宵闇の使者【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は戦闘回ですね、キメイラのプロトタイプとバアル・ゼブルの同時攻撃です。少し激しい戦闘になるかなって思っています。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第52話

 

 

第52話

 

「「「「グギャアアアアアッ!!!!」」」」

 

俺達を見据えて雄叫びを上げる継ぎ接ぎだらけの異形を見ながら。ヴィルヘリヤとヴォルガンドに

 

「なんだあれは?」

 

元ネクロの筆頭幹部なら知っているはずと思い尋ねると

 

「ヴェノムって言うネクロ。スカリエッティのクローンネクロが考案・作成したネクロ。キメイラタイプ。いえ……デクスタイプネクロの完成形よ」

 

デクス。あの機械とかの骨格を持つネクロだったよな……だがそれと比べると随分と大型のようだが……

 

「完成系ね。デクスって言うのはもっと小さくて汎用性がなかった?」

 

リーエとの旅で遭遇したデクスは。虎と同じ程度の大きさでキャノン砲やブレードを搭載していた。だが目の前に居る4体のデクスは4メートル近い巨体と4本の腕、そして龍を思わせる頭部をしている

 

「デクスとしてはこいつらが正しい……だが「グオオオオオ!!!」理性がなく、暴れるだけだから運用しやすいように制御されたのが、小型デクスなんだ!」

 

突然殴りつけてきた腕をゴーゴンで弾きながら、叫ぶヴォルガンドは

 

「1人1体だな。生命力はかなり高い。油断するなよ!」

 

突撃槍ではなく、右腰の西洋剣を抜き放ち。キメイラの腕を斬り飛ばすヴォルガンド。俺もクラウ・ソラスを構え

 

「ただの化け物に遅れは取らん!」

 

腕を1本、地面の下に打ち込み背後から奇襲を仕掛けてきた。右腕を斬り飛ばす

 

「ギシャアアアア!」

 

俺を敵と認識したのか。突っ込んでくるキメイラ。ヴィルヘリヤとアシラも自分目掛けて突進してくる、キメイラと対峙している。俺はクラウ・ソラスを構えて

 

(今の状態でどこまでやれるか判らんが……泣き言は言ってられんな)

 

誰にも言ってないが、俺はネクロの時よりも弱体化している。手の中のクラウ・ソラスを見て苦笑する、以前はあんなにも手に馴染んだというのに……今はどうしても違和感を感じる

 

「ルル……ウがアアアアッ!!!」

 

残った3本の腕を出鱈目に振り回して、俺を追いかけてくるキメイラ。俺が切り飛ばした右腕はゆっくりとだが再生しているのが見える。時間はそう掛けられないか……俺はそんな事を考えながらキメイラの腕を回避し、その間合いの中にと飛び込んだのだった

 

 

 

 

「どうした!どうした!逃げるので手一杯かぁ!!!」

 

両手にショットガンを持ち、私とアルハリムさんを追い回してくる。バアル・ゼブル、口調の割には射撃は正確無比で実に戦いにくい

 

「近づけないな。リーエ遠距離技は無いのか?」

 

「無い事もないが……打ち落とされるな」

 

試してはいるのだが……バアル・ゼブルがその全てを迎撃している。その癖白兵戦も得意なので下手に近づくわけにも行かない

 

「腕は回復したか?」

 

「もう少しだよ、あんな攻撃をしてくるとは思わなかったよ」

 

リッカさん達をシャウトの中に隠れさせると同時に斬りかかった。アルハリムさんだったが、その腕を掴まれ膝蹴りで腕をへし折られ。投げ飛ばされてしまった。明後日の方向を向いていた腕は、少しずつ正常な形に戻ってきてはいるが、まだ戦闘は難しいだろう

 

(戦闘凶と聞かされていたわりには冷静ですね)

 

最初はシャウトの影に銃弾を乱射していたが、効果がないと判ると私とアルハリムさんを狙ってきた。私かアルハリムさんの能力だと判断したのだろう。白兵戦と銃撃戦。両方に高い能力を持つバアル・ゼブルは流石はLV4と言った所だろう。だがこうして射撃をしてくるのならばアルハリムさんが回復するまで時間を稼げる。そう思っている矢先に

 

「あー止めだ!止め!こんなのは俺らしくねえ!」

 

手にしてたショットガンを腰のホルスターに戻して。変わった構えを取ったバアル・ゼブル。右足を前に突き出した前傾姿勢、右手は顔の横で掌がこっちに見えている。左手は突き出すようにして私達に向けている

 

(……中国拳法?)

 

1回だけ見たことがあった。龍也様が使っていた拳法に似ているような気がする

 

「いくぜえ!」

 

地面が爆発したと思った瞬間。バアル・ゼブルが私の目の前に居た……速い!?

 

「おらあっ!」

 

着地の前に右足を振り上げ、私の顎を蹴り上げようとしてくる。それを横っ飛びで回避するが

 

「おおおっ!!」

 

「くっ!軌道が読めない!?」

 

左手を振り上げ。その勢いで右の手刀を突き出してくる。

 

「凍てつけ!アイスランス!」

 

アルハリムさんが指を鳴らす同時に、7本の氷の槍がバアル・ゼブルの背中に殺到するが

 

「はっ!しゃらくせえ!」

 

私の方を向いたまま、後ろ回し蹴りでその全てを迎撃する

 

(制空圏!?)

 

自分の間合いに入ってきた。飛び道具や攻撃に無意識に身体が反応する技だ

 

「ヴィルヘリヤやヴォルガンドに俺の事を聞いてたかも知れねえけどよ」

 

ダンっと力強く踏み込んだバアル・ゼブルは、蛇の様な動きで私の間合いの中に滑り込んできて

 

「ぶっとびやがれッ!!!」

 

双掌底を叩き込んできた

 

「げぼっ」

 

肺から強制的に空気が押し出され。くぐもった悲鳴が出る、そこから吹っ飛ばされ2・3度地面を跳ねる

 

(ぐうう……これは中を攻撃する技ですか)

 

身体を壊すのではなく内部。臓器を狙った攻撃……半ネクロは身体が人間に近いから致命傷になりえるだけの一撃だ

 

「まだ。息があるか随分と頑丈だな。だがこれでトドメ……」

 

私に近づこうとしたバアル・ゼブルだが、その瞬間アルハリムさんの声が辺りに満ちる

 

『地を破壊せよ』

 

『砕けえぬ堅さ』

 

『滅砕の釶』『砕けぬもの無し』

 

『砕け、破壊し、潰し、崩壊させよ』

 

『デストロイド・ヒドムラッ!!!』

 

巨大な岩斧が7本作り出され、バアル・ゼブルに襲い掛かる。その斧を弾こうとするが逆に押し込まれ、地面の中にめり込んでいくバアル・ゼブル

 

「ふー遅くなってすまないね。リーエ少し詠唱に手間取った」

 

「いや。大丈夫だ……」

 

バアル・ゼブルは周りを見ることを「制空圏」に任せていた。だから遠距離の詠唱に気付けなかったのだ

 

「だけどこれで「俺を舐めるんじゃねええ!半ネクロ共がアアアアッ!!!!」

 

ヒドムラで地面に押し込まれたバアル・ゼブルが咆哮をあげて、その斧を消し飛ばす

 

「消し飛べぇ!!」

 

両手のショットガンを私達に向ける。咄嗟にプロテクションを張ったが私とアルハリムさんは黒い光りに飲み込まれ、吹き飛ばされた……

 

 

 

 

 

「う……ううう」

 

黒い光りはあらゆる物からの影響を受けないシャウトでさえ消し飛ばした。シャウトは影があって初めて成立する。黒い光りで影が消滅しシャウトの効力が弱まってしまったのだ。影の中から弾き出されたリッカは頭を振りながら身体を起こす

 

「あ……ここは」

 

さっき私が居た崩れた廃墟の庭の中に居た。近くにペガサスたちが居るかもしれないと思い辺りを見るが、ペガサス達の姿は無い。戦っている間に居なくなってしまったようだ

 

「そ、そうだ!イシュリ達は!」

 

一緒に影の中に隠れていた、イシュリとラビリルとスザクの姿を探す。私がここまで弾き飛ばされていたのだから、きっとイシュリ達もいると思って立ち上がると

 

「リッカ!こっちだ!」

 

鋭い声に振り返ると、廃墟の裏からリーエが手招きしているのが見える。慌てて近寄ると

 

「だ、大丈夫なの!?」

 

リーエとアルハリムは怪我をしているようで。騎士甲冑が赤く染まっていた

 

「油断したね。あんな大威力の砲撃をしてくるとは思わなかったよ」

 

「いや、どちらかと言うとあれはあいつの能力……だと思う。受けたダメージを反射するのか、怒りを攻撃力に変えるのかは判らないが……一瞬とんでもなく魔力が上昇したからな」

 

そんな話をしている間も2人の怪我は治り始めているが、まだ動けるような感じではない

 

「イシュリ達は?」

 

姿の見えないイシュリの事を訪ねると、アリハリムは地面を指差して

 

「もう1度シャウトの中に隠れてもらった。今の状態では護りながら戦うなんてことは出来ない。出来るならペガサス達が合流して来てくれる事を願うだけだよ」

 

ネクロの能力を見謝るとこういうことになると呟いている。ネクロは固体によって能力がかなり違うと言うのは知っていたけど、ここまでダメージを受けるなんて

 

「こっちだよなあ。どこに行った出来損ない共!」

 

その声にビクンと肩を竦める。廃墟の壁を蹴り破りバアル・ゼブルが姿を見せる

 

(ちっもう来てしまったか。リッカ息を殺してこっちへ)

 

手招きするリーエの所に近づこうとした瞬間。私は見てしまった

 

「んだ?この木は邪魔クセぇな!」

 

バアル・ゼブルがショットガンを木に向けているところを……それを見た私は、リーエとアルハリムの制止の声を無視してバアル・ゼブルのほうに……ううん。桜の木のほうに走り出した。桜の木がやめろと言っている気さえした。それでも、あの木だけは駄目……あの木にはたくさんの想いがあるはずだから!何とか回り込むことが出来たが

 

「あっ」

 

ダンっ!!

 

乾いた銃声が聞こえたと思った瞬間。強烈な痛みが腹部に走る……撃たれたのね……どこか他人事のように思えた。自分のことなのにおかしいしなあっと思いながら倒れこむ、リッカとアルハリムがバアル・ゼブルに飛び掛るのが見える。

 

(あ、あれ?これは……)

 

薄れていく意識の中私はある物を見つけた。桜の木の後ろに縛り付けられている何か、バアル・ゼブルの攻撃で岩がはじけとび姿を現していたのは

 

(相合傘……?)

 

『リッカさん、何してるんですか?って、せっかくの成功した枯れない桜の木に何してるんですか!?』

 

『いいじゃない、枯れない桜なんだから。少々傷が入ったって枯れないわ。それに、これは私とあなたが結ばれた象徴みたいなものよ?これぐらい罰は当たらないわ。それよりもおなかがすいたわ。ご飯にしましょ?』

 

『って、もう。これどうするんだか。ま、いいか』

 

(これは、記憶?誰の?)

 

そんなの分かっている。これは私の字。そして、

 

(私が刻んだんだ……私と最愛の人の名前を。)

 

リッカ 清隆と書かれている相合傘。子供じみていると思っても刻みたいと思ったんだ。そう、あの頃の幸せが永遠に続けばいいと思って。

 

『リッカさん、行きましょ』

 

薄れていくはずだった意識が、失われていた空白の時間がどんどんしっかりしてくる。なぜだろう、うれしいはずの時間に悲しい記憶も流れ込んでくる。

 

『死なせませんよ!あなたは絶対に死なせない!……この命に代えても、過去も現在《いま》の運命すらも俺が必ず変えてみせる!』

 

誰かのの悲痛な叫び声が聞こえてくる。今と同じように、桜の木に寄りかかっている私を護ってくれている誰かの背中

 

(清……隆)

 

そうだ。私を護ってくれていたのは清隆だ。ダークネスを名乗る人物に襲われて死に掛けている私を護ってくれたのは……清隆だ

 

『これで……良い。リッカさんは生かすことができる。』

 

自身もダークネスとの戦いで瀕死になりながらも私を治療してくれた。その時私は意識はしっかりしていたが、喋ることも目を開けることも出来なかった。そして自分の無力さを思い知った。意識があれば自分の怪我を治すだけではなく、清隆も傷も癒すことが出来たのに

 

(そうか……私は魔法が嫌だったわけじゃないんだ。)

 

本当に大事な人を護ることが出来なかった自分が嫌だったんだ。本当は、私が守ってあげなくちゃいけない、弱いあの人を。大切な人を守るために、自分を傷つけてしまう清隆を。だから魔法を使うことを拒んでいたんだ……人を笑顔にする魔法で私が、清隆が死んでしまったから。だけどそんな事を言ってる場合じゃない。今私が魔法を使えばリーエもアルハリムも助けることが出来る。あの時の清隆のように。

 

『名に弱気になっているんですか?大丈夫ですよ。リッカさんならできます。なんたって、あなたは乗り越えたじゃないですか、過去の自分を。自分の力だけで思い出したじゃないですか、自分の記憶すらも』

 

幻聴だろうか、わからない。でも、その言葉が私の背中を押してくれたような気がした。

 

目の前の大切な仲間を守るんだ。もう、立ち止まるのは、悲しみから目を背けるのは……後悔するのは終わりだ、今からは前を見る。

 

「さてと、遊びは終わりだ、殺して「馬鹿ね。死ぬのはあなたよ、バアル・ゼブル」

 

リーエとアルハリムの2人に銃口を向ける。バアル・ゼブルの背中に指を向けて指を鳴らす

 

「ごがあ!?」

 

それと同時に魔法が発動し、風の刃がバアル・ゼブルを弾き飛ばす。

 

「てめえ……」

 

かなり魔力を練りこんだ、風の弾丸で吹っ飛ばされたのにも関わらず、すぐに体勢を立て直して私を睨む。バアル・ゼブルに

 

「なに?もしかして腹が立った?女に傷つけられて。あっそ、でも私も凄く苛立ってるのよ!!」

 

清隆のことを忘れていた。その事が酷く私を苛立たせていた、誰よりも大切だった人達の事を忘れていた。自分で自分が許せなかった。そう叫んで連続で指を鳴らしてバアル・ゼブルに風の弾丸を飛ばし続ける

 

「リッカ。お前魔法が……いや記憶を取り戻したのか?」

 

アルハリムが身体を起こしてそう尋ねてくる。ダメージは受けているが、ネクロ特有の回復力のおかげで既に回復しているのが見え

る。私は目を閉じて、忘れていた皆の事を思い出しながら

 

「ええ。思い出せたわ……何も出来なくて大切な人を失ってしまった最悪の記憶をね。だけど思い出せて嬉しかったわ、その記憶の中にも大切な、忘れてはいけない笑顔もあったから。……後悔するのはもう終わり私は……」

 

目の前に幻影か幻か。2人の少年少女が手を伸ばす。私はその2人の手を握る……やっぱりここは私の世界だったんだ

 

『行こうか、リッカ』

 

『行きましょうか、リッカさん』

 

私の親友が、そして最愛の人が私にそう声を掛けて来る。例え幻影だとしても構わない、もう2度と会う事が出来ないと思っていた2人にこうして会えたのだから……私は一歩前に足を延ばす。そして、2人の手を離す。

 

過去を、そして今を守るために。いつの間にか私の手には大きな杖が握られていた。そう、過去に私の親友……ジル・ハサウェイから託され、清隆と私を紡いだ杖だ……その杖を握り締めると同時に治癒の魔法を発動させて、アルハリムとリーエの傷を完全に回復させながら、心の中で清隆とジルに声を掛ける

 

(行こう。清隆、ジル)

 

忘れていたくせに都合が良いと怒るかもしれないけど……ジル、清隆……私を見守っていて……悲しいけど、いまも泣きたいほど悲しいけれど……前を見て進むから。

 

(ありがとう……)

 

後ろから私の背中を押してくれる気配がした。もう振り返ってもジルも清隆の姿を見れないけど……今の感覚は絶対に夢じゃない。

私はジルから託された杖を構えてバアル・ゼブルを睨みつけたのだった……

 

 

 

「てめえらは外れくじだと思ったが……訂正だ。俺が殺すに相応しいぜ」

 

風の弾丸が止んだ隙に片手で身体を跳ね上げ、右手のショットガンのトリガーを引く

 

「シッ!!!」

 

捉えたと思った魔力弾は赤い髪のネクロが切り払い

 

「テンペスタ!」

 

黒髪のネクロが俺目掛けて扇を振るうと、無数の鎌鼬が俺に殺到する。それを回し蹴りで迎撃しながら

 

「まずは出来損ないと侮っていた事を詫びる。てめえらは俺の爪で引き裂くに相応しい敵だ」

 

ヴィルヘリヤやヴォルガンドを倒す事を目的にしていたが……こいつらも十分俺の敵に相応しい。背中に力を込めて翼を作り出し、両手のショットガンを向ける。遊びは終わりだ、ここからは全開勝負だ

 

「3対1で卑怯とか言わないことね」

 

「フォワードは私とアルハリムが行く。後方支援を任せても言いか?」

 

「OK。任せておいて、私は遠距離の方が得意だからね」

 

即席チームと侮ればやられるのはこっちだな。それほどまでの威圧感を感じていた。俺は大きく深呼吸し

 

「食い殺してやるぜ!出来損ない共がアアアア!!!」

 

俺はそう叫び鎌と剣を構えているネクロへと飛び掛って行った……俺は勝つ、誰にも負けない!不敗の誇りをこの3人を倒すことで取り戻す!!!

 

 

第53話に続く

 

 




次回はペガサス達の戦闘を前半に持ってきて、後半はリッカ・リーエ・アルハリムの戦いを持ってこようと思います。
その次位で今回のコラボは終わりになるかもしれないですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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