RockmanX4 War of Repliforce 作:グルルre
「ネバダ地区に侵攻中の部隊より入電。ラスベガス都市部の制圧がほぼ完了したそうです」
レプリフォース総本部の会議室で陸軍元帥カーネルの言葉に最高司令官ジェネラルは満足げに頷く。
自身らの武装蜂起より数時間、破竹の勢いと表現する他無い勢いでレプリフォースはアメリカ西海岸を始めとする主要都市を手中に収める。
そもそものレプリフォースが保有する戦力を鑑みればここまでは想定内と言えよう。
「で・・・俺達海軍はこれからどうする?このまま南下して南米や反対側に居るハンターベースを狙うか?それとも太平洋を渡って極東地域を攻めるのもありだな」
ジョーズィが艦隊を率い脱走した事で、新たに海軍提督に任じられたタイダル=オアンネルが言う。
「まだハンターや政府軍の組織的な抵抗が見られていない。あまり無意味に戦線を広げすぎるのは如何なものかと私は思うが」
勢いに乗ろうとするオアンネルの言葉に水を差す様に言うのはストーム=フクロウルだ。
彼はペガシオンが離脱したことで空軍長官と幕僚長を兼任する立場にある。
フクロウルが元々反ジェネラルの立場である事は明白である為、彼に向けられる周囲の目は非常に冷たい。
「衛星軌道上は元より我々が支配しているのだが、配備されている攻撃衛星を使い各地にある政府軍の施設を攻撃するか?それとも・・・」
宇宙軍総司令のギャラクシー=キリンタイザーが喉を鳴らす。
「デスフラワーを使って連邦政府本部を消し去るのもありと言えばありだぞ」
真顔でそう言い放つキリンタイザーにその場に居る面々が顔を引き攣らせる。
あの粗暴なオアンネルですらも彼の突拍子の無い言葉に面食らっている様子であった。
「無用だキリンタイザー。デスフラワーは文字通りの最終兵器。その様な大量破壊兵器を使って勝利を得た所で我らの正義が示せるとは思えぬ」
ジェネラルの言葉にその場に集まった面々が内心安堵したのは言うまでもない。
「ふむ・・・ではそうするのだ」
キリンタイザーの方も己の意見が退けられた所で不快感を露わにする事は無い。
そもそも異星のロボットである事もあり、彼が持つ価値観はカーネルらレプリロイドとは大きな隔たりがある。
彼からすればこの星も無数に存在する惑星の一つに過ぎないと言った所なのだろう。
陸軍元帥カーネルに海軍提督オアンネル、空軍長官フクロウルそして宇宙軍総司令キリンタイザー。
彼らが現在のレプリフォースの中核を担う面々である。
顔には出さなかったがジェネラルからして全幅の信頼を寄せるにはあまりにも心許ない者達。
だがその彼らを使いこなさねば勝利は無い。
「では我々宇宙軍は衛星軌道上から地上の部隊に物資を投下し援護する事に専念するとしよう」
キリンタイザーの言葉通り衛星軌道上に敵らしい敵が殆ど居ないと言う事で、既に制宙権はレプリフォースが握っている。
ジョーズィやペガシオンの離脱で失った戦力は痛いが彼らの援護を活用すれば、勝機は十分にあるとジェネラルは考えている。
「それで今後の方針だが・・・」
「まずは英雄と称されるロックマンエックスを擁するイレギュラーハンター共をこの北アメリカより追い出すべきと私は考えますが如何かな?」
フクロウルの言葉を受けカーネルが口を開く。
元の兵数もあるが大多数の将兵らがクーデターに参加した事でカーネル率いる陸軍はレプリフォースにおいて多数派となっている。
その発言力はジェネラルとて無視出来るものではない。
「かつて俺の同型機サンゴッドを打ち破りし者の後継者か。確かにほんの少しだが興味はあるな」
英雄の名前を聞きキリンタイザーが独り言を呟く。
「このまま我が軍を北アメリカ中央へ進ませ東海岸にあるハンターベースを陥落せしめれば、我が軍が彼らに抱いた怒りを世界に思い知らせる事が出来る。ましてハンター共は連邦政府と共謀し我らの誇りである武器を奪わんとしたのだ。その罪は万死に値する!!」
机の上に拳を叩きつけながら語気を荒くするカーネルの目には一種の狂気すら孕んでいた。
(・・・・・・)
変貌したと言っても良い彼の姿にフクロウルが不審げに目を細めるが、それを問う機会はこの場においては無い。
「南米に展開した部隊は如何致しましょう?あそこには確か件の兵器を建造中であったのでは?」
今まで黙していた陸軍将官ソルブライト=アテネが口を開く。
現在レプリフォースは南米のジャングルにてデスフラワーに匹敵する兵器を秘密裏に建造中であった。
連邦政府によって核弾頭を始めとする大量破壊兵器を凍結させられたレプリフォースにとって、抑止力と言う観点から何としても確保しておきたい所である。
「俺達海軍の艦隊を回そうか?アメリカ中央部への侵攻よりかはそっちの方が俺らの特性を生かせる」
オアンネルの言葉にジェネラルが頷く。
「うむ・・・では海軍には太平洋上の侵攻と並行し南米アマゾン流域の我が軍の援軍に回ってもらう事とする。それで空軍であるが」
「政府軍への牽制としてカナダを経由して直接欧州を攻撃致しましょうか?」
ジェネラルの言葉を受けフクロウルが口を開く。
もしもハンターベースを攻略中に政府軍の横槍が入れば、攻略に手間取るのは必至。
それを妨害すべく欧州を攻撃し政府軍を牽制するフクロウルの考えは至極真っ当だ。
「そうだな。空軍による都市強襲の可能性を残しておけば政府軍は欧州より援軍を送るのも躊躇うであろう」
政府軍の横槍が入れば状況次第でレプリフォースとて撤退を余儀なくされる可能性もある為にジェネラルはフクロウルの意見を採用する。
「先程攻撃衛星の使用は不要と言ったが、欧州にある軍施設のみを限定して衛星軌道上から攻撃を仕掛けるのはどうなのだ?港や空港を使えなくすればその分、相手の動きは鈍るぞ」
キリンタイザーの提案に一考するように目を閉じたジェネラルはややあって頷く。
「民間施設を避ける形での攻撃であれば許可しよう。但しあくまでもこれは牽制だ。絶対に人口密集地には当ててはならん」
「・・・了解した」
念を押す様に言うジェネラルにキリンタイザーも敬礼で返す。
「中東地域は資源の宝庫です。この会議の後、私は同地の軍と合流するとしましょう。この戦争を続けるうえで資源の確保は急務ですし」
アテネのどこか棘のある言葉に何人かの者達が渋い顔となるが、彼女の言葉通り戦争と言う手段に打って出たレプリフォースに対しあらゆる軍需産業からの支援が打ち切られている。
今は占領地域にある都市などから強引に接収を続けているが、それを看過してくれる程、敵も甘くはないであろう。
「この戦いは聖戦である。我らの正義と誇りを示すが為に我ら一同ジェネラル閣下の下で心を一つにし、刃向かう敵全てを討ち滅ぼす必要がある!!各軍の検討を祈る!!」
カーネルの言葉にそれぞれの反応を示す者達の中、フクロウルは独り渋い顔を浮かべるのであった。
「・・・ジェネラル閣下」
会議を終え各軍が次なる行動に出る中、己の執務室へと戻ったジェネラルの足元で影が蠢く。
「シャドーか・・・それであの小娘はどうなった?」
「現在、ダークフィフスが追跡に当たっております」
特務機関『シャドーフォース』の長官マーシャル=シャドーの報告にジェネラルは大きな顔をしかめる。
先の会議では挙がらなかったが、カーネルの妹アイリスが行方不明となっている。
事実上の脱走なのだが彼女の件を糾弾すれば、カーネルやその配下である陸軍将兵らとの間で無用な軋轢を生む可能性があり、ジェネラルは敢えてその話をしなかった。
「何としても連れ戻せ。あれはカーネルを繋ぎ止める為に必要な人質だ」
「・・・ハッ」
自身の命令を受け恭しく一礼するシャドー。
ジェネラルの巨体もあり、一室に漂う空気は空虚さを多く含む。
「ジェネラル閣下とあろう方が小娘一人の事で随分とお悩みのご様子ですなあ」
「・・・誰だ!!」
不意に響く声にジェネラルは席より立ち上がると巨大な拳を握り締める。
ザッッ!!
真っ先にその侵入者に反応を示したのは彼の護衛であるシャドー。
彼に刃を突き付けられ侵入者は降伏する様に両の手を上げていた。
「突然の訪問ご容赦を。なあに閣下に害を与える気は毛頭ありませんよ」
シャドーフォースの面々が警護するジェネラルのプライベートルームに入り込むのは、特A級ハンターの忍びでも困難な事だ。
わざわざ声を上げた事もあり、相手の目標は言葉通り暗殺の類ではないのだろう。
ギロリと侵入者を見下ろしつつジェネラルは椅子に腰を落とした。
「何の用でここへ来た・・・?返答次第では私の影が貴様を斬り捨てるぞ」
脅す様な言葉を吐きつつもとりあえずは話を聞くと言う態度を見せるジェネラル。
シャドーに刃を突き付けられながらも、侵入者は兜を脇に抱えると恭しく頭を下げる。
「私の名前はヴォーダン・・・ヴォーダン=ノルンと申します。その名前に聞き覚えがあると思いますが」
「ノルンだと・・・では貴様はランドグリーズの!!」
忌々しい裏切り者の名前を聞き拳を再度握り締めるジェネラル。
それに反応する様にシャドーも刃に力を込める。
「お察しの通り彼女は私の姉だ。その辺りの経緯はともあれこのヴォーダン。貴方の掲げるレプリロイドだけの国家建設と言う理想に共感を得ました。是非とも配下に加えて頂きたい」
「ふざけるな・・・誰が貴様の様な信用ならぬ者なぞ」
慇懃無礼にレプリフォースへの参加を希望する青年に対しジェネラルは吐き捨てる様に言い放つ。
前兵器開発室室長であったドクトレス=ノルンことランドグリーズ=ノルンは、レプリフォースを裏切りイレギュラー組織に情報を売り渡していた組織の汚点とも言うべき存在である。
彼女の裏切られた無念はジェネラル個人未だに忘れられる物ではない。
「もしも私をレプリフォースに入れて頂けるならイレギュラーハンター内部の情報を提供いたしますが・・・?」
屈託の無い笑みを浮かべるヴォーダンにジェネラルの眉が吊り上がる。
「実は私の仲間が既にイレギュラーハンターの中に入り込んでいるのですよ。その者から聞き出した情報を貴方達に提供する・・・事前に相手の出方を知りえれば元々の戦力で勝るレプリフォースは確実に勝利出来る筈ですが」
「・・・・・・」
考え込むように黙るジェネラルにヴォーダンは続ける。
「シャドーフォースを使いハンターベースの内部に潜入するのは今からでは難しいと思われますよ。何せあちらには第0特殊部隊が目を光らせているのです。ならば既に内部に潜入を果たしている者を使った方がリスクも少ないと私は思いますが」
暫しの間、考え込むように黙り込んでいたジェネラルは、カッと目を開くとシャドーに対し軽く手を払う。
主の合図もあり、手にした刃を下げたシャドーはそのまま地面の中へと姿を消してしまう。
「戦争に勝つのに手段を選んでいる暇は無いか。いいだろう・・・では貴様の力を利用するとしよう。だが気を付けるのだな。お前に裏切りの素振りを見せれば・・・」
暗にシャドーフォースを使い抹殺する意を見せながらも、ジェネラルはこの信用ならない者を仲間に引き入れる事を決断する。
恭しく一礼をしながら青年はその端正な顔を歪ませていた。
レプリフォースが世界規模に向けて行った演説を境に彼らは世界中の主要都市や重要拠点へと攻撃を仕掛ける事となる。
「欧州のシティアーベルが陥落・・・極東のペキンも厳しいわね」
各地より寄せられる部下の報告に耳を傾けながらクィンビーが呟く。
当たり前ながら警察組織であるイレギュラーハンターと軍隊組織であるレプリフォースの戦力差には大きな開きがある。
相次ぐ戦乱によって疲弊していたイレギュラーハンターだが、全盛期の頃の規模であっても彼らに真っ向から立ち向かうのは不可能であっただろう。
となると頼みになるのは政府軍なのだが、彼らもレプリフォースの存在があって規模が制限されていただけに劣勢は否めない。
欧州や極東では彼らの進撃をギリギリで食い止めているのが現状だ。
こればかりはどうしようもないと彼女は現状を打破すべく思案に耽った時だった。
忙しなく動く周囲の面々をよそに抜け出していく一人の少女。
彼女の後姿にクィンビーは薄笑みを浮かべていた。
「ハァ・・・ハァ!!」
ハンターベース郊外の人気も少ない場で周囲の気配を窺うのはイレギュラーハンターの制服に身を包んだ女性ハンター。
第3警備部隊副隊長のプロテック=デネブは慌ただしくなる任務の途中、単身でその場を訪れていた。
罠の可能性もあったがそれでも動かずには居られなかった。
彼女も内心での動揺は抑えてはいるが、レプリフォースのクーデターに対し深い悲しみを覚える者の一人。
「どこ・・・・?どこに居るの?」
デネブが周囲を窺いながら自身を呼んだ少女に声をかける。
彼女はすぐに見つかった。
アイリスは恐る恐ると言った様子で物影から顔を出しデネブを確認するや慌てる様にして飛び出して来る。
「デネブさん・・・良かった」
安堵した様子ではあるが、アイリスの顔は青ざめてさえいた。
「あの・・・私、私はこの戦いを止めたくて」
「分かってる・・・何も言わなくて良いから。とにかく貴女の事は私が総監達に取り計らうわ、だから安心してね」
カーネルとシグナスと言うある意味で似た兄を持っている彼女ら。
彼が今回のクーデターを引き起こした事に恋人であるデネブは未だに信じられないでいる。
そんな折に兄と恋人の板挟みになり苦しむ彼女からメッセージが送られデネブは居ても経ったも居られなかった。
「はい・・・・ゼロに事情を話せばきっとこの戦いを」
デネブの言葉にアイリスは息を整えながら口を開く。
それはあまりにも淡い希望を胸に抱いての言葉であったのだが・・・・。
「この戦いを・・・・止める気なのかしら?フッフッフ・・・・暇だからついて来たら意外な発見もある物ね」
周囲より響く声に全身の血の気が引いた。
ブブブブブブブブブブブブブブッッッ!!
「・・・・・え?」
「・・・下がって!!」
アイリスが呆けた様に周囲を旋回する無数の蜂型爆弾を見つめる。
対してデネブは声を上げながらビームセーバーを構える。
「多少は怪しく思っていたけど。敵と・・・それも今回のクーデターの首謀者の妹と内通しているとはね」
「・・・クィンビー」
いつの間にか頭上の建築物に腰掛けながら居たクィンビーの姿にデネブが歯を軋ませる。
「そっちのアイリスを処分するのは確定として・・・デネブ、ここでのアンタの行動を証拠に示せばイレギュラーに仕立てるのも容易いわね。貴方の頭でっかちの馬鹿兄がどんな顔をするのか見物だわ」
扇をパタパタさせながらクィンビーは冷徹に言う。
彼女に対しデネブはとにかくこの場を切り抜ける事だけを考える。
「ま・・・待って下さいクィンビーさん!!」
そんな状況でありながら凛とした声をアイリスは上げていた。
「デ・・デネブさんは私がここに呼び出してしまったんです。内通だなんて・・・そんな」
「ハァ・・・アンタ、自分の立場が分かってるの?アンタは私達の敵の身内、仮にも総監の護衛を務める立場のデネブがアンタと話をしていました・・・ってだけじゃあ済まされないのは分かってるでしょ」
アイリスの言葉に呆れた様に口を開くクィンビー。
クィンビーの言っている事は至極当然の事だ。
だからと言って彼女は自分のせいでデネブに危害が加わるのは避けたかったし、自分自身もゼロに会う事も無く死ぬつもりは毛頭無い。
「そんな事は分かっています。だけど・・・それでも私は」
「戦いを止めたいか・・・ふうん」
悲壮なまでの思いを露わにするアイリスに対し冷徹な彼女は僅かに眉を動かしたのみ。
そして彼女は無造作に腕を動かし周囲のボムビーに合図を送る。
急に動きが変わったボムビーにデネブが何かを叫んだがそれも巻き起こった爆音が全て飲み込んで行く。
ズッッガアアァァァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンンッッ!!
気を失いそうな衝撃が全身を襲うがデネブは咄嗟に周囲に障壁を張る事でそれらを辛うじて耐えきっていた。
「・・・・・・?」
その時になって彼女は思ったよりも自身らの周囲で爆発したボムビーの数が少なかった事に気づく。
「まあそれくらいは耐えきれるわよね。おかげで出鼻が挫けたわ・・・礼を言うわデネブ」
自身を嘲笑う様に言いながらクィンビーはいつの間にか姿を現していた別の気配に目を向ける。
よくよく見れば周囲にはレプリフォースと思しき者達の残骸が転がっている。
「え・・・そんな」
恐らくはレプリフォースを脱走したアイリスを追っていたのだろう。
彼らは人知れずデネブと接触したアイリスを捕縛せんと周囲に潜んでいた様だ。
その事に気づいていたクィンビーはアイリスらを処分する様な演技をし逆に彼らに攻撃を仕掛けたのだ。
だが演技と言うのはやや語弊があるかもしれない・・・クィンビーはデネブに対し一切の遠慮無くボムビーをぶつけていたのだから。
ある程度であればデネブ自身の能力で防ぎきる事が出来ると言う冷徹な判断。
仮にデネブらが死んでいた所で彼女は何ら反応も示さなかっただろう。
「・・・くっ」
まんまと彼女に利用された事にデネブが睨み据えるが。
「馬鹿ね。折角こちらに転がりこんで来たアイリスを殺す訳が無いじゃない。人質としての価値は勿論の事、その頭に刻んでいる情報を入手しないと勿体無いでしょ」
妖艶な笑みを浮かべながら話すクィンビーにアイリスがビクリと身を震わせる。
「・・・・おのれ。流石は『キラードール』か」
周囲に立ちこめる爆炎の中から人影が伸びる。
一見すればレプリフォースの各軍に配備されているノットベレーとなんら変わりの無いレプリロイドが彼女らに視線を向ける。
だがその気配は尋常の比ではない。
「只者じゃ無いわね・・・成程、アンタが」
「如何にも・・・我らは特務機関シャドーフォースを支えし者」
クィンビーの言葉にノットベレーが底冷えする声を発する。
・・・・バッッッ!!
ノットベレーが懐から取り出すのは水晶にも似た物体であった。
「ロックオン・・・・モデル『フィフス』」
そして紡がれるは件の言葉。
ブシュウウゥゥゥッッッッッ!!
闇が吹き荒れそこより現れるのはノットベレーでは無く魔道師などを連想させる黒衣を身に纏ったレプリロイド。
「我が名はダークフィフス・・・シャドーフォースの副長官」
剥き出しの頭脳を連想させる頭部を持ったレプリロイドは己の名前を名乗る。
「わざわざの前口上ありがとう~。登場早々悪いけど死んでもらうわよ」
「ニードル=クィンビー・・・・貴様と戦うのは任務に入っていない」
ボアアァァァァァァ!!
周囲に漆黒の火炎弾を旋回させながらダークフィフスは目の無い頭部をアイリスへと向けていた。
「アイリス・・・・裏切り者のお前を確保する。例え電子頭脳だけとなってもな」
「・・・・!!」
感情の伴わない声と共に自身へと向けて放たれる火炎弾にアイリスが目を見開く。
ズガァァンッッ!!
「くっ・・!!」
火炎弾をデネブが障壁を用いて防ぎきる。
「邪魔者をするな・・・」
次の瞬間にはデネブの影から身を乗り出しながらダークフィフスがアイリスに刃を向けていた。
ヒュンッヒュンッッ!!
「・・・・・」
アイリスへと向かうその刃をクィンビーが投擲した手裏剣が遮る。
「下がっていなさい。戦う術が無いんだったらね」
「は・・はい」
クィンビーの声にアイリスが慌てながらその場より引き下がる。
(裏切り者・・・)
ダークフィフスが言った言葉を反芻しながらアイリスは目を伏せる。
如何なる理由があろうとも自身はレプリフォースを裏切り敵へと走った者なのだ。
仲間である筈のレプリフォースに狙われた事実を自覚する他無い。
「・・・・ダークサンダー」
バチバチバチバチバチッッ!!
突き出した掌よりダークフィフスは電撃を撃ち放つ。
「フフ・・・ボムビー!!」
ブブブブッッドガドガドガァァンッッ!!
ダークフィフスが撃ち放った電撃をボムビーの誘爆で相殺するクィンビー。
自身の攻撃を防がれながらもダークフィフスは些かも動揺を露わにしない。
それ故にクィンビーも感じ取る・・・。
互いに未だ本気を出していない事に。
「ダークビット・・・!!」
ヒュンヒュンヒュンヒュンッッ!!
自身の周囲にビットを展開しダークフィフスはクィンビーらに照準を合わせるのだが・・・。
「・・・・・・!!」
僅かにその身を動かし反応を示すダークフィフス。
自身らが戦闘を行っている場に近づく無数の反応に気が付いたのだ。
ここがハンターベース近くとなれば近づいて来る反応は当然の事ながら周囲で警備を行っていたイレギュラーハンター達だと言うのは誰にでも分かる。
「任務の遅延・・・・・ここは撤退するとしよう」
ヒュンッッ!!
無機質にそう呟くなりその姿をかき消すダークフィフス。
クィンビーは彼を追おうとするもダークフィフスの気配は全く感じられず、またアイリスらの身の安全を図るのが第一と考え彼女は追跡を諦める。
「さて・・・・出来れば秘密裏に身柄を確保したかったけどこれじゃあ無理ね」
駆け付けるハンター達を見ながら肩を竦めながらクィンビーはアイリスらに薄笑みを浮かべる。
「あ・・・あのありがとうございます」
緊張の面持ちで頭を下げるアイリス。
一応とは言え自身の命をクィンビーが救ってくれたのは間違いない為に彼女は真摯な気持ちでそんな行動を取ったのだが・・・。
「私に恩を感じているのであれば色々と協力してもらいましょうか」
「は・・はい。その為にこれも・・・」
脱走する直前にフクロウルが自身に渡した一枚のチップをクィンビーに手渡すアイリス。
クィンビーはそれを端末に取り込みながらその中身に僅かに目を見開く。
「へえ・・・・これは本当に有難いわね。兄と恋人を救う為に行動しただけの事はあるわね」
ざっと見ただけでも自身らが把握しきれなかった機密情報がズラリと記されているその中身に笑みを浮かべながらクィンビーはアイリスに目を向ける。
「はい・・・兄の友人であったゼロならこの戦いを止めてくれると」
「さっきもそれは聞いたけどさ。一言だけ良いかしら?」
淡い希望を口にするアイリスにクィンビーの顔に酷薄な笑みが浮かぶ。
次に何を言うのか半ば分かっただけにデネブの顔が険しくなり、対してアイリスは何も分からず首を傾げる。
「バッカじゃないの~?無理よ無理・・・・男共ってのは自分の為だったら大切に思ってる物を簡単に捨てちゃうんだからさ。それにここまで事が進んだらお互いに引っ込みがつかないわよ」
「・・・・え?」
己を嘲る声にアイリスは呆然と立ち尽くす他無い。
「クィンビー・・・貴女は!!」
傍らのデネブが激昂しビームセーバーを構えるがその前に彼女の額にクィンビーの指が突き付けられる。
「ほんの一寸突き入れるだけで激痛が走るけどやってみる?」
「・・・・・ッッッ!!」
激怒したばかりにその接近さえ気付けやしなかった。
薄笑みを浮かべるクィンビーを前に一歩も動けなくなったデネブの顔に苛立ちが露わとなる。
「これは・・・クィンビー殿にデネブ副隊長?」
「ムッ・・・この娘は!?」
騒ぎを聞きつけた巡回中の隊員らが現場に駆け付けた事もありクィンビーは指を離し彼らに振り返る。
「丁度良かったわ。見ての通りデネブ副隊長が敵のオペレーターを確保したの・・・・彼女はこのまま処分せずに身柄を拘束しなさい」
「は・・・了解です」
さりげなくデネブに口を挟めない状況にしつつアイリスの捕縛を命じる辺り、彼女の強かさが垣間見える。
ガシッッ!!
「ま・・・待って下さい!!ゼ・・・ゼロに会わせて下さい!!」
「そんな要求が通る訳無いでしょ。命を取らないだけマシに思いなさいな。あ、丁重に扱いなさいよ・・・カーネルに対する人質にも使えそうだからね」
「御意・・・さあ来るんだ!!」
自身に懇願するアイリスに笑みを浮かべその意を一蹴するクィンビー。
数人のハンターに拘束され連行されて行くアイリスの姿をクィンビーは薄笑みを浮かべ見送っていた。
「さあて・・・この情報が正しいか検証をして反撃開始と行きましょうか」
「・・・貴女って人は!!」
アイリスの事などすっかり忘れた様に指の間に握られたチップを見据え口を開くクィンビーにデネブが絶叫にも似た声を上げる。
「ゼロ隊長もカーネルも一緒よ。ああ言う手合いは互いに死ぬまで戦い続けるわよ・・・・だったら満足のいくまで戦わせるまでの事」
クィンビーはそう言って飛翔しその場より立ち去ってしまう。
「・・・・・・・・」
己の無力さにデネブは全身を震わせながらややあってその場を去るのであった。
「アイリスが投降したか。ここまではシナリオ通りか・・・」
「戦争を止めようなんて健気なこった」
その彼女らにも気配を感じさせず一連の様子を見つめる二つの影。
互いに何処となく雰囲気の似た両者は口を開く。
「抜かりなく動けよ。お前がボロを出せば私は容赦なく斬り捨てる。その逆も然りだ」
「あいよ・・・少しは甥っ子を信じてくれよ叔父貴」
大戦の裏で蠢き始めた者達の存在に気づく者はこの時点では殆ど居ないのであった。