第48話
世界とは数多の姿を持つ……
だがその世界にはある程度の法則がある……
誰が……
どこで……
世界には決められたルールがあり。それに基づき世界は構成されている……
ある魔法使いの世界では21の宝石から始まり。そこから数多の出会いが始まる世界
またある世界では異世界に旅立つ事になった少年達がいた
世界には一定の法則があり、そしてそれは崩れることが無い
それでも、自分の、仲間の、恋人の運命に抗おうとする者もいる
そして、稀に。そう極稀にだが運命に逆らうことでその法則から外れ歴史が狂う世界がある。
この度の物語は、そこから紡がれる。虚無なるものの願いの物語である
「はっ!はっ!はっ!」
私は息が切れ、目の前がちかちかするのにも関わらず走り続けた、立ち止まってはいけないもし立ち止まれば次の瞬間には自身が死んでいるというのが判っていたから。背後から近づいてくる荒い呼吸とずりずりと何かを引きずる音に恐怖しながら必死で走る
「こ、ここまでくれば」
街外れの桜の木の下まで逃げてくる。こんなときほど自分が1人だという事を自覚した事は無い。魔法使いでありながら、魔法に抗い使うことを拒み、記憶のない私には助けてくれる人や相談に乗ってくれるような友人は居ない。桜の木に背中を預けゆっくりとへたり込んでいると
「よオ?逃げルのにはマンゾクしたかア?」
ぞくり……
背筋が凍るのを感じた。そして顔を上げるとそこには
「てメェはまりょくがアルウ。オレのキズを治すのに相応しいだけの魔力アアアア!」
右腕が異様な方向に捻じ曲がり、顔の右半分がつぶれ、全身からどす黒い血を流した。蜥蜴のような印象を受ける異形がもう目の前にいた
「あ……ああ」
「イタダキだああ?」
そして逃げなければと思った瞬間。私は異形の左腕に刺し貫かれていた、異形との距離は十分あったはずなのに……
「お前みたいに、魔力をツカオウとしねえ馬鹿がこれだけ上等な魔力を持っているなんて勿体ねえ」
さっきまで片言で喋っていた異形の口調が変わっている。それに右腕も顔もいつの間にか完全に直っていた
「俺の身体を治してくれた礼だ。俺は眷属を作るなんてことはしねえんだが特別だ。てめえも俺の仲間にしてやるよ」
ドクン!ドクン!!
(あぐ……)
心臓が暴れだす嫌な音がする。それと同時に異形は私から腕を引き抜き
「運が良ければネクロに転生するだろうよ。あばよ、小娘。今度はてめえの力をちゃんと生かせるように暮らすんだな」
そう笑って楽しげに爪を鳴らし歩き去っていく異形の背中が歪んで見える
(い、いたい……)
声にならない悲鳴を上げてのた打ち回る。まるで身体がバラバラになるような激痛、そして自分が消えていくそんな嫌な感じがする
(い、いやだ……死にたくない)
転生と言っていた。じゃあ私は死んで別の何かに、あの異形のような化け物になるということ
(いやだ……しに……たく……ない……化け物になんか……なりたくない……)
私には何もない、だけどそれでも死にたくない。それだけが私の心を埋め尽くした
誰かが教えてくれた世界の美しさ……
誰かが教えてくれた友の素晴らしさ……
誰かが教えてくれた人のぬくもり……
私は何も覚えていない……
それを思い出すまで死ぬわけにはいかない。私の中にいる誰かに会うまでは生きなくちゃいけない。
(死にたくない……死にたくない……しにたくな……い)
ただそれだけを考えていた私だったが全身に走る激痛と自分が代わっていく異様な感覚。そして私は死にワタシになった
「おや?珍しいこともあるものだね」
村はずれに倒れている少女を見つけた。これはとても珍しい事だ、この村はネクロのいや。半ネクロの集落で偶然転移してくるなんて事は出来ないはず、つまりこの少女は私達と同類のはずだ
「大丈夫かい?」
何度か声を掛けてみると少女はゆっくりと身体を起こし何も移ってない目で私を見つめた
(ネクロ化影響で心を失ったのか……)
ネクロ化は心を深く蝕む。そしてなまじ抵抗力があるとその抵抗力の高さのせいで身体に変調をきたす場合がある。そして彼女はネクロ化せず半ネクロかしたことで心を失ったようだ
「立てるかい?」
「……こく」
頷いてからゆっくりと立ち上がった少女は私を見て
「死にたくない。生きていたい」
何も写してない瞳のまま、それでも強い意思が込められた言葉でそう次げた
「大丈夫ですよ。ここに酷いことをする人は居ませんから、さぁ行きましょう。家族が待っています」
不思議そうに首を傾げる少女の前にしゃがみこみ、自身の目を指差して
「私も貴方も同じ半ネクロです。そしてここに居るのも皆そうです。だからここに居る皆は家族であり、仲間です。勿論貴方もですよ」
「……?」
説明してみましたがやっぱり理解できませんか、仕方ありませんね。ですが大丈夫です、この村には彼女と同じように心神喪失状態で来た仲間も居ます。穏やかなこの世界に居ればきっと彼女も心を取り戻すはず
「名前は覚えていますか?」
「……リッカ」
ぼそりと呟いたリッカに手を伸ばして
「ようこそ、私たちの世界へ」
不思議そうな顔をしたままだが私の手を握り返すリッカを連れて私は村へと帰った。かれこれ50年ぶりくらいの新しい同胞が来た。それは100人ばかりの村にあっと言う間に伝わり歳が近いであろう(外見)半ネクロが4人ほど選ばれリッカと共に暮らすようになった
~1年後~
「こんにちわなのよ。シュー」
「はい。こんにちわ、リッカ」
1年この村で暮らし、リッカは僅かながらに感情を取り戻してきていた。まだぎこちないが笑うことも出来るようになった。変化の少ないこの村でリッカの変化はとても嬉しい者だった
「今日はどうするのですか?」
「みーとメーヤが木の実を取りに行くって言うからついていくのよ」
近くの山には魔力を蓄えた木の実が自生している。それをとりに行くというリッカに気をつけてと声を掛けて
(リーエは今頃どこに居るのでしょうね?守護者には会えたのでしょうか?)
200年ほど前に旅に出たネクロの少女の事を思い出しながら。村の開拓をしているとみーとメーヤが
「シュー様!リッカが!リッカが!!!」
泣きそうな声で駆け寄ってるくるみーを抱きとめ
「何かあったのですか!?」
「はい。シリウス様。山の中ほどにゲートが開きリッカはそこに吸い込まれました。私が後を追おうとしたのですが」
気まずそうな顔をしているメーヤに
「ゲートは閉じてしまったと?」
「……はい。ゲートはリッカを吸い込むと同時に消失しました」
ゲートが開いているのなら後を追いかけることも可能だが、閉じてしまったとなると後を追いかけるのは難しい
「それとゲートの近くにこれが」
「これは……」
メーヤに差し出されたのは黒い翼。しかもネクロの魔力に満ちている普通だったら警戒するところだが
「どうやら大丈夫かもしれませんね」
「どういうことですか?」
不思議そうに首を傾げるメーヤから翼を受け取り
「これはリーエの羽です。きっと何かの運命がリッカを待っているのでしょう」
半ネクロとして転生した。きっとそれには何の運命が関係しているのだろう
「だから祈りましょう。私達の一番下の家族の無事を」
きっとリッカとリーエは同じ世界で出会う。そんな確信が私の中には会った
(神よ。どうかリッカをお守りください)
半ネクロを加護してくれる神が居るとは思えない。だけどそう祈らずには居られなかった
そしてシリウスの予想とおり。リッカが跳ばされた世界でリッカとリーエは出会うことなるのだった
第49話に続く
今回はプロローグと言うことで短めです。そして49話目見てネクロの集落登場。近い内にまた出そうと思うのでネクロの集落がどんな感じなのかを楽しみにしてもらえると嬉しいです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします