それでは新作「宵闇の使者」の物語をどうかお楽しみ下さい
第1話
いつもと変わらない日の筈だった。いつもの様に学校に行って、家に帰り優しい両親と過ごす。これは絶対に変わらない物の筈だった……
「おとーさん? おかーさん?」
家に帰り私が見たのは……血の海に沈む騎士甲冑を展開したおとーさんとおかーさんの姿。に呆然とする
(ええ? なんで? え? なんでおとーさんとおかーさんが?)
私が目の前の光景に混乱しているとそ……
「ああッ! おい見ろよ! 丁度良いガキがいるぜ!」
「そうだな。これならば命じられた素体に丁度良いだろう」
家の奥から2体のネクロが姿を見せる。……管理局そして聖王教会がずっと戦い続けている悪魔……この地域には居ない筈の恐怖の姿だった
「あ……ああっ!!」
逃げないといけない。それだけが私を頭を埋め尽くし。鞄を捨て逃げ出そうとしたが
「おーっと! 逃がさないぜ? ガキ」
乱暴な口調のネクロの右手が変化して、蛇の様に私に絡みつき
「さーて、じゃあ寝てな! ガキッ!!!」
「あ、あああああああッ!!!!」
凄まじい電撃が私を襲い。私の意識は闇に沈んだ……
「あ……ああ?」
ここは何処? 目を覚ました私は深い闇の中にいた……
(う、動けない!?)
身体が何かに縛られているのか動くことができない。それでも身をよじっていると
「や、やめ……やめろ!! やめてくれっ!!!」
男性の悲鳴が聞こえてきて、思わず身を竦める。暗くて確認できないが、私と同じ様にネクロに連れてこられた人間がどうも沢山いるようだ。あちこちから人の気配がする
「さて。お前はどうなるかな? 試させてもらおう」
「いやだ! 来るな!! う、ウワアアアアああッ!?!? 痛いイタイいたたたたたた……ああああああっ……」
凄まじいまでの悲鳴に思わず涙が出た。なに? 何が起こってるのか判らない……
暫くして男の人の悲鳴が途絶え。代わりに何かが破裂するような不快な音が響き渡る
「ふん。この人間ではネクロの細胞には耐えられず。爆発したか……では次だな」
(い。今の音って……人間が……ば、爆発した音?)
形容しがたい音と飛び散る何かの音……
逃げたいのに逃げれない。その事が私の恐怖を更に煽る……そして何かの実験をしているネクロの声がどんどん私にと近付いてくる
「さて……どうせ子供のお前には耐えれんだろうが……まぁ良いだろう」
その全身を血の色に染めたネクロが私を見下ろし。にやりと笑う
「あ……あああ」
その余りの恐怖と嫌悪感に逃げようとするが。身体を縛られているので動けない。そんな私を見て
「くく……恐怖と絶望……素晴らしい」
上機嫌に笑いながらそのネクロは
「どうせ失敗が前提だ。その死に様で私を楽しませろッ!」
「あがっ!?」
そのネクロの手が私の中に入り込み。すぐに引き抜かれる……そして
「あ、あああああああああああああッ!!!!!!」
痛い痛い痛い!! 身体が千切れて消えまた別の何かに変わっていく
「んんッ!? なんと。こんな小娘が適応しているだと! これは興味深い」
「あ、A、あ唖亜アアアアアアアアッ………」
イタイいたい痛いッ!!! それだけが私の認識できる全てだった……私が消えて。私じゃない何かに変わって行くそんな不快感が私を襲う
「貴様ぁッ!!!」
「なっ!? 何故お前がここにっ!?」
「邪魔だッ!!!」
何者かがこの闇の中にと入ってきた……そして
「ぎゃああああああッ!?!?」
ネクロの悲鳴と何かを引き裂く音が聞こえたと思った瞬間。優しく誰かに抱きしめられる
「…だ……ぶか?……ネク……になり……今ならまだ……助け……る」
どこか遠くから聞こえる声、そして柔らかな蒼い光
(暖かい……)
今までの恐怖と絶望が全部塗り替えられていくような。とても優しい温もり……
「ごめんな……助けるのが遅くなって」
薄れいく意識の中。最後に私が見たのは。泣きそうな顔でそう謝るオッドアイ青年の姿だった……
時間は少し遡る……
「ネクロがこんなに大規模で動くとは」
住人100人を誘拐。そんなことをしてくるとは思っても見なかった……
(私の認識が甘かった!!)
ヴェルガディオスを倒し。ネクロの被害も少なくなってきた矢先だ……まさかこんな大規模で活動するなんて思ってもなかった。自分の見積もりの甘さに拳を握り締め
「なのは・ヴィータ。私が研究所に乗り込んで、生存者の捜索をする、周囲のネクロを頼む」
研究所の周りにいるネクロはLV3が大半。なのはとヴィータ。スバルとティアナで充分対応できる
「兄貴。そりゃ無茶だろ? 外のネクロを全部倒してから全員で……「その間にも生存者はどんどん死んでいく、時間がない」
ヴィータはじゃあっと
「じゃあ。私かなのはを!」
「駄目だ。援軍が来るかもしれない、単独で敵中央を突破するだけの火力と負傷者を治せるだけの治癒の知識。この中にそれを満たしたのは私だけだ」
なのはとスバルは完全な攻撃特化。 ヴィータとティアナはオールラウンダーだが、治癒魔法は余り得意ではない
「でも危険です! 1人で敵の中に突っ込むなんて!?」
「危険だからといって時間を掛けてる間に人が死ぬ……少しくらいの無茶は覚悟の上だ」
多少の無茶は何時もの事。そしてこうして話し合っている間にも生存者が減ると言うと
「判りました。龍也さんは言い出したら聞きませんもんね」
諦めたようになのはが溜息を吐きながらそう言う
「そういうことだ。私が心配だというのなら……早く外を片付けて追いついて来てくれ」
「おう。すぐに追いつくぜ、兄貴」
「了解です。すぐに外のLV3を片付けますから」
頼もしい返事を返すヴィータ達を見ながら
「じゃあ。研究所に入るまでは援護を、その後は各個撃破だ! 後ろは任せる!」
翼を展開しネクロの中に突っ込んでいく
「止めろ! 守護者だっ!」
「囲んで仕留めろ!!」
LV3達の怒声を聞きながら。私の進路を邪魔をするネクロだけを両断し、研究所の入り口に向かう
「馬鹿め! 隙……「ディバインバスターッ!!!」 ぐふっ……」
「クロスファイヤー……シュートッ!!!」
背後から私を攻撃しようとしたネクロはなのはやティアナの射撃魔法で翼を打ちぬかれ。墜落していく……地面から攻撃しようとしたネクロは
「ラケーテン……ハンマーッ!!!」
「ふっ!」
スバルとティアナに一撃で消滅させられている。私はなのは達の援護を受けて最短ルートで研究所の中にと突入した
「守護者!?」
「邪魔だッ!!!」
研究所の中にもLV3は居たが。私の存在に驚き一瞬硬直した隙に薙ぎ払い。廊下を全力で走りながら片っ端から部屋を開けて行く
「うっ……これは」
地下の研究室の戸を開けて、私は咄嗟に口を押さえた。血の海に浮かぶ肉片の数々、恐らくこの研究所に連れ込まれた民間人だろう
「ぐっ……すまない」
また護りたかった命は私の手から落ちていった……自分の不甲斐なさと無力さに怒りさえ覚える……だが今はそんな事をしてる場合では無いと判っている。
「魂の救済があらんことを」
十字を切りその部屋に火を放つ……魔力で作られた炎なので部屋を焼くことは無い。殺された人間の魂を導く役割を持つ炎
「くっ……まだだ! まだ間に合うかもしれない!」
私はすぐにまた剣を取り直し。地下へ地下と向かって走り出した……その間に同じ様な部屋があったが、同じ様に浄化の炎を放ち。すぐに走り出す、そして最後の部屋の外で
「あ、A、あ唖亜アアアアアアアアッ………」
まだ幼い少女の声の苦悶の声が聞こえる。私は扉を蹴り開け中に飛び込んだ。そこでは先程までの部屋と同じだった。だが1つだけ違う点があった。バインドで縛られた少女とその前で狂ったように笑うネクロの姿
「貴様ぁッ!!!」
「なっ!? 何故お前がここにっ!?」
「邪魔だッ!!!」
即座に魔力剣を作り出そうとしたネクロを頭から両断し。消滅させ返す刀でバインドを断ち切り。苦しんでいる少女を抱きとめる
(まだこんな子供をッ!)
見たところ9歳くらいの子供だ。だがその少女の体からはネクロの魔力が発せられ始めていた
(人間のネクロ化か!)
普段ネクロとは。死体や魂を媒介に生成されるが。極稀に生きたままの魔導師や、騎士。更には武芸に優れた異世界の人間に魔法生物。そういった生命体に直接ネクロの細胞を植え付けてネクロ化する場合もある。今まで数回しか見たことは無いが
間違いない
「まだ間に合う!」
完全にネクロ化する前なら。確率は低いが救える! 私はすぐに少女の体に魔力を通しながら
「今助ける! だから頑張れ!」
魔力量を調整し。少女の身体の中に埋め込まれたネクロの細胞だけを消滅させる。魔力コントロールが難しいが何とかするしかない。暫く魔力を送り続け少女の身体からネクロの魔力反応が消えたことに安堵しながら。少女を抱きしめ
「ごめんな……助けるのが遅くなって」
もしかするともう彼女は普通の人間ではなくなってしまったかも知れない……だがこうするしかなかった。私は気絶した少女を抱かかえ研究室を後にした……
「兄貴。生存者は……」
私に気付いて走ってきたヴィータ達に
「生存者はこの子だけだ。残り99人は全員死亡。原型も判らないほど破壊されていた」
息を呑むなのは達に
「ゲンヤさんとレジアスに連絡を……それと聖王教会にもだ」
この地区は聖王教会の管轄だ。管理局にも住民データはあるが。あちらの方が正確だろう
「六課に戻るぞ……」
「「「……はい」」」
僅か1人だけの生存者を抱え。私たちは六課へと戻った……己たちの無力さを噛み締めて……
第2話に続く
次回は龍也とジェイルの話がメインで。後半でリーエさんが起きる予定です。
暫くはこんな感じで進んで行くつもりなのでどうか宜しくお願いします