第36話
イッセーさん達の世界から転移した場所はまたもや滅んだ世界だった。廃墟を見下ろす丘の上で辺りを確認する。ネクロの魔力は感じられないし、生命反応も無い……
(ネクロに滅ぼされた世界か。それとも歴史の中で滅んだか。どちらでしょうね)
ここからでは推測するしかない……やはり降りてみるのが一番なのだろう
「えー廃墟なの。つまんない」
私がそんな事を考えているとヴィルヘリヤさんが廃墟を見下ろしながらそう呟く
「はー……仕方ないわ。リーエ抱っこして良い?」
手をわきわきと動かすヴィルヘリヤさんから一歩下がると同時に
「クエーッ!!!」
ドスッ!!!
「はうっ!?」
スザクの急降下嘴がヴィルヘリヤさんの額を貫く。ゆっくりと昏倒するヴィルヘリヤさんの頭の上にのり
「クワーッ!!!!!!」
翼を広げて叫ぶスザク。雄雄しい叫びとも言える鳴き声だった
「さすがスザクね。一撃必殺だわ。はい、ご褒美」
「キュウー♪」
アシラさんが投げた木の実をダイレクトキャッチするスザク。何か判らないけどスザクも逞しくなっているようだ
「何時までもここにいてもどうにもならんな。降りてみるか」
「……そうですね。降りてみますか」
見た感じかなり広大な敷地を持つ何処かの王国の跡地のような場所だ、ここからでは良く判らないが街や路はほぼ元の姿を保ってみていると見て良い。ただ
「あれ城かしら?ちょっと変わった作りをしてるみたいだけど?」
「……アシラさんもそう思いますか?」
城のような建物だが、どうも作りがおかしい。外壁は無事で中だけ壊れているという奇妙な壊れ方だ
「あれは帝都。帝都「アズタミア」ね、私も実物を見るのは初めてだわぁ」
額を押さえながら立ち上がったヴィルヘリヤさんに
「アズタミア?なんだそれは?それに何故そんな事を知っている」
「アルハザードと二大勢力を競った魔法都市よ。私はどっちかと言うと最初期……ヘルズとかと同じ時期にネクロ化したから知ってるのよ。ま、生きてる時に聞いただけだから、伝説か何かだと思ってたけど。実在するなんて思ってなかったけどね……それよりもラッキーよね」
にこにこと笑うヴィルヘリヤさんは崩れた城を指差して
「科学力ではアルハザードに劣ったと言われるアズタミアだけど……魔法技術はアルハザードの数倍発達してたと言われてたわ。しかもこの国を治めていたのは見れずの英雄。もしかするととんでもないロストロギアが眠ってるかもしれないわぁ」
見れずの英雄……ユーノさんに聞いたスクライア一族の開祖の名前
「さて。じゃあリーエ、スザク行きましょうか?」
私とスザクを見るヴィルヘリヤさんにペガサスさんが
「待てこら変態。貴様とリーエを一緒に行動させるわけが無いだろう」
「そうよねえ。あたしもどうかと思うけど?」
今までの言動から信頼度0のヴィルヘリヤさん。ちなみに私もちょっと嫌だ
「あのねえ?私だって真面目なところは真面目にやるわよぉ?それにペガサスもアシラも古代ベルカ語は読めないでしょう?なら私とリーエが組んで。調べて戦闘派の貴方達が索敵するのが自然でしょう?それにリーエには頼りになる護衛もいるしぃ?」
私の肩の上で威嚇してるスザクを見て苦笑するヴィルヘリヤさん。へんな事をすればスザクの嘴が唸るだろう
「それもそうだな。一通り索敵したら合流する。スザクちゃんと見てろよ?」
「爆破も許可するわ」
「キュウ!」
なんだろう。いつの間にかスザクとペガサスさん達が仲良くなってる?
「じゃあ行きましょうか。リーエ」
「……はい」
崖の上からふわりと飛び降りるヴィルヘリヤさんに続いて私も飛び降り。遺跡の中にと足を踏み入れた……
丁度その頃。アズタミアの王宮に続く路の前で
「また会うみたいだね。これも何かの運命かな?」
リーエを二度救った半ネクロがそう笑っていった……彼女はそう呟くとゆっくりとした足取りで王宮の中に入っていった
「しっかし随分と綺麗なものね」
「だな。俺達の世界とは随分と違う」
ペガサスと歩きながら辺りを見回す。確かに自然風化で崩れている箇所もあるが殆どもとの街並みを残している。あたし達の世界とは大違いだ
「ネクロがいなかったのかしら?」
「……どうだろうな。デクスタイプが運用されていたのなら何処かに残骸でもありそうなものだがな」
デクスタイプは金属の骨格を用いている物もいる。それが居ればネクロが居たことになるが、そうなると如何してこんなにもこの町が原形をとどめているのか?と言う謎が出てくる
「やっぱりネクロは来なかったんじゃない?」
「考えてみろアシラ。ヴィルヘリヤの言う事が本当なら、この世界はかなり発達した魔法が伝わった世界だ。そんな世界をネクロがほっておくと思うか?」
そう言われると確かにおかしい。ネクロは死者の魂を使う、滅んだ世界なら魂も遺体も大量にある
「そう言われるとそうね。でもどこにも破壊の跡が無いのはどういうことかしら」
通路を曲がりながら尋ねるとペガサスは
「簡単な話だ。ネクロを上回る者が居たんだろう。見ろ」
ペガサスの指差したほうを見てあたしは
「う……嘘でしょ?」
そこには大量のネクロが黒い十字架に磔にされていた……一種居様とも言える光景に絶句しながら
「死んでるわけじゃないわよね?」
「だろうな」
ネクロは死ねば塵となり消えるではこのネクロ達は生きているはずだ。だが動く事も無く沈黙しているのはどういうことだろう
「精神破壊だな。いかに不死のネクロとは言え心を破壊されては終わりだ。そして徐々に身体を維持する魔力が無くなり……「おっアアアアアアアアアッ!!!!!!」こうなるわけだな」
断末魔の悲鳴を上げてネクロが十字架の爆発に呑まれ消えていく。ネクロといえど精神や心はある、だがそれを砕くとはどれほど強力な精神感応の術を使ったのか考えるだけもで途方が無い
「魔力を失ったネクロから死んでいく。そしてそれまでは生かさず殺さずか……よほどここが大事だったのかしらね」
ネクロ達の磔が並ぶ場所の奥を見てそう呟くとペガサスは
「だろうな……行くぞ。ここには何も無い」
「そうね」
ペガサスと一緒に来た道を引き返す。ネクロ達の磔が立ち並ぶ場所の奥は墓地だった。やはりネクロはこの世界に来ていたのだ。だがこの世界に居た何者かに心を砕かれそして磔にされ放置された。殺すのではなく放置するそれだけ怒りを買ったのだろう……あたしはそんな事を考えながら再び散策を再開した
「さて、どうする?リーエのほうに向かうか?」
「そうね。こっちのほうは何も無いみたいだしね」
あれから20分ほど辺りを調べたがこっちは何も無い。会った物と言えば、さっきのネクロと同じく磔にされたネクロ達や完全に破壊されたデクスタイプの残骸だけだった
「さてと王宮のほうに向かうか」
「そうね。リーエ達もそろそろそっちに向かってるわよね」
念話で何回か連絡を取り合い。暫くしたら王宮の前で合流と言う話をしていた。リーエ達の方も建物は綺麗だが何か足しになる情報はなかったらしい。ヴィルヘリヤによれば
《やっぱり王宮内の「Astales library(アスタリス・ライブラリー)」に行くしかない見たいね》
なんでもそのAstales library(アスタリス・ライブラリー)にはアズタミアのすべての魔法や過去の歴史書が収められていて、見れずの英雄の住居でもあったとのこと。そこならば有益な情報もあるだろうと思い移動を始めたあたしとペガサスだが、街の中心から懐かしい魔力の波長を感じ
「おい、アシラ。この魔力は……!?」
ペガサスに言われなくても判っている。この魔力は
「イシュリ。やっと見つけた!」
あたしの相棒……やっと見つけた!あたしはBJを展開し空を蹴りながら。イシュリの魔力のほうに向かった
「ちいっ!不味いぞ!リーエとヴィルヘリヤが近くに居る。いや闘ってるぞ!」
「言われなくても判ってるわよ!急ぐわよ!」
ネクロ事変で大勢の人間が死んだ。イシュリはその騒乱の最中あたしとはぐれた、追ってか何かと勘違いしてるんだ……
(早く止めないと!)
あたしはそれだけを考えリーエ達の方に向かった
「ねぇ。反撃しちゃ駄目?」
「……駄目です」
Astales library(アスタリス・ライブラリー)の近くまで来たところで現れた謎の魔導師は私とヴィルヘリヤさんを睨んで
「フェザーダート」
いきなり攻撃を仕掛けてきた。その目からは困惑や恐怖と言ったマイナスの感情が見て取れた。恐らくだが
(ネクロに襲われたことのある世界の人ですか?)
赤いワンピースを着ている点から別の世界から転移。もしくは跳ばされて来たと思えば良いだろう。
(なんとか話し合いをしたいんですけどね)
少女は自身の背中から炎の翼を展開してそこから連射力に長けた炎の矢を連射してくる。無論威力なんて殆ど無いし、目に怯えの色が見えているから自衛をしようとしているだけだと判る
「……私達は敵じゃありません、攻撃を止めてください」
「……フルフル」
首を振って信じられないという意思を伝え再び矢を飛ばしてくる。プロテクションで全て弾ける程度の威力しかない。つまり魔導師としてのレベルはそんなに高くない。無力化するのも容易いがそれだと溝が生まれる
(なんとか交渉で攻撃をやめてもらわないと)
とは言え相手はネクロ=敵と言う認識をしている。とても話し合いが出来る状況ではない
「ねえ聞く耳持たないって感じだし、1度私に任せてよ」
「……何をする気ですか?」
ヴィルヘリヤさんはにこりと笑って
「私が調教するわ。可愛い子だから♪3分あればOK♪」
私達と対峙している魔導師は燃えるような赤い髪をしたワンピースの少女。たぶん年の程は私より少し年下だろうか?暫く彼女を見つめてから
「……却下します。性犯罪するならここにおいて行きますよ」
「じょ、冗談よう」
怪しすぎる絶対いかがわしいことをしようとしていたのに違いない。しかしこのままでは埒が明かない
(不本意ですか意識を刈り取らせてもらいましょう)
私が攻撃に出ようとした所で
「イシュリ!止めなさい!!」
「!?」
アシラさんの一喝が響く。イシュリ?それが彼女の名前?私が困惑してる中アシラさんが
「イシュリ。良かった無事だったのね?」
「……姉上?ほんもの?」
「勿論よ。おいで」
アシラさんが手を伸ばすとイシュリさんは炎の翼を掻き消してアシラさんに近づいて抱きついた
「ごめんね。あの時手をつかめなくて、ずっと1人で寂しかったでしょう?」
「??フルフル」
イシュリさんは首を数回降ってからぼそぼそとアシラさんに耳打ちし始めた
「え?ここに来たのは2日前なの?」
「コクコク」
何度も頷くイシュリさん。どうもアシラさんとイシュリさんで流れていた時間の感覚が違うらしい
「姉上もテンマもネクロと一緒。なんで?」
私とヴィルヘリヤを警戒しながら尋ねるイシュリさんにアシラさんが
「えーとね。話せば長くなるからはしょるわよ」
いきなりそれ!?私が驚いているとペガサスさんが
「あいつは説明とかには向かないんだ。直感を信じるタイプだからな」
「……大丈夫なんですか?」
直感だけで大丈夫なのかと思い尋ねると、ペガサスさんではなくヴィルヘリヤさんが
「あのねえ?優れた直感は未来予知に匹敵するのよ?アシラはそう言うタイプなのよ。きっとね?」
私には良く理解できないが六課で言えばスバルさんとかフェイトさんみたいなタイプなんだろうか
「……友達?仲間?」
「そう、それ。OK?」
コクコクと何度も頷いたイシュリさんは私の前に来て
「……ごめん……なさい。ネクロの魔力感じたから怖かった」
「……いえいえ。気にしていませんから。えーとイシュリさん?」
「コク。イシュリ・フェニックス……姉上のパートナーをしてた」
身振り手振りを交えながら固い表情で言うイシュリさんに
「……リーエです、こっちはスザクです」
スザクを手の上に乗せながら言うとスザクは
「クワー!」
翼を大きく広げた一鳴きした。するとイシュリさんは
「鳥……好き」
スザクを見てにこりと笑いそのままアシラさんの後ろに隠れながら
「テンマ」
「今はペガサスだ」
「……ネクロになった?」
「半分だけだがな」
ペガサスさんと会話してるイシュリさんを見てヴィルヘリヤさんが
「私ヴィルヘリヤ。おいで♪」
「……イヤイヤ」
首と手を振って全力で拒否してる。アシラさんはイシュリさんの頭を撫でながら
「イシュリ。あれは危険だから1人で居るときは近づいちゃ駄目よ?」
「コクコク」
何度も頷くイシュリさんは嬉しそうにアシラさんの服のすそをしっかりと掴んでいる。姉上って呼んでたし……私はそんな事を考えながらちなみにヴィルヘリヤはというと
「可愛い女の子ねえ。悪戯したい「キューッ!!!」くらうもんですか!」
スザクの嘴を回避したヴィルヘリヤさんだったが
「あ?「クワクワ♪」
ヴィルヘリヤさんの足元にはスザクの羽。それを踏みつけたことで爆発。ボンッ!と小気味良い音を立ててヴィルヘリヤさんは昏倒した。まぁ半ネクロなので直ぐに回復するから心配はない
「……では行きましょうか?Astales library(アスタリス・ライブラリー)へ」
街の中心にある王宮を指差しながらそういってゆっくりと歩き出した
「これがAstales library(アスタリス・ライブラリー)……近くで見ると判るけど。本当に図書館なのねぇ」
アシラさんがイシュリさんをおんぶしながら言う。ネクロとの戦いで精神をすり減らしていたイシュリさんはアシラさんに会ったことで気が緩んだのか眠ってしまったのだ
「廃墟と比べて随分綺麗だな。何かの術式でも刻まれているのか?」
街はあちこち崩れていたが。Astales library(アスタリス・ライブラリー)は外壁こそボロボロだが、中身は完全なままだった。私が口を開こうとしたとき
「当然だよ。知恵は宝なり、それがアズタミア。そしてその知恵の結集である「Astales library(アスタリス・ライブラリー)」には時の流れは適応されないんだ」
突然響いた声にペガサスさんとヴィルヘリヤさんが
「何者だ!」
「敵かしらぁ?」
「敵じゃないよ。敵ならとっくに攻撃してる」
私達が驚く中。闇の中から現れたのは私と同じくらいの背丈に黒い髪の少女だった
「……貴女はあの時の」
ペガサスさんの世界から逃げるときに手助けしてくれた。半ネクロだった。彼女は私達を見て笑いながら
「ようこそ、アズタミアへ……そしてAstales library(アスタリス・ライブラリー)へ。私の名前はアルハリム。アズタミアの最後の皇族。アルハリム・アズタミアだ。まあ立ち話もなんだ、お茶くらいは出そう。ついてきてくれ」
そう言ってAstales library(アスタリス・ライブラリー)に入っていくアルハリムさんを見て私は
「……行きましょう」
どの道。Astales library(アスタリス・ライブラリー)には様があった。ここはついていくのが得策だろう。私はスザクを肩に乗せてアルハリムさんの後を追ってAstales library(アスタリス・ライブラリー)にと足を踏み入れたのだった
第37話に続く
リーエ達が転移する前に共闘してくれたネクロの名前が判明しました。彼女が味方なのかそれとも敵なのかは次回でわかりますその後はまたコラボ回を予定しています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします