前回の最後にチラッと出てきた人です、どういうキャラかはお楽しみに、それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第21話
崩れ果てた廃墟の中を歩きながら隣のペガサスさんに
「……ペガサスさんはクラナガンの人だったんですか?」
「一応な……俺はここの生まれだ。もう2度と戻る事は無いだろうと思っていたが……まさかまたこの地に足を踏み入れる事があるとわな」
くっくと笑うペガサスさん。周囲には何の生物の気配も無く、ただただ死の世界が広がっていた……
「……LV4ですか?」
最上位のLV4なら1人でも世界を滅ぼす事が出来る、もしかするとまだネクロが残っている可能性もあるので。そう尋ねると
「LV4だけじゃない、人間同士の醜い争いでこの世界は疲弊していた。エース、ストライカーと呼ばれた者は大半が殉職し、生き残りはほんの僅かの魔導師と錬度の低い騎士だけ……そんなので特異型のLV4に抗えるわけも無かった。俺達の世界は半日でそのネクロ1体によって滅ぼされた……」
特異型……極めて異質なネクロ。その能力は他のネクロとは比べられないほど高く、同じレベル4でもその能力は天と地ほどの差がある。だが半日で世界を滅ぼすとはどれほど異質な能力を持ったネクロだったんだろう
「そして俺はネクロ化しつつも何とか、そのネクロを討つ機会を伺い……結局機会は無く……その内完全にネクロ化した。まあ200年か300年か忘れたが、守護者と未熟な小僧の助力を受けてそのネクロは倒せた……後悔だらけの人生だったが……まぁそれなりに満足できる人生だった」
私よりも長い時を生きてきたペガサスさんの言葉には妙な重みがあった……そんなことを感じながら廃墟を歩いていると
「リーエ。花か何かはあるか?」
「……ありますよ?」
薬草として使える花はちゃんと確保してある。これは調合に時間が掛かるから、しっかりと保護術式を刻みローブの中に保存していた……黄色い花弁を持つ花を数本取り出し手渡す。多分墓参りか何かしたいのだろう
「……どうぞ、しばらく別行動という事で」
「聡いやつだな、お前は」
苦笑したペガサスさんはそのまま、背を向けて街の中心にと歩き出した。しばらくは合流しないほうが良さそうだ、誰にだって1人になりたい時間というのはあるはずだ……
「クアー?」
「……ネクロの気配も無いですし、のんびりと散歩しましょうか?」
肩の上から飛び立つスザクを見ながら、のんびりと歩き出した……だがこの時私は気付くべきだった、ネクロの気配はしないが魔導師の気配がある事に……
リーエから別れ俺は街の中心にある、崩れ果てた廃墟の前に来ていた
「これがあの機動六課の成れの果てとは思えんな」
もう見る影も無いほど崩れ果てた六課を見て苦笑する。ここはある意味俺が死んで生まれた場所……
俺はここでネクロに浸食され、ここでネクロ化した……
「今思えば、なんであんな事になったのやら……」
聖王協会と管理局の全面戦争。大勢の人間が死んだ……酷い争いだった。きっかけはヴィヴィオの拉致……
だがそれは人間に扮したネクロの仕業だった……元々が互いに良い感情を持ってないときにこの事件……
均衡状態から一気に互いに互いを潰そうとする大規模な戦争にと変わった……
「皆死んでしまった……」
一時は仲間同士だった者達が敵味方に別れ殺しあった……俺はこの戦争に何かの裏があると感じあいつと共にこの戦争を起こした黒幕を探した……そしてその中でアイツは死に、俺もネクロの細胞に侵された……暫くはネクロ化を解く方法を探したが、時間が経つに連れて知ったネクロの特性を知り。逆にそれを利用する事を考えた……ネクロの身体能力の高さと回復能力を持てばハーデスにも勝てる可能性があった……その可能性に全てをかけあえてネクロ化を受け入れた……裏切り者と言われても仇を取る機会があるのならば、裏切り者の汚名だって喜んで背負う……
「……行くか」
この世界を去る前に作った皆の墓に報告しよう……皆の仇は取った、安らかに眠ってくれと……どうせハーデスを倒せば死ぬつもりだったが……
「いや、俺は死んだか……」
間違いなく俺はコアを砕かれ死んだ、それが何の因果か半ネクロとなり今こうして生きている。漸く逝けると思ったが……せっかく拾った命だ。無碍にするつもりは無い……。岩を切り出して作った十字架の元に向かい、俺は目を見開いた
「ば、馬鹿な……どういうことだ!?」
俺がこの世界を離れたとき、この世界にはもう生き残りの人間はいなかったはず……それなのに墓の周りは綺麗に整えられ花が供えられていた……その花は瑞々しく供えられたばかりだと判る。墓に近寄り確認する……20近くある墓の中で花が供えられていたのは僅かな墓だった。墓標に刻まれていた名前を見ていると、俺の視界の隅に切り倒された墓標が写りこむ。その墓に刻まれた名前を見て俺は
「生きて……いたのか?」
死体も遺品も確認できなかったが、死んだ物と思っていた……だがあいつが生きていたのなら、僅かな墓だけに花を供えていた理由もわかる……
ガキーンッ!!!!
街の外れから響いてくる激しい金属音。これで疑惑は確信に変わった……
「くそっ!!不味い!!!」
もしあいつがリーエと遭遇すればネクロと勘違いして襲い掛かるだろう。リーエではあいつには勝てない!
俺は直ぐに甲冑を展開し街外れに向かった……
手遅れになってくれるなよ……
街外れを散策していると、近くから強烈な殺気を感じ
「……誰ですか!?」
振り返りながら叫ぶと。そこには
「へー中々良い感してるわね?ネクロのわりに」
赤いチャイナドレスに二の腕まであるロンググローブを身につけた、濁った金色の髪をした女性が廃墟の上に佇んでいた
(ネクロ!?……いや違う、人間!?)
ネクロの気配じゃない、これは人間の気配だ!
「悪いけど……もうあんた達にこの世界で死んだ人間は利用させないわよ」
木の鞘から刀を抜刀し構えを取る女性に慌てて
「……待ってください!私は敵じゃ「問答無用!!!」
空中を走りながら近づいてくる女性。話は通じそうにない
「仕方ない!!」
甲冑を展開し、片刃の西洋剣フェアシュテルケンを構える、距離があるから余裕を持って備えれるはず
「はっ!」
(なっ!?は、速い!?)
すでに私の間合いに飛び込んで、鋭い気合から放たれる横薙ぎを弾く
「甘いわよ!!!」
「くっ!?」
だが直ぐに体勢を立て直し上段からの一撃を叩き込んでくる
(は、速い!?それに重い!)
速いだけではなく重い一撃は弾くだけで手一杯だ
「話を「ネクロの話なんか聞かないわよ!!!」
駄目だ、話し合う余地は無い……私は上空を旋回してるスザクに
(ペガサスを呼んできてくれ!)
念話を飛ばすとスザクは直ぐに旋回するのを止めて、街の中心にと飛んで行った……
「骨の一本や二本は覚悟してもらうぞ!!!」
不本意だが骨の一本でもへし折って冷静になってもらう
「はっ!やってみなさいよ!!」
振るっていた刀に炎が宿る。それを見て私は
(変換素質持ちか!?)
珍しい魔力変換素質持ちのようだ。だけど私は炎の変換素質持ちとは戦いなれている。シグナムさんやアイギナさんにも剣術を教わった。炎の変換素質を持つ相手とは戦いなれている
「はっ!!」
下からの切り上げで炎を纏った刀を弾き。胴を切り払おうとして
「ふん、なめないでよ!!!」
「!」
左腕が光り輝き私の一撃を弾く……一瞬硬直した隙を目の前の女は逃すことなく
「ぶっ飛べっ!!!」
大きく振りかぶった左腕の一撃が叩き込まれ吹き飛ばされた……
「げほっ!ごほっ!!」
信じられないくらい重い一撃で、大きく咳き込む……
(あの感触は……生身の腕じゃない!)
一瞬感じた金属のような硬い感触……恐らく義手。しかも戦闘タイプの高硬度の義手
「これでとどめ「舐めるな!!」ッくうっ」
魔力刃を飛ばし、女の突進を止めようとしたが、女は魔力刃を歯を食いしばって耐えて私めがけて突っ込んでくる
「焔刃煉瓦ッ!!!」
「ぐうっ!?」
炎を纏った切り上げからの切り下ろしを喰らい体勢を崩した所に
「はっ!!!」
強烈な回し蹴りが叩き込まれ思いっきり蹴り飛ばされる
「ぐっ、この!!」
2回3回と地面を跳ね、何とか左手を地面について態勢を立て直し地面に着地する
「中々頑丈ね……流石ネクロって言った所かしら?」
「そう言うお前こそ……ただの人間ではないな?」
私が放った魔力刃は直撃だったはず、なのにその傷は余りに小さい……これは感だが、この女もただの人間ではないと確信していた
「さぁ?答えると思う?」
「思わんな……」
「ならそれが答えよ」
違いないと互いに笑い合う、さっきまでは骨の一本や二本で止めていくつもりだったが、そんな事も言ってられない
「死刑執行モード」
翼が黒翼にと変化し、フェアシュテルケンが大鎌にと変化する、手加減をするなんて言ってられない、大鎌に込めれるだけ魔力をこめて魔力刃を形成する
「死にたくなければ逃げるんだな」
「悪いけど……それはこっちの台詞」
青白い炎を纏った刀を構え、姿勢を低くする。どうやら向こうも最大攻撃をするつもりらしい……
互いに技を放つタイミングを窺う……近くの瓦礫が崩れ落ちたタイミングで同時に大きく踏み込んだ瞬間
「止めろ!リーエ!アリサ!!!」
上空からペガサスさんが降りてきて私達に怒鳴る、その余りの怒声に一瞬動きが止まり、魔力刃が霧散する……
「あんた……テンマ!?生きてたの!?」
「それはこっちの台詞だ、アリサ……」
この世界の生き残りという事はペガサスさんの知り合いの筈
「どういうことよ、なんであんたがネクロ庇うわけ!?というかその目何よ!?あんたネクロになったの!?」
「訳は後で話す、武器を収めろ。俺もリーエも敵じゃない。リーエ武装を解除しろ」
その言葉に頷き甲冑と武器を粒子に返し、フードを被りながら近づくと、女性とペガサスさんが何かを話している
「えーと、じゃ、あたしの勘違い?」
「そうだ、馬鹿」
だらだらと汗を流し始めた女性は私に近づいてきて
「ごめんね?何か勘違いしたみたいで」
「……いえ、気にしてないですよ、えーとアリサさん?」
「あ……その名前で呼ばないでくれる?今はアシラって名乗ってるのよ」
にこりと笑うアシラさんにペガサスさんが
「何があったんだ?」
「あたしも色々あったのよ、さてと……とりあえず立ち話もなんだし、着いて来て。お茶くらい出すから」
そういってバリアジャケットを解除した、アシラさんの格好はノースリーブにショートパンツにへそだしとかなり露出の激しい服装だった。こっちこっちと言って歩いていくアシラさんの背中を見ながら
「……着いて行ったほうがいいですよね?」
「ああ、行こう」
ペガサスさんとアシラさんの後を追って歩いていると
「キュー」
「……おかえりなさい、スザク」
ゆっくりと飛んできたスザクを肩の上に止めてやりながら
「……テンマと言うのは?」
「生前の名だ。もう名乗る気はないんでな。今までとおり、ペガサスと呼べ」
「……はい」
その言葉に頷き、私達はアシラさんの後を着いて歩いていった……
アシラの後をついて歩くリーエとペガサスを見つめる1つの視線があった。中学生程度の背をした小柄な少女だ、虚空に浮かぶ扉の前に立ち
「ヒュぺリオン、貴方はどっちに反応しているの?」
その手の中の剣にそう声を掛ける。ヒュぺリオンと呼ばれた剣は小刻みに震えながら熱を放っている
「? あの3人じゃないの?じゃあ、貴方はなんで私をここに導いたの?」
ヒュぺリオンは違うと言いたげに熱を放ち、刀身を振るわせる。何のためにここに私を呼び寄せたのか分からない。暫く辺りを見回して気付いた
「なるほど、希望の芽を護れと言いたいのですか?」
手の中でヒュぺリオンが震える。やれやれこの子は何を考えているのか判りませんね、と肩を竦めながら
「ですが良いでしょう。滅びは私が望むものではありませんから」
私もまた護る者だ。滅びる世界や殺戮を許容など出来はしない。それにこの世界は凄まじいまでの怨念に満ちている
「それにネクロの気配もします」
巧妙に隠されているが、ネクロの気配もする。目を閉じて意識を集中させると良くわかる。それに
「他にも色々居ますね」
ネクロだけではなく、他の気配も2つほどする……これほどまでに異形が集まる。何かこの世界には秘密があるのでは? 私はそんな事を考えながら。影に潜り込む能力を持つ外套、シャウトを纏い廃墟の中にと向かっていった……
(しかしヒュぺリオンが担い手を選ばないで、誰かを護れというのもおかしな話ですね)
自身の持つ剣のレプリカのヒュぺリオンは意思を持つ剣。そしてそれは所有者を選ぶものなのに、所有者を選ぶわけでもなく私をこの世界に導いた。その理由がどうしても引っかかる
(のちに担い手になるということですかね?)
今はまだ時ではないが、担い手候補を私に教える、ヒュぺリオンが導いた理由はそれしか思いつかず。私はあの3人の背中を思い出しながら
(誰がヒュぺリオンの担い手になるんでしょうね?)
私はそんな事を考えながら3人から少し離れたところに腰を休め。これからどうなるのかを考えていた
だが今の私は知らなかった。ヒュぺリオンはあの3人の誰も選んではおらず、ただ運命に導かれるかのように
私に道を示していたという事に……
第22話に続く
リーエさんのパーティーの4人目は平行世界のアリサさんです。このキャラは月影夜葬様に頂きました、他にも宵闇の使者に始動に伴い沢山のユーザー様にキャラクターを頂きました。少しずつキャラ紹介をしていくつもりなので、楽しみにしていてください
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします