宵闇の使者【凍結中】   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回は前半「ほのぼの」後半「シリアス」でお送りします。ほのぼのはマスコットがメインになります
それでは今回の更新もどうかよろしくお願いします


第85話

 

 

第85話

 

スラッシャーへの対策も思いつかず、紫さんが帰ってくるまで自由行動をすることになったのですが

 

「……アシラさんは何をしているのですか?」

 

霊夢さんに貰った布で何かを縫っているアシラさん。しっかりと縫っている所を見ると何かを運ぶ者でも作っているのでしょうか?

 

「もう少し出来るから待ってて」

 

慣れた手つきで縫い物をしているアシラさんの隣ではイシュリさんとレヴィルが目を輝かせて待っている。レヴィルに何か作ってもらっているのかな?と思い観察していると

 

「出来たわよ?」

 

「ありがとう!姉上」

 

差し出された何かを大事そうに抱えて、レヴィるの前に置いたイシュリさんは

 

「おいで」

 

「アウ♪アウ♪」

 

もぞもぞとその中に潜り込んだレヴィル。もこもこと布が動いている……中で何をしているのでしょうか?観察していると

 

「アウ!」

 

ひょこっと顔を出してご機嫌のレヴィル。イシュリさんは袋に手を回して

 

「よいしょ」

 

「アウー♪」

 

背中に背負う。それを見て判ったアシラさんが作っていたのはナップザックだったのだ

 

「ほらレヴィル移動するの遅いし、背負えばそんなに重くないでしょ?」

 

レヴィルは外見こそ大きいが、その実物凄く軽い、精々子犬程度の重さだ。ナップザックに入れて運ぶには丁度良い重さのようだ

 

「アウー」

 

背中のほうから甘えた鳴声を出すレヴィル。それを見て凄く嬉しそうにしているイシュリさんを見ていると

 

「レヴィルはイシュリには凄く良いかもしれないわね」

 

「……情操教育と言うやつですか?」

 

龍也様がよくリィンさんたちに動物を持って帰ってきたのと同じかな?って思いながら尋ねると

 

「んーほら?イシュリって護られてばっかりじゃない?だからイシュリが護ってあげる存在があると自立するかなーって」

 

あははと笑うアシラさんの言うことは正しい。今まで甘えてばかりだったイシュリさんが少しずつ代わってきていると言うのはこの2日で判っているのだから。嬉しそうにくるくると回っているイシュリさんを見ていると、庭から聞こえていた木槌の音が止まる

 

「どうだ、良い出来だろう」

 

ジオさんが額の汗を拭いながら部屋の中に入ってくる。その手には手作りとわかるケージのような物が握られていた

 

「朝から何を作っていると思ったらケージなのぉ?」

 

ごろごろしているヴィルヘリヤさんを無視してジオさんはそれを机の上におく

 

「手作りの割には良い仕上がりね」

 

「……ですね。カエデ用ですか?」

 

丁寧なつくりのケージ。その出入り口はちゃんと扉になっていてカエデなら自由に開け閉めできるだろう

 

「そうだ。カエデは結構眠るからな。篭に入れておけば運びやすい」

 

ドラゴンを犬か何かと同等の扱い。だけどこれは龍也様も同じだったのでなんとも言えない。ジオさんはポケットから布を取り出して

 

「こうすればカーテンになる」

 

な、なかなか芸の細かい人ですね。外見が粗暴だからもっとおおざっぱだと思ってました

 

「カエデー」

 

「ガウ?」

 

呼ばれて直ぐ顔を出したカエデは机の上のケージを見て

 

「ガウガウ♪」

 

嬉しそうに鳴きながらその周囲を見て回る。時折匂いをかいだり、尻尾で突いて観察している様子だ

 

「ガウガウ」

 

小さい手でケージの中を開けて入っていくカエデ。出入り口のところから顔を出したり、引っ込めたりして遊んでいる

 

「これから寝る時箱の中に入るんだ。いいな?」

 

「ガウッ!」

 

ケージの中に伏せて返事を返すカエデ。そのまま起き上がる気配が無いことを見ると眠るつもりなのだろう

 

「ニャオニャオ♪」

 

「はいはい。あんまり暴れないでね」

 

ラビリルを頭の上に乗せてきたアルハリムさんは、レヴィルが入っているナップザックとケージの中のカエデを見て、それから頭の上のラビリルを見てから、私と私のフードの中からひょこっと顔を出しているスザクを見て

 

「リーエ。私達も何か作って上げた方が良いのかな?」

 

「……かもしれないですね」

 

フードの中で擦り寄ってくるスザクと尻尾を振っているラビリル。明らかに期待している。上手く出来るかどうかは判らないけど挑戦してあげたほうが良いかもしれないと思っていると

 

「リーエ!アルハリム!スラッシャーが動いたわ!直ぐに準備してこのままだと妖夢が危ない!」

 

スキマから顔を出してそう怒鳴る紫さん。どうやらラビリルとスザクの家を作るのはもう少し後になりそうだ……

 

 

 

霊夢達の護衛としてペガサス・ヴィルヘリヤ・ヴォルガンドを残し紫の隙間で白玉楼へ移動しながら、私はある考えをしていた。

それは白玉楼で眠る「魂魄妖夢」と言う妖怪についてだった

 

(私の予想が当たっているのなら、最悪の展開になるとしか思えない)

 

アルハリムには1つの予想……いや、確信があった

 

(話しに聞いただけが、仮にも英雄と呼ばれている存在。その魂は質が良い。なら……下手すると、私のような展開に繋がる確率が高い)

 

強いネクロの素体として挙げられるのは2つ。1つは桁並外れた闘争本能、もしくは殺人・殺戮衝動を持つ犯罪者、元が犯罪や破壊を楽しむ異常者ならば、その力は増し、異形型強いネクロになる。そしてもう1つは魂の質だ、仮にだが正義をなし続けた人物がいたとする。すると周囲の人間からの賞賛や感謝の中でその魂の質はよりよいものにと変化していく、霊格が上がるともいえる。そして霊格の高い魂ベースにネクロ化すれば、その本人の経験を持った人型ネクロになる可能性がある。そうなれば……私のようにネクロの因士を意志で封じ込める事もできる

 

(だが、魂(精神)だけが表に出て、肉体がネクロの闘争本能そのものだったら……?)

 

意思が無い存在となれば、それはネクロの闘争本能と殺戮衝動に従い、破壊を繰り返すだけのもっとも凶悪な存在になる。それにスラッシャーの能力までも加えられたら対処法が完全になくなる

 

(使わざるを得ないかもしれない。「覇技」を……いや、スラッシャーのあの障壁を砕いて、存在を消すだけなら楽だ。だが、周囲の被害を考えると使いたくは無い。……やむを得ない状況になったら、だね)

 

最悪、ガイウスの能力を使うためにスラッシャーに素手で直接触らせなければならない。そうすればスラッシャーの意識を夢の中に閉じ込める事ができる。そうなれば確実に動きを止める事が出来る、そして動きが止まればそれだけ勝率が上がる。だが、ジオの黒炎がスラッシャーの障壁を突破する事ができなければ?直撃したとしてもリーエの魔法で仕留めきれなかったら……?そして回避されてしまったとしたら?そうなれば使わざるを得ない「覇技」を……

 

(ああ、こんな状況……昔にもあったな。……使ったお陰で、国の周囲に荒野が広がった。……だが、やむを得ない)

 

覇技を使えばこの幻想郷にどれだけの被害を与えるだろう?覇技は触り程度でも充分すぎる威力がある……

 

「……どうかしましたか?」

 

「あ、ああ……大丈夫。なんでもないよ」

 

私が考え事をしているのに気付いたリーエが心配そうに尋ねてくる。ジオとアシラも同じような顔で私を見ている

 

(大丈夫。私は1人じゃない……あの時……?あの時っていつだ?)

 

一瞬頭の中にノイズが走った。なんだ?なんで記憶があやふやなんだ?前に覇技を使ったのは……いつだ?

 

(なんだ?なんだこの違和感は?)

 

なんでこんなタイミングでこんな違和感を感じる?……なにか別の理由があるのか?

 

「どうした?なにか不都合でもあるのか?」

 

ジオの言葉に思考の海から引き上げられる。今はそんなことを考えている場合じゃない、スラッシャーが妖夢の魂を取り込む前に倒さなければただでさえ低い勝率が更に下がる。それだけはなんとしても防がなければならない

 

「もう少しで着くわ。多分直ぐ戦闘になるとおもうから、私は直ぐ下がるわよ」

 

紫の言葉に頷く、妖怪としては力の強い紫もネクロ相手では不利だ。ここまで運んでくれただけで充分と考えるべきだ

 

「出るわ!あとは任せるわよ!」

 

開かれたスキマから飛び出すと、すぐ中国の建物に良く似た巨大な建築物が視界に飛び込んでくる。これが白玉楼と言うのか、周囲には高密度の結界が展開されていてそう簡単に突破できないというのは一目で判る

 

「ヒャハ!きやがった!アヒャヒャヒャ!!!!」

 

甲高い笑い声と同時に放たれた魔力波が凄まじい勢いで迫ってくる。それは私達の中で唯一飛行能力の劣るアシラを狙ったピンポイント射撃だった

 

「スザク!」

 

「キュー!!」

 

リーエの言葉でスザクがフードから飛び出し、アシラの背中に張り付き少しだけ巨大化する

 

「旋回して」

 

「クアー!!」

 

アシラの言葉で羽ばたき旋回するスザク。アシラの飛行能力が劣ることは判ってた、ならばどうする?簡単だ。スザクに任せればいい。スザクは鳥型ネクロでとても賢い、人の言葉を完全に理解している

 

「ナイス!スザクそのまま羽を散布して!」

 

「クアー!!!」

 

力強く羽ばたき周囲に起爆性の羽を散布する。これはジャミング効果もある

 

(リーエ。油断するなよ!)

 

(判ってるしばらく離れる!)

 

リーエがローブの中から小さな魔力石を投げる。そしてそれは空中でリーエの姿を形作る、即席の幻影魔法だが、乱戦となればそこまで見ている余裕はなくなる

 

(リーエのスキルの多さには驚かされるよ)

 

剣術・槍術に体術の基本的な戦闘スキルに加えて、幻術に身体強化の基礎まで覚えている。使う機会がなかったせいか荒削りだけど充分な効果を発揮してくれるだろう

 

「いい加減もっとまし武器が欲しい」

 

ジオが溜息を吐きながら手にしている刀を見つめている。普通の刀としては名刀だが、ネクロ相手なら鈍らとしか言いようが無い

 

「次の世界で探しなさい。ペガサスも何か探してるし」

 

アシラが退魔刀を抜き放ち浄焔を刀身に纏わせる。私もヒュぺリオンを抜き放つ

 

(やはり違和感が残るか)

 

ヒュぺリオンは私の武器ではあるが、私の物ではない。1度ジオに持たせてみたがまともに振ることも出来ない

 

(元の力が強すぎたんだな)

 

私の持つ最強の剣の劣化コピーと言えど、自意識を持ったヒュぺリオンはずっと自らの主を探している

 

(今だけで良いから力を貸してくれよ。ヒュぺリオン!)

 

私は心の中でそう呟き、スラッシャーへと切りかかっていったのだった……

 

 

 

 

(ヒャハ!こいつら何を企んでやがる?)

 

あたしには攻撃が聴かないと判っているくせに近接戦闘を仕掛けてくる。何か作戦があるのか?

 

(その程度であたしをどうこう出来ると思うなよ)

 

アシラの浄焔。ジオの黒炎は確かにネクロであるあたしにも致命的なダメージを与えれるだろう

 

「直撃すればなあ!!!」

 

振り下ろされた黒炎を纏った一撃を障壁で受け止め。そのまま握り拳を作りジオの腹に拳をつきたてる

 

「ぐはあ!?」

 

蹴り飛ばされたボールのように吹き飛んで行くジオ。だがあたしの手に来た衝撃は少し軽い

 

(自分から飛んたか!面白い)

 

普通のネクロで黒炎を持つネクロはその能力に絶対の自信を持つため、大雑把な奴が多いがそこは半ネクロ。慎重にもなるというわけか

 

「キューッ!!!」

 

「はっ!子供騙しだな!」

 

アシラの背中に張り付いている鳥型のネクロが翼を飛ばしてくる。それを障壁で防ぎそのまま走り出そうとするが

 

「シッ!!!」

 

「あたらねえよ!!アヒャヒャッ!!!」

 

アルハリムが飛ばしてきた魔力刃を障壁で押し返し、剣を構えなおすと同時に再びあたし目掛けて翼が飛んでくる

 

(鬱陶しいな!あの鳥!)

 

攻撃は当たらないから防ぐ必要が無い、だがこうも連続で攻撃されると鬱陶しい

 

(まずはジオだ!)

 

あの黒炎の威力が上がってくれば、その内あたしの障壁を突破してくるかもしれない。だからこそ最初のあいつを倒す!

 

「ヒャハ!てめえの魂を喰らえばあたしも黒炎を使えるようになるかあ!?」

 

あたしの能力は防御向けの能力だ。基礎能力が高いから気にならないが、主君様の事を考えるとあたしももっと強力な攻撃を使える能力が欲しい。だからこそジオに手を伸ばす

 

「くっ!!おおおおッ!!!」

 

ジオが全身から黒炎を噴出しあたしを遠ざけようとする。本来ならネクロも焼き尽くすその業火だが、あたしの結界突破するには出翼が足りない

 

「あは!効かない「これならどうよ!!」ちいっ!!」

 

上空から降下してきたアシラの浄焔と目の前のジオの黒炎が幕となりあたしの視界を隠す。これがあたしの能力の唯一の欠点、攻撃範囲の広い攻撃や魔力波を使われると障壁とぶつかって視界を完全に隠してしまう

 

「ちいっ!」

 

舌打ちし大きくバックステップを取る。乱戦状態で視界を失うのはそのまま死に直結する……だからこそ距離を取ったのだがとんっと軽い衝撃が走る

 

「あ?」

 

「待ってたよ。スラッシャー」

 

『夢はどうかな?』

 

背筋に氷を突っ込まれたかのような寒気が走るが、身体が動かない

 

『己が苦しむ悪夢に魘されよ』

 

『一分の時間』『瞬く間』

 

『この地獄(悪夢)に耐えられる?』

 

『ナイトメア・ガイウス』

 

甲高い金属音が聞こえた瞬間、あたしの身体は指1つ動かなくなった

 

「て、てめえ……なにしやがった……」

 

僅かに動く目と異常な喋りにくさを感じながらアルハリムを睨むが

 

「何を?そうだね……止めを刺すつもりだよ!リーエ!」

 

アルハリム達が飛びのき離れた所から支援攻撃をしていたリーエの姿がぶれて消えていく

 

(幻術!?ぬかった)

 

あたしは防御力こそ飛びぬけているが、それ以外。特に索敵能力に劣る、だから幻術に完全に騙されてしまった

 

「聖と邪を併せ持つ私が裁き、許す……その罪は汝の消滅と共に許される!」

 

いくらあたしでもあれだけの魔力の収束砲を喰らえば……

 

「アキシオンスマッシャー……ッ!」

 

膨大な魔力がスパークしているが見える。避けれなければと判っているのに身体が動かない

 

(死ぬ?ここまで来て?主君様の役に立てず?)

 

あたしにもう1度戦う機会をくれた主君様の役に立つと決めていたのに?目的を何一つこなせず死ぬ?

 

「デッドエンドシュートッ!!!」

 

螺旋回転しながら迫ってくる魔力波。直撃すればあたしの結界を簡単に貫き、あたしも消滅させるだろう

 

「あ、アア、アヒャヒャアアアアアアアッ!!!!ふ、ふ……ふふふふ……ふざけんななああ!」

 

「馬鹿な!?ガイウスの束縛を力技で!?」

 

驚いているアルハリムの声が聞こえるが、そっちを見ている余裕は無い。体内に埋め込まれている主君様の翼があたしの限界以上の魔力を上乗せしてくれているから力技で束縛を打ち消す事ができたが、まだリーエの放った魔力波はあたしに迫っている

 

「オオオオ、オラアアアアアアアッ!!!!」

 

ブーストした魔力刃であたしに迫っていた魔力波を両断し、取り込む一気に体内の魔力が増幅されるが

 

(足りねえ!もっと!もっと魔力がいる!)

 

力が溢れているが、その力を使うのにもっと魔力がいる。

 

「アヒャヒャヒャ!!ヒャーハハハハハッ!!!!!!」

 

溢れる魔力をただそのまま魔力波として周囲に放つ。あたしの障壁に何割か当たって跳ね返ってくるが、そんなのはどうでもいい

今はあたしの目の前をうろちょろしている半ネクロどもを消し飛ばす事しか考えられなかった

 

「いかん!離れろ!」

 

「判ってる!」

 

半暴走状態になっているスラッシャーは気付かなかったが、ガイウスの魔力とアキシオンスマッシャーそして黒炎・浄炎の魔力を取り込んでしまったスラッシャーは完全にオーバーフローしており。その膨大すぎる魔力は空間を歪め、高密度の結界で俗界との接触を立っていた白玉楼の結界の1部を破壊し

 

「しまっ!?」

 

「ヒャハハハハアアアア!!!」

 

アルハリムとスラッシャーを白玉楼の最奥。魂魄妖夢の魂が眠る場所へと引きずりこんだ。残されたのは魔力の暴走でダメージで意識を失ったリーエ達。距離が離れていた事が災いした結果だった、そして結界に穴を開けたゲートが完全に閉じる前に何者かが、その隙間の中へと飛び込んだのだった……

 

 

第86話に続く

 

 




次回はもっと本格的な戦闘を書いていこうと思います。どんな戦いになるかを楽しみにしていてください
それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします
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