第69話
セツナさん達の世界から渡ってきた世界は、リッカさんの世界と同じく様々な世界が混ざった世界だった。
「また奇妙な世界だな。どう思う?」
「……どうといわれても困りますけどね」
廃墟と自然が混ざった奇妙な世界を見ながら行動方針を考る。生き物の気配こそあるが、人の気配は何も感じない……それに今いる所は廃墟の中なので何とも言えない。
「ガーウ!ガーウ♪」
「♪♪」
カエデの頭を撫でて楽しそうにしているイシュリさんの姿が見える。まぁこれは良い……だけど
「猫か「ガブッ!」ぐあ!?」
あの人は何をしてるんですか?ジオさんがラビリルに手を伸ばすとその手を思いっきり噛まれて
「痛い!止めろ猫!」
手に噛み付いているラビリルは猫と呼ばれるとするするとジオさんの腕を上って、首の後ろに回りこむ、キラッと前歯が光る。あ、このパターンは
「ガジガジガジッ!!!!」
つめをジオさんの頭に食い込ませ、何度も何度も頭をかむラビリル
「あいだだだだだ!!!」
ラビリルに頭に爪を立てられガジガジと頭を齧られ絶叫しているジオさん。なんとかしてラビリルをどけようとしているが、ラビリルはその手を回避しながら頭を噛み続けている
(……あの人魔王ですよね?)
おかしい。何故龍也様と同じような雰囲気を感じてしまうのだろう。かなり強い人のはずなのに……なんか間が抜けているような気がしてならない。
(ジオ様って結構天然なのよ)
見れば判ります……どこからどう見ても天然です……
「ラビリル。おいたは駄目だよ」
よいしょっと言いながらアルハリムさんがラビリルを抱え込む
「ニャー」
ラビリルはさっきまでの怒こった表情を止めて、すりすりとアルハリムさんの顔をに摺り寄せている
「ぐう……なんと凶暴な猫だ」
頭を押さえて蹲っているジオさん。ちなみにラビリルは猫ではなく虎ですよ
「こっちのほうも林みたいね。どうするリーエ?ってなにしてるの?」
偵察にでていたアシラさんが戻ってきて、蹲っているジオさんを見て呆れ顔をしている。私は
「……ラビリルのせいですね」
「ふーん……まぁ良いけどね」
スルーされたジオさん。まぁ良いですけどね……
「ガウ?」
「だ、大丈夫だ。問題ない」
ジオさんの心配をしてるのはカエデだけのようだ。私はどんな反応をすれば良いのか判らないので周囲を見ることにした……
(偵察に行っていれているヴォルガンドさんが戻ってきてから考えますか)
半ネクロの回復力を生かして、頭の傷の回復をしているジオさんに呆れながら
(なんか段々六課に似てきましたね。この面子……)
このがやがやした感じは本当に機動六課に似ている……私はそんな事を考えながらヴォルガンドさんが戻ってくるのを待つのだった……
「一通り見てきたが、奇妙な物を見つけた。付いて来てくれるか?」
戻ってきたヴォルガンドさんの言葉に頷き、私達は移動を始めたのだった
「ガウガウ♪」
「ニャーニャー♪」
スザクはいつものように偵察のために空を飛んでいる。イシュリさんに抱き抱えられて運ばれているラビリルとカエデは楽しそうですね……私は和やかなものを感じながらヴォルガンドさんに先導され移動を始めたのだった……
廃墟から出ると今度は直ぐに森林の中に出た。林の中を歩いていると
「ふむ。良い木の実だ。カエデ食べるか?」
ジオガディスは見つけた紅い木の実を毟りながらカエデに尋ねる。カエデは立ち止まると
「ガーウ♪」
あーんと口をあけるカエデの口に木の実を投げ入れるジオガディス
(あれが守護者を最も追い詰めた男なのか?)
聞いていた話と全然違う……まぁジオガディスとジオは違うということか……と言うか、そうでも思わないとなんかやりきれん……そんな事を考えながら歩いていると
(今度は海か!?全くどうなっているんだこの世界は)
廃墟に森林。それに加えて海……リッカの世界も相当だったが、この世界も相当おかしいな……
「俺が見つけたのはあれだ。どう思う?」
ヴォルガンドが指差す方向には海面から姿を見せている柱が見えている
「……海底神殿とでも言えば良いんでしょうかね?」
リーエがぼそりと呟く。周囲を見ると確かに砂浜には風化した石壁が見える。あの海に沈んでいる神殿はこの世界に来た時か、もしくは最初から海に沈んでいて海ごとこの世界に飛ばされてきたのだろう……
「アルハリム。この世界は貴方の遺跡かしら?」
遺跡といえばアルハリムの世界であることが多い。そう思ってアルハリムに尋ねるアシラ
「違うよ。アズタミアに海は無かったし……それに私の時代の建物とは作りが違うしね」
そうか。アルハリムの世界には海が無かったのか。それならばこの世界が自分の世界じゃないと断言できるのも納得だな。しかしアルハリムの世界じゃないのなら、ネクロの情報はなさそうだな……
「海だから泳げば「ザッバーン」……あらあ?」
ふざけて泳ぐとヴィルヘリヤが言った瞬間。見たことのない巨大な魚が大きな口を空けて大きく飛び跳ねる。俺達を丸呑みする事ができそうだな……それを見てから俺は呆然としているヴィルヘリヤに
「泳いで来い。そして食われろ」
海面を指差しながら言う間にも、巨大魚が海面を飛び跳ねている
「酷い!?私に死ねと言うの!?」
よよよっと崩れ落ちるヴィルヘリヤ。だけどその顔は笑っているので冗談だと判っているのだろう……
「で?どうするの?流石にあれを掻い潜って海底神殿を調べるのはきつそうだけど?」
アシラの言う通りだな。これだけ広大な海だ。あの魚だけとは到底思えない……他にも何か巨大な水棲生物がいると考えるのが普通だろう……
「様子見をする事にするか?幸い海なら食料はあるだろう?」
もし海底神殿を調べるのなら夜になってからでも十分間に合う。それまでは食料探しでもするか?と尋ねると
「……ですね。人数も増えましたし、食料確保でもしますか……」
リーエはそう言うとローブから釣竿を取り出して歩いていく、そしてそれを見たジオも担いでいた鞄から釣竿を取り出し同じように歩いていく……
「あたしはイシュリと一緒にここら辺にいるわ」
「んーじゃあ私はこの遺跡でも調べましょうかね?何か気になるし♪」
楽しそうに遺跡を見始めるヴィルヘリヤ。俺とヴォルガンドは
「どうする?周りを調べるか?」
「だな。ネクロがいないとも限らないしな……念には念を入れて損はないだろう」
俺とヴォルガンドは2人でこの近くを調べ始めるのだった……俺達が砂浜を出て行こうとするとふと気付く
「……」
アルハリムが空を鋭い目付きで見つめている。まるでその方角に何かがあるような……俺とヴォルガンドもそちらの方角を見たが、何もない……アルハリムは一体何を見ているんだろうか?周囲を調べるよりも他に調べる事があるのでは?俺とヴォルガンドがそんな事を考えていると
「ガウーッ!!!!!」
「ミャアアアアアッ!!!」
「姉上ッ!」
「ああ!もう!何してるのよ!!」
海で溺れてアプアプしているカエデとラビリルに力が抜け。当初の目的の通り周囲の捜索に向かったのだった……
魔力の流れがおかしい……私は海面から顔を出している柱を見ながら魔力の流れを見て違和感を感じていた。
(滅んだ世界とは言え、これは異常だ)
滅んだ世界は無数に魔力に入り乱れその流れを大きく変える……リッカの世界もそうだったが、この世界はそれに輪をかけておかしい……
(なにか起きているのか?こことは別の世界で)
この世界ではなく、別の世界から魔力を吸われているのか、周囲の魔力が徐々に減っているのを感じる……
(どうしたものか……)
何か嫌な感じを感じる。だが動きようがない……この世界から魔力を吸い取っている世界には繋がりがない……つまりこの世界からは異変が起きている世界に行く事ができない
(リーエの旅について行く途中にあるといいんだが……)
私の能力であっても、世界同士のつながりのない世界に行く事は難しい……仮に出来たとしても魔力と多大に消費する。そうなれば仮に移動できたとしても動く事ができなくなる……
(どうしたものか……)
ヒュぺリオンは……反応がないか……ヒュぺリオンは自身の担い手を求める。しかし今は何の反応も示さない……ヒュぺリオンの能力ならば、世界同士の繋がりが無くても世界間の移動ができるんだけど……それも無理そうだね
「……アルハリムさーん?そろそろご飯が出来ますよー」
下のほうから私の名を呼ぶリーエ。魔力の流れを観察している間に随分と時間が経ってしまったようだ……
「ああ。今行くよ」
リーエにそう返事を返しながら、海面から顔を出している遺跡を見て
(なんだろうね?あの遺跡からも不思議な気配を感じるんだけど……)
微弱なネクロの気配を感じるんだけど……その気配はとても不安定だ。リーエやヴィルヘリヤが探知できないという事は相当微弱だ。
(本当に変な世界だな……)
私はそんな事を考えながらリーエ達の元へ行くと
「ガーウ!」
「ミャアッ!」
「クアーッ!!!」
魚と果物の取り合いをしているカエデとラビリルとスザクが取っ組み合いをしているのだが
「ガウッ!」
「ニャア!」
二足歩行かつ両手と尻尾を使えるカエデはスザクとラビリル相手に互角以上に戦っている
「ガーウッ!!!」
「ニャアアアッ!!!」
カエデが電撃のブレスを吐き出し、ラビリルが小さな吹雪を放つ。互いに互いを相殺し間合いを取るカエデとラビリル
「こーら!何してるんだいラビリル!」
「ふにー」
飛びかかろうとしているラビリルを抱え上げる。スザクはスザクで
「……駄目ですよ。スザク仲良くしてください」
「クー」
リーエに怒られてしょんぼりしている。そしてカエデは
「そんなに喧嘩をするならこれは没収だ」
「ガー!ガーウ!ガウガウ!!」
背負っていた鞄から木の実の瓶を取り上げられてイヤイヤと首を振るカエデ
「なんだこれは?俺はこんなときどうすればいい?」
「無視しろ。一々スザクたちのやっている事を気にしていては意味がない」
ヴォルガンドとペガサスはカエデ達を無視して、釣って来たであろう魚の塩焼きを頬張っている。
「はい。イシュリ」
「あーん」
アシラは魚の身をほぐしてイシュリに与えている。その姿はとても微笑ましいと思う。そしてトラブルメイカーのヴィルヘリヤは
「んー♪お酒美味しい」
酒に舌鼓を打っていた。本当何を考えているのか判らないなと苦笑しながらリーエノ近くに座って気付く
「貝も拾ってきたのかい?」
焚き火の上には網が引いてあって、その上にサザエやアサリが置かれていた
「……貝を拾ったのは私じゃなくてイシュリさんですよ」
嬉しそうに手を振るイシュリ。自分がとったんだよ?自慢げな顔をしている
「ああ。偉いね。せっかくだから頂くよ」
イシュリが取ってきたという壷焼きを手に取り。木の枝を削ったであろう爪楊枝でサザエの身を取り頬張るのだった
(んー出来るならもっと長く一緒にいたいんだけどね)
私は心の中でそう呟き、このわいわいとした食事の風景に笑みを零すのだった……
皆が眠りに着いた後。私は海底神殿の方に歩き出した
(やはり夜だと活性が低くなるようですね)
昼間は何度も何度も飛び跳ねていた巨大魚は夜になるとその姿を消した。昼間しか動く事のできない種類なのかもしれない……
「……いい星空ですね」
かつて龍也様と一緒に見た星空を思い出しながら、海底神殿の上に足を踏み入れる
「……やはりここはおかしいですね」
妙なネクロの気配がする。遺跡の上を歩きながら周囲を見るがネクロらしい姿はない、あたりを窺いながら遺跡を歩いていると
コツン……
(?足音が妙に軽い?)
その一箇所だけ跳ね返ってくる音が妙に軽い
「……ここですか?」
その場所を叩いてみるとグルンッ!と音を立てて石畳がひっくり返り、魔力で出来た階段が姿を見せる
「……海中に通じているのですか。これは予想外ですね」
魔力で出来た透明な壁に護られている階段を下りる。海中の中は何の生物の気配も無く、やはり昼間に飛び跳ねていた巨大魚の姿は無かった……周囲を窺いながら階段を一番下まで下りると
「……ここは?」
台座のような物が中心に置かれている。まるで何かの儀式を行うようなフロアに出た。そこを中心にネクロの魔力が発生しているが、やはりネクロの姿はない……
「……あれは?」
台座の上に置かれている何かが見える。それが何なのか気になり、私はその何かを拾い上げた
「……カードかな?」
その何かを拾い上げた。絵柄は無く、カードの中心には黒い渦が描かれていた……
(しかしこれは一体?相当な魔力が込められてるようだけど……)
これが何なのか判らず首をかしげた瞬間。ネクロの魔力が強くなり、そして魔力がそのカードを中心にこの周囲に満ちる。そして周囲の景色が歪む。それは間違いなく転移と同じ現象
「……強制転移!?」
このカードには強制転移の術式が刻まれていたのか!咄嗟にカードを投げ捨てるが、もう遅かった……私は強制的にこの世界から弾き飛ばされたのだった……そこで私はかつてのヴィルヘリヤさんやヴォルガンドさんの姿を見ることになるのだった……
第70話に続く
次回はコラボ回で行きたいと思います。誰とコラボするかは楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします