じるのは勝手だが、現に彼らが反乱を起こしているのは事実だ」

「好意的にカーネルの事を思うのであれば反乱に参加したのも何か理由があってと考えられる。いずれにせよ奴に直接会って確かめるしかないだろう」

ドラグーンとグラホッパーの言葉にゼロは項垂れる様に肩を落とす。

「そしてお前もだぞクィンビー。部隊長に対する最低限の敬意ぐらいは払え」

「とんだ失礼を・・・ごめんなさいね隊長」

自身の態度を指摘されクィンビーが心無い謝罪をする。

肩を落としたままその場を去るゼロ。

あまりにもらしくない彼の姿にエックス達は互いの顔を見合わせるしか無いのであった。

「総監からどの様な命令が来るか分からん。ともあれまずは部隊の編成を急ぐとしよう」

ドラグーンの言葉にエックス達は頷きながらハンターベース内のそれぞれの部隊のデスクに向かう。

「マジでか・・・お前はペガシオン達と一緒に居るのか?で・・・あいつはカーネル派でクーデターに?」

副隊長のアイビスと共に第17精鋭部隊のデスクに入るなり、目に飛び込むのは親友のブリッツ=オージンが端末を使って誰かと話す姿。

人懐っこい性格もあって他部隊や他組織の者達と交流を持つオージンは、個人の人脈で情報を収集している様であった。

「隊長~大変デシ!!西アメリカの沿岸部の都市から救援要請が次々と届いているデシ!!」

ダブルがモニターに映し出される情報を指差しながらエックスに告げる。

レプリフォースの総本部がアメリカ西部にある事もあって、西部の都市は逸早くレプリフォースの侵攻を受ける事となる。

エックスもすぐさに駆け付けたい所だが、あまりにも救援要請の数が多すぎる。

仮にハンターの全部隊が投入可能でもレプリフォースの進軍を止めるのは不可能だ。

「極東地域において政府軍とレプリフォースの衝突を確認しました。同じく南米でも戦闘が始まっています」

オペレーターの女性職員がダブルに続いて情報を告げる。

「まずは情報の整理をしよう。相手が相手だし迂闊に動く事も出来ないよ」

アイビスの言葉に隊員達が頷く。

彼女は今にも飛び出したい様子のエックスを宥める様に彼の肩に手を置くとデスク内を見渡す。

「確かにそうだな。この混乱でイレギュラー組織の残党が便乗して活動を再開する可能性もある。出撃命令が下るまではこの街の防衛を重視しようぜ。とにかくまずは情報収集だ」

仲間内の通信を終えたのかオージンがアイビスの言葉を引き継ぐ様に言う。

彼の言葉にデスク内の混乱も一瞬だけだが収まりを見せる。

<エックス・・・聞こえるか?>

参謀のシグナスがエックスの持つ端末に通信を入れてくる。

<先程、総監がここハンターベース防衛の為に政府軍に援軍を要請した。程無く政府軍がこの地に派遣されるだろう。我らは援軍が駆け付けるまでの間、可能な限り時間稼ぎをする方針だ>

「はい・・・分かりました」

シグナスの言葉に違和感を覚えながらエックスは静かに頷く。

本来であればこの様な時に政府軍が援軍として派遣される事は殆ど無い。

大規模なイレギュラー事件が発生した際に自分達の援軍として派遣されるのはレプリフォースが常であったのだが、今回反乱を起こしているのはその頼りにしていたレプリフォースなのだ。

瞬く間に色が塗り替えられていくアメリカ大陸の地図を見据えながらエックスは拳を握り締めていた。

 

 

 

<いいか?我々にはこれしか道は無い!!恐れず勇気と誇りをもって戦おう>

繰り返される演説の映像が地下の底で映し出される。

「レプリフォース大戦・・・遂に始まったか」

ドッペルタウン跡地において一匹の鬼がほくそ笑む。

本来のシナリオとは細部は違うがそれでもその殆どが筋書きにある通りに進んでいる。

それを知っているが故にヴァヴァは態度とは裏腹に焦りも僅かに覚える。

「もう時間も無いか・・・次で終わりだ」

「あのヴァヴァちゃん・・・次って?」

ぼそりと呟いたヴァヴァの言葉に魔女ベルカナが困惑気に首を傾げる。

「この大戦の次で世界が終わるのさ・・・冗談抜きでな」

突拍子の無い事を口にするヴァヴァだが、無機質なメットの向こうにある目は嘘を言うようなものではなかった。

「サ・・・サナトスちゃんにギガトータスちゃんも準備完了よ。後は彼らが上手くやるのを祈るだけね」

怯えの感情を見せつつも端末に記された情報を口にする。

それに頷きつつヴァヴァは目の前の地下空間で建造が急がれるシェルターとその周囲で働く者達をじっと見据える。

ドッペルタウン跡地の殆どを掌握したヴァヴァは、自身に従うイレギュラー達を集めると突然地下にシェルターを造る事を命じている。

地上部分は廃墟にこそなっているがドップラーが遺した地下施設を使えば、現状の生活水準を維持しつつ潜伏は出来ると言うのにである。

誰もがその行動に疑問を抱く中、ヴァヴァは有無を言わさぬ態度で建造を押し切っている。

「出来ればレプリフォースの施設から資源を大量に頂きたいがそれは高望みか」

「新しいヴァヴァちゃんのボディを造るには十分に素材は集まっているわよ。と言うか既にヴァヴァちゃんのボディはあるのに別のボディを新規に造ろうとするなんて」

「ククククク・・・前にも言ったがお前が造ったボディは俺とお前の子供にする。そいつの精神プログラムはもう完成しているんだろ?」

ラグズランドでヴァヴァを再生させる為にベルカナが制作したボディは、ヴァヴァが子供と称する新規のレプリロイドのボディとして使用される予定だ。

「ええ・・・ドップラー博士の施設を使わせてもらって大体の工程は完了しているわ」

「なら後は任せるぜ。俺のボディはそれからでいい」

肩を震わせるヴァヴァはスクラップ同然の腕で頭の裏を掻く。

ドップラー事変におけるエックスの戦いで瀕死の重傷を負ったヴァヴァだが、ベルカナからして動いているだけでも不思議と思える。

「今は表に出る時期じゃねえ。もしも俺が万全の状態だったらこれから起こる戦いの中で大人しくしている自信が無いからな。だから俺は今はこのままで良いのさ」

咽込みながらヴァヴァは笑う。

「さあエックスにゼロ・・・楽しい祭りが始まるぜ。仲間と思っていた奴らに裏切られるんだ。まあお前らも一度は堕ちろ・・・かつての俺みたいにな」

ここではないどこかを見据えながら鬼は地下深くで笑い続けていた。

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