第58話
歩きさるセツナ達とリーエ達を影から見つめている者が居た
(やれやれ、貴方の能力で助かりました。シン)
(1日で複数能力を使うことになるとはな)
アークとシンだ。リーエ達が転移した場所と同じ場所に2人も現れていたのだが、ここで戦うわけにはいかないとシンの能力で影の中に隠れていたのだ。完全にリーエ達の気配が離れた所で影の中から這い出し
「余り居心地の良い場所ではないですね」
「判っている」
影の中の居心地は最悪だった。なんかごつごつしてたし、圧迫感が凄まじかった。だがそのおかげで発見されなかったと考えると文句を言うのはお門違いだろう
「それでどうする?アーク。ここはネクロの気配が何も無い、自由に動けるが?」
本来の口調で訪ねてくるシン。さっきまでの粗暴な口調は演技だったのだ
「自由に動けるというのは中々良い物ですが、そうも言ってられないでしょう?シン貴方も見たのではないですが?」
位置的にリーエ達は見えなかったが、私とシンにははっきりと見えていた。遺跡の碑文から飛び出た何者かのせいで私達はこの世界へと跳ばされた。そしてその物はネクロなら全員が知っている
「ヴェルガディオス」
「ええ、とは言え、守護者と対峙した物ではなく、量産型の1体のようですけどね」
守護者と対峙したヴェルガディオスは真作。そして私達が見たのは量産型の1体だが、量産型といえどその能力は本物だ。対ネクロとして作り出せれ暴走した生物兵器。それがヴェルガディオスだ
「見つかれば襲ってくるな」
「その通り。とは言え奴は不完全でしたけどね」
量産型のヴェルガディオスに知性など無い、魔力を喰らい、進化成長するだけの化け物だ。私達を見れば餌だと思って襲ってくるだろう。だが奴が動き出すまで大分時間があるはずだ
「私は良く見えませんでしたたが、どんな感じでしたか?」
シンにそう訪ねるとシンは思い出す素振りを見せて
「左腕と右足がなかった。それと頭が欠けていたな」
身体の半分以上がないか、それではそう簡単には復活しては来ないだろう。ならば
「シン。私達と一緒に飛ばされてきた石碑を探しますよ」
「何のために?」
不思議そうに尋ねてくるシンに私はカソックの埃を払いながら
「あの石碑にヴェルガディオスが封じられていました。ならばあの石碑に何かあると考えるべきでしょう」
何か秘密が描かれているのかもしれない。破壊する気はないが、リーエ達が発見する前に発見して調べておきたい
「確かにな。では行くか」
「ええ。行きましょう」
この世界に跳ばされた来たと言う事は何かなにか理由があるはず……その理由が何か調べておきたい。目星はないが、リーエたちが動き出す前に調べたほうがいいだろう。私達は転移してきた公園を後にしたのだった
「アーク。腹が減った」
「……どこか寄ってからにしますか」
ここ最近人間らしい食事なんてしてない。偶にはそういう食事もいいだろう、私とアークは近くにレストランへと足を向けたのだった……
突然公園に現れた集団を連れて、ディエチの家に帰る。あそこは大きい家だから全員入れるしな
「えーととりあえずお茶をどうぞ」
とりあえずお客様と言うことでお茶を出すディエチ。どうもウェンディは遊びに行ったらしく、今家にいるのは俺たちだけだ
「……ありがとうございます。ディエチさん」
ぺこりと頭を下げるリーエに俺は
「とりあえず、なんでリーエはディエチの名前を知ってるんだ?」
俺がそう尋ねるとリーエはまずはこれを見てくださいと机の上に何かを置いた。それを見た俺とディエチは
「え?ドクター?」
「それになのはさん達と誰だ?」
「スバルか。最近会ってないな」
俺達が知っている人達の写真だった。だけど俺達が知っているなのはさん達よりも若い
「……私は平行世界のクラナガンで六課にお世話になっていた者です。ですからディエチさんを知っているのです。六課で色々と教わりましたから」
そう笑うリーエ。嘘は言ってないだろう、この写真は何よりも証拠になる
「判った信じる。じゃあこの世界に来たのは何か理由があるのか?」
食い入るように写真を見ているジオを横目に尋ねると
「理由はないわね。ただ偶然この世界に来ただけよ」
アリサさんに良く似ているアシラと言う女性がそう言う。だけど妙な違和感を感じた、何かを隠しているような気がする。その事を尋ねようとした瞬間
「ガウ」
「みゃー」
「きゅー」
カエデとラビリルと言う猫とスザクと言う鳥が鳴声をあげながら歩いていく。先頭はカエデで続いてラビリル、最後尾はスザクでぴょんぴょんと跳ねている
「ぱちぱちっ♪」
イシュリがそのマスコット達を見て楽しそうに手を叩いている。その余りに穏やかな光景を見て尋ねようという気力がなくなってしまった。俺は小声でディエチに
(俺は本当のことを言ってるとは思えないけど、信用は出来るとおもう)
何か隠しているような雰囲気をしているし、世界を旅をすると言っていた。もしかすると敵とかもいるかもしれない、だけどそれを俺達に話さないのは俺達が襲われないようにする措置かもしれない
(私もかな。なんかお父さんとかに似ている気がするよ)
自分の背負っている者を何も見せない。ゲンヤさんやなのはさん達に似た雰囲気を持っている。だからこれ以上この世界に来た理由を聞いても意味はないと判断して
「じゃあ旅をしている理由はなんなんだ?」
俺がそう尋ねるとリーエは紅茶のカップを机の上において、写真の真ん中に居る銀髪の青年を指差して
「……私はこの人に会う為に旅をしています」
その青年は目に傷があり、一見強面に見えたが優しそうな笑みを浮かべていた。俺はその青年を見て
(なんとなくジオに似ている気がするな)
髪の色も目の色も雰囲気も何もかも違うのに……どうしてだか俺はこの青年がジオの家族に見えた気がして
「おい、ジオ。この人もしかしてお前の「断固違う!」うおっ!?急にどうした!?」
さっきまで黙り込んでいたジオが突然そう怒鳴る。激しい炎のような怒りを全身に纏っているジオは初めてこの家に来た時のようなギラギラとした、獣のようなオーラを纏っていた
「「!」」
ペガサスとアシラが身構える。ペガサスの目は爛々と輝き獣の様に見えた。それに対したジオは頭を押さえて痛みに耐えているかのような顔をして
「俺は知っているぞ、その目も、その顔も! だが誰だ、こいつは! 俺は知っているはずだ、なのに何故思い出せない……!」
怒声と共に部屋の温度が上がった気がした。それに気のせいじゃない
(セツナ、ジオの身体から炎が一瞬見えたんだけど)
ディエチも見えたようだ、一瞬ジオの全身から放たれた黒炎を……何が起っているのか判らない俺達だったが、突然ジオの身体が崩れ落ちる
「ふー悪いわね?このままだと暴走しそうだったから、眠らせたわよ」
紫色の髪に緋色の目をしたヴィルヘリヤと言う女性が左手をヒラヒラと振りながら笑う
「いや、別に構わねえけど……暴走って?」
ディエチがそう尋ねるとペガサスは警戒態勢を解除しながら
「半ネクロと言うのは基本的に戦闘種族だ。何かのきっかけで力が発現してしまう。こんな風にな」
ペガサスが腕を上げると一瞬で甲冑が展開された。だが騎士甲冑ではない、ディエチがそれに触ろうとすると
「……止めて置いた方がいいですよ。半ネクロの魔力は普通の魔力とは違うんです。身体の調子を崩しますよ」
その言葉にびっくりしたようで手を引くディエチ。ペガサスも甲冑を解除しながら
「そう言うわけだ、闘争本能が以上に高い者もいる。ジオと言うのは記憶を失う前はそうだったのかもな」
ジオが人間と違うのは知っていた、だけど戦闘種族といわれても今一ぴんと来ない
「でも、あいつ弱いぞ?」
体力とか腕力は凄まじいがそれだけだ。俺には1回も勝ててないと言うと、フローリングに伏せているラビリルの頭を撫でていたアルハリムが
「それは思い違いだね。彼がもし記憶を持っていたら、正直な話君じゃ勝つところか一矢報いることすら難しい」
その言葉に「はっ?」となってしまう。
「俺がジオに一撃当てることすら難しいだと?どういうこった」
「黒い炎を吹き出していただろう?あれは半ネクロでも使える者が限られた希少な技能なんだ。触れた者の魔力と体力を奪い取り自分のものに変える。攻撃を当てられれば当てられるほど君は不利になっていく」
あの炎が?そんなに危険な能力だったのか?
「でもジオはあの炎は1度も使ってないよ?」
「んー、多分無意識だったんじゃない?記憶が戻りかけて、その一瞬だけ使ったんじゃないかしら?」
アシラがそう言う。確かにその可能性は十分に考えられる
「……とりあえず。この写真を見せるのはやめておきましょう。どうもあまり良くないようですからね」
そう笑って写真をしまうリーエはお茶ご馳走様でした。と言ってから立ち上がりこれで失礼しますと言う
「これからどうするの?旅してたなら家とかないんじゃない?」
ディエチがそう言うとリーエはにっこりと笑いながら
「……旅をしている以上、野宿には慣れていますのでご心配なく。暫くはこの近くに居ますので。それと、これは連絡先です。何かありましたら連絡ください」
差し出された紙を受け取る。多分リーエ達が暫くここに居るというのは、ジオの事があるからだろうと思っていると
「んー……ちょっと待ってくれれば住む所用意できるかも」
ディエチがぼそりと呟く。ちょっと考えて思い出したが、街外れにある小屋は確かゲンヤさんの持ち家だったはずだ
「埃っぽいと思うけどそこはどうかな?野宿よりよっぽどいいと思うけど」
「……良いのですか?」
「うん。誰も住んで無いよりかはずっといいよ。私からお父さんに連絡しておくから、ちょっと待ってて。今地図を書くから」
とんとん拍子に話が進み、地図を持って出て行くリーエ達を見送り
「ジオの記憶が戻るといいな」
「……そうだね」
ソファーで眠っているジオを見ながら俺とディエチはそう呟いたのだった。記憶が戻ればジオはこの家を出ていくのかもしれない。だけどそれでもジオの記憶が戻ることを願いながら、眠っているジオに毛布をかけたのだった
ディエチと言う女にに渡された地図を見ながら、街外れに向かって歩いているリーエの後ろを歩いていると
「なぜ何も喋らなかった?」
俺を見ながらそう尋ねてくるペガサス。俺は
「別に考え事をしていただけだ」
訝しげな表情で俺を見る物のそうかと頷くペガサス。俺はさっき見たジオと言う少年の事を考えていた
(あの気配……まさか……な)
一瞬だけ噴出した黒い炎そしてその時の気配。俺には覚えがある気配であり、魔力だった
(どう思う?ヴォルガンド)
リーエと話をしながら念話で尋ねてくる。やはりヴィルヘリヤもか
(なんとも思えん。それに若すぎる)
(そうよね。若いのよね)
俺達の知るあの魔力の持ち主よりも若い。どうして若くなっているのか?それとも他人の空似なのか?確信がないのでリーエには何も言えない
(少し様子を見よう。ヴィルヘリヤ)
(了解。確証が取れたら早くこの世界を去りましょうか?)
ヴィルヘリヤの言葉に小さく頷く。もしあの少年が俺とヴィルヘリヤの思った通りの相手なら、この世界に長居をするのは危険だ
(出来れば俺の勘違いであればいいんだがな……)
俺は心の中でそう呟きゆっくりとリーエの後をついて歩くのだった……
第59話に続く
ヴォルガンドとヴィルヘリヤだけが気付く、ジオの共通点。夜天を見ていて、感の良い人ならこれで判るかもしれませんね
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします