宵闇の使者【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回の話は前回の予告通りネクロサイドをメインにしてシリアスで行きたいと思います。それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第61話

 

 

第61話

 

朝早くからの電話に叩き起こされ。イヤイヤ向かうように言われた路地裏に向かった。そこは管理局の隊員で完全に封鎖されていた。それを見て更に深く溜息を吐く、折角の休日なのにこれかよ

 

(またかよ。朝から見る光景じゃないな)

 

深く溜息を吐き、周囲を封鎖していた管理局の隊員に俺は隊員手帳を出し、封鎖されていた路地裏に足を踏み入れる

 

(またこれか。胸糞悪い)

 

路地裏はまるで赤い1部が赤黒く染まり、その中に申し訳ない程度に残っている肉片と鞄を見て俺は眉を顰めながら

 

「これで何件目だ?」

 

青い顔をして現場検証をしている若い隊員にそう尋ねると

 

「10件目です。ゲンヤ・ナカジマ3等陸佐……うぷ」

 

喋ったことで限界が来たのか、手帳を落として両手で口を押さえる隊員に

 

「吐くなら向こうに行ってな。現場を荒さたら困る」

 

若い隊員に現場から離れるように言う。口元を押さえ歩いていく隊員の背中を見ながら

 

(吐きたくなるのは無理もねえな)

 

何かの獣に食い殺されたとしか思えない人間の遺体。検死解剖しないと男か女もわからない、また遺族になんて説明すれば良いのか。そう考えると溜息しか出ない。しかしそれにしても

 

(男が3人。女が4人、それに子供が2人……統一性が無いな)

 

それに態々食い殺したかのように異体を放置する理由がわからねえ。上層部は何らかの生物兵器か危険生物がいるのでは?と考えているらしいが、もしそうなら何故目撃情報が無い?街のパトロールを増やし、そして深夜のパトロールをしているのにその生き物が目撃されない?

 

(なにか全く予想も付かない事が起きているんじゃないのか?)

 

俺は制服の胸ポケットから取り出した手帳を見る。養女のディエチから聞いていたリーエと言う少女達の簡単なプロフィールが書かれていた。無論彼女達が犯人とは思ってないが

 

(なにか情報がもらえるかもしれない。1度話を聞きに行ってみるか)

 

この場所の現場検証と証拠集めを近くに居た隊員に任せ、俺は街外れにある別荘のほうに向かって歩き出したのだった……

 

 

 

ビルの上から歩き去るゲンヤを見つめる4つの視線……アークとシンだ。ビルの上からゲンヤ達ではなく血痕を見ていた2人は、互いに思案顔をしていた

 

「どう見るアーク」

 

同じように現場を見ているアークにそう尋ねるとアークはふむと呟きながら、顎の下に手を置いて

 

「随分と活発に動いているようですね。魔力の流れを断っていなければ私達も狙われていたでしょうね」

 

今のヴェルガディオスは無尽蔵にリンカーコアを喰らい、自身の体力と魔力を回復させつつ、身体を再生している。魔力を消してなければ俺とアークも狙われていただろう。暫く様子を見ていたアークだが、くるりと背を向けてビルの淵から離れていく

 

「どうする?この世界から離れるのか?」

 

ヴェルガディオスと事を構える自体は俺もアークも嫌なはず。だから転移するのか?と尋ねるとアークは首を振りながら

 

「いえ。調べたい事もありますし、もう少しこの世界に滞在します。リーエ達にもヴェルガディオスにも見つからないように行動しますよ」

 

そうか、出来ることなら俺は早くこの世界を去りたいのだが、互いの情報交換とかを考えるともう少し一緒に行動して方が良いなと判断し頷く。

 

「何を調べるんだ?この世界に興味を引くようなものはない筈だが?」

 

守護者の世界なら大破したパンデモニウム等があり、少しは俺達の探している情報もありそうだが、この世界にそんな物があるとは思えない。もしあるとすればこの世界の聖王教会だがそれも望み薄だ

 

「私達と一緒に転移してきた遺跡があるでしょう?それを探しますよヴェルガディオスが封印されていた碑文。なにかいい情報があると考えるのが普通でしょう?」

 

確かになんらかの関係性があると考えるのが妥当だが、あの碑文に魔力が貯まると同時にヴェルガディオスは復活した。

 

「ヴェルガディオスがその周囲に陣取っているんじゃないのか?」

 

俺としてはその可能性が高いのではと思う。アークもそれは考えているようで

 

「ええ、それは確かに不安要素としてありますね、しかし多少のリスクは仕方ありません。LV5の監視も無く自由に動ける今、少しでも情報を得たいと思うのは当然でしょう」

 

「確かにな。普段は監視が多いから好きに動くことも出来ないしな」

 

元々俺もアークもランドグリーズ達には信用されて無い。普段は監視下に置かれているが今回は予測できない転移のせいでその監視もいなくなった。向こうは俺達を探しているだろうなと思い苦笑していると

 

「あの不意な転移にも意味はあったわけですよ。さてでは探しに行きますか。シンはどこら辺に転移してきていると思いますか?」

 

いきなり話を振られて少し驚いたが、少し考えてから周囲を見渡す。普通に考えて都心はまずないだろう、可能性として1番高いのはやはり……俺はベルカの土地の方を見つめながら

 

「ベルカの土地ではないか?あそこと守護者、ネクロの関係は深い可能性としてはあそこが1番高いと思うのだが」

 

守護者の父がネクロと戦ったのはベルカの土地。そしてネクロが生まれたのもベルカの土地。これ以上に関係性の高い土地は無いだろう。全ての世界いは何らかの繋がりがある。ネクロに繋がるのはベルカの土地以外ありえない

 

「ではベルカの土地にもぐりこみますか。こうなるとネクロの出現率が低い世界で良かったですね」

 

下位ネクロが上位ネクロに連絡をすれば、それで俺達はまた監視下に戻される。そう考えればネクロのいない世界に来たのも何かの意味があるのかもしれない

 

「全くだ」

 

ネクロがいなければ俺とアークを警戒するのは、リーエ達くらいな物だ。外見的には瞳孔が縦に割れているくらいだ、これは魔法で誤魔化せるので問題ない。俺とアークは自分達と一緒に飛ばされてきた筈の碑文を探す為にベルカの土地へと向かったのだった

 

 

 

 

ベルカの土地の最奥。八神龍也が存在する世界でパンデモニウムが落下した場所に、リーエ達がこの世界に来る原因となった碑文が半分ほど地面に埋もれる形で存在していた。そしてその碑文の近くには

 

「オオッ……オアアアアアアッ……」

 

最初に現れた時には、左腕と右足そして頭部が欠けていたヴェルガディオスだったが……今は左腕が完全に再生し、両腕でその巨体を支え不気味な唸り声を上げてながら。何も映していない瞳で周囲を見ていた。それは獲物を探しているようにも、ここは自分の場所だといっているようにも見えた。そんなヴェルガディオスを見つめ不快そうに顔を歪める、黒いタキシードの男。いや男と言うのは正しくない、なぜなら彼もまたヴェルガディオスと同じ種族でもあるのだから……だが彼はいや、ランドグリーズは不快そうな顔をして

 

「醜悪……実に醜悪ですね」

 

ぶよぶよとした黒い体液を撒き散らしているヴェルガディオスを見て、私は眉を顰めゆっくりとその場を後にした。高密度の魔力反応を確認して見に来たが来るんじゃなかったと後悔した

 

(あの石碑は気になりますが、止めておきますか)

 

ヴェルガディオスが護っている石碑。理性の無いヴェルガディオスが、それでも護っている石碑……十分に診てみる価値があると思ったのだが、触手でがっちりと護っている上に下手に近づくと戦いになりかねない。そうなるとリーエ達が来る可能性十分に考えられる

 

(負けるわけは在りませんが面倒くさいので止めておきますか)

 

ヴェルガディオス程度に負けるとは思わないが、魔力と体力もある程度消費するのは判り切っている。その状態でリーエ達と事を構えるのは正直面倒だ……それに盟主とヘルヴォルにも早く結果を出せと言われているのでコンナくだらないことで時間を潰すのは愚かしい。転移するかと思っていると

 

「おっと!長居しすぎましたか!」

 

碑文の前で腕を組み考え事をしていたのだが、突然乱れた魔力の流れと殺気に気づき振り返ると、どす黒い鞭が迫ってきているのが見える

 

「シャアアアアッ!!!」

 

それはヴェルガディオスの身体から伸ばされた触手だった。私は伸ばされてきた触手を飛びのいて回避する。どうも長く居過ぎたせいでヴェルガディオスに気付かれてしまったようだ。理性がないくせに学習能力は高いのですね。私のステルスを見破るとは……私は舌打ちしながら伸ばされた触手を回避する。スピードもあり数も多いが、私にとっては何の危険性も感じない。即座に両手に魔力を集め

 

「身の程を知りなさい、下賎な化け物ッ!!!」

 

触手を出鱈目に伸ばし、威嚇の声を繰り返し上げるヴェルガディオス目掛け手を振るい魔力弾と魔力刃を同時に飛ばす

 

「グギアアアアア!?」

 

魔力弾は胴を穿ち。刃は肩に深く食い込む。そのダメージにおぞましいうめき声を上げるヴェルガデイオスに

 

「聞くに堪えませんね」

 

姿が醜いのなら、悶えるその姿もまた醜い。私に伸ばしていた触手を縮めて全身を黒い体液で包み込み回復し始めるヴェルガディオス。力の差を理解せずに攻撃を仕掛けるからそう言うことになるのですよと呟き。辺りを確認する

 

「ふむ。これは面白いことになりそうですね」

 

ヴェルガディオスが自身の体の修復を優先したので、辺りを覆っていた触手がなくなった。このおかげで石碑が見えるようになったようだ、私はにやりと笑いながら自身の運に感謝しながら

 

「どれ何の石碑ですかね?」

 

何を刻んである石碑なのか?リーエ達が見る前に確認しておこう。私はヴェルガディオスの横を通り石碑を見て

 

「!……これは危ない所でしたね。やれやれ我ながら運が良い」

 

石碑に目を通して私はそう笑った。これに刻まれていたのは盟主そして……黒龍皇に関する伝承

 

「これはヘルヴォルや盟主にも見せるわけには行きませんね」

 

私はそう笑い遺跡の碑文の一文を削り取り粉々に踏み砕き、更に魔力で完全に消滅させ、再度石碑を確認する

 

「この程度なら残しておいても良いですね。勝手に勘ぐっていただければ結構ですしね」

 

削り取ったのはあえて伝承に関する部分も残してある。削り取ったのは黒龍皇と盟主に関する一文。それだけだ、後は対して意味のない伝承なので残しておいても良いだろうと判断する

 

「アルハリムもいますしね。勝手に勘ぐってくれるでしょう」

 

帝都アズタミアに関する半ネクロ。その知識量は非常に豊富だが、その豊富な知識が邪魔をする結果となるだろう

 

「さてとこの世界にも少しはネクロの素体になる人間がいると良いですね」

 

ネクロの侵攻がなかった世界。そう言う面では動きやすいが……ここまで平和な世界だと、ネクロの相応しい素体がいるかどうかは怪しい所だが……

 

「動かないわけにも行きませんしね」

 

ヘルヴォルにも盟主にも結果を出すように言われている。ただのネクロではなく戦力になるネクロか、それか……

 

「あのネクロ達の情報ですね……」

 

私達に敵対する2体の半ネクロ。私自身1回交戦しているがかなりの実力者であるのは間違いない。正直な話

 

「リーエたちよりも危険なのはあの2人ですからね」

 

片方は完全に狂っており、もう片方は失われたはずのデバイスを持ち、盟主のことを知っているような素振りを見せている。その事がどうしても気になる、盟主はベルカの創世記から生きている、なぜ盟主を知っているのか?と言う疑問はどうしても頭に残る

 

「どちらも危険ですね。さてさて、どちらを優先しますかね」

 

私はそう呟きヴェルガディオスの傍から離れ、ゆっくりとベルカの土地から離れたのだった……どこかであの二人の目撃情報でも在ると良いんですがねと心の中で呟いたのだった

 

 

 

 

ランドグリーズが立ち去ってから数分後。木々が大きく揺れざわざわと音を立てる。

 

「LV5を名乗っていても案外マヌケなのね」

 

影から姿を見せたのは黒衣に身を包み、銀混じりの亜麻色の髪をした女性……ラプスだ。彼女は嘲笑を含めた笑みを浮かべゆっくりと碑文のほうに歩き出す

 

「自分だけで行動不能にしたと思ったのかしら」

 

再生中のヴェルガディオスはランドグリーズの放った魔力刃と魔力弾の威力は確かに高かった。しかしそれだけでは戦闘不能に追い込むことは出来なかった。ランドグリーズから見えない角度から私も魔力弾を撃ち込み、ヴェルガディオスにダメージを与えていたのだ。そして……

 

「完全に油断していてくれたから助かったわ」

 

ランドグリーズは石碑の一文を削り取ったつもりだが、あいつが削り取ったのは何の関係もない部分。私が少し魔力で視界を遮ったのだ。意識外からの魔法には流石のLV5も反応出来なかったようだ

 

「さてと急ぎましょうか」

 

ヴェルガディオスの再生は既に始まっている。時間を掛けると私も危ない。素早く碑文の内容を確認する

 

「……これはなるほどね。隠そうとするわけだわ」

 

ランドグリーズが僅かに慌てる素振りを見せていた。よほど重要なことが書かれているのだろうと思っていたが、確かにこれはなんとしても隠したいと思う内容だ。

 

「私の予想とおりだったわけね」

 

正確には私が持つ過去の記憶からの情報で、盟主そして黒龍皇のことを独自に探っていたのだが、この碑文に刻まれていた文を見て僅かに形が見えてきた。しかしまだ足りない、全てを知るにはまだ全然情報が足りない。それに

 

「これはリーエ達に見せるわけには行かないわね」

 

指先に魔力刃を作り出し今度こそ、その一文を完全に削り取り転移でその場を後にしてから

 

「下手に仕掛けられたら困るしね」

 

もしこの文を見て行動に出られたら困る。リーエは確かに仲間を増やしているが、勝てる要素が何一つ無い。そう仮に……

 

(八神龍也がいたとしても勝てない)

 

八神龍也の実力は知っている。世界を渡っている際に何度か八神龍也を見たことはある。それを踏まえてもなお、八神龍也では駄目なのだ。

 

「これからどうしようかしら」

 

ランドグリーズの気配を感じて回り込んだが、正直やることは殆どないだろう。それにこの世界にはリーエ達もいる

 

「少し様子見をしましょうか」

 

リーエ達にもネクロにも過剰に接触はしない、下手に接触してしまうとリーエが私に頼ろうとしてしまうかもしれないし、私自身リーエを助けたいと思ってしまうかもしれない。それに私は私で考えたい事もある

 

(盟主。黒龍皇。そしてLV5ネクロに帝都アズタミア)

 

ネクロ達の皇である盟主。様々な遺跡に名を刻まれている黒龍皇の存在、そして今まで禄に活動することのなかったLV5の動きが活発になり、そして次元の狭間に封印されていた帝都アズタミアがバラバラになっているとはいえ表側の世界に出てくるようになって来ている。私自身も世界を渡りながら何度もネクロと交戦している。その回数がここ最近異常に多いのだ

 

(何か理由があるのかしら?)

 

ここ最近になって急に動きが出てきた。ここ数百年動きがなかったのに、まるで何かに導かれるかのように全てが大きく動いている

。しかしその中心となっているのは盟主そして黒龍皇の存在

 

「盟主……そして黒龍皇が何者なのか、それを知らないことには対策がとりようが無いわね」

 

知っていても知らない。知らなくても知っている。そんな曖昧な記憶が私には多々ある。特に黒龍皇や盟主の所は特にそれが激しい

 

(何かきっかけが要るのかもしれないわね)

 

リーエに出会った時。ランドグリーズと戦った時。それらのときにあやふやだった記憶は明確な形となる。今回もそれが必要なのかもしれないがそれが何か判らない上に、知っているのに知らないという奇妙な感覚をずっと感じるので若干の苛立ちも感じる

 

「どうにも釈然としないわね」

 

自分の記憶なのに自分で判らない。それはどうにも苛立ちを感じる、だけど自分ではどうしようもないので時を待つしかない。

 

「さてと少しは人間らしいことをしてから去るとしましょうか」

 

普段は異世界を渡り様々な世界を見ている。正直人間のいる世界に来るのは久方ぶりだ。少しは人間らしいことをしてみようと思い私はクラナガンのほうに足を向けたのだった……

 

第62話に続く

 

 




次回はリーエとかの話にする予定です。あとヴィルヘリヤ視点の話があります、トラブルメイカーの彼女ですがちゃんと考えている所はあるというのを表現したいですね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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