それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします
第76話
ドラゴンの頭の上に乗って上に上がってきた遊梨さんを見て、ズィードはその目を爛々と輝かせ
『■■■■ーッ!!!!!』
咆哮をあげてブレスを吐き出す、それを回避したクライスと言うドラゴンの上の遊梨さんは
「なにあれ?理性が飛んでない?リーエ何しでかしたの?」
「私は何もしていない、ただの反発現象だ」
ネクロの魔力と人間の魔力でさえ反発するのに、それよりも強力な聖王の魔力を使えば酷い暴走をするのは自明の理。恐らく身体の中を魔力が暴走し既に意識は無く、恐らく身体が消滅するまで暴れ続けるだけと言い掛けて
『■■■ーッ!!!』
「あぶねえ!!」
ズィードが遊梨さんと私を狙って火炎弾を吐き出す、それを相殺するクライスに
「助かった。だがあまり魔力を使うな、奴が魔力を吸収するだけだ」
「あー……俺達精霊の攻撃は一部を除いて魔法とは一応別だから問題ない」
私は奴の暴走時間が長引くのが危惧したがクライスの答えに安心した。改めて身体が粒子となりかけているのを強引に魔力で形を保っているズィードを見て
『ヴオルアアアアア!!!!』
咆哮と共に繰り出された爪を旋回して回避し、両手にフェアシュテルケンを作り出して構え
「あいつの存在が薄くなるまで粘り、隙を見てコアを砕く事だけだ」
「地味じゃない?もっとこう……ドカーンとないの?」
遊梨の言葉に私は周囲の魔力を無尽蔵に吸い上げて存在を維持しようとしているズィードを見て
「近づいて取り込まれたいなら止めはしないが?」
「取り込まれるのか!?」
クライスの声に頷きながら今のズィードの状態を説明する。
「今のあいつは消えかけている身体を強引に固定している状態だ、魔力であれ生命力であれ吸収して維持をしようとする。つまりはブラックホールに近い存在だ」
何でもかんでも取り込んでいるズィードはコンクリートにも手を伸ばしている、今のあいつには取り込めるものを取り込む程度の知恵しかない訳だ。
「下手に近づくのは命取り。そして攻撃するならば」
身体の崩壊が1番激しい箇所を指差す。ネクロの魔力と聖王の魔力がぶつかり合い火花を散らしている箇所だ
「あそこを攻撃するしかないわけだが、ピンポイント射撃とかはできるのか?」
「んーこれで行けるかな?」
遊梨さんが銃型の何かを取り出して構える。二連装で使いやすそうだ
「私が囮になる、狙えそうなら頼む」
私は遊梨さんにそう声をかけ、4枚に増えた翼を同時に羽ばたかせズィードの方に向かって行ったのだった
「早……ッ!?」
私は高速で飛び回るリーエを見て小さくそう呟いた。2枚の翼のときも早かったけど今のリーエは更に早い。しかも早いだけではなく
(機動力が今までの火じゃない!?)
4枚の翼が別々に動いているので急旋回に加え、急降下に急上昇まで、縦横無尽に空を舞うリーエは完全に空気抵抗を無視している
「遊梨。呆けている暇はないぞ?」
クライスの呟きに我に帰り銃型のデュエルディスクを構え、紫電を撒き散らしているポイントに高圧縮したモーメントの弾丸を撃ち込むと
『ギガアアアアアアアアアアアッ!!!』
思わず耳を塞ぎたくなるような悲鳴を上げるズィード。どうも弱点と言うのは本当らしいが
「ねえ?何かこっちに口開いてるんだけど」
私とクライスを見つめているズィードがその2つの首をこちらに向けて、大きく口を開いているのが見える
「やばい!逃げるぞ!掴まr」
「だが断る!ゴット・ブレイズ・キャノン!」
クライスに反論しながら腕からラーのお得意技を繰り出す。私の中にいる精霊の力を自身に転用できるのが私の強みで直接戦闘の術。敵の威力はF・G・Dレベル……押し切れる!三幻神の敵じゃない!でも邪魔しちゃ悪いから相殺レベルに抑える。
「お前なぁ……」
無茶をして呆れた声色のクライスに
「あれ程じゃないけど?」
「童女謳う華の帝政(ラウス・セント・クラウディウス)ッ!!!」
巨大な魔力で出来た刃を2本同時に振り下ろすリーエ。それはズィードの腕を根元から切り飛ばし消滅させる。クライスは少し考えてから
「あいつも大概だったか……」
「一緒にすんな!本気じゃないんだし!」
そんなアホな会話をしながらも自分のやるべきことは忘れない。身体の中間を狙って狙撃を継続、その紫電が徐々に大きくなってきたと思った瞬間
『グオオオオオッ!!!』
咆哮と同時に空間が開きそこから無数の漆黒の魔力弾が雨霰のように降り注ぐ。それを見たリーエが私とクライスの方に回り込み
「……今までの私では無理だったが、今ならば!」
リーエが両手を合わせて魔力を高めたと思った瞬間。複雑な魔方陣が空中に浮かび上がり、ズィードの弾幕を掻き消していく
「回れ2つの無限力よ」
リーエの身体に赤と黒の魔力が螺旋を描くように集まっていく。それはズィードと同じ輝きになる、心配になり声をかけようとするが、詠唱をしているということは何かの魔法。しかもあれだけ複雑な魔法と言うことを考えると、今ここで声をかけるのはよくないと判断し黙り込む。だがズィードもただで喰らうつもりはないのか、その口を大きく広げ魔力を蓄えている
「世界の境界を破壊し……呪われし運命を持つ者に安らかな終焉を……」
詠唱が進むに連れて魔法は眩しいほどの光を放ち、更に魔力を吸い上げどんどんその輝きを増していく
「聖と邪を併せ持つ私が裁き、許す……その罪は汝の消滅と共に許される!」
魔法陣が1つにまとまり、その輝きは常人には既に直視するのも辛いレベルだ。リーエは矢を射るように手を大きく引いてズィードを射線軸に捉える。
「アキシオンスマッシャー……ッ!」
『ウルオオオオオッ!!!』
リーエが最後の仕上げと言わんばかりに魔法陣に魔力を注ぎ込む、ズィードはその口と全身に魔力を纏い
「デッドエンドシュートッ!!!!」
『ウォオオオオオッ!!!!』
リーエとズィードの放った一撃が互いに互いを消し去りながら均衡状態に入る、それを見て
「皆!総攻撃!」
「言われなくても!」
「出番来た!これで勝つる!」
「お呼びと聞いて!」
一斉に出せるだけ精霊を召喚。神や魔法使い族といった一部除いて格が高いのを優先してさらに遠距離攻撃組を抽出して急いで出したから合計50体くらいしか出せなかった。
クライスもいつもの火炎弾を発射、それを中心に魔力非使用組の攻撃が纏わりつき巨大なエネルギー弾として襲いかかる。
拮抗していた所に別の攻撃が当たり、その均衡はあっけなく崩れリーエの放った魔力波とこっちの総攻撃はズィードを捉え、その魔力とエネルギーでズィードを消滅させていくのだが
『オオオオ!!!』
それでもまだその爪を私とリーエに伸ばそうとする。その恐ろしいまでの闘争本能に思わず身震いするが
「既に虫の息だ、もう攻撃することも叶わない」
リーエの言葉の通りズィードの爪はゆっくりと炭化し消えていく。
「ネクロってああいう風に消えていくんだ」
ネクロの消えるところは初めて見たけど、随分変わった消え方なんだと思ってみていると
「違う……あれは今までのネクロとは違う。あの虹色の魔力が何よりの証明だ」
ああ、あの虹色の魔力?随分と綺麗だな?って思ったけどなんなんだろう?と思っているとリーエが
「あれはベルカと言う土地の王族の魔力。ネクロが持てる魔力じゃないんだ」
王の証の魔力を使えるネクロ。話を聞いた限りだとおかしい。だけど話を聞こうにもズィードは既に全身が炭化して、ボロボロと崩れ去って……
「!リーエ、なんか飛んでった」
ズィードの頭が割れてそこから何かが飛び出していく、咄嗟に攻撃しようとするがもう時既に遅し。その何かは闇に溶けるように消えて行ってしまった。頭の中から飛び出していったということはズィードの記憶か何かか?と考えていると
「り、リーエ?」
何の言葉もないリーエにそう声をかけるとリーエは私を見て
「少し……疲れました。後はよろしくお願いします」
糸の切れた人形のように崩れ落ちるリーエを慌てて抱きとめる。寝息を立てている所を見る限り疲れきって眠ってしまったのだろう。
「あれだけの魔力を使えば無理もないか」
あのアキシオンスマッシャーの威力はとんでもない威力だった。精霊の力を借りられる私ならいざ知らず単体であれだと魔力も相当消費したのは当然だろう。
「帰ろっか?クライス」
「ああ。取り敢えずアジトだな」
クライスの頭の上でリーエを抱き抱えたまま、私達は家へと帰ったのだった。ちゃんとバイクも拾って。
世界の終焉の地に飛んできた光はドラゴンの翼の中に戻る。目を閉じていたドラゴンはうっすらとその目を開き
「ご苦労であった、ズィード。今しばらく我の中で眠れ」
千切れていた翼がゆっくりと再生していく、このドラゴンの7枚の翼。その1枚1枚がネクロと聖王の魔力を宿したネクロでもあるのだ。リーエと対峙したズィードは死んだが、また時間が経てば再生する。しかしそび7枚の翼はどれも傷つき、再生している途中だった。ズィードが不安定だったのは回復している途中で切り離されたからだったのだ。ドラゴンは虚空に浮かぶ世界を睨みながら
(力が目覚めた。しかしあの時の力と違う)
千年前のあの娘とは違う力。正と負の魔力の複合。そんな事が出来る存在は我の知る限りでは「聖魔王」そして「神王」だけのはず。それなのにあの娘が使ったのは聖と闇の複合による強制消滅魔法
(運命は何かを導こうとしている)
かつて我が起こした戦争とは違う。時間が経っているのだからとは言え、予想外の展開といえばそうだろう
(あの娘も警戒しておこう、次はお前だ)
再び傷を癒すために眠りに落ちていくドラゴンの視線の先にはもう少しで再生すると言う段階の翼があった。そしてその翼には剣を携えた異形の騎士の姿が浮かび上がっているのだった……ドラゴンは再び眠りに落ちる。全てを見つめ、全てを理解しながら、その傷を癒すために……だが閉じかけた目を開きある世界を見つめ
(気付いて、いや直感か。恐ろしい事だ)
その世界はリーエが遊梨の世界に行く前に居た世界で、そして認識できないはずの世界を見つめているのはアルハリムだった。その目はとても鋭く、お前を見つけているぞ、と言わんばかりの眼光で終焉の地を見つめているのだった……
「向こうも気付いたか。一瞬だけだったけど」
満月だけが照らす海を見つめながら私はそう呟いた、姿の見えないリーエを探していたら、唐突に感じた黒龍皇の魔力。
「まだ完全ではないけど、動く程度の力は回復しているようだね」
場所を特定しようとしたが、その前に世界の通路を閉じられた。後を追って探すのは難しいだろう。私は砂浜から顔を出している遺跡に腰掛け
(この記憶は一体……)
唐突に思い出した黒龍皇と自分の戦い。いやかつての私とでも言うべきなのだろうか?私が見れずの英雄と呼ばれている時代よりも先。だがこれは私の知らない記憶……顔の見えない4人の男女の姿、私はかつてその4人と共に居たのだろうか?
「ちっ!駄目だ」
思い出そうとすればするほど記憶は消えていく、今も感じた黒龍皇の魔力の特徴ももう思い出せない
「これはどういう状況なんだい?」
勝手に思い出し、消えていく記憶。そして残るのは言いようもない焦りだけ、これがあるから何か自分でも知らないような途方のない自体になっているのではと焦りだけを感じる
(……何かきっかけが必要なのか?)
思い出す時はいつだって唐突で、そして周りに誰も居らず、そして僅か数分でその記憶も消え去る。それが何を示すのかが判らない。それに
「なんで私は黒龍皇の事を知っているんだ?」
これが1番判らない、なぜ知らないはずの存在を知っているのか?そして向こうは私を知っている
「何かあったのだろうか?」
かつて何かあったのだろうか?私も知らない、そう前世とやらで私と黒龍皇。そして顔を知らない4人は何かの関係性があったのか?
「全く。これはどういうことなんだい」
遺跡の上に寝転がりながら空を見上げる。美しい満月を見ながら、ぼそりと
「リーエはどこに行ってしまったんだろうね」
残っている魔力の痕跡とリーエの気配。何かの面倒ごとに巻き込まれたのだろうか?と心配しながら、この場所でリーエが戻ってくるのを待つのだった……
第77話に続く
リーエの真なる力の解放に。黒龍皇やアルハリムの関係性。その全てが徐々に判ってきてきましたね。結構しっかり考えているのでどうなるのか楽しみにしていてくださいね。コラボは次回で終了予定です。どういう終わり方をするのか楽しみにしていてくださいね。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします