第40話
黒いローブを身に纏った少女。リーエを先頭について来る魔導師の気配を感じながら
(普通の人間ではないよな。全員)
俺達の魔力よりも遥かに多い魔力をさっきまで放っていたのに今は一般人と変わらない。何らかの方法で完全に魔力を断っているのだろう。この地点で俺達よりも遥かに高い技術を持っているのが判る
(和人君。大丈夫なの?かってに連れて行って?)
なのはの念話に俺は
(仕方ないだろう?向こうは俺達の知らない情報を知っている。なら相手の話を聞くべきだ。それにネクロの毒と言うのも気になるしな)
ネクロ化があの化け物と同じになる現象だというのならそれはどうしても避けなければならない事態だ。
(アリサとそっくりのアシラって言う人も気になるしね)
黒いローブの少女の隣を歩いている黄土色に近い濁りのある金髪の女性はアリサにそっくりだし、俺達を最初に助けてくれた剣士は「御神流」を使っていた。俺達とは無関係だとは思いにくいが何者かが判らない。とりあえず六課で話を聞くそれが当面の最善の策だろう。そんなことを考えていると六課につき、アリシアが
「ここが機動六課だよ」
「……知っています……とても懐かしい」
とても懐かしい?機動六課が?六課は新設された部隊だ懐かしいというのはおかしい筈だが
「ぐだぐだと考えてないでとっとと案内しろ小僧。手遅れになるぞ、ネクロ化したいというのならゆっくりしていればいいがな」
今は考えている場合じゃないか……俺はリーエ達をロングアーチの部屋にと案内したのだった
「だいじょう……和人君?後ろの人達誰?」
不思議そうな顔をするはやてに俺は
「黒い亡霊のことを知る魔導師(?)だ。俺達の知らない情報を教えてもらうために連れて……「イシュリちゃーん。おいでおいで」
「イヤイヤ」
紫の髪の女性「ヴィリヘリヤ」が燃える様な炎のような髪をした少女に手を伸ばす
「この性犯罪者が!少しは大人しくしてなさい!」
アリサそっくりのアシラと言う人物のグーパンチがヴィルヘリヤの叩き込まれ
「あいだあ!?金属の義手で強打はやめて!?馬鹿になるから」
「もう馬鹿だと思うよ」
「アルハリムちゃんはクールよね。可愛いわー♪」
わきわきと手を動かしてアルハリムと問う言う少女に近寄ったヴィルヘリヤだが
「……少し静かにしていてください。スザク、GOッ!」
「キューッ!!!」
ドスッ!!!!
「はうわっ!?」
紅い鳥の突撃がヴィルヘリヤの額を貫き昏倒させる。
「……失礼しました。ヴィルヘリヤさんは大人しくしているのが苦手な物なので、話を始めてもよろしいでしょうか?」
紅い鳥を肩の上に停めたリーエがそう尋ねてくる。俺達は目の前で起きた光景に驚きながらも
「「「はい。始めてください」」」
なぜか敬語で返事をしてしまうほど、フード越しに見えるリーエのエミはとても冷めていて恐ろしかったのだった……
やはりここは私の知る機動六課とは違いますね。和人さんに案内されてみた機動六課は私の知る機動六課の内装とは大分違っていた
それでも懐かしいと思えたのはやはり六課の雰囲気となのはさん達がいたからだろう……
「……ではまずは解呪をさせていただきます。少々痛みを伴いますが我慢してください」
そう前置きしてから和人さん達を覆い隠すように私の魔力を解放する
――――我は理を知る者
――――死は忘却、生は記憶
――――揺蕩う(たゆたう)魂を誘い、もう一度この生へと刻む
――――我が理は円環、輪廻の廻りを求める
――――顕現
――――リンカーネーション
私の魔力が和人さん達を覆い隠し。ネクロに汚染される前の状態にと戻す。本来なら蒼い焔「浄焔」を結晶化させてそれを媒介するのが早いのだが、龍也様の焔と違ってアシラさんの魔力は形状変化が難しいらしく。龍也様の様に宝石状にするのが出来ないので過剰な魔力を使用して時間を戻す、いや身体の作りを戻しているのだ
(本来ならネクロを半ネクロにする術だが、信じられないくらい応用できるな)
ヴィリヘリヤさんやペガサスさんを半ネクロに戻した「リンカーネイション」は本来は回復魔法が効き難い私達半ネクロの傷を治すのにも使えるし、こうしてネクロの毒だけを解呪することも出来る。とんでもなく応用力のある魔法だが
(難点は魔力の消費量だな)
私の魔力を半分ほど持っていった。人数が多いというのもあったがそれを差し引いても消費魔力はとんでもない消費量だ。並みの魔導師では使うことすら出来ないだろうなと考えているうちに光が晴れる
「……終わりました。調子はどうですか?」
そう尋ねると和人さんが腕を回しながら
「あ、ああ……さっきまで感じていた圧迫感がなくなっている」
「……そうですか。では改めまして、私はリーエ、この子はスザクです」
「キュアーッ!!」
肩の上で翼を広げて一鳴きするスザク。それに続いて
「ペガサス。ペガサス・ナイトアークだ」
「アシラ。アシラ・ローウェル」
「……イシュリ……」
「ヴィルヘリヤよぉ、こんにちわ」
次々に自己紹介するペガサスさんたち。まぁ自己紹介といっても名前だけみたいですけどね。
「ご丁寧にどうも。一応こう言っとくか……俺は鑢 和人、階級は三等空佐。堅苦しいのは面倒くせえから和人でいい。それとスターズとライトニングとは違う部隊アサルト所属だ。んで、こっちは同僚の……」
アサルト……龍也様の部隊と同じ名称ですね。でもスカリエッティさんがいないから多分、チンクさんとかはいないだろうし隊員も違うんだろうなあと考えているなか。和人さんに話を振られたフェイトさんに良く似た
「アリシア・テスタロッサだよ、階級は和人の一つ下で一等空尉。和人と同じでアサルト所属だよ!よく間違われるんだけどフェイトの姉だからね、よろしく!」
フェイトさんのお姉さんですか……こっちのフェイトさんの話だと故人だと聞いていましたが、やはり平行世界だから生きている可能性があったんですね。
「んでこっちが……「……結構です。知っていますからなのはさんにフェイトさん。それにはやてさんですよね?」
なのはさん達を紹介しようとしていた和人さんの言葉を遮ってそう言うとはやてさんが不思議そうな顔をして
「なんで私たちの名前知ってるん?」
その問い掛けに私は少し間を置いてから
「……その事を説明するまえにネクロの事、私の事を説明させてもらいます。そっちの方が早いですから」
私はそう前置きしてから話し始めた……
ネクロと言う存在について……
人の魂や亡骸を媒介にの件では和人さん達が露骨に顔を歪めるのを見て
(甘いと言わざるを得ませんね)
私達がいた六課では全員がネクロのことを知り。それでもなお戦うという道を選んでいた。同じ人でも認識の違いがあるというのは知っていたが、やはり平行世界のなのはさん達は認識が甘い、いや覚悟がないというべきなのかもしれない
そして世界は数多に姿を持ち、様々な平行世界があるということ、そして私自身もその数ある平行世界の住人であり。そして機動六課にいたということを話し証拠として
「……これは私の世界での機動六課のメンバーです。たぶんこの人はいませんよね?」
龍也様の隣で笑う白衣の男性を指差すとアリシアさんが
「ジェイル・スカリエッテイ!?リーエの世界だと、スカリエッテイは管理局員なの!?」
驚いて声もないと言う感じのフェイトさん達を見ながら
「……はい。デバイス開発局の長官で機動六課所属の陸戦魔導師です、ランクはSS+で臨時の指揮権を与えられていました。馬鹿なことをして良く怒られていましたけどね」
惚れ薬散布とか、性別反転薬を食堂のソースに混ざるとか子供っぽい悪戯を多数していた
「あのさ、はやての隣の黒いコートの人ってだれ?」
「……龍也様です。八神龍也様。はやてさんのお兄さんですね、管理局の大将をやっています」
「私に兄ちゃんが!?どんな人やったの?」
「……面倒見が良くて頼れるお兄さんでしたね。どこ部隊の隊員にも好かれて教導官もやっていましたよ」
魔王を多数量産していたことはいわないでおこう。龍也様の悪評が広がるのは私としてもいいものではないから
「……私は半ネクロです。ネクロの身体に人の心を持つ者。ペガサスさんとヴィルヘリヤさん、それにアルハリムさんもです。これで大体の話は終わりました。何か質問は?」
私がそう尋ねると何かを考え込んでいた和人さんが私を見ながらはなしかけてきた
俺自身転生者だが。まさかこんな非常識があるとはな、ネクロに半ネクロ。平行世界の話
(別の世界には俺はいない当然か……)
数多ある平行世界。その中のひとつに俺が偶然当てはまっただけなんだなと思いながら
「半ネクロがネクロ化するということはないのか?」
「ないな。ネクロと半ネクロは似ていてまったくの別物だ。ネクロが半ネクロになる事はあっても逆はない。既に自己を確立しているからな」
ペガサスの言葉にフェイトが首を傾げながら
「自己を確立?ヴァールとか言うのは自分の意識があったように思えるけど?」
戦いを望み。強者との死合いが望みだと言っていたヴァールは確かに自意識があったように思えたが
「あれは違うのよぉ。ネクロの闘争本能と殺戮衝動が形になっただけで自己って言える物じゃないのよ」
闘争本能と殺戮衝動。口で言うのは簡単だがそれが形になり自己になっている。それはかなり厄介だ、自身のみを護るという発想がない敵を殺し全てを壊す。そして自身は瀕死のダメージを受けても魔力や魂を吸収して回復する。
(これは駄目だ。俺達だけじゃ対処できない)
かといって本局の隊員や聖王教会の人間でも対処できない事態だ。それにリーエは龍也と言う人物に会う為に旅をしているといっていた何時までもこの世界にいてくれるわけではない、俺は念話ではやて達に
(ヴァール達をどうするかの目処が立つまでリーエ達にここに残って貰いたいと思うんだが良いか?)
(私はかまわへんけど……上がなぁ)
管理局の上層部がうるさそうだが、リーエ達のことは知らぬ存ぜずで通せば良い。はやて達も同意権のようだ、それにリーエ達は魔力を完全に消せるので漂流者として保護したで十分名目は立つ
「……話し合いは終わりましたか?私達としては見て見ぬ振りも出来ませんし。和人さん達が望むのならばヴァールを倒すまではこの世界にいても良いと思っています。しかし決めるのは貴方達です。どうしますか?」
間が上手いと言わざるを得ない。こちらに考えさせる時間を十分に与えてからのこの問い掛け。見た目こそ16歳前後だが長い時を生きて来たと言っていた、洞察力や観察力は俺達よりも上のようだと苦笑しながら
「お願いしても良いか?」
俺がそう尋ねるとリーエではなくヴィルヘリヤとアシラが
「全然オッケー。その代わり3食の保障とお風呂よろしく。無人世界が多いから粉っぽくて嫌なのよぉ」
「あたしはあれね、管理局と教会の勢力争いとかに巻きこまないで。勿論あたし達全員よ。それが条件、リーエそれで良いわよね?」
リーエの未熟な部分を補う者がいる。これはある意味理想的な一行なのかもしれない
「くいくい」
「ん?お菓子欲しいのかな?はいどうぞ」
「にぱー♪」
……自由人が多いようだけど十分チームとしては統制が取れている
「……アシラさんの条件を飲んでくれるのならばOKです」
「こっちの返事は決まっている。OKだ、短い間だがよろしく頼む」
リーエは俺の差し出した手を握り返しながえら
「……こちらこそよろしくお願いします」
穏やかに微笑みながら俺の手を握り返した……
こうして異なる帰るべき場所にて異なる力を持つ者たちの道が交差したのだった
第41話に続く
今回はインターバルなので短めの話となっております。次回はこの世界でのスバルやテイアナとかとの会話をしたいなと思っています。ギャグパートを目指そうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします