第74話
夜第10学区のほうに移動していると天を突くような黒い光が浮かびあがる。それを見て
「あれは?」
「……ネクロの魔力ですね。私がサーチャーをセットした事に気付き、自分はここにいると意思表示をしているのでしょう」
夜なのに異常なまでの輝きを持っていた魔力の光は見る見る間に姿を消した。もう私とリーエが気付いたと判っているのだろう
「……行きましょう。以下に強力でも戦いようはあるでしょうから」
そう言って歩いていくリーエの背中の後ろを付いて夜道を歩いていると
(やっぱり……どんどん力が強くなってる)
白紙のカードの放つ力がどんどん強くなっている。一体何故……
「止まれ、遊梨」
声の口調が変わったリーエ。魔力を使うと気が荒くなると言っていた。つまり敵がいるということだ、リーエの横に移動してみるが
「リーエ何もいないわよ?」
あるのは闇だけ、そこに敵の姿は見えないし、精霊も何も言わない。リーエの気のせいでは?と思いながら言うと
「こっちだ!」
リーエが私の腕を掴んで飛びのく、それと同時に闇が質量となり私とリーエのいた場所を飲み込む
『外したか。まあ良い。巫女よ、お前の相手は我だ。その力貰い受ける』
山羊の頭にローブを纏った異形がその手にカードを持ち私を見ている。リーエはリーエで
「どうやら私の相手はお前のようだな」
『そうだ、小娘。叩き潰してくれる』
空間を引き裂き2首のドラゴンが姿を見せる。そいつは私を見ずにリーエを見ている。1人1体って訳ね
「私の心配は必要ないわよ。リーエ」
「頼もしい。負けるなよ」
ローブを翼に変え飛び上がるリーエを見ながら、身につけていた銃型デュエルディスクを取り出し
「相手になってやるわよ、化け物」
今この間も熱を放っているデッキを取り出しセットする。異形は両手に持っていたデッキを虚空に手放す。それは中空で留まり、翼がディスクに変化する
『「デュエル」』
互いにカードを5枚ドローし、手札にする。それと同時にリーエとドラゴンの戦いが始まったのだった……
『カアアアアッ!!!』
2本の首から吐き出されるのは高威力のブレスだ。魔力でもなんでもなくただの高密度に圧縮された空気の塊
「くっ!」
それを身体をねじって回避するが
『シャアアアッ!!!』
伸縮自在の腕が伸びて私を追いかけてくる。そのスピードは中々の物だが
(単調だな)
回避しやすい位置に来ているので翼で上昇しその一撃を回避し、間合いを放す
「私のターンドローッ!。手札の「E・HEROフェザーマン」を捨てて「クイックシンクロン」を特殊召喚!手札のチューニングサポーターを召喚してシンクロ召喚!「ドリルウォリヤー」!サポーターの効果で1枚ドロー!ネクロLV1を破壊せず、ドリルウォリヤーの効果でダイレクトアタック!手札のレベルスティーラーを捨ててドリルを除外し、カードをセットしてターンエンド!」
ドリルを身につけた戦士の一撃が敵を貫く。直ぐに元の姿に戻っているが、遊梨さんの方が優勢のようだ
「はっ!!!」
フェアシュテルケンを振るい魔力刃を飛ばすが
『無駄だ』
あのドラゴンが纏っている障壁は相当固いのか攻撃が通らない。かと言って威力の高い「トーデス・シュトラーフェ」を使えば、武器の重さでスピードが鈍る。そうなればあのドラゴンの攻撃は回避できない
(ジリ貧ではない、しかし攻め手がない)
武器を変えれば私が捕まる。ならば回避に集中し隙を見出すしかない。あれだけ高密度の障壁を全身に纏う事は難しい、攻撃が当たるポイントを重点的に密度の高い障壁で覆っているのだろう。その場所を見出す事は出来るだろう。魔力の流れを見ていればそれで判る。問題は……
『ディザスタークロウッ!!!』
爪だけを切り離し全方位を攻撃を繰り出してくる。スピードもあり、あの質量の攻撃を喰らえば致命傷は必須だ
(この猛攻撃だな)
伸縮自在の腕に、切り離す事ができる爪に圧縮した空気を吐き出す攻撃。どれもラグが少なく連続攻撃が出来る。前後左右から迫ってくる爪を回避すると同時に下に向かって加速する。私がいた場所を焼き払う電撃のブレスと
『避けたか』
感心したという感じのドラゴンの声。今まで使ってなかった属性攻撃のブレスまで使ってきたか……フェアシュテルケンを粒子に変換し両腕に圧縮した魔力を発生させる。責めるのではなく防御に集中しなければやられるのはこっちだ。徹底的に回避に集中するしかない。私はそう判断し、ドラゴンを見据え拳を構えたのだった……
ダークネスと名乗った化け物が使っているのはネクロデッキだった。どうやらこいつが本来のネクロデッキの持ち主か?
『我のターンドロー。ネクロLV1を守備表示に変更。カードをセットしてターンエンド』
ダークネス
LP2800
手札5
ネクロLV1 DEF1000
伏せ1
(全然動いてこない。何を狙っている?)
何を考えているのか判らないが、こうして守りに入っているのならこの間に攻めれば良いか。
「私のターンドロー!この瞬間ドリルウォリアーが帰還し、墓地のクイックシンクロンを手札に加える!」
これで手札は4枚になる。最初はシンクロに使えるカードが多かったけど今度は
(融合……良い手札)
現在の手札は「クイックシンクロン」「E・HEROエアーマン」「融合」「融合回収」……
(向こうのフィールドはネクロLV1。破壊しても自己再生する……なら)
「私は手札から「E・HEROエアーマン」を召喚!効果でデッキから「E・HEROブレイズマン」を手札に加えて、融合発動!フィールドのエアーマンと手札のブレイズマンを融合して「E・HEROノヴァマスター」を融合召喚!」
私のフィールドに紅いプロテクターを身につけたHEROが姿を見せる。どうせ自己再生するなら……ドローソースにしてやれば良い!
「ドリルウォリアーの攻撃力を半分にしてダイレクトアタック!」
『ぬぐ……』
ダークネス LP2800→1600
「更にノヴァマスターでネクロLV1を攻撃!」
『リバースカードはない、ネクロLV1は破壊されるが自己再生する』
「んな事知ってる!ノヴァマスターの効果で1枚ドロー!」
ドローカードはシャドーミストか……これなら行けるか?
「ドリルウォリヤーの効果発動。手札のシャドーミストを捨ててゲームから除外する!更に捨てたシャドーミストの効果でデッキから……」
デッキの中を確認……手札に加えれるHEROは……ん?このバブルマン
(アニメ効果!ご都合主義万歳!)
「E・HEROバブルマンを手札に加えてターンエンド!」
遊梨
LP4000
手札4枚
ノヴァマスター ATK2600
伏せ1
一応手札が減らないように整えた。ノヴァマスターを破壊されても問題ない。ドリルを除外してバブルマンで2枚ドロー、まだドロー加速出来る。この場なら……。
『我のターン。永続魔法「冥界へ続く結界」このカードの発動時、手札を任意の枚数墓地に送る。我は手札5枚全てを墓地に送り、ターンエンド』
ダークネスが墓地に捨てたのは「DTアステル」「DTインフェルタス」「DTクリサリウス」「ネクロレベル2」×2
(3種類のダークチューナー!?ダークシンクロモンスターまで持ってるの?)
それにしても態々3体のDTを墓地に送った理由が判らない。全員効果は墓地関係か?
「私のターンドロー!」
(またチューニングサポーター。徹底してドローソースしろと……)
ちゃんとデッキ圧縮が出来るようになっている。しかしあれだけあって白紙のカードは1枚もまだ来てないのは嫌われているのか運命的なアレなのか……。
「融合回収を発動!墓地の融合とエアーマンを手札に加える!」
手札6枚。これだけ回転させてもなお手札はまだ5枚以上ある。だけど、あの永続魔法の効果はまだあるはずだからやられる前に決める!
「エアーマンを召喚。効果でデッキからアナザーネオスを手札に加える!ドリルウォリヤーの攻撃力を半分にしてダイレクトアタック!」
『ぐう!?』
ダークネス LP1600→400
「ノヴァマスターでネクロLV1を攻撃して破壊!効果で1枚ドロー!エアーマンでダイレクトアタック!」
エアーマンのプロペラから放たれた嵐がダークネスを飲み込み、そのLPを0にする。……終わらない?
『我のLPが0になった瞬間「冥界へ続く結界」の効果が発動する。このカードを発動するとき墓地に送ったカード×800ポイントLPを回復し、回復したLP1000に付き1枚ドローする。我が墓地に送ったのは5枚のモンスター、よってLPを4000回復し、デッキからカードを4枚ドローする!』
ダークネス
LP0→4000
手札0→4
LPゲインと手札増強!?なにそのやられる前提の反則効果は!?
『更にこのカードの効果でLPを3000以上回復した場合墓地のDTを蘇生し、デッキのモンスター素材にをダークシンクロを行う事ができる!』
成る程、このためにDTを墓地へ貯めていたのか……。
『我は墓地のDTアステルを蘇生し、デッキのレベル4の「ネクロLV2」をダークシンクロ!黒き流星が全てを飲み込む邪の龍と化す!ダークシンクロ!!!現われよ「星黒龍 フェアデルプス」ッ!!!』
星黒龍 フェアデルプス ATK2500
ダークネスの背後に現れたドラゴンを見て私は目を見開いた
(スターダストドラゴン!?)
それは紛れもなくスターダストドラゴンだった。漆黒の鋭利な身体をしているけど間違いない。
『さてまだお前のターンだが?』
「……私はカードを1枚伏せ、クイックシンクロンを捨てる事でドリルウォリヤーをゲームから除外してターンエンド!」
遊梨
LP4000
手札6
ノヴァマスター ATK2600
エアーマン ATK1800
伏せ2
『我のターンドロー。手札から3枚の「闇に堕ちし竜」を発動。墓地の「DT」を1体ずつ蘇生する。蘇れ「DTアステル」「DTインフェルタス」「DTクリサリウス」』
今度はバイオリンを片手に優雅に演奏している化け物と蛹のような化け物そして巨大なアリのような化け物が姿を見せる。趣味悪いデッキだなぁ……。
DTアステル レベル12 ATK0
DTクリサリウス レベル12 ATK0
DTインフェルタス レベル12 ATK0
『そして墓地のLV2の効果を発動。このカードを除外してデッキからプロトデクスを特殊召喚』
プロトデクス レベル4 ATK2000
『DTアステルにプロトデクスをダークチューニング!黒き炎王の星が全てを破壊する魔の竜を呼び起こす!ダークシンクロ!現われよ!冥炎龍ヘイムダル!』
「レッドデーモンズドラゴン……」
冥炎龍ヘイムダル ATK3000
スターダストに続いて、レッドデーモンズまで来るか……。となると他のシグナーの竜が来てもおかしくない。
『さぁまだまだ行くぞ。2枚目のLV2を除外し、プロトデクスをデッキから特殊召喚!DTインフェルタスにプロトデクスをダークチューニング!屍者を操る邪悪なる道化龍よ!幾多の骸をその身に背負い!世界に終焉をもたらせ!ダークシンクロ!「道化龍ドラグレイパペット!』
そして錆びつき、今にも崩壊しそうなドラゴンが地面から這い出てくる。その姿はパワーツールドラゴンと瓜二つ。
道化龍ドラグレイパペット DEF2800
『ドラグレイパペットの効果発動。墓地の悪魔族を装備する、我は墓地のアステルを装備する。このカードが悪魔族を装備している場合。あらゆるカード効果でフィールドから放す事は出来ない』
(まだ展開してくるか……3体のダークシンクロを出したというのに。周到に用意されていたって事か)
『最後のLV2を除外しプロトデクスを特殊召喚。DTクリサリウスにプロトデクスをチューニング!全ての者に死を与える黒き星より現われよ!「死兆龍 アルミラエル」!』
黒い流れ星から姿を見せたのは蝙蝠のような翼を持つドラゴン。やはりエンシェントフェアリーに良く似ている。ブラックローズがハブられてる……いや、もしくはブラックローズだけは元の効果に似ているので合えて召喚しなかったのかも知れない
死兆龍 アルミラエル ATK2400
『バトルフェイズだ。アルミラエルでエアーマンを攻撃する!冥界波ッ!』
「くっLPで受ける」
遊梨
LP4000→3400
『ヘイムダルでノヴァマスターを攻撃!ダークギガフレイム!』
「リバースカードオープン!ガードブロック!戦闘ダメージを0にして1枚ドロー!」
『無駄だ。ヘイムダルの効果を発動!このカードが相手モンスターを破壊した時。相手の墓地を3枚まで除外し1枚に付き900ポイントのダメージを与える!我は墓地の「クイックシンクロン」「フェザーマン」「レベルスティーラー」を除外し2700のダメージを与える!煉獄火炎!!』
「きゃああああッ!!!」
遊梨
LP3400→700
(一気にLPを持ってかれた……。甘く見てたか!)
『トドメだ。フェアデルプスでダイレクトアタック!ブラックスターバレット!!』
「リバースカードオープン「ディメンジョンガード!」除外されているシンクロモンスターを特殊召喚し、そのモンスターとバトルを行わせる!ドリルウォリアーを特殊召喚し強制バトル!」
フェアデルプス ATK2500
ドリルウォリヤー ATK2400
何とか100ダメージに抑える事ができた。
『耐えたか。我はこれでターンエンド』
ダークネス
LP4000
手札1
フェアデルプス ATK2500
ヘイムダル ATK3000
アルミラエル ATK2400
ドラグレイパペット DEF2800
(これはかなり不味いかもしれない。実体ダメージは慣れているけど場がかなりやばい。しかもドローしたカードは)
白紙のカード……このタイミングで?
「私のターンドロー!」
また白紙のカードが!手札が8枚でも白紙のカードじゃ意味がない。クソッ!こうなったら泡男頼りか!
「バブルマンを守備表示で特殊召喚。デッキからカードを2枚ドロー!!」
バブルマンの効果で引いた2枚のカードも白紙のカード。これで4枚の白紙のカードが手札に。
(くっ……不味い。龍也のデッキはどうしろって言うの……)
手札は「融合」「調律」「チューニングサポーター」「アナザーネオス」そして白紙のカードが4枚。この手札でどうしろっていうんだが。私はこの手札で何とか逆転する手を必死で考えるのだが、さっきのヘイムダルの火炎で目がかすむ。
(本当に……不味い。ネクロの闇に慣れきっていない今の体だと長くは持たない……!)
薄れ行く意識を気合いで何とか繋ぎ止め、空を見上げるとリーエもまた苦戦し追い込まれて始めていたのだった……
「くうう!?」
ドラゴンの爪が私の障壁を捉える。その反動で大きく弾き飛ばされる
『甘いな。その程度か』
障壁の弱いところは罠だったのだ。攻撃と同時に反射されそこからは一気に劣勢に追い込まれた
(ぐっなんとか脱出を)
『ディメンジョンデストロイヤー!!!』
目の前の空間が大きく歪んだと思った瞬間強烈な閃光が走る
「ッきゃあああ!?」
それは余りに強大な魔力波だった。プロテクションごと弾き飛ばされ壁に背中から追突しめり込んでしまう
「う、動けない……」
ダメージのせいで瓦礫の中から脱出できない
『どうやら情報を入手するだけのつもりだったが、倒せるようだな。消えうせろ!パラドックスブレイカー!』
トドメと言わんばかりの砲撃が私を飲み込もうとした瞬間。この世界に来る原因となったカードがどこからともなく現われ、その攻撃を受け止めると同時に強烈な蒼い光を放ち、それは目の前のドラゴンを弾き飛ばし。私と遊梨さんを包み込むのだった……
第75話に続く
蒼い光は龍也さんの魔力光。つまりあの遺跡は龍也さんに関係のあるものだったということです。次回は決着編となります
どのような結末が待っているのか?楽しみにしていてください。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします