どうも混沌の魔法使いです。今回の話で「堕落天使様」とのコラボは終了です。少し短いかもしれませんがどうかよろしくお願いします
第77話
この世には敵に回してはいけないと呼ばれる種類の人間が少なからず存在する。単純に力の強い者や経済力に政治力と言った物もそうだが、それよりももっと大きな力がある。それは
「……食べたら駄目なの?」
目の前で湯気を立てている美味しそうな料理の数々を見つめながら、リーエにそう尋ねると
「……何か仰られましたか?」
笑顔のリーエの圧力に負けて思わず膝の上に視線を落としながら
(とんでもない威圧感!?なに三幻神とかよりも上なんだけど!?というかデジャブ過ぎる!お母さんから何か学んだの!?)
力はそれよりも下の筈なのだが、そう思ってしまうほどの威圧感に少々懐かしさを感じながらリーエを怒らせるような事を言ってしまったか考える為にあの戦いの時のことを思い返す。実力行使と言う手もあるけどこの感じはどうやら私に非があるらしいし、喧嘩別れで遺恨を残す真似は可能な限りしたくないので自分の発言を必死に思い返し……あ。
(も、もしかしてあれ?)
ダークネスとの戦いの時にヒートアップして思わず、龍也の事を馬鹿野郎と叫んでしまった事が思い当たった。私自身も恋をしているから分かるけど意中の相手を馬鹿にされてはいそうですか、と言える人間はそうは居ない。まあ私は言える例外だけど。お兄ちゃんは良くも悪くも敵味方がはっきりしやすいからね。兎も角、それ以外に心当たりがない。だけど
(実際馬鹿じゃないの?あの人)
自分の身を捨ててまで自分が護ると決めた人間を護り、自身が傷つき周囲の人間を傷つける。しかも自分が抱えている事は何一つ周囲に話さず、自分ひとりで処理をしようとする。愚か過ぎて最早泣けてくるレベルだよ。それを馬鹿といわずなんと
ダン!!!
「!?!?」
「何か失礼な事を考えなかったか?」
戦闘モード!!!しかも魔力がスパークしている。これはあれだ、怒りのスーパーモードに違いない。このまま地雷だらけの所でスキップをする気はないし何よりも!
(北京ダックに鮑の姿煮が食べたい!!!!)
私のリクエストの品を作ってからのこの無言の圧力。なんと言う非道!このままでは冷めて最も美味しい時を逃してしまう。今この最高のタイミングで食事をするためならば!
(私は私の誇りを捨てる!!!)
食欲は誇りを凌駕する。これが空腹と食べたいと思っていた品が目の前にあるのなら、食欲は更にその力を増大させる。今ここに傍若無人で我が道を行くはずの遊梨の心が折れた。普段なら逆に逆切れしてもおかしくない遊梨だが、この場合は食欲が勝った。
「龍也の事を馬鹿野郎なんて言ってすいませんでした!!!」
「……龍也?」
リーエの視線が強くなったのを見た私は
「龍也さんのことを馬鹿野郎なんて言ってすいませんでした!!!」
今この瞬間だけは意地も誇りも何もかも捨てた。精霊が心の中で何か騒いでいるのが聞こえたがそれをガン無視し、リーエが良いと言うのを待っていると
「……意地悪をしすぎましたね。どうぞ座ってください、冷めないうちに食べましょう」
「ありがとう!」
私は直ぐに椅子に座り料理を見つめながら
(おお……他にも色々ある)
春巻にあれは……ふかひれだろうか?豪華すぎる食材の数々に思わずツバを飲み込んでしまう。リーエが向かい側に座ったのを確認してから
「いただきます!」
手を合わせて揚げたての春巻きへと箸を伸ばすのだった……
さっきまでの態度はどこへやら
「うわ!美味ッ!なにこれ?中に蟹が入ってるんだけど!?」
遊梨さんが驚くのは無理もない、今遊梨さんが食べているのは脱皮したばかりの蟹を使った中華まんで、作れる時間が短い上に味付けが難しい料理だ
「……脱皮したばかりの蟹を使った中華まんです。さくさくとしていて美味しいでしょう?」
「うん!美味い!このエビチリも絶品だね!」
にこにこと笑いながら食べている遊梨さんの食欲はスバルさん達に似ていると思いながら
「……気に入ってもらえて嬉しいです。どうぞ、どんどん食べてください」
私は遊梨さんに蒸したての小籠包を進めた。龍也様を馬鹿野郎なんていってくれたのだから、これくらいのささやかな反撃は許されるはずだ
「わーい……あっつああああああ!?」
がぶうっと齧りつき、熱々のスープが口の中に流れ込んで悶絶している。遊梨さんを見て
(まぁこれくらいで許してあげましょうか)
私は苦しんでいる遊梨さんを横目に魚の中華餡掛けに箸を伸ばすのだった
「……酷くない?」
下を火傷したのか喋りにくそうに言う遊梨さんに
「……何のことか判りませんね」
食事の後で、ジト目で私を見てくる遊梨さんにそう返事を返すと
「まぁあれはあれで私が悪かったから、仕方ないと割り切るけど。この後如何するつもり?」
如何するつもり?と尋ねられた私は直ぐに
「……転移する前の世界に戻ります。今の私ならある程度は座標を特定して転移できそうなので」
とは言え、転移するのはアルハリムさんやペガサスさんの魔力を座標にして転移する物だ。これで龍也様の世界に戻れるかとも思ったのだが
(……無理でしたもんね)
アルハリムさん達の魔力は今こうしている間も感知出来ているのだが、龍也様の魔力を感じる事が出来ない。そうそう上手い話はないかと思っていると
「急に魔力が上がったけど……隠してたとか?」
「……いいえ。私もこんな力があるとは思ってなかったので」
まさか龍也様に魔力を封印されているなんて思っても無かったんですよと言うと
「ふーん。かなり慎重に事を考えてたのかもしれないね。強い力は強い力を呼び寄せるって言うし」
「……それは嫌って言うほど体験してきましたから」
アークとかアークとかアークとか、ストーカーのように付きまとうアークの事を思い出し顔を顰めていると
「まぁいいんじゃない?ここで私とリーエがあったのも何かの運命。こうしてリーエが強い力に目覚めたのもまた運命なんじゃない?」
遊梨さんがそう笑う。龍也様を知っている遊梨さんと彼女の兄である終夜さんを知る私がこの世界で出会ったが確かに出来すぎている、それに
「……そのカードは龍也様の力に満ちてますからね」
「あ?これ?まえにちょっとパクッたんだよね」
苦笑している遊梨さん。龍也様が簡単に私物を盗ませるとは思えないので、恐らくわざと盗ませたんだろうなあと思いながら
「……まぁそう言うこともあるでしょうね。それじゃあ、今日はそろそろ寝ます。早く合流しないといけないので」
あの世界で待っているアルハリムさん達の事を考えると、少しでも早く合流したほうがいいだろうと思いながら言うと遊梨さんは
「そっか、じゃあお休み」
「……ええおやすみなさい」
私は遊梨さんに背を向けて、自分の部屋にもどり布団の中に潜り込み
(……龍也様は何を考えておられたのでしょうか?)
私の力を封印して、遊梨さんに業と自分の力をもったカードを盗ませた。その真意が判らない。龍也様は遠くを見ている方だ私の考えが及ばないのは判るが
「判らないと言うのは寂しい者ですね」
龍也様の見ているものが判らない、話を聞いたとしても理解できない。それはとても寂しい事だと思いながら、私は眠りに落ちたのだった……しかしこのとき見た夢は何処か奇妙で、そして夢とも思えない物だった筈なのだが、目覚めると綺麗さっぱりと忘れているのだった……
そして翌朝
「中々楽しかったよ。また何処かで会えると良いね」
暮らしていた家を元の樹林に戻しながら言う遊梨さんに
「……ええ。また何処かで会いたいですね」
遊梨さんは今までの私の知り合いではいなかったタイプだ。良い経験が出来たと思いながら
「じゃあまたどこかの世界で」
封印を解除し、アルハリムさんの魔力を目印にゲートを作り出し、遊梨さんに別れを告げる
「出来たら平和な世界でね?後龍也には気をつけた方がいいよ。いつか絶対に自分の身を滅ぼすタチだよ。失いたくなければ……」
「分かっている。終夜さんも同じ事を言っていた」
どこまでも進んでいく龍也様を止める事が出来なければいつかは私達は龍也様を失う事になるだろう。これは終夜さんにも言われたので判っている・
「やっぱり……じゃあまたね」
「ああ、またな」
敢えてさようならと言わずに遊梨さんに背を向け、私は元の世界に戻るのだった。1人残された遊梨はヘルメットを被りエターナル・エクストリームに乗り込み
「さあ!私達も別の世界に行こうか!」
『ああ。そうだな。行こう』
カードの精霊達と共に再び別の世界へと旅立って行ったのだった……
満月の光を浴びながら海を見つめる。思い出せそうで思い出せない記憶に苛立ちを感じていたのだが
(こうして海を見ていると落ち着くものだね)
思い出せないのなら無理に思い出す必要はないのではないのだろうか?いずれ時が来れば思い出せると楽観的に考えている自分が居る事に苦笑しながら
(そろそろ寝ようかな)
リーエの姿が見えないことは心配だが、リーエも子供じゃない。きっと大丈夫だろうと思い、ペガサス達がいる場所に引き返そうとした瞬間
「熱!?ヒュぺリオンが!?」
今まで何の反応も示さなかったヒュぺリオンが強烈な熱を放ち、立ち止まった瞬間。空間に皹が入り砕け散る。敵かと思い身構えていると
「ふう……成功か?」
より鋭利なデザインになった騎士甲冑を身に纏い、4枚の翼を持つリーエが私の前に降りて来る
「リーエか?」
思わずそう尋ねてしまった。騎士甲冑と翼にしてもそうだが、感じる魔力量が大幅に上昇している。前は私よりも数段下だったのだが、今は私に大分近づいていると思わせるほどの魔力が上昇しているのだ。リーエは私の問い掛けに答えず、着地すると同時に
「リーエ!?大丈夫か!?」
糸の切れた人形のように倒れこむリーエを抱き抱えると、完全に脱力していて見た以上に重く感じた。意識のない人間は思いと言うがそれは本当の事だ。リーエを抱きとめるとリーエはうっすらと目を開けて
「……アルハリムさん、戻ってこれてよかったです。あの遺跡の奥で強制転移をさせられて、結構大変だったんですよ」
大変の言葉にどれだけの苦労があったのだろうか?私はメビウスを取り出し
『終わらない運命』
『囚われた人』
『断罪なる聖水』『神々の涙』
『全てを定め、固定の舞台で苦しみもがけ』
『アウトルス・メビウス』
氷で来た槍がリーエの身体に当たるとそれは柔らかい光と変換されリーエの体力と魔力を回復させる。リーエはゆっくりと起き上がり砂浜に座り込み
「……助かりました。封印解除で魔力が上がったのはいいのですが、コントロールが難しくて」
身につけていたブレスレットを操作するリーエ。するとその魔力量ががくんと低下する。私はメビウスを影の中に戻しながら
「その力は一体?」
「……龍也様からの贈り物です。私の力を解除するための物だそうですね」
嬉しそうに笑いながらブレスレットを見つめるリーエ。彼女の旅は龍也と言う人物に会うためのものなのだから、嬉しくなるのは当然だろう。しかしそれよりも問題がある
(ヒュぺリオンの熱がどんどん増している!?)
もうシャウトの中に入れているのも危険だ。私は自身の影に手を伸ばし
「リーエ。少し離れるんだ」
「……判りました」
私のただ事ではない気配に気付いた。リーエが離れると同時にシャウトの中からヒュぺリオンを引き抜くと
「うわ!?」
それと同時にヒュぺリオンの熱が一気に開放され、海の一箇所に当たると海が蒸発し、海底に沈んでいた遺跡がその姿を見せる。
「……かなり沖ですね。どうやって行きますか?」
問題はかなり沖であるという事。どうやって移動します?と尋ねてくるリーエ。すると手の中のヒュぺリオンが再び熱を放つと
「どうやらこれで行けと言うことみたいだね」
光りの道が砂浜から現れ、一直線に沖へと走る。魔力で出来てはいるが完全に物質化している、普通に歩いても大丈夫そうだ。熱が収まったヒュぺリオンをシャウトの中に収納し、沖の遺跡を見つめる
「アズタミアだ。しかも私の時代よりも更に古い。あそこなら手掛かりがあるかも知れないね」
海底から姿を見せたのは、私の時代よりも更に古い時代のアズタミアの遺跡だった。如何してこの世界にあるのか?と言うのは気になったが、こうして姿を見せてくれたのは何かの運命のように感じる
「……だけど捜索は明日ですね?」
リーエの言葉に頷く、どういう原理かは判らないが、ヒュぺリオンとアズタミアの遺跡が呼び合った。いや……
(リーエの力と遺跡が共鳴したのかもしれない)
なんにせよ、あの遺跡には何かあるに違いない。私はマントの砂を払いながら立ち上がり
「私は明日に備えて練るけど。どうする?」
「……私も寝ます。魔力の消費が激しくてしんどいので」
リーエはその言葉の通り酷く消耗しているようなので、私が肩を貸しペガサス達がいる所へと向かいながら
(何かが動き出そうとしている。急激に、それでいて大きく)
あの遺跡の碑文の通り。ジオガディスが味方になったことで黒龍皇の復活が近づいてきているのだろうか?なんにせよ今は
(身体を休めて、あの遺跡の捜索だな)
私はそう判断し、リーエを連れてテントが張ってある丘の上へと移動したのだった……
第78話に続く
次回は結構ネクロの謎に踏み込んだ、謎解きフェイズをやろうと思います。そして次回のコラボも当然「黒龍皇」に関するテーマで進めて行こうと思っています。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします