第43話
ラビリルが身に着けていたのは濃いネクロの気配がする鎧だった。アリシアさんが言うにはロストロギアの「願いの宝珠」と「竜魔将の甲冑」らしい……もしかするとヴィルヘリヤさんのときのようにネクロして復活させれるかもしれないと思って調べてみたが。その反応は無い。
「その様子だと駄目そうだった見たいだね。リーエ」
「ふみゃー?」
ラビリルを抱っこしたアルハリムさんがそう尋ねてくる
「……はい。そのようです、この世界のネクロも段々強くなってきている。仲間が増えると思ったんですけどね」
世界を渡るごとにネクロの数は増えて、しかもレベルの高いネクロも増えてきている。アシラさんやペガサスさんが弱いとは言わない、だけど物量で押して来るネクロと戦うにはやはり人数は多いほうが良い
「仕方ないさ、そう言うこともあるよ。はい」
「みゃお?」
アルハリムさんの渡されたラビリルの毛並みを撫でる。ふかふかと柔らかく猫って感じだ。本当は虎だけど……
「キュウ?キキュウ?」
「……おいでスザク」
ラビリルを見てるスザクに沿う声を掛けると、キューンと嬉しそうに鳴いて肩の上に止まるスザクの頭を撫でながら
「……ラビリルをお返ししますね」
「どうも。おいで」
「にゃーん♪」
アルハリムさんの腕の中に戻っていくラビリル。そのままするすると腕を登って頭の上でぺとっと横になってる。たれパンダならぬたれラビリルだ。そんなことを考えていると警報が鳴り響く
「ネクロのようだね。そろそろ仕掛けてくるころあいだと思ったよ」
「……行きましょうか」
情報を教えてくれるアナウンスでは海上にネクロとガジェットの反応があると繰り返しアナウンスしていた。となるとヘリポートと思いヘリポートに向かうとそこではスバルさんとティアナさんも居て目を覚ましてよかったと思ったんだけど。明らかに状況がおかしい
「言うことを聞かないヤツは、使えないってことですか」
けんか腰でなのはさんに詰め寄るティアナさん
「自分で言ってて分からない?当たり前のことだよ、それ」
「現場での指示や命令は聞いてます! 教導だって、ちゃんとサボらずやってます。それ以外の努力まで、教えられた通りじゃないとダメなんですか?あたしは、なのはさんたちみたいにエリートじゃないし、スバルやエリオみたいな才能も、キャロみたいなレアスキルもない。少し位無茶したって、死ぬ気でやらなきゃ強くなんてなれないじゃないですか!」
この人は何も判っていない。私の知るティアナさんとはまるで違う。ただの子供の我が侭だ。そう思った瞬間短距離転移でティアナさんの前に回りこんで思いっきり平手を叩き込んだ
「うあっ!?」
半ネクロの力は並みじゃない、面白いように吹っ飛ぶティアナさんを横目に
「なのはさん。貴方もです」
「え!?」
バチーンッ!!!
振り返りながら全力で平手を振るう。この人達は私が知るなのはさん達と比べて劣りすぎている。どちらも子供過ぎて話にならない
「リーエなにする「黙れ。これ以上私を怒らせるな」
辺りに魔力で出来た剣を作り出し、なのは達の頭上で滞空させる
「こんなくだらないことで時間を潰してどうする。それでも魔導師か」
怒りがふつふつと沸いて来る。どちらも最初から話し合う気がまるでない、意地の張り合い、くだらないプライドを護ろうとする。
「和人が出れば良い。今こんな精神状態の馬鹿が出ても、ネクロに取り込まれてネクロ化するのが目に見えている」
「判った。俺とアインスで出る、良かったらリーエ達からも1人「じゃ、あたしが行くわ。浄焔使えるしネクロ戦は得意だしね」
アシラさんと和人さんアインスが出撃するためにヘリに乗り込んでいくのを見ながら
「和人君。私も「黙れ座れ。お前は私が良いというまで喋るな」
出来る事ならこの世界のネクロを倒すまで穏便に話を進めたかったがだめだ。このままこの世界を去ればまた同じことの繰り返しだ
「シグナム。フェイト。ゆっくり話せる場所を用意して欲しい」
本気の魔力と殺意に当てられて放心している2人にそう声を掛けるとこっちだと言って先導してくれる。私はなのはとテイアナの襟首を掴んで引きずりながらそっちの方に向かった……
リーエがいなくなった事でフリーズから開放されたスバル達が
「こ、怖かった……」
「殺されるかと思いました……」
その場でへたり込んで呟くスバルとエリオに騒動を見ていたペガサスが
「余りに愚かしすぎて黙ってられなかったのだろう。リーエにとって機動六課は特別な場所だからな。ま、俺には関係ないがな」
ペガサスは詰まらなそうに鼻を鳴らし六課の屋上に続く階段のほうに歩き出した
「そう見たいだね。リーエはその為に旅を続けているようなものだしね。おいでイシュリ。ラビリルを抱っこさせてあげるよ」
こくこくと何度も頷いたイシュリは差し出されたラビリルを抱きかかえてアルハリムの後ろをついて歩き出した。
「あれ?ヴィルヘリヤは?」
さっきまでいたはずのヴィルヘリヤがいない事に首を傾げるアルハリムだったが、イシュリもエリオもキャろも居る。大して気にするまでもないかと呟きイシュリとエリオたちを連れてゆっくりと移動を始めた
「ふーん。竜魔将の甲冑……やっぱあんただったのね」
リーエが調べていた甲冑の前に座り込んでいるヴィルヘリヤは
「あんたさ?いつ死んだのよ?私より後よね?」
馴染みに話しかけるような親しげな口調のヴィルヘリヤは陥没している兜を触り
「出来るならさ、力を貸してやって欲しいのよね。まだ生きたいって思ってるならさ」
ヴィルヘリヤはリーエ達の見たことの無い顔で笑う。それはネクロとして生きていたときの妖艶でそれでいて邪悪な微笑み
「待ってるわよ。竜魔将ヴォルガンド」
ヴィルヘリヤが部屋を出て数分後。甲冑が1人出にガシャリッ!と音を立てたのだった
ヘリの反対側に座り刀を抱えているアシラ。こうしてみると髪の色こそ違うけど本当にアリサにそっくりだな
「なに?あたしが気になる?」
俺の視線に気付いたアシラにまぁなっと返事を返すとアシラは
「まぁ当然といえば当然よね。あたしはアリサにそっくりだしね」
「そうだ。そこが気になっているアシラ、お前はアリサにそっくりすぎる。どういうことだ?」
アインスの問い掛けにアシラは肩を竦めて
「あたし達の世界もここと同じだったわ。機動六課があって皆が居た。だけどね……ある1体のネクロの策略で機動六課・管理局・聖王教会その全て同時に戦争を起こした」
「なっ!?」
クラナガンの秩序を護る全ての組織が同時に争いを!?
「どうして!?」
「さぁ?そこまで教える気はないわよ。でもね、仲間として生きてきた皆が敵味方に別れて殺しあった。もちろん……フェイトやシグナムも一緒だったわ」
仲間同士の殺し合い……今の状況でとてもそんなことになるなんてとてもじゃないけど想像できない
「皆。皆死んだ……あたしは運よくっと言っても左腕を失って人間じゃなくなって生き延びてさ……だからもう名乗れないじゃない?アリサってさ」
そう笑うアシラ。一瞬なにを言われたか理解できなかったが……
「アリサ……なのか?」
アインスが呆然とした顔で尋ねる。多分俺も同じ顔をしていると思う
「そ、魔導師適正が会ってなのは達とミッドチルダに移住してきたアリサだけどね」
道理でそっくりなはずだ……あの髪の色は魔法生物になったときに色が変わったのだろう
「そう言うわけよ。ネクロは人の心の隙間を利用して狡猾に争いを戦乱を巻き起こす。ここはあたしの世界じゃないけどあんな荒廃した世界はもう見たくない、だから協力する。それだけよ」
どこか遠くを見つめながら言うアシラ。もしかするとアシラもまた機動六課に来たことで昔の事を思い出したのかもしれない
「ではあのペガサスと言うのは?」
「彼もあたしと同じと言うか……あたしに剣術を教えてくれた人ね。まぁあいつの事はどうでも良いでしょ?」
そう笑ったアシラは刀を抜き放ち。BJを展開し
「来るわよ。身構えなさい」
まだネクロとがジェットの居るはずのポイントじゃないはずと言おうとしたら。ヘリの床に黒い染みが広がりそこから
「ギイイィッ!!!!」
骨で出来たネクロが姿を見せる。慌ててBJを展開する前にアシラが
「はっ!!!」
力強い踏み込みでネクロを両断し蒼い炎で焼き尽くす。その間もどんどんネクロは姿を見せようとしている
「どうなってるんだ!?」
「のんびりとヘリで飛んでたら座標の特定くらいされるわよ。同様してる暇があったら戦う準備をしなさい……打ち落とされるわよ」
ヘリの窓から外を見る。無数のガジェットと飛行型のネクロがいつの間にかヘリを取り囲んでいた
「嘘だろ!?」
「馬鹿ね。これくらいネクロの攻撃にしたら可愛いほうよ、アインスだっけ?広域殲滅できるならよろしく、とりあえずあたしも出るし」
ネクロの数に俺とアインスが呆然としている間にアシラはヘリのハッチを切り開けて
「じゃ先に行くから」
空中に作り出した魔力の道の上を走ってネクロとガジェットに向かって行った
「アインス。俺達も行くぞ」
「はい」
見ている場合じゃない。早くネクロを倒さないとヘリが撃墜される。俺とアインスもヘリから飛び出しネクロとの戦闘を開始した
「はー……なんだかなあ」
六課の屋上で大きく溜息を吐く。リーエとなのはさんの話を聞いて、色々と考えたくなった。
なのはさんが基礎訓練ばかりをさせていたのは、かつての自分のおごりで和人さんに大怪我をさせてしまったから。聞いた限りだと腹部裂傷、右腕複雑骨折、右肩をブレードで貫かれ、更になのはさんを庇ったときに胸部をブレードで貫かれ死にかけたらしい。もう少しずれていたら心臓に当たっていたかもしれないとシャマル先生は言っていた。オレガノの能力とシャマル先生のおかげで治ったが、全身にはその傷痕が残っているそうだ。左目付近の傷はそういったことらしい。
「確かにそんなの見てたら無茶したら怒るわよね」
自分の無茶のせいで和人さんが傷ついた。しかもなのはさんは和人さんが好きだったはずだ、余計に哀しく思っただろうしトラウマにもなるだろう
「リーエの話も重かったわね」
記憶が無く怯えながら過ごした日々。そんな自分を受け入れてくれた機動六課と言う場所。自分を娘のように可愛がってくれた人のこと……それに
「リーエの世界だと私が空戦魔導師でAAランクなんてね」
なのはさんの話の後でリーエが教えてくれた。別の世界の私の事を……空戦適性が後天的に見つかり、空陸両用の魔導師として若手の魔導師のリーダーとして活躍していると
「別の世界の私がそんなに活躍しているなんてね」
リーエノ持っていたDVDには少し成長した私とスバルの姿が録画されていた。18歳くらいだろうか?コンビとして更に磨きが掛かり、ヴィータさんやシグナムさんと2対1ながら互角に戦えるだけの力をつけていた。
「同じ私なんだよね」
平行世界。歩んだ時間、胸に抱いた思いに違いはあれどあれは同じ私なのだ。ならば私がそこに辿り着けない道理は無い。遠くに伸びる星に手を伸ばし
「私ももっと強くなれるかもしれない」
焦りがミスを呼ぶのなら私は焦らない。今はまだ高く跳ぶ事は出来ないのかもしれない、でもいつかは高く遠くへ飛べる……
「まずはなのはさんに謝らないとね」
私が間違っていた。訓練の意味も考えず焦り続けて空回りをしていた……まずは謝ろう。そしてもう1度訓練を見てもらおう
いつかあの人達と肩を並べれるときを待ちながら……回り道に思えたって良い、それがもしかすると最大の近道なのかもしれないのだから
屋上でぼんやりと夜空を見上げながら
(どこの世界でも似たような物か……)
どこの世界でもなのはとティアナはぶつかるんだな、そんなたわいもないことを思い苦笑する。俺がまだ人間で魔導師だった時、俺は地上本部勤務で教導官だったな……どうもクラナガンの地は俺には良くない。どうしても昔を思い出してしまう
「……ペガサスさんも見にきたのですか?」
「リーエか。俺もとは?」
屋上に上がってきたリーエにそう尋ねると、リーエは
「……懐かしい夜景です。龍也様やリヒトさん達と花火とかをここでしました」
リーエにとってはここも思い出の場所と言うことか……それならば1人の方が良いだろうと思い。引き返そうとすると
「……ペガサスさんはなのはさんを良く見ていますね。何か関係があるのですか?」
星空を見ながら尋ねてくるリーエ。俺の顔を見ないのは聞いていい物かどうなのか悩んだからか
「俺は確かにクラナガンの生まれではない、そして夜景を見て懐かしいとは思わない。俺は地上本部勤務の教導官だったからな」
今までは曖昧にはぐらかしてきたが、今なら少しは話しても良いと思える。全部を話す気は勿論無いがな
「……そうなんですか。では地上本部の方が懐かしいですか?」
「それも微妙だな」
地上本部が1番最初にネクロに落とされた施設だった。楽しい思い出や仲間と過ごした記憶もあるが、それ以上にその凄惨な破壊の後がどうしても頭から離れない……だから懐かしいとは思えない
「似ていても少しずつ違う。それはリーエト同じだ、俺もそう感じている」
六課で俺とよく酒を飲んだ奴。本部の近くにあったレストラン。街の作り……どれをとっても少しずつ違う
(レジアスも少し丸いしな)
俺の知るレジアスはある程度は六課に理解を持っていたが、そこまで信用はしてなかった。だから俺を六課へ警戒と監視のために派遣した。こっちのレジアスは全体的に理解があるようだがな
「……そうですよね。似ていても違う世界ですからね」
寂しそうに呟くリーエ。確かにリーエは長い時を生きて孤独な旅を続けてきた、1人だから誰に相談するもなく。進んでこれた……だが今は俺やアシラがいる。相談する相手も叱ってくれる相手も出来た。そう言う面ではリーエは1人で旅をしてきた時よりも弱くなっている、だがそれでいい
(独りよがりの強さは必要ない。誰かを頼ることを思い出せ)
独りよがりで周りが見えない強さなど、強さとは呼べない。俺がそうだったから言える、時に弱い所を見せても良いじゃないか
「……なのはさんとは同じ教導官と言うことで仲が良かったということですか?」
「そこは想像に任せよう。今は……な。じゃあなリーエ」
サービスはここまでだ。まだ俺と俺の世界のなのはの事は話したくは無い。俺自身気持ちの整理がまだ出来てない、復讐を終えても俺の胸に残るのは後悔だけか……
「……はい。ではまた明日」
そう声を掛けてくるリーエに後ろ手を振りながら踊り場に戻ると
「ペガサス」
「アシラか。丁度良い、リーエと話をしてやってくれ」
今のリーエは里心が出て、歳相応の弱さを見せている。まだヴァールがいる以上、余り落ち込まれても困る
「了解。じゃ、後はあたしに任せて。ペガサスも少しは気分転換しなさいよ?」
流石は幼馴染か、俺が悩んでいることに気付いている。俺は苦笑しながら
「余計なお世話だ。俺よりもリーエを気にしてやれ」
俺は剣士だ。人を励ますなんて真似は出来ない、そう言うのはアシラやアルハリムの仕事だ。俺はそんな事を考えながら階段を降りふと見上げた月を見て
「どこの世界でも月は同じか」
どこの世界でも月の形と色は同じだなと呟き自室へと戻って行ったのだった。俺の過去はリーエに話にはまだ早すぎる。それに今のリーエは精神的にまだ脆い。全てを話すのはまだ先だな……俺はそう呟き、フートから貰った残り少ないワインを煽ったのだった……
第44話に続く
次回は最初はラビリルとかスザクのマスコットが頑張ります。その後はヴァーるとかの進軍をメインにやっていこうと思います
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします