宵闇の使者【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はリーエとスザク。そして追っ手のアークの話になります。少々短いかもしれませんが、今回もどうか宜しくお願いします



第16話

 

第16話

 

「……その発想はなかったですよ、スザク」

 

「キュウ?」

 

川の近くを拠点とし、食料調達の為に釣りをしていたのだが。スザクは川の上空で羽を撒き散らしそれを爆破させた。その衝撃で浮かび上がった魚を見てそう呟く

 

「クエ」

 

「……ええ、ありがとう、スザク」

 

足の爪で魚を拾い上げて私の足元に落とすスザク。手っ取り早いと手っ取り早いが……釣りをする意味が無い

 

「キュウッ!」

 

「……準備完了ですか」

 

スザクは既に適当な木の枝を拾い上げ自らの翼で火をつけている。賢い……確かに賢いが

 

(色々と考え事をしながら釣りをしたかったんですが)

 

あの時助けてくれた人とか。これからどうするか? とか考えたかったのだが

 

「……では焼きますか」

 

「キュッ!」

 

まずはスザクの心遣いに甘えるとしましょう、その後で釣りをしたいとちゃんと説明しよう。スザクは鳥なので喋れないが、知性はあるし記憶力も良い。ちゃんと説明すれば理解してくれる、私はそんな事を考えながらナイフで魚を捌き木の枝に刺して焼き始めた……

 

「……クア!?」

 

「……ああ!? 丸呑みしちゃ駄目です!」

 

丸呑みしようとして喉に詰まらせているスザクをどうすれば良いのか悩み。口からはみ出ている尻尾を掴み引き抜くと言う荒業をする羽目になった

 

 

 

 

「久しいな。アーク」

 

LV2に呼び戻され、嫌々臨時基地となっている世界に戻ってきた

 

「私に何の御用でしょう? リーエ追跡の任の途中だったのですが?」

 

リーエを見失い約3日。転移した世界は17、そのいずれもダミーだった……思っていた以上にリーエの追走は苦戦しそうだ

 

「なに、最近LV3とデクスが何者かに襲撃されると言うのが続いていてな。お前は何か知らないかと思ったのだ」

 

あの時の女か? 一瞬前にリーエを追い詰めたときに現れた女の事を思い出したが

 

「紫の髪の女と黒髪の女なのだが、知らないか?」

 

「紫と黒髪の女? おかしいですね。 私は亜麻色の髪の魔導師に襲撃を受けましたが、その様な2人には遭遇していませんが? 詳しく詳細を教えていただけませんか?」

 

おかしいあの髪を黒や紫と見間違えるはずが無いのですが

 

「黒髪の剣使いの女とネクロ人間関係なく虐殺した女が居たと、LV3から報告があったが。お前は更に別の敵と遭遇したようだな」

 

どうやら雲行きが怪しくなってきた……

 

「アーク、追加の任を与える。3名の敵対者の詳細データもしくは抹殺だ」

 

やはりな、自分達だけ安全なところで指示を出す。何時もの事だ、内心の不満を見せず頷き私はその場を後にした

 

「よー半端者」

 

「また面倒事か? まぁ出来損ないには丁度良いわな」

 

からかいの言葉を無視してそのまま歩く

 

(だからここに戻るのは嫌なんです)

 

半ネクロ、半分ネクロで半分人間、出来損ないや半端者と言われ無理な任を与えられても断ることが出来ない弱い立場。だが能力でならLV4に匹敵する。馬鹿にはしても直接喧嘩を売るような馬鹿は居ない、少なくともこの場では……

 

「アーク、そろそろてめぇが目障りなんだよ」

 

外に出ると同時に現れるLV4の魔獣型。確か……リベンジャー配下だったネクロだ。出世欲の塊でそれが災いして負傷し眠っていたネクロ。名前は確かフェンリル

 

「それで?」

 

「はっ! 知れたこと貴様を殺すんだよ!」

 

大きく口を広げ私を噛み砕こうとするフェンリルの顎を下から蹴り上げる

 

「グガアアッ!? ば、馬鹿な! 貴様はLV4に反抗出来ないようされてるんじゃ……」

 

「ええ、以前はね」

 

バラガルトにかけられた術は既に解除されている。

 

「な。何故だ! あれはバラガルト様にしか……」

 

「さぁ? なんででしょうね? まぁ地獄でバラガルトにも聞いてみてください」

 

余計な事は言わないで魔力を全開にする。それを見たフェンリルは顔色を変えて

 

「お、お前。まさか……」

 

後退するフェンリルの背後に転移し退路を絶つ

 

「ええ、貴方の予想通りですよ。 しかし余計な事を言われる訳にはいかないので……ここで消えてもらいますか」

 

「なめるなッ!!」

 

毛を逆立てて飛ばしてくる。その毛は魔力で強化された上に一本一本が猛毒を持つ、同じネクロでもこの毒は余りにも危険……だが

 

「なめているのは貴方では? 私は確かに半ネクロ。しかしその能力は最上位のLV4と同格なのを忘れてるんですか?」

 

それを回避し再度フェンリルの顎を蹴り上げる、骨が砕け散るそんな音を立てる。確実に今の一撃でフェンリルの下顎は砕けた

 

そもそもLV4の獣型と人型では天と地ほどの差があるのにそれすら判らないとは、愚かとしか言いようがない

 

「グガぁッ!!!」

 

見られると不味い。今はまだ従順な振りをしておく必要がある……ここでフェンリルは確実にしとめる

 

「己が不幸を呪え」

 

闇の炎を身に纏うと同時に突進する。ダメージでよろめいていたフェンリルに避ける術はなく

 

「グギャアアアッ!!!」

 

黒炎に焼かれ叫び声を上げるフェンリル。黒炎、闇と光の特製を併せ持つこの炎はネクロにも魔導師にも致命的なダメージを与える事が出来る

 

「お静かに……」

 

後ろを向いたままで炎を纏った連続蹴りを叩き込み、フェンリルの身体を宙に宙にと蹴り上げる

 

「ご、ゴガァッ!?」

 

1蹴り毎に骨を砕く鈍い感触が脚に残る。もうすでにフェンリルの回復能力を上回るダメージを負っているせいか、フェンリルの体の回復は始まらない。

 

「闇に呑まれて果てろ」

 

落ちて来たフェンリルの首を掴み。そのまま黒炎で跡形も無く消し飛ばす

 

「まぁ……多少のストレス発散にはなりましたか」

 

残ったコアを踏み砕きその場を後にする。炎と表現したが実際には炎ではなく魔力の収束体。それが空気に触れて炎に見えるだけで実際には炎では無い。だから周囲に何の被害も出ていないし証拠も残らない

 

「さてと、移動しますか」

 

私はそう呟きリーエの追跡を再開した。あとは片手間で命令された3人を探すとしますか……

 

 

 

「……静かですね」

 

「キュウ」

 

肩に止まるスザクを見ながら釣り糸を垂れる。さっきの魚は美味しく頂いたので、今度は保存食用の魚が欲しいですね

 

「クア~」

 

毛づくろいを始める。スザクの喉元をさすってやりながらウキを見ていると

 

「……来た」

 

「クアッ!?!?」

 

合わせを入れるとその勢いでスザクが肩から落ちるが一気に引き抜く

 

「……川魚GETです~♪」

 

種類はわからないがさっき食べて美味しかったのでキープ。龍也様とかチンクさんは釣りが上手でしたね……

 

「クワー」

 

岩の上に転がりながら恨めしそうな視線を向けてくるスザクに

 

「……ごめんね、スザク」

 

フードを脱いでそこにスザクを入れる

 

「……そこなら落ちませんから」

 

「キュウ!」

 

返事を返すスザクに頷き、再度川に向かって竿を振るった

 

~3時間後~

 

「……結局スザクに頼ることになりますね」

 

「キュアッ!!!」

 

結局釣れたのはたった3匹、1時間に1匹の割合だった。これではとても保存食作るなど出来ないので、夕食用にし

 

「……お願いします」

 

川の上で翼を振りまくスザクそして数秒後爆発

 

プカ……プカ……

 

そして浮かび上がる無数の魚の数々を掴み取るスザク

 

「キュウ!!!」

 

誇らしげなスザクにありがとうと言ってそれを受け取り。捌いて燻製にする為に下拵えをする。これもまた龍也様に教わった事だ、燻製の準備をしてから

 

「……散策でもしましょうか?」

 

「クウッ!!」

 

体力と魔力が回復するまで2日掛かった、それまでは近辺の捜索をしたが、全く文明の痕跡というのは見つけられなかった。だがこの世界の中のネクロの気配は日増しに上昇……いえしっかりと感じられるようになってきた

 

「……1度調べる必要がありますね」

 

この世界はあまりにおかしい、これだけ濃いネクロの魔力が感じれるのに、一切ネクロと遭遇しない

 

「……それにこの世界を浸食してる範囲も日に日に増してますしね」

 

ネクロが居ないのに浸食が増している。これは何かあると見ていい

 

「……見ていないのは……」

 

私が起きた森とその周囲は調べた。昨日は今居る川の下流とその周辺を調べた。とはいっても殆どが浸食されたエリアで碌に調べられなかったが……残るは

 

「……この川の上流ですね」

 

この川は山の方から流れて来ている。それに見たところあちらの方は浸食も少ない、だが漂うネクロの気配は他のどこよりも濃い

 

「……さて、何が出ますかね」

 

ローブを身に付けフードを被る

 

「……スザク。上空からの索敵をお願いしますね」

 

 

 

~1時間後~

 

「こ、これは……予想外にも程がありますよ」

 

思わずよろよろと後退し座り込む、時空とこの世界の境界に囚われ、その姿を変えているが間違いない……

 

「……LV4 ブリッズ」

 

身体の半分を失い、己が武器のハンマーと一体化しているが間違いない。 下級のLV4で1番最初に敗れたネクロ……それに

 

「……アンテルート」

 

龍也様をもっとも追い詰めたLV4ネクロ。はやてさんに氷漬けにされた挙句。全身を粉みじんに砕かれ消滅したはずのネクロだ

 

「……これは……ディアボリックのLV3の時の……こっちにはファントム、それにノワールまで」

 

ネクロは死ねば消滅するはず。なのにこうして身体の大半を失いながらも姿を残しているのは一体何故?  ブリッズに触れた瞬間

 

「ヨ……」

 

ガラスをこすり合わせたような不快な音がした

 

「……え?」

 

「マリョクをヨコセエエエエエッ!!!」

 

動かないと思っていたブリッズの腕が私の首を締め上げる

 

「あ……ぐっ」

 

掴まれた首から魔力が吸い取られる。それに加えてブリッズの念が強烈過ぎて、私の中のネクロの因子が異常に活性化して甲冑の展開はおろか身体強化すら出来ない

 

「クアアアアアッ!!!」

 

上空で索敵していたスザクが私の異変に気付き上空から急降下し、剥き出しのブリッズのコアに嘴を突き立てる

 

「あ……アガアアアア!!!」

 

その一撃でコアが砕け散り、ブリッズの腕が力なく垂れるが

 

「……消滅はしないんですか……はぁ……はぁ……」

 

コアは砕けたが再度ゆっくりと再生を始める。それは今までのネクロの常識ではありえない。いくら不死とは言え魔力の大半を失えば、再生できず消滅するし。コアを砕かれれば死ぬ。だがその常識が……

 

「……ありえないなんてことはありえない。龍也様がよく仰ってましたね」

 

経験は時に邪魔をする、だから偏見を捨てろ。柔軟な発想を持て、常にありえない可能性を頭に入れろ。何度も言われましたね

 

「……スザク。私のフードの中へ」

 

「キュウ」

 

スザクをフードの中に匿い。次に魔力を遮断するブレスレットに魔力を通す、これで暫くは安全に捜索出来るはず

 

「……さて。捜索を続けましょう」

 

この先に何かある、そんな気がして私はこのネクロの墓とも言える場所を調べ始めた

 

「……ルキルメス一派……それにヴォルガンドの姿はなし」

 

もしかしたらと思ったが、上級でしかもネクロと化しても騎士道精神を失うことなく、最後まで武人として散ったネクロの姿は無い。それに

 

「……リベンジャー。ディアボリック。それにバラガルトの姿もなし」

 

どうもここに居るのは一部のネクロだけのようで、下級のLV4とLV3までしか確認できない

 

「……それにそろそろこれも限界ですね」

 

本来なら1日持つのだが、どうもこの場所の空気は無尽蔵に魔力を吸い上げるようで、ブレスレットが蓄えていた魔力を容赦なく吸い上げていた

 

「……戻りますか」

 

障壁が消えれば、私の周りに居る亡者はまた私を狙う。その前に撤退する事にしよう

 

「……え?」

 

強烈な魔力の波長を感じ、引き返そうとした足が止まる。そして背後の空間が裂ける……そこから誰かが落ちて来た

 

「……」

 

赤紫の髪をした青年だ……黒い刀身の西洋剣を握り締め。剣や魔力でついたであろう傷を全身に負っている、身体を見て気付く

 

「……この人ネクロだ。ううん……私と同じ」

 

少し違う気もするが、この人もネクロだと判る。多分生きていた人間をベースに作られるネクロ……近付いて頬に触れる。ひんやりと冷たく絶命しているのがわかる。

 

「……弔いくらいはしまし……ッ!!!!」

 

このまま捨てていくという事も出来ず、弔いをしようと呟いた瞬間。この人の死ぬ間際の記憶が断片的だが流れ込んでくる……そしてそれと同時に私の意思に反して魔力が練り上げられ詠唱が始める

 

 

――――我は理を知る者

 

――――死は忘却、生は記憶

 

――――揺蕩う(たゆたう)魂を誘い、もう一度この生へと刻む

 

――――我が理は円環、輪廻の廻りを求める

 

――――顕現

 

――――リンカーネーション

 

知らない言葉、知りえない魔法、そしてありえない現象……

 

「……うっ……」

 

彼は死んでいた、間違いない……彼の手の中の剣……その柄の宝玉が彼のコアだったのだろう。 それが再生し彼の体の中に取り込まれる、そして死んでいた青年の胸は僅かに動き始めた。

 

「……う、うう……酷い気分です」

 

魔力をごっそり持っていかれた、指を動かすのもおっくうだ……だがここで意識を失うわけには行かない

 

「……危険ですね」

 

私は録に動けるだけの体力と魔力を失った……そして彼はまだ目覚める気配が無い。もうじきブレスレットが発生させている障壁も消える。そしてそうなれば周囲のネクロの亡骸が魔力を求め私たちに襲い掛かってくる

 

「……スザク。彼をこちらに……」

 

動く事もきつい。スザクに彼を引き寄せるように頼む

 

「クアー」

 

スザクは見かけこそインコ程度の大きさだが、力は普通の成人男性の倍以上ある。彼を運ぶ程度何の問題も無い

 

「……あ、ありがとう」

 

彼の体に手を置き。意識を集中する……

 

「……備えあれば憂いなしですね……」

 

拠点にした川に設置したテント。そしてその周囲に魔法陣を刻んでおいた……いざとなれば即座に転移できるように……

 

「……行きますよ。スザク」

 

「クウ!」

 

スザクが肩に止まったのを確認してから、私は最後の魔力で転移魔法陣を起動させ、この場を後にした

 

 

 

 

第17話に続く

 

 

 




今回は幕間という事でここまでです。次回はもう少し長い話で行きたいと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
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