第71話
私はゆっくりと歩きながら周囲を観察していたのですが、脅威らしい物はなく全く普通の世界と私は結論を出した
(……ふむ。超能力の開発ですか……できるんですかね?)
途中で立ち寄った施設で貰った学園都市の概要をカフェで見ながら小さく呟く
(投薬とかもあるんですね。いい気はしないですね)
よくは判らないが人造魔導師に近い物だろうと当たりを付け、概要の一番後ろにあるMAPを見て
(1から23の学区があり、今私がいるのは……多分ですがここですかね?)
とにかく広大なので自分がどこにいるのか把握するのが大変だったが、多分ここ
(第7学区……ですね。説明では近くには色々あるそうですね)
商店街やこの学園に通っている生徒の生活圏があるらしい、それに良く見ると9つの学区と隣接しているらしいので
(だからこれだけ、乱雑しているのですね)
色んな形状の建物や人たちが次々と通り過ぎていく、私は頼んでいた紅茶を飲み干してから
「……ご馳走様でした」
会計を済ませカフェテリアを後にした。第7学区の地図を脳裏に描きながらゆっくりと歩みを進める
(窓のないビルですか……なんなんでしょうね?これ)
奇妙建物を見て首を傾げながら、自分の目的地を改める。私が今向かおうとしているのは
(第19学区ですね。となると……あっちですか)
開発に失敗したらしく、他の学区と比べて廃れているらしい。それに地図を見る限りでは無人の場所もありそうだと予想をつけて第19学区に向かって移動していると
「こらまて!私と勝負しなさいッ!!!」
「不幸だアアアアアッ!!!」
この世界の制服を着ている女性に追いかけられている黒髪の少年を見る。女性のほうはポケットから何かを取り出して指で弾く、それは稲妻と共に射撃とかす
(……レールガン?)
龍也様が言っていたが、物質を電気で加速させてどうとか言う武器だったような気がする、その威力は凄まじいと聞いていた。そんな物騒なもので攻撃されている人が可哀想になり一瞬助けようと思いましたが
(……大丈夫そうですね)
容赦ない攻撃をしているようには見えるがちゃんと避けれるように調整しているし、それになによりもあの黒髪の少年の右手を見て
(……何かの能力者ですね)
不思議な魔力の流れを感じる。その証拠に飛ばされた何かはその人の右手に触れると音も無く消え去った。何の能力かは判らないがあの攻撃を無効化できるようだ。それならば私が乱入することもない……
(さてと……では行きますかね)
あの2人の追いかけっこがどうも機動六課のやり取りを思い出させ、私は苦笑しながら第19学区へ向かうバスへと乗り込んだのだった……
私は前の世界で奇妙なデッキを拾った後。この世界に来て
「やった帰って……これてない……」
学園都市を見て一瞬私の世界かと思いはしたが、作りが違うし全然違う世界だと判る。場所は多分第19学区の外れのほうだろう
「あー!もういやッ!いつになれば帰れるの!?」
平行世界の学園都市に来たことはこれが初めてではないが……一瞬期待してしまう分違うと知った後のダメージが大きい。D・ホイールの「エターナル・エクストリーム」の隣に寝転がりながら、前の世界で拾ったカードをしまっているのデッキケースを取り出し、更にもう1つデッキケースを取り出し、後から取り出したほうのケースを開ける
「これも気になるよね」
これも別の世界で拾ったデッキなんだけど……これはこれでネクロというデッキとはまた違ったカードが大量に投入されている
「これ作ったの誰なんだろう?バランスはかなりいいけどさ?」
シンクロン・融合・エクシーズの全てを使えるように考えられているの、回転力重視と変わったつくりをしていた
「いいサポートカードも入ってるしねえ」
LPを1000とデッキの一番上を最大2枚まで除外することで魔法使い族モンスターを何でもリクルートできる「マジシャンズコール」
ダメージは受けるが4枚ものドローが出来る。「堕天使との取引」
だけど私が1番気になっているのは……
「白紙のカード多すぎでしょ?」
魔法カード・罠カード・モンスターカードの大半が白い白紙のカード。それに加えてエクストラのカードが紅い枠の見たことのないカード、これも白紙
「あーこれすっごい気になる」
効果テキストもイラストもない。判っているのはレベルとそのモンスターの種族。それと速攻・永続と言ったカードのアイコンだけ
『ほいほい拾うからだ』
呆れたようなクライスの声にうるさいと怒鳴り、そのカードをケースにしまう。いつかは使えるかも?と思って拾ってきたけど……いつ使えるようになるんだろう?と思いながら立ち上がると丁度林を掻き分けてきた少女と目が合う
「……誰?」
ローブに紅い髪とかなり目立つ容姿の少女にそう尋ねると
「……いや。そんなことを尋ねられても困るのですが?」
困ったように首をかしげている少女だったが私の隣に置いてあるデッキケースを見ると
「……」
一転して鋭い目付きになる。明らかに警戒しているのがわかる
「なに?これは私のよ?}
デッキケースを取りしまおうとすると
「……それは危険です。こちらに渡してください」
『早い!?』
クライスが驚いた声を上げる。確かにそれは私も驚いた距離はかなり空いていたのにいつの間にか私の手を掴んで、デッキケースを奪おうとする少女に
「だからこれは私のなんだって!」
そう怒鳴って少女の腕を振りほどき、銃型のデュエルディスクを取り出し構える。
「……敵対するというのなら……相手になる。それは危険なカードだ」
雰囲気が変わった少女。ふふん……そう簡単にはやられないんだから。デッキケースからカードを取り出してディスクにセットすると同時に、スペアのデッキケースから数枚カードを取り出して一緒にセットする。混ぜるのはあまりよくないが、このままだと普通のシンクロが使えない、普通のチューナーも何枚か入れておこうと思ったのだ
「上等!相手になってもらおうじゃない!」
デッキの上から5枚ドローして私は少女のほうを向いたのだった……
第19学区の山を登っていると途中で出会った少女は何故かネクロの力を感じるカードを持っていた。だが少女自体からはネクロの気配を感じないので取り上げようとしたら
「私のターンドロー!」
(どうしてこうなった!?)
戦う事になってしまった。でも私のあのカード持ってない……こんな事に付き合わず、行動不能にしようとして気付く
(動けない!?)
今立っている体制から動く事が出来ない。指や魔力を使うのは問題ないが、移動が一切出来ない……これも彼女の能力なのですか
「私は魔法カード「亡者達の復活」を発動!手札の「ネクロLV1」を墓地に送って2枚ドロー!そして墓地に送った「ネクロLV1」は自身の効果で復活する!」
少女の前に現れたネクロは完全に具現化していた。それが彼女の能力なのかは判らないが、危険だと判断し擬似甲冑を展開する。
「キキキキッ!!!」
この気配にしろ魔力に白完全なLV1ネクロだ。しかしなんでカードからでてきたんだろうか……
「ネクロLV1をリリースして、ネクロLV3 ノワールをアドバンス召喚」
ネクロLV1の背中が割れて黒い狼のネクロが姿を見せる。それを見て驚いたなぜなら……
(このネクロは!?)
これはもう何年も前に龍也様たちに倒されたネクロの筈……それなのになんで!?
「ノワールのアドバンス召喚に成功した時。デッキから「LV3 ストレイツォ」を手札に加え、リリースしたネクロLV1を守備表示で特殊召喚してカードを1枚伏せてターンエンド」
???
LP8000
手札7枚
ノワール ATK1900
ネクロ LV1 DEF0
伏せ1
(動く……何か嫌な予感がする。何とかして無力化を)
ノワール・ストレイツォ……この2体もやはりかつて龍也様に倒されたネクロだ……この調子で召喚されては困る。フェアシュテルケンを構え
「恨みはないが、それは回収させてもらう!」
ノワールに切りかかった瞬間。私の前にカードが浮かび上がる
「リバースカードオープン「輪転する影」!手札のネクロモンスター「LV3 ヴェノム」とデッキのネクロモンスターを墓地に送る事で相手の攻撃を無効にする!その後ネクロLV1を守備表示で蘇生する!」
そのカードから放たれた光に弾き飛ばされ元の位置に戻される。直ぐに反撃に出ようとして
(また動かない!もう私の出来る事はないということか!?)
よくは判らないが、あのカードのルールに準じてしか動けないようだ。
「私のターンドロー!2体のネクロLV1をリリースして「ダークマスターズ ヴィルヘリヤ」をアドバンス召喚!リリースした2体のレベル1を守備表示で蘇生する!」
少女の前に紫色の法衣と長い黒髪。そして異形の手を持つネクロが姿を見せる
(ヴィルヘリヤ!?これがか!?)
私の知るヴィルヘリヤよりも大人でそして邪悪な笑みを浮かべているヴィルヘリヤを見て驚いていると
「二重召喚を発動!LV1をリリースして!ネクロLV3 ストレイツォをアドバンス召喚!ストレイツォとノワールでオーバーレイネットワークを構築!」
ストレイツォとノワールが光となり地面にゲートを作り出す
「エクシーズ召喚!現れろ!竜魔将「ヴォルガンド」ッ!!!」
灰色の甲冑と紺色のマントを纏ったフルプレートの騎士がヴィルヘリヤの隣に並ぶ。今度はヴォルガンドか!?
「行けッ!ヴォルガンド!ネクロLV1ッ!!!」
凄まじい勢いで間合いを詰めてくるヴォルガンド。姿形は私の知るヴォルガンドと同じだが、そこにヴォルガンドの意思はない
「うかつだなッ!」
フェアシュテルケンを横に構えると同時にプロテクションを発生させる。ヴォルガンドの槍が命中した瞬間
「華と散れッ!燃え盛る聖者の泉(トレ・フォンターネ・アーデント)ッ!!!」
その攻撃を反射すると同時に無数の魔力刃が飛び出し、ヴォルガンドとLV1を切り裂き消滅させる
「ぐっ、破壊だけど罠の処理をはさんでいるからLV1は蘇生できない。私はこれでターンエンドッ!」
???
LP6500
手札5
ヴィルヘリヤ DEF2500
伏せなし
「悪いが、早々に片付けさせてもらう」
ヴォルガンドがいたということはもっと強力なネクロがでてくるかもしれない。その前に仕留めさせて貰うフェアシュテルケンを作りかえ、鎌にし大きく振りかぶる
「トーデス・シュトラーフェッ!!!」
巨大な魔力刃を飛ばす。ヴィルヘリヤは応戦しようとしたが刃に切り裂かれ消滅する。それを見て私は一瞬顔を歪めた
(なにか複雑だ)
今仲間として一緒に行動しているヴィルヘリヤを攻撃して私は何か複雑なものを感じるのだった……
「私のターンドロー!代償進化を発動!デッキから「LV1」を墓地に送り、墓地の「LV3 ヴェノム」を蘇生する!」
そう言えばさっき捨てるとか言ってたような気がする……
「更に魔法カード「狂気の実験」発動!ヴェノムを守備表示にする事で、墓地の3体のLV1を蘇生する!そして手札から「ゾンビキャリア」を召喚!」
次々と出てくるネクロ。そしてその隣で蠢いているゾンビ……何か嫌な予感がする
「3体のLV1にレベル2チューナー「ゾンビキャリア」をチューニング!世界に危機が訪れし時、全てを喰らう龍がその姿を表す。その力で世界を導け!シンクロ召喚!現れよ、クライシス・ドレイン・ドラゴン!」
上空から舞い降りてきた禍々しい黒いドラゴンの姿を見て
「まっ、待て!神埼遊梨止まれッ!!!」
その姿を見て私は初めてその少女が何者か理解し、手にしていたトーデス・シュトラーフェを投げ捨てそう叫んだのだった
対峙していた少女に突然名前を叫ばれクライスの攻撃を中断させながら
「何で私の名前を?」
名乗ってない筈だけど?と思いながら尋ねると
「神埼終夜に聞いた」
お兄ちゃんの名前だ……私は少し考えてから
「どこであった?」
「様々な世界が融合している世界でだ……嘘じゃない」
真剣な顔で私を見つめる少女。精霊も嘘じゃないと言っている……私はクライスをエクストラデッキに戻していると
「危ない!」
対峙していた少女にそう叫ばれ、周囲を見るとさっきまで召喚していたネクロが私に手を伸ばしてくる。なので
「ふんっ!」
全力でビンタを叩き込んだ。ビンタを叩き込まれたネクロはひっくり返り動かなくなったので追撃に踏みつけておく
「は?」
驚いている少女を無視して次々と這い出てくる化け物にビンタあるいは肘打ちを叩き込み、倒れたら踏みつけるのコンボで叩きのめしているとそのうち出て来なくなった
「これでよしっと!それで貴方の名前は?」
手をパンパンと叩きながらそう尋ねると
「……リーエです」
若干引いた顔で小さく返事を返すリーエにそうと返事を返し、エターナル・エクストリームを起こして
「乗って向こうで話をしよう?」
私はそう笑いかけ、その場を後にしたのだった……リーエと遊梨がバイクに乗った瞬間。2人が戦っていた場所に黒い光が集まり虚空へと飛び去っていた……それは余りに一瞬の事でリーエと遊梨も気付くことはなかったのだった……
第72話に続く
次回は情報交換の話になります。なお、ネクロカードは全部禁止を想定して作ってあるのでどれも壊れカードですのでご理解ください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします