それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第22話
しくじったなー。完全にネクロと勘違いしてたよ……ちらりと後ろを見ると
「?」
不思議そうに首を傾げながら手を振ってくる。えーとリーエと目が合う、確かに魔力とかはネクロだし、瞳孔も縦に割れてるけど普
通の人間と変わらない……
(あとでちゃんと謝らないと)
そんなことを考えながら、今のあたしの暮らしてるところに案内する
「ここよ」
周囲に何も無い開けた土地の前でそう言うと
「アリサ、いやアシラ。頭でも沸いたか?」
テンマ……いやペガサスが頭を抑えて尋ねてくる。
「失礼ね。ちょっと見てなさい」
えーとどこだったかなー。きょろきょろと地面を見て周り
「あったあった」
地面を開き出てきたパスワード画面にパスワードを入力すると
ガコン!!!
大きな音を立てて地面がスライドし地下へと続く階段が姿を見せる
「……シェルターですか?」
「そうそう、ずっと前に破棄された避難用のシェルターなんだけど、結構快適なのよ」
そんな話をしながら階段を下りて、シェルターの中にはいる
「あー今、お茶入れるから。適当に座ってて」
他の人にお茶入れるなんて久しぶりね……あたしは懐かしい物を感じながら紅茶の準備を始めた……
家具とかが随分と充実していますね、洗濯機とかも見えます……
「はい、おまたせー」
紅茶のカップを置いて私達の前に座ったアシラさんは
「えーと、まずはさっきはごめんね?ネクロと勘違いしちゃって」
椅子に座ったまま頭を下げてくるアシラさんに
「……いえ。構いません、ネクロに滅ぼされた世界の人なら警戒するのは当然ですから」
ネクロに襲われた世界の生まれなら過敏に反応するのも無理はない、だからそんなに気にしては無い
「本当にごめんね?……改めて自己紹介するわ、あたしはアシラ、アシラ・ローウェル。アシラって呼んでくれれば良いわ」
笑いながら言うアシラさんに私は
「……リーエです、それとこっちは私の友達のスザクです」
「キュー」
私の前に着地して翼を広げるスザク、だんだん愛嬌とかを身につけて来たようでその仕草は愛らしい
「リーエにスザクね、それとテン……ううん、ペガサスよね?」
テンマと言いかけて訂正したアシラさんは紅茶を飲みながら
「まぁこうして懐かしい顔に会えたのは嬉しいわ。それと皆の墓は手入れしておいたから、感謝しなさいよ」
「ああ、ありがとう。アシラ」
ふふん、と胸を張る仕草を見せるアシラさんに
「……ネクロではないんですよね?それなのにその回復力は一体?」
私の一撃は確かにペガサスさんとかと比べると劣るが、直撃でもノーダメージと言うのは納得できない。
「あーあたしね、ハーデス。この世界を滅ぼしたネクロなんだけど……管理局のシェルターに非難してたんだけどさ……ネクロの攻撃でシェルターが倒壊して、左腕が瓦礫で押しつぶされて千切れちゃって死に掛けたのよ……」
左腕といえば心臓に一番近い。いや押しつぶされたという事は少なくとも左半身はぐしゃぐしゃだったはずだ……
「でしかもシェルターの床が抜けて、どこかに落ちるし、なんかさ、危険なロストロギアの保管庫に落ちてさ。まぁここまで言えば判ると思うけど。その時に保管されていたロストロギアが偶然落ちてきてさ、それで命を取り留めたんだ……」
アシラさんは自分の胸を押さる。多分その場所にロストロギアが埋まっているのだろう
「人間と言うか魔力体に近い身体になっちゃってさ……死に難い身体になっちゃってるのよ。ネクロって言うのもおかしいけど……
まぁ人間じゃあないわね。だからさ人間のときの名前を捨てて。アシラって名乗ってるのよ」
生きてた事は喜ぶべきだろう。でも生きる代わりに人間としての身体を捨てる事になった……
「……私と似てますね」
思わずそう呟くとアシラさんが
「似てるって?あたしとリーエが?」
「……私もネクロに襲われて、何かの実験で半分ネクロになってしまって……生きる事は出来ましたでもこうして半分だけネクロになってしまいました……だから私とアシラさんは似ていると思います」
なった経緯は違う、でも最終的に行き着いた場所は人外の身体と同じだ
「そうなんだ……貴女も苦労したのね」
「……でも私は龍也様が居てくれました、それに私の事を受け入れてくれる人達も……私はその人達に再会するために旅をしてるんです」
「そうなんだ……何時か会えると良いわね」
笑いながら言ってくれるアシラさん。出会いこそは最悪だったけど、良い友人になれるかもしれない
「で? 仲良くなったのは喜ばしいが、俺は何時まで空気で居ればいいんだ?」
「「あ」」
若干ふてくされた表情でスザクの頭を突いているペガサスさんを見て、私とアシラさんは同時にあっと呟いた
あっと同時に呟いたリーエとアシラを見て、俺は思わず溜息を吐いた。別に寂しいとか思った訳ではないが……無視されてるようで面白くない
「ごめんごめん。ペガサス、別にあんたの事を無視してたわけじゃないから。あ、リーエ、お菓子食べる? 保存食だから味は今一
だけどね」
ごそごそと棚を探り、アルミパックの何かを取り出したアシラに
「お前不味い物を人に勧めるなよ」
「いやねー、味が今一ってだけで不味いわけじゃないのよ?」
俺とリーエの前にアルミパックをおいて、自分はさっさと封を切って中身を取り出す
「……食べ物には見えないんですが?」
リーエの意見には俺も同意だ。パックから出てきたのは灰色の固形物だった。これを食べ物とは到底思えない
「ふっふー、これね水を掛けないと駄目なのよ」
皿の上にその固形物を乗せてから水を掛けるアシラ。しばらく待つと
「……おお。ショートケーキ♪」
「良いでしょ、結構便利なのよ。リーエのはチーズケーキ、ペガサスは団子だけど、嫌なら空ける前に言ってね?」
リーエはにこにこと笑いながらパックを空ける、俺も洋菓子なら断るつもりだったが、和菓子ならばと思い封を切った
「ペガサスは今まで何してたの?」
「俺か?俺は皆を殺したネクロを追って、ネクロの中で行動してた」
俺の言葉から復讐かと呟いたアシラは
「で?仇は取れたの?もしまだならあたしも手伝うけど?」
「仇は取った、時間は掛かったがな」
「そ、やっと皆のお墓に良い報告が出来そうね」
「全くだ」
俺とアシラだけが判る話をしていると、リーエは何も言わず、俺とアシラの話に耳を傾けていた。邪魔をしてはいけないと判断しての事だろう。賢いやつだが、賢すぎるのもどうかと思う。
「……ペガサスさん、旅を降りるのは許さないといいましたが、今ならば「お前は馬鹿か?」「リーエ。その考え方はよくないわ。謝りなさい」……え、えーとですね? 私は間違った事は言ってないと「馬鹿だな」「謝りなさい。今すぐに」
俺とアシラで睨むとリーエは
「……ご、ごめんなさい」
なぜ謝らされるのか納得してない様子のリーエに
「この子心配だわ。ビシッ!!!」
アシラが溜息を吐きながらデコピンを放つ。……金属の左手で
「……あいた!?な、何するんですか!?」
結構な破壊力だったようで涙目で怒鳴るリーエ
「キュー!キュー!「はい、黙ってようね。鳥」
主人を苛めるなとアシラに詰め寄った。スザクはリーエ同様デコピンを喰らい沈黙した
(本来なら俺が咎めるべきだと思ったが……ここはアシラに任せるか)
「いまさ、リーエが言いかけた事をもう一度いってくれる?」
額を摩っているリーエにそう言うとリーエは
「……ペガサスさんに旅を止めても良いと言おうと思いました」
「何でそんな事を言おうと思ったの?」
あたしがそう尋ねるとリーエは
「……だってペガサスさんはアシラさんに再会出来たんですよ? 互いに死んだと思ってたのに、私について来たら。また危ない目にあう、ならここに居たほうが良いと「ど馬鹿」ッ!!!!」
余りに馬鹿すぎる、いや賢いというべきかな? でもまぁやっぱ馬鹿に決定。左拳をリーエの頭に振り下ろす。ゴチンッ!! とんでもなく重い音を立てて命中した拳骨にリーエは涙目で机に突っ伏した
「ペガサスと判れたら、あんた1人でその危険な旅を続けるのよね? 今まではどうだったか知らないけどさ。それはただの自殺行為。判る?」
涙目で唸るリーエの目を見て。
「あたしはリーエがどんな思いをしてきて旅を続けてきたのか知らない、リーエが会いたいって言う龍也って人も知らない……でも
リーエが馬鹿って言うのは判る」
「……私のどこが馬鹿って言うんです?」
頭を抑えるのを止めて、苛立った様子で尋ねてくるリーエに
「仮にペガサスがあたしと一緒にこの世界に残るとするでしょ? そしたら残ったあたし達はずっと思うわ。リーエはどうなったかな?って。あたしはリーエが心配、いつか潰れちゃうんじゃないかって」
リーエは強い子、でもその強さのせいで余計に心配になる。今はまだ良いかも知れない、でもいずれ孤独に耐え切れなくなって潰れてしまうんじゃないかって……
「リーエ。今までどんな辛い思いや悲しい思いをしてきたのか、あたしには本当に何も判らないわ。だってあたしはリーエとは別の人間だから」
席を立ってリーエの前にしゃがみこむ。リーエは何も言わず半歩下がる、その目にはさっきまでの苛立ちの色はなく、若干の恐怖の色が見える
「だからあたしに教えて?どんな思いをしながら旅をしてきたのかを……」
この子はほっておいたら駄目だ、どこまでも自分追い込んでしまう。そして壊れてしまう……そんな危うさを感じる
「あたしはリーエの味方。ね?だからあたしに教えて。本当はどう思っているのかを」
更にあたしから離れようとした、リーエの腕を掴んで抱き寄せる。とても小さい身体……この小さい身体にどれだけの絶望を背負ってきたのだろう……あたしがそんな事を考えているとペガサスはゆっくりと歩きながら
「ちょっと出てくる。川か何かで魚でも取ってくる」
心配そうにリーエを見ていたスザクを鷲づかみにしながらそう言った
「クアー!!クアー!!!!」
離せと言いたげにペガサスの手の中で暴れるスザクと共にペガサスはシェルターから出て行った
「これで話しやすいわよね?」
少しだけ抱きしめる力を緩めながら尋ねるとリーエは
「……わ、私には話すことはないです」
「もう良いの、強がらなくても……ずっと我慢してたのよね?」
あたしもずっと1人で寂しかった。だから判る、リーエがずっと涙を我慢してきたのだと
「……が、我慢なんか……し、してないです!私は大丈夫なんです!」
繰り返し大丈夫と言っていたリーエの肩が震えている、私はもう一度リーエを抱きしめて
「もういい。もう良いのよ。ねっ?」
「……だから……わ、私は……だ、大丈夫……」
リーエの目に徐々に涙が溜まって行き……小さく震えていた肩が大きく振るえたと思うと、その目からぽろぽろと涙が流れ始めた……
「泣きなさい、溜め込んでたの全部吐き出しなさい……」
あたしがそう言うとリーエは子供みたいな大声で泣き始めた……
「アシラに会えたのは幸運だったかもな」
ネクロ化の影響で強化された聴覚は、遠く離れたここまでリーエの泣き声を届けていた
「クアー。クアー」
心配そうにアシラのシェルターのほうを見ながら、鳴き声を上げるスザクに
「今は行ってやるな。スザク」
「クウー」
納得行かないという様子を見せるスザクだが、さっきの鷲づかみが効いているのか、無理に飛び立とうとする様子は見せなかった
「しばらくしたら戻るぞ。こういう時に男は無力だ」
俺に泣く子供を宥める様な技能はない。それに優しい言葉なども知らん、ここはアシラに任せるべきだろうと思いそう呟き
「おい、スザク。上空を監視しろ、前の世界での追手が来るかも知れんからな」
「クアーッ!!!」
勇ましい鳴き声を上げて飛び立つスザクを見ながら
「さてと……俺も周囲を調べておくか」
ネクロはこの世界から撤退した。もう居るとは思えないが、もしかしてという可能性は捨てきれないしな……俺はそんな事を考えながらゆっくりと歩き出した……
「ん?」
どこかからの視線を感じ立ち止まり、気配を探るが何の気配も感じない
「気のせいか?」
何かの気配を感じた気もしたんだが……しばらく気配のしたほうを見つめていたが、やはり何の気配も感じない。さっきの気配は俺の気のせいだったようだ……
「考えすぎだったな」
ネクロは殺し、破壊する事を生きがいとする。そんなやつらが滅んだ世界に態々残る必要はないのだから……ペガサスはネクロの特徴から、気のせいだと判断した。だがそれは間違いだった
ペガサスが何かの気配を感じた丘の上では
「一瞬気付かれかと思いましたね」
草臥れたスーツにシルクハット姿のぱっと見。紳士風の服装を纏った男だが、その目は獣のような眼光を宿していた
「たかが半ネクロ。本来なら取るに足らない存在ですが……致し方ないですね」
目深に被っていたシルクハットを投げ捨てると、その男の身体に闇が纏わり付き。その姿を作り変える、ピッとした黒のタキシードに紅いマント。そして美しい金髪を掻きあげた、男の目は黒目と白目が入れ替わり。異様な光を宿していた
「さてと……スペクター居ますか?」
「はっ、こちらに」
鬼の様な姿をしたネクロがその男の背後に現れる。
「日が昇ったら、適当に下位ネクロとデクスを連れて半ネクロ達に仕掛けて下さい。この世界に長く滞在されるのは困りますからね」
「畏まりました。ランドグリーズ様」
指示を受けた鬼の様なネクロは、深く頭を下げると闇の中に溶ける様に消えた……
「よりによってこの世界に流れ着くとは、あの半ネクロ達も運が悪い、この世界でなければ私が態々出てくる事もなかったでしょうしね」
本来このネクロにすれば、半ネクロなど取るに足らない存在であり。下位ネクロに処理を任せるのだが、今回は事情が違った。態々出向き、直接指示を出す必要性があった……
「失われし時代の欠片と続くこの世界に訪れた不幸を呪いなさい、半ネクロ」
ネクロはそう呟くとマントを翻し闇夜の中にと消えていった……
第23話に続く
今回は結構難産でしたね。今までが男性主人公ばっかりでしたから、女性主人公の反応が多いこの話はかなり難しかったです
次回の最後でネクロ。「スペクター」を出そうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします