宵闇の使者【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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今回からまたコラボ回になります。今回は「普通の狐様)とのコラボなのですが。私の執筆と普通の狐様の執筆が交互に入っているのでいつもと違う感じの話になって居ります。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第57話

 

 

 

第57話

 

ピンポーン。

 

暖かな昼下がり、インターホンの音がナカジマ家に響く。その音を聞いて私はすぐに席を立った。

 

「私出てくるね」

 

居候をしている男の子にそう声を掛けるとその男の子はうむっと頷いてから

 

「それじゃ、お茶でも用意して待ってるとするか」

 

そう言ってキッチンに向かっていく男の子を横目に、あまりはしたなくないように慌てず、いつものペースで玄関へ向かう。ドアを開けると、そこに立っていたのは予想通り、私の大切なボーイフレンドである、セツナ・コウヅキの姿があった

 

「セツナ、いらっしゃい」

 

「おう。入っていいか」

 

「もちろん。ジオがお茶を用意してくれてるから、中に入ってお話しよっか」

 

セツナが笑みを浮かべる。それを見て私も自然と心が温かくなる、私ディエチ・ナカジマはこんな可愛い、だけどかっこいい男の子に好いてもらえてすごく幸せだとそう思う。まぁ最初はセツナの思いに気づかなくて随分とやきもきさせてしまったんだけどね

 

「とりあえず入って入って」

 

玄関での立ち話もなんなのでそう言って道を開けるとセツナは

 

「お邪魔しまーす」

 

頭を下げてから入ってくる、こういう礼儀正しい所も凄く良い。セツナと奥に入ると、さっきまでソファに寝転がって占拠していたウェンディがいつの間にかテーブルの方の椅子に座っていた。変に気を遣うなあと思い、クスっと笑う。

 

「セツナ、座ろっか」

 

セツナと隣り合ってソファに座る。話をしようとは言ったけど、こうやって隣り合って座っているだけでも嬉しい気持ちになる。ウェンディはそんな私とセツナを見てにやにや笑っている。だけどそんなウェンディの態度も気にならないくらい、嬉しくて幸せな気持ちを感じていると

 

「おい、茶を入れてきたぞ」

 

キッチンの方から、お盆に載せてお茶とかお菓子を持ってきた少年。年齢はセツナと同じくらいで、名前はジオという。少し偉そうな言葉使いをするが大人しくていい子だ

 

「ありがと、ジオ」

 

自分の分と私とセツナの分のソーサラーを置いて、紅茶のポットを机の上に置いて自分の分の紅茶を飲もうとするジオに

 

「そういえば、まだ何も思い出せないのか?」

 

そう尋ねるセツナにジオは、ん?と呟き。飲みかけていた紅茶を机の上に戻し

 

「まだな。もう1年は経ったというのに、なんで思い出せないのだ」

 

なんでだろうな、と首をかしげるジオ。ジオは一年ほど前にお父さんが連れてきた子供で、金髪に両目の瞳孔が縦に割れていて普通の子供ではないと一目で判りお父さんが保護したのだ。最初は戦闘機人の可能性を考えたのだが、検査の結果は普通の子供とわかった。だが記憶喪失で1年近く経つが自分の名前しか思い出せずどうした物かと皆思っている。そんなことを考えているとの足元に、小動物が寄ってくる。

 

「ガウ」

 

両手を広げて頭をこすり付けるようにジオに何かを訴える小動物を見たジオは

 

「おお、カエデ。木の実を食べてしまったのか、ほら新しくやろう」

 

ジオの足元で木の実を受け取った二足歩行のドラゴン……名前はカエデという。短い手足をしていてぬいぐるみのようにとても愛らしい。以前、家族で日本に旅行に行ったとき、偶然見かけて心に残っていた楓の花を見て名づけたらしいんだけど……でも、カエデから楓を連想させる要素ってないと思う。まあ、ジオは気に入ってるんだからいいんだけどね。ちなみにカエデは何処かからジオが拾ってきたのだ。ドラゴンなんてどこにでも居る生き物じゃないのに本当にどこで拾ってきたんだろう

 

「ガウ♪ガウ♪」

 

ジオに渡された木の実を器用に抱えて、ちょこんを座ってはぐはぐっと木の実を齧っているカエデの頭を撫でたジオは

 

「さて、それはそうとセツナよ」

 

あ、なんか嫌な予感がする、セツナもそれを感じ取ったのか若干不機嫌そうな顔をして

 

「なんだ」

 

不機嫌そうなセツナとは対照的にジオは嬉しそうに笑いながら

 

「今日も俺と試合をするために来たんだろう?さあ、表へ出ろ!」

 

……はぁ。また出た、ジオの悪い癖。天然というかすっごく鈍感なんだよね。私達の関係も今一よく判ってないみたいで、セツナをライバル視しては来るたびに挑戦してるし。同年代と言うことで話しやすいというのもあるのかもしれないけど、少しは空気を読んで欲しいとも思う

 

「まあいいけどよ……悪いディエチ、ちょっと待っててもらえるか」

 

セツナは飲みかけていた紅茶を机の上に起き。私にそう言う

 

「大丈夫だよ。場所はいつもの所だよね?」

 

ジオとセツナが組み手をする場所は決まっている「中央第4区公民館のストライクアーツ練習場」だ。あそこなら多少暴れても大丈夫だし近くに公園もあるので良い場所だ

 

「ああ。ジオ、行くぞ」

 

「今日は勝ってやるからな!」

 

ジオは喜んで部屋を出て行く。セツナも頭を掻いて苦笑いをしながら部屋を出て行く、私はそんな2人を見送りながら

 

「……さて、今日は何かあったかな」

 

セツナと、ついでにジオのために差し入れを作ってあげよう。運動するからお腹が空く筈だからと思いキッチンに向かったのだった。カエデはそんな私を見て木の実を齧るのをやめて

 

「がう?」

 

木の実を抱えてとことこついて来て、ぴょンと椅子の上に乗って私の手元を見ている。その視線は僕にもくれる?僕にもくれる?と期待を込めているように見えて

 

「判ってるよ。少し分けてあげるから大人しくしててね?」

 

「ガウー♪」

 

齧りかけの木の実を頭に載せて、跳ねているカエデを見ながら冷蔵庫の中身を見て作る物を考えたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日こそは負けんぞ、セツナ!」

 

「はいはい」

 

中央第4区公民館のストライクアーツ練習場。その一角で、ギャラリーに見守られながら俺とジオは向かい合っていた。

 

「行くぞ!」

 

ジオが一息に詰め寄って来た。そのまま、無造作な、しかし正確なストレートを放つ。

 

「甘い!」

 

いつもながら正直なジオの拳は、見慣れれば正直見切りやすい。ただ、ジオは運動能力が異様に高く、才能だけならインターミドルの上位者にも引けをとらないクラスだろう。問題は性格なんだ、性格。愚直なまでに真っ直ぐでフェイトとかが使えないジオの攻撃は正直見切りやすいのだ

 

「喰らいな!」

 

そのままジオの懐に潜り込んで立て続けに3発殴る。衝撃で軽く吹き飛んだジオは、難なく態勢を立て直して俺を見る

 

(あちゃー最初に攻撃を受けてスイッチが入ったか?)

 

軽く咳き込んだジオは、俺を見て獰猛笑みを浮かべた。

 

「そうだ、そうこなくては面白くない!」

 

相変わらず態度だけはでかいな、こいつ。ジオとにかくタフで、力が強くて、素早い。闘いに重要な基礎を十分以上に兼ね備えたこいつは、むしろ恐ろしい部類かもしれない。

 

(ったく、俺に拳だけで闘えって方が無理があるんだっての)

 

言っても仕方ない愚痴を心の中で呟く。ジオはリンカーコアがなく魔法が使えない、だから必然的に素手での戦闘になるのだが、ジオの戦闘力を考えると少し位魔法を使ってもいいんじゃないだろうか?とかを思ったりする

 

「てめぇこそ、そろそろパターン見切られてるんだから考えたらどうだ!」

 

いつも突撃だけのジオにそう言うと、ジオは自信満々と言う笑みを浮かべて

 

「おう、そうだな!」

 

そう言ってジオはまたも正直に突っ込んでくる。だから何も変わってない……内心呆れながら顔を狙った鋭い拳を難なくかわし、鳩尾近く肘打ちをする……残念ながら急所は外れてしまったが

 

「ぬぐっ」

 

ダメージは殆どないがぴくりと一瞬ジオが硬直する。その隙に素早くしゃがみ、足を払って浮かせ、両手で身体を跳ね上げその勢いを利用して宙に浮いているジオをそのまま2回を蹴り上げた。

 

「がっ!?」

 

浮いたジオをさらに、2回連続で回し蹴りで斜め上に吹き飛ばし、最後に落ちてくるジオを踵で打ち落とした。

 

「ぐふっ!」

 

「背中が着いたな。これで俺の勝ちだ」

 

組み手のルールで背中が着いたら負けとしている。ジオは負けず嫌いなので俺は平気だと無限に襲ってくるのでそのために措置だ。ちなみに最初に組み手をした時は俺は平気だと叫びいつまでも襲ってきていた。殴っても蹴っても直ぐ立ち上がるジオ。その耐久力は本当に化け物と言っても良いほどのタフネスだ

 

「セツナ、貴様もっと手加減というものが……」

 

ジオの言葉を無視し、手を取って立ち上がらせた。やはりいつも通りうけたダメージを微塵も見せないジオに「どうせ頑丈だし、お前今までにもこれ喰らったことあるだろうが」と言いたくなるのをこらえる。多分覚えてないからな。

 

「まあいい、それでは帰るのか」

 

組み手は終わりだ。と言ってから帰るのか?と尋ねてくるジオに

 

「おう。ディエチがそろそろ何か作ってくれただろうし」

 

そう言って公民館の外に出る。しばらく歩いていると、ディエチが家のほうから歩いてきた。

 

「あ、もう終わったんだ」

 

「おう。それは?」

 

「パンケーキ。せっかく作ったし、3人で公園で食べよ?」

 

「ああ、そうだな!」

 

甘いものが好きなジオが喜ぶ。その姿は子供のその物で愛嬌がある物の

 

『……はぁ』

 

俺とディエチは、顔を見合わせて苦笑いを浮かべ、ため息をついた。誰か、こいつの天然と空気の読めなさを何とかしてくれ……。そんなことを思っていたその時。俺達以外誰もいない公園の真ん中に突如魔法陣が出現した。

 

「うおっ! ディエチ、ちょっと待ってろ!」

 

慌てて立ち上がり、ディエチをかばうようにして立つ。眩いまでの光が収まると、そこには数人の男女が立っていた。

 

「……ここは?」

 

キョロキョロと辺りを見回している少女ジオと同じで、瞳孔が縦に割れているように見えた……

 

 

 

遺跡でアークとシンと戦っていた最中に魔力が暴発し、世界を弾き飛ばされた。結果的には逃げることの成功したが、ここはどこだろうか?と思い辺りを見て

 

(またクラナガンですか)

 

最近はクラナガンに来る事が多いですねと心の中で呟く。だけどここも龍也様のいる世界じゃない。少しだけ落胆しながら気配を探る、近くにアークとシンの気配はない……だけどこれは

 

(人の気配!?)

 

状況が変わりすぎていて油断していた、慌てて人の気配をするほうを見て、私は少しだけ驚いた

 

(ディエチさん……)

 

私の機動六課で色々と私の面倒を見てくれていたディエチさんがそこにいた。すこし成長しているように見えるけど私の知るディエチさんだ。そしてそんなディエチさんを守るように立っている少年を見ていると

 

(どうする気絶させるか?)

 

小声で尋ねてくるペガサスさん。確かに転移する瞬間を見られてしまった以上それが得策なのかもしれない。この世界は少し私の知る世界とは違うクラナガンのようだし、私達の魔力反応で警戒されると動きにくくなるし。だけど

 

(それは少し難しいと思うわよ?)

 

アシラさんがそう呟く。私達はさっきまでの戦闘で体力も魔力も削られている。こうして身構えている所を見るとそこそこ戦えるはずだ。下手に戦っているところを見られると動きにくくなるし、アーク達にも発見されやすくなってしまう。それに何よりも

 

(気絶させるというのは少々乱暴だと思います)

 

こうして私達が来てしまったから警戒しているのだ、見た所ディエチさんを護る為に警戒しているだけのようですし、ここは穏便に済ませたい

 

(ヴィルヘリヤさん睡眠魔法を)

 

(オッケー、悪夢のプレゼントは?)

 

(駄目です)

 

私と一緒に旅をしてくれているペガサスさん、アシラさん、ヴォルガンドさんは戦闘タイプだし、私はある程度の補助は出来るけど催眠とかはさっぱりだ、だからそう言うスキルを習得しているヴィルヘリヤさんにお願いした所で

 

「お前達はなんだ?何故俺と同じ眼をしている?」

 

ディエチさんの前に立っている少年の後ろから顔を出した少年を見て私達は驚いた

 

(半ネクロ!?どうしてここに)

 

ヴィルヘリヤさんに頼んでいた催眠魔法は中断して、顔を出した少年を見る。金髪に割れた瞳孔どこからどう見ても半ネクロなのだが魔力の反応を感じない。じゃあ彼は一体?

 

「どうして答えてくれない?お前達はなんだ?俺を知っているのか?もしそうなら教えてくれ、俺はなんだ?」

 

矢継ぎ早に質問してくる少年になんと答えようか考えていると

 

「待て、ジオ。不用意に近寄らないほうがいい。幾つか質問したいんだが良いか?」

 

ふらふらと近寄ってくる、ジオと言う名の半ネクロを止める少年の言葉に頷く

 

「まずお前達はなんだ?何故ジオと同じ眼をしている」

 

なんと説明すればいいのだろう?半ネクロと説明するべきなのかどうなのか一瞬考えてしまう。だが私が考えている間にヴィルヘリヤさんが

 

「私達は半ネクロって言うの。簡単にいうと魔法生物と人間のハーフって事よ」

 

嘘ではないが本当でもない。だが如何してこのタイミングでと思っているとヴィルヘリヤさんが念話で

 

(半ネクロが危険です。化け物ですなんていえないでしょ?あの子見てみてよ)

 

ジオと言う名前らしい半ネクロは。半ネクロ?聞き覚えがあるようなないような?としきりに首をかしげている、その仕草を見たヴォルガンドさんが

 

(ネクロ化によって記憶を失ったか、リッカと同じようだな)

 

前の世界でであったリッカさんと同じそれは確かに私も思ったが、リッカさんと比べるとジオさんは感情もある。どうもネクロとしての適正が高かったが何らかの事情で記憶を失ったと考えるのが妥当な所だろう。ヴィルヘリヤさんはにこにこ笑いながら

 

(ここは私の任せなさいな。こういうのは得意なんだから)

 

そう笑ってウィンクしたヴィルヘリヤさん、相当自信があるようだからここは任せてみてもいいかもしれない

 

「半ネクロと言う種族が居るということなんだな?それでここにきたのはジオを迎えに来たということなのか?」

 

「うーんそう言う意図はないわね。私達は旅から旅の流れ者。別に迎えに来たとか言うのはないわ。だからそんなに嫌そうな顔をしないでよ」

 

ジオさんはヴィルヘリヤさんをみて嫌そうにしている。ネクロから半ネクロになったのか?それとも人間から半ネクロになったのか?そこは判らないがもしかすると本能的に嫌がっているのかもしれない

 

「貴女達の事情は大体わかったわ。ジオの仲間ってことでいいのよね?」

 

「まぁそうなるよ。私とリーエ、ペガサス、ヴォルガンド、ヴィルヘリヤはね。アシラとイシュリは魔導師だから違うけどね」

 

アルハリムさんの言葉に頷くディエチさん達。少しまだ疑いの色は残しているけど、話を聞いてくれそうな感じだ

 

「ディエチ。セツナ。俺はリーエ達の話を聞きたい、そうすればもしかすると俺が忘れている事を思い出せるかもしれない」

 

助け舟を出してくれたのはジオさんだった。私達を見てから、セツナさんとディエチさんを真っ直ぐに見ている。記憶を取り戻せるかもしれないチャンスを失いたくないと必死に訴えている。それを見ていたディエチさんは少し考える素振りを見せてから

 

「判ったよ。ジオの意思を尊重する。リーエさん?」

 

名前を呼ばれたので頷くとディエチさんは

 

「詳しく話を聞きたいので私の家に来てくれますか?」

 

その言葉に頷くとディエチさんは自身と隣に立つ少年を指差して

 

「私はディエチ。ディエチ・ナカジマ。こっちはセツナです」

 

「セツナ・コウヅキだ。よろしく頼む」

 

「……私はリーエ。この子はスザクです」

 

ローブの中で眠っていたスザクがひょこっと顔を出して眠そうに

 

「キュ~」」

 

そう鳴いて、もそもそとローブの中に戻る。さっきの魔力の暴発で少しダメージを受けてしまっているようだ

 

「ペガサス。ペガサス・ナイトアーク。ペガサスでいい」

 

「アシラ。アシラ・ローウェル。でこの子はイシュリ。ちょっと喋るのが苦手だから身振り手振りだけどいい子だからよろしくね」

 

アシラさんの影でぴこぴこと手を振るイシュリさん

 

「私はアルハリム。アルハリム・アズタミア。この子はパートナーのラビリル」

 

「うにゃーお♪」

 

いつものようにアルハリムさんの頭の上でにゃーと鳴くラビリル

 

「ヴォルガンドだ」

 

「ヴィリヘリヤよぉ。よろしくね♪」

 

一通り自己紹介を終えたところでセツナさんが

 

「こっちだ、ついてきてくれ」

 

バスケットを拾い歩き出す、その背中を追って歩きながら、もしかしてデートの邪魔をしてしまったんじゃと考えながら私達はディエチさんの家へと向かったのだった

 

 

そしてこの出会いがこれからの私達の旅を大きく変える出会いである事を今の私は知らないのだった

 

第58話に続く

 

 




ジオと言う名の半ネクロが登場しましたね。このネクロが後半に向けての重要なキーパーソンになります。勘のいい人なら誰か判るかもしれませんね。次回はディエチの家出の話し合いになります。どんな話になるのか楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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