第42話
「リーエ。今日は各隊の合同訓練があるんだけど見に来ない?」
アリシアさんにそう言われて思い出すのは。私の六課で良く見た訓練光景
『『『いいいやああああああッ!!!』』』
『突撃癖を直してくれないかね?いい加減に』
龍也様の体術で垂直に投げ飛ばされ涙目で空を舞っていたスバルさん達の姿
『避けろよー。避けないと気絶するからなー』
龍也様が魔力弾を乱射しなのはさん達を追い回す光景
『力の意味を知れ』
『ごふっ!?』
見ている10人が10人死んだと呟くくらいの勢いで殴り飛ばされていく、新入隊員の姿……
「り、リーエ!?なにどうしたの!?信じられないくらい震えてるけど!?」
アシラさんが慌てて近寄ってくるのを見て私は
「……いえ、何の問題もありません。私の六課の訓練光景を思い出したのです。そう……隊長陣でさえ悲鳴を上げ逃げ回り、スバルさん達は強制飛行で泣き喚き。見ている人が全員死んだと呟く。恐怖の訓練を」
「「「リーエの六課ってどんな魔境よ」」」
詳しくは知らないアシラさんたちの呟きの中。六課を知るヴィルヘリヤさんは
「六課って言うより守護者よね。守護者の訓練は死なない訓練、だから訓練は凄く厳しいのよ。って……そろそろバインドといてくれない?私お腹空いたんだけど?」
ヴィルヘリヤさんはエリオさんやキャロさんを執拗に追いまわし、しかも悪戯を何度もしようとするのでブチギレた和人にに頼まれたリーエがかけた多重バインドで縛られ地面に転がされている。それが面白いのかイシュリさんが指で突こうとするが
「駄目よ。イシュリ、変態は無視しなさい」
「こく」
アシラさんの言葉に頷き。よじよじとアシラさんの背中を昇っていくイシュリさん。その仕草はリィンさんとかに良く似ていて、とても懐かしい気分になった
「どうする?見に来る?」
「……ええ。折角ですから見に行きます」
私はまだまだ弱い。だから訓練を見てみようと思った。見ることも大切な事だと龍也様に教わったから……私はそんなことを考えながら演習場に向かった
リーエ達が訓練を見学するために移動している頃。
「ヴァール様。改修したロストロギアの方はどういたしますか?」
管理局から強奪したロストロギア。どちらもネクロの気配がしたので奪ってみたが俺が手にしてみるとそれは気のせいだったようで、ただのロストロギアと言うだけのくだらない物だった。ただ防御力と魔力の上昇量は悪くないが、俺の一派は身体そのものが既に鎧でそれからさらに身に着けるというのもおかしな話だ
「ふむ。確かどこかの世界で拾った虎のネクロがいたな」
「は?ええ……同属にも牙を向く凶暴なネクロですね」
氷雪の変換素質を持ち。俺の身体に傷をつけるほど高度を持った牙と爪が武器のネクロだ。だが俺を持ってしても御すことが出来ず
致し方なく拘束して眠らせてある。
「そのネクロに鎧と宝珠をつけて六課とやらに放て。この世界に来た半ネクロの力量を見極めるのに使う」
対峙したのはほんの数分。真に俺の敵に相応しいのか見極めるのに使うというと
「了解いたしました、転移のほうで直ぐにでも六課に送り出します
「ああ。任せたぞ」
あの二刀流の剣士も手強かったし、あの半ネクロの小娘も十分すぎるほどに強かった。だがどうせ戦うのなら1対1で邪魔の無い環境で正々堂々と戦いたい。故に敵の力量を見極め、俺の死合を邪魔させないように人員を配置しなければならない
「決闘の邪魔ほど腹ただしい物は無いからな」
俺は王座に深く腰掛け腰の鞘から自身の剣を抜き放つ。その刀身にはうっすらと雫ができていた
「戦いのときは近いな……」
俺はそう呟き再び目を閉じた。万全の状態で最高の死合をする。そのために休めるときは休み戦いに備える。それが俺のずっと変わらぬルールだ。俺は深く目を閉じもう直ぐ近くにまで来ている死合を思い描きながら眠りに落ちたのだった
世界が変われば、人も変わる。そんなことは判っていたのだ。だけど目の前のそれは私の思うより遥かに酷かった。スバルさんとティアナさんのアグスタでの話は聞いた。フレンドリーファイヤ。それは最も避けるべき事態のはずだったのにそれを仕掛けたこと。ヴィータさんに怒られたという事も聞いただけど、なのはさんは何もしなかった。話し合うことも何もだ
(それでは意思疎通が出来ないのも無理は無いです)
私の六課では皆との話し合いを何よりも大事にしていた。そうしなれば自分たちの中に悩みを溜め込んでしまうから、だから夕食の時や休憩のときに必ず皆で話す時間と言うのを取っていた。龍也様の指示でだ……それが以下に大事だったのか今知った
「不味い!なのはのやつ切れてやがる」
和人さんがなのはさんの行動を見て慌てて演習場の中に飛び込んでいく。私も止めなければと思い和人さんの後を追って演習場に飛び込む。
(アシラさん達がいなくて良かったです)
途中まで一緒だったのだが、余りに錬度が低くて下らんと言って出て行ってしまったペガサスさんと
お菓子を食べたいと言うイシュリさんを連れて食堂に向かったアシラさん。
残っているのはバインドで蓑虫状態のヴィルヘリヤさんとアルハリムさんだ
「やれやれ、互いのすれ違いと言うのは大変だな」
ふうっと溜息を吐きながら私と並んで空を走るアルハリムさん。何とか割り込もうと急ぐが
「レイジングハートモードリリース」
なのはさんはデバイスを解除して、素手でスバルさんのリボルバーナックルとティアナさんのクロスミラージュの魔力刃を素手で受け止めて
「私こんな事を教えたかな?なんで教えてないことをするのかな?」
どんよくと暗い瞳でスバルさんとティアナさんを見つめたなのはさんは、2人に魔力弾を放ち吹っ飛ばす。受身なんてさせないと言いたげな乱暴な攻撃だ
「ちゃんとやろうよ。ねえ。私は間違った事なんていってないよ」
淡々と語るなのはさんは私から見ても危うかった。何も見えてないそんな気がした
「くっ!ファントム……ああああッ!!!!」
砲撃を放とうとしたティアナさんの周囲に大量の魔力弾が発生し一斉に殺到していく
「くっ、先に行く!
このまま普通に飛んでいたのでは間に合わないと判断したのか和人さんがそう叫んで級にスピードを上げる。それを見て
(リミッターか!?)
私の世界の機動六課では対ネクロに特化した部隊として編成されていたのでリミッターは装着されてなかった。だがこの世界にネクロはいない。和人さん達の動きが若干鈍いと感じた理由がわかった
「少し頭冷やそうか?」
そう呟いてスバルさんとティアナさんがバインドで拘束され、その周囲に大量の魔力弾を発生させる。いくら非殺傷とは言えあれはやりすぎだ
「リーエ!二人を頼む!」
和人さんがそう叫んでプロテクションを発生させる。強烈なまでの弾雨はそれで全て掻き消されている。私はその隙にスバルさんを肩に担ぎながら
「アルハリム」
「判っているよ」
ティアナさんを私と同じように担いで同時に後方に跳んで2人をプロテクションで覆い隠し、和人さんのところに戻る。仲間割れ……ネクロがそのタイミングを見逃すとは思えなかったからだ
「なのは!何故こんな事をした!どう見てもやりすぎだ!」
「もう誰かが傷ついて別の誰かが悲しむのは見たくない!」
なのはさんは2人を思っていた。だがその思いは間違っている。二人のことを考えていない自分のためだけの免罪符だ。和人さんもそれに気付いたのか
「それを教えるためにお前は教導隊に入ったのだろう!こんな事をしてなんになる!」
和人さんの一喝ではっとした表情になったなのはさんが
「わ、私……私は……」
両手でその顔を覆った瞬間。後ろの空間が歪みガパッと口を開くような音が響き
「グルオオオオオオオオッ!!!!」
「なのはッ!」
身が竦むような雄たけびを上げて、そこから鎧を身に纏った純白の毛皮を持つ虎のネクロが飛び出す。和人さんがなのはさんが狙われると思ったのかそう叫ぶが
「グルゥッ!!!!」
「あぐっ!?」
邪魔と言いたげになのはさんを体当たりで弾き飛ばした虎は私とアルハリムさん見て唸り声を上げている
「どうもあの2人は敵と認識しなかったようだな」
「そう見たいだな」
ネクロと動物の2つの本能がより危険度の高いほうを選んだということのようだ。
「和人!このネクロは私とあルハリムが抑える!今のうちになのは達を連れて下がれ!」
まだ和人達では戦えない。そう判断し和人にそう叫び。「ツー・シュトーセン」を構える。虎の体系とあの鎧。私の力では貫くことは出来ないだろう。だから間合いを離して戦えばいいと考えていると。アルハリムさんが
「リーエ。ここは私がやろう」
駆け出そうとした私の前に手を入れて道を遮りながら言う
「はっ?」
一瞬何を言われた判らず呆然とする私を無視して、アルハリムさんはその手に冷気を放つ槍を構えながら
「向こうはどうも私に用があるようだし……それに私は猫が好きだ。叩き伏せて飼うとしよう」
そう言うとアルハリムさんは一歩前に踏み出し
「おいで猫、叩き伏せて自分の飼い主が誰なのか教えてあげよう」
「グルオオオオオオオオッ!!!!」
バカにするなと言うかのように叫んだ虎はアルハリムさんへと飛び掛った……
「おいで猫、叩き伏せて自分の飼い主が誰なのか教えてあげよう」
槍を構えて笑う女に私はふざけるなと思った。私はあの方だけの守護獣でこの身を闇に落としたとしてもこの誇り高き魂は誰にも渡しはしない
「グルオオオオッ!!!!」
咆哮と共に雪の嵐を放つ、私のこの力はネクロの物じゃない。主に頂いた大事な大事な足環の力を借りてこの力を得た。この嵐はどんなものさえも凍らせ砕くはずだった
(!?どうして)
嵐は敵に向かう途中でその勢いを失っていく。きっとあの手の槍が原因だ。あれの冷気で相殺したんだと思い今度は自身の爪と牙で砕こうとするが
キンッ!キンッ!!!
必殺の筈の私の爪は女が手にした槍に弾かれ届かない。この牙は主の敵を砕くためにあり、この爪は敵を引き裂くためにあった。それなのにどうして届かない。その事が私の苛立ちを加速させるが心のどこかで
(知ってる?この動きを私は知っている)
この女のやり裁きは何処かで見たことがあるような気がする。それはどこだっただろう?
「はっ!」
「ガルッウルル!」
一瞬私の動きが止まった隙に女の槍の石突が私の額を射抜く。だかそれはダメージとも呼べぬ物だが自然とその場に伏せてしまった
「はい。終わり、今回も私の勝ちだね?」
槍を担いでくすくすと笑う女。その仕草、その笑い方が記憶の中の輝かしい思い出と重なる
「強くなったね。驚いたよ」
楽しそうに笑う女が私の前に立ち優しく頭を撫でてくる
「ふにい?」
少し顔つきは変わっているから気付かなかったけど近くで見て判った
「そうだよ。ラビリル。私だよ、アルハリムだよ。覚えているかい?」
「ふにーッ!!!!!」
牙も爪も引っ込んで頭を何度も何度もこすり付ける
「身体は大きくなったのに甘えん坊だね。ラビリル」
よしよしっと頭を撫でてくるアルハリム様。私の主様はやさしく笑いながら
「私は旅をしてるんだ。一緒に来るかい?あの子は私の仲間なんだ」
後ろにいるフードを被った少女を見て言うアルハリム様。言われるまでも無い私の主様はアルハリム様だけ私を必要としてくれるのならどこにだって行こう
「ガウー♪」
「そうか。いい返事だよラビリル。でもそのままじゃ駄目だね、小さくなれる?」
「みー♪」
言うが早く小さくなり、ヴァーるに着けられた鎧から抜け出て、アルハリム様の足元に座るとアルハリム様は私を抱き上げて
「また一緒に行こうね。ラビリル?」
「みゃー♪」
アルハリム様の腕の中にまた戻る事ができた。その事が嬉しくて私は何度も何度も鳴くのだった……何年も求め欲していたぬくもりを確かめるように何度も身体を擦りつけ頭を撫でてと顔を見ると何もいわないで頭を撫でてくれるアルハリム様……私はその腕に少しだけ爪を立ててそのまま目を閉じた。ネクロだから眠る必要がないはずなのに私はアルハリム様の腕の中ですんなりと眠りに落ちるのだった……
第43話に続く
アルハリムさんが猫をGETしました(少し違うけど)スザクと同じくペット枠ネクロです、小動物って出ていると和みますよね?
だから出してみました。宵闇は全体的に殺伐とした雰囲気になると思うので、次回も戦闘回を予定しています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします