胡蝶の雪   作:ねをんゆう

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74.『』

 

 

熱い、熱い、熱い、熱い、痛い、痛い、痛い、痛い。全身から熱が湧いて来る、身体がひび割れる様な痛みを訴える、頭が割れそうなくらいに煩いし、脈打つ心臓が破裂しそうなほどに動いている。小さな血管の一つ一つが破裂しているかの様な痛みを伝え、内臓の各所が捻じ切れる様な不快感を感じる。だからこうして楽になろうと全部全部吐き出そうとしているのに、これっぽっちも楽にならない。吐き出しても吐き出しても終わりが見えない。沸騰する様な血流と焼け焦げる様な肉の叫びが頭を犯し、消えそうな自意識をなんとか繋ぎ止めようと必死になるが、直ぐに心が折れそうになる。終わりの見えない地獄ほど人間にとって苦しいものはない、これ以上が無いというのにこれ以上を求められるほどに苦しいものはない、これ以下に行くしかないのに行く先が地獄など死刑宣告と何が違う。身体は動かない、声も発せない、目も開けない、耳も聞こえない、何も分からない、助けを求めることすらできやしない。自分に許されるのは耐えることだけ、こうして我慢していることだけ、我慢できなくともただ受け入れるだけ、少しでも長く時間が経つのを待つことだけ。終わりがいつなのかは分からないし、本当に終わるのかどうかも分からない、終わった先に何が待ち受けているのかも分からないし、終わった後に救いがあるのかも分からない。けど、この苦痛に屈した瞬間に本当に悪い意味で全てが終わってしまうと、それだけは確信できる。むしろその方が楽なのかもしれないと思ってしまうが、どうかそんな風に考えてしまう自分を怒らないでほしい。こんな苦痛にこの瞬間まで意識を保っていられている自分をむしろ褒めて欲しい。甘やかして欲しい。ぎゅっと抱き締めて、目一杯に慰めて、たくさんたくさん褒めて欲しい。頭に残る優しい記憶、嬉しい記憶、幸福な経験だけがきっと今の自分をなんとかしてここに縛り付けている。けれど、本当にもう限界なのだ。身体の細胞の一つ一つが悲鳴を上げている。全てが裂けているのではないかと思う程に細かく甚大な苦痛が無数に波の様になって押し寄せて来る。泣きたくても叫びたくても暴れたくてもそれが出来ず、大人しく身体を引き裂かれていることの恐ろしさが自分以外の誰に分かるというのだ。視覚も聴覚も嗅覚も味覚も触覚も機能しない真っ暗な孤独の中で永久に続く様な自身の体内の引き起こす苦痛だけを感じ続ける地獄など、数分であっても気が狂うのは当然の話だ。きっとこんな感覚は自分にしか分からないものだろうが、指の爪を剥がされている感覚すら安いものだ。全身の細胞を引き千切られているのだから、焼かれているのだから、崩されているのだから、壊されているのだから、溶かされているのだから、隣の細胞がまた隣の細胞を殺し、殺され、増えて、殺され、肉を掻きまわされているという表現すらもあまりにも生易しい。ああ、熱い、熱い、熱い、熱い、痛い、痛い、痛い、痛い、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい、苦しい。もう、もう本当に死んでしまいたい。この苦痛から解放されるならばさっさと死んでしまいたい。今より少しでも楽になるというのなら死んでもいい。どうせもう短い命だ、後先もない、数日も生きられない、ならば今この瞬間に死んだとしても何も変わらないだろう。指先が内側から刃物で掻き回される様な、体内から幾本もの細かく細い針が突き出て来る様な、目の中で鋭く尖ったガラス片が暴れ回る様な、そんな地獄から解放されるのならば、もうこんな命はいらない。何も食べられなくてもいい。何も見れなくなってもいい。何も考えられなくなってもいい。何も聞こえなくなってもいい。何も思うことができなくなってもいい。何も知らなくなってもいい。もう誰にも会えなくなったって構わない。あの孤独な世界に戻ったって構わない。カナヲとだって、カナエとだって、アオイとだって、義勇とだって、誰とだって、そうだ、しのぶとだっ、え、あ、だって、しのぶと、だって、て、だ、しい、たい、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、死にたい、こんなにも死にたいって心から思ってるのに。出て来るな、出てこないで、やめてよ、どうして今出て来るの。やめて、今は出てこないでよ。今だけはやめてよ。しのぶの、しのぶの顔を思い出したら、思い出してしまったら、こんなにも苦しいのに、こんなにも狂ってしまいそうなのに、それなのに、まだ自分が保ててしまう。意識と共に薄くなり始めていたこの苦痛が、より鮮明になって自分に襲いかかって来る。酷い、酷い、酷い、ひどい、ひどい、どうしてこんなにひどいことをするの。わたしだってしのぶにあいたい。わたしだってしのぶのそばにいたい。こんなにいたいけど、しのぶのそばにいれるなら、もうすこしがんばれてしまう。だってすきだから、愛してるから。こころのそこからあいしてるから。すき、すき、すき、すき、すき、すき、すき、だいすき、だいすき、だいすき、だいすき、だいすき、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる、愛してる。しのぶのためならなにしてもいい、わたしはしのぶのそばにいたい。しのぶがわたしのいきるいみ。しのぶがいればいい。しのぶさえいればいい。ほかはいらない。しのぶだけ、しのぶだけ、しのぶだけでいい。しのぶのために、しのぶがほしくて、しのぶがすきで、しのぶを愛して、しのぶにかまって、しのぶのそばで、しのぶのよこで、しのぶのうえで、しのぶのしたで、しのぶのかおを、しのぶのかみを、しのぶのめを、しのぶのくちびるを、しのぶのはなを、しのぶのめを、しのぶのくびを、しのぶのむねを、しのぶのかたを、しのぶのうでを、しのぶのゆびを、しのぶのはらを、しのぶのあしを、しのぶのこころを、しのぶのたましいを、しのぶのきおくを、しのぶのちしきを、しのぶのじんせいを、ほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてほしくてたまらない。これは愛、じゅんすいな愛、愛にいき、愛をほっし、愛が、愛ゆえに、愛であるために、愛はわたしで、愛がしのぶで、愛とうまれて、愛にしんで、愛、愛、愛、愛、愛、愛、愛してるって、それだけ愛をつたえられれば愛いいって愛っておもって愛いたのに愛しのぶは愛のそんなわたし愛のことをいつもおもって愛がわたしのすべてで愛がわたしのこんていで愛はわたしをかたちづくったははの愛ももうひとつのははの愛も愛らかあな愛ぜんたる愛せれらう愛らりうるよう愛にえるた愛らかん愛らすて愛より愛えなまく愛かうむる愛すま愛よえ愛なたる愛がらげ愛れて愛どろ愛ぎ愛じ愛え愛め愛た愛お愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛愛

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛してる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まもなく、小芭内隊士と蜜璃隊士の元に愈史郎様が到着します。上弦の肆の対処は直ぐに可能です」

 

「よし、予定通りに隊士達を雪那の居る部屋に突入させるんだ。杏寿郎と槇寿郎、それと実弥の動向は?」

 

「杏寿郎様と槇寿郎様を含めた地上に残った隊士達は既に無惨が消えた地点から予想される出現地点に待機しております」

 

「実弥隊士も治療を終え、雪那様の元にまもなく到着致します。しかし、本当に行冥隊士はよいのですか?」

 

「うん、代わりが見つかったからね。後はしのぶとカナヲの元に鴉を飛ばして伝えるんだ。……これから、雪那をあの氷から救い出すと」

 

「はい」

 

「まもなく」

 

「ここからだ……義勇、炭治郎、今は少しでも長く生き残ってくれ」

 

 

 

 

 

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