それでは今回もどうか宜しくお願いします
第8話
リーエと共に六課に向かい、魔法の勉強を始める前にシャーリーの所でデバイスを用意しようと思い。デバイスルームに来た
「八神大将。おはようございます。その子がリーエちゃんですか?」
シャーリーが私の後ろに隠れているリーエを見ながらそう尋ねて来る。
「そうだ、リーエ挨拶できるか?」
コートの影に居るリーエに尋ねるとリーエはひょっこと顔だけ出して
「……リーエです」
隠れながら挨拶するリーエに、くすりとシャーリーは笑いながら
「よろしくね、リーエちゃん。私はシャーリー、デバイスルームの副主任ね? 主任は知ってると思うけどスカリエッティ博士ね」
知ってますと頷くリーエを見ながら。シャーリーに
「頼んだデバイスは用意できてるか?」
「はい。ミッド・ベルカ両方のインテリジェンスとアームドデバイスをそれぞれ用意しました」
普通のリンカーコアではなく、ネクロのコアに近い特徴を併せ持つ。リーエにはどのデバイスが合うか判らずとりあえず一通り用意してもらった
「とりあえず。起動させて見て貰えるか?」
こくんと頷きミッド式のデバイスを手にしたリーエが起動させようとすると
『起動エラー 起動エラー』
起動エラーと繰り返し表示され待機状態に戻る
「シャーリー。ちゃんと設定したか?」
「あ、あれ? おかしいな?」
シャーリーがPCに接続し確認するが
「ちゃんと設定出来てますよ? うーんミッド式とは相性が悪いのかな? リーエちゃん今度はこっち起動してみてくれる?」
ベルカの式のデバイスを手にし再び起動させようとするが
『起動エラー 起動エラー』
さっきと同じ様に起動エラーと表示され。待機状態に戻る……その後もアームドデバイスや剣型や射撃型を試すがどれも起動しない
「……デバイスが使えないのでしょうか?」
「しかし。リンカーコアはあるんだぞ? 起動できない訳が無いと思うんだが……」
リンカーコアがあるのにデバイスが起動できないとは……訳が判らない
「シャーリー折角用意してもらったのに悪いな。そのデバイスはゲンヤさんの所のルーキーにでも回してやってくれ」
もっと別のアプローチが必要なのかもしれない。私はリーエを連れて第4演習所に向かった
「デバイスが無くてもある程度は魔法は使えるはずだ。簡単な身体強化とプロテクションから始めようか」
基礎は判ってるのでそれくらいから始めようと言うと。リーエは目を閉じて魔力を練り上げ始めたのだが
(!? どういう事だ?)
リーエの身体から徐々にネクロの魔力が発せられはじめ。それがある程度のレベルを越えるとリーエの身体を魔力の膜が包み込み
「出来……いた……?? どういう事だ?」
リーエの蒼い瞳は血の様な真紅に染まり、犬歯が伸び雰囲気が変わった。それにネクロの魔力と魔導師の魔力をそれぞれ半分ずつ感じる
「む? んん? これは……犬歯か? なぜこんなに伸びているんだ?」
犬歯を触り首を傾げているリーエに、コートから出した手鏡を向けると
「……私? 何故眼の色が?」
んん? と言いながら自身の顔をペタペタと触るリーエに
「魔力の活性に伴った外見変化かもしれんな……何か違和感とかを感じるか?」
魔力を練り上げた事で身体の中のネクロの因子が活性化したことによる、外見の変化と口調の変化が起きたのかもしれないと思いながら言うと
「龍也様。特に違和感は感じない……です。 だが……む……ううむ」
口を開いては閉じるを繰り返すリーエに
「しゃべりにくいなら無理に敬語じゃなくて良いぞ」
「すま……すいません」
どうもネクロの因子の活性化に伴って好戦的と言うか。強気になっているようだ
「龍也様。どうにも自分でも判らないが、力とかが上がっているのが判る、あと自分でも判らないのだが……多分こうすると……」
リーエが右手を上げるとそこに黒い魔力が集まり甲冑にと変化する。それはネクロが得意とする魔力の固形化だった
(ネクロの因子の活性化で、ネクロが知る技法を覚えたと言うことか?)
理解するのではなく。身体が知っているのだ……自身の力の使い方を
「む…うう!? ぐっ!」
「どうした?」
急に腕を抑えて苦悶の声を上げるリーエは
「がっ……ぐうう……」
腕を振るい腕に具現化していた甲冑を振り落とす。リーエの身体から離れた甲冑はすぐに粒子となり消えた
「……は……はぁ……はぁ……今のはまだ駄目です。何か自分が自分で無くなりそうな気がして怖いです」
しゃがみ込んだリーエの目は元の蒼色に戻り、伸びていた犬歯も元の長さに戻っている。
「大丈夫か?」
酷く疲れた感じのリーエはしゃがみ込んだまま。私を顔を見て
「……す、すいません。動けそうに無いです」
ネクロの因子の活性化は強い負担があるようだ。しゃがみ込んだまま息を整えているリーエを見て。コートから折り畳みの机と椅子を取り出すと
「……そのコートどうなって……るんですか?」
息も絶え絶えのリーエがそう尋ねて来るので
「ネクロを追いかけていると無人世界に行く事が多いからな。コートの内側に結界を作って色んな物を収納できるようにしているんだ」
そう説明しながらリーエに手を貸して。取り出した椅子の上に座らせる
「少し休んだ方が良いな。それと魔力の物質化は禁止する、それとしばらくは基礎的な魔法の取得をメインにした訓練にするが良いかね」
「……はい。私もそうしたほうが良いと思います。さっきのはまだ私には使えそうにありませんから」
リーエも感じたのだろう。まださっきの魔力の物質化は危険だと
「暫く休んだらジェイルの所に行こうか。魔力の質とかを調べた方が良いからな」
普通の魔力でないのは判っていたが。今回の事でさらに謎が増えた、1度調べた方が良さそうだ……
龍也様に連れられて六課の地下にある。スカリエッティ博士の研究室に来たのだが
(……なんだろう……何か違う)
研究室の机に座る。スカリエッティ博士が何時もと違う気がして立ち止まると
「ジェイル……じゃないな。ヴェノムか?」
「正解ですよ。守護者お久しぶりですね」
ヴェノム……? スカリエッティ博士じゃないの? 私が首を傾げていると
「初めまして。リーエ嬢、私の名はヴェノム……元ネクロ筆頭幹部の1人。LV4 ヴェノムです……ああ、そんなに身構えないで。楽に……今の私は身体を失い同列の存在のスカリエッティの身体を借りてるだけですから。別に獲って喰おうと言う気はあり
ませんよ」
それにそんな事したら、守護者にどんな目にあわされるか考えるだけで恐ろしいですから。と肩を竦めるヴェノムは椅子を反転させて
「魔力の物質化をしたのでしょう? ここにいても感じましたよ。 気分は……悪そうですね。無理も無いですが」
カルテか何かに文字を書きながらヴェノムは
「良いですか? ネクロの魔力の物質化と言うのは言うよりもはるかに難しい技能です。 ただでさえネクロの因子が活性化しているのに、物質化したネクロの魔力を纏えば……それが更に活性化するのは言うまでも無く判りますよね? もし物質化をした
いのならば、ネクロではなく自身の魔力を物質化させなさい。下手にネクロの因子を活性化させると……狂いますよ」
ヴェノムはカルテのほかに横の紙に何かを書いている。それを見た龍也様が
「何を書いているんだ?」
「これですか? ネクロにはネクロしか判らぬ事があります。今書いているのはリーエ嬢、貴女の内面的な魔力を物質化させる方法のやりかたです」
さらさらと書き終えた紙を私に差し出すヴェノムだが、龍也様がそれを横から取り上げコートの中に仕舞う
「これは私の判断で見せる」
ヴェノムはくすくすと笑いながら
「ええ。それが良いでしょうね。ゆっくりと覚えなさい、ネクロの力と言うのは根源的には闇です。闇は誰にもどこにも存在しますが、それゆえに危険です。焦りは身を滅ぼしますからね」
まるで見たことを言うようなヴェノムを見ていると、ヴェノムはその視線に気付いたのか
「ええ、私は半ネクロを知っています。ですが……貴女ほど人間の意識が強いネクロには初めて会いましたよ。だから誇りなさい、ネクロとなりつつも自意識を失わず、人間として存在している。己の心を誇りなさい、この世で何より強いのは人の心……私
は身を持って味わってますからね」
くっくっと笑いながら。ヴェノムは溜め息を吐きながら椅子に深く背中を預け
「そろそろ疲れました。もう私は戻ります、あとはスカリエッティにでも話を聞いてください」
そう言ってヴェノムが目を閉じると気配が変わり。何時ものスカリエッティ博士の気配に戻り
「あーいたたた。急に身体乗っ取るなよな。びっくりした」
こきこきと首を鳴らしながらスカリエッティ博士は
「や、リーエ君。龍也、今なにかお茶かお菓子を出そうか?」
からからと笑うスカリエッティ博士に
「いや。お茶は良い……それでどうなんだ。リーエは普通に魔法を使えるようになるのか?」
龍也様がそう尋ねるとスカリエッティ博士は
「うーん。ネクロの因子があるからデバイスの起動とかは出来ないけど、因子自体がデバイスに役割をしているからね。魔法は普通に使えるはずだよ」
さっきデバイスが使えなかったのは、私の中のネクロの因子のせいだったんだ……よく判らなかった事が判り納得した。だがそれとは別に気になった事があり
「……魔法はベルカ式だけですか?」
「ん? んーこれは憶測だがね。 君の魔力の質は、はやて君の闇属性と光属性の2つの波長の中間点にある。はやて君がベルカ・ミッド・オリジナルの3種類の魔法を使えるところから考えると、多分リーエ君。君はミッド・ベルカの2つに加えて、恐らくネ
クロが扱うような特異な魔法も取得できるだろうね」
まぁそれはネクロの因子を活性させるから、覚えるとしてもずっとさっきの話になると思うよ、と言いながらPCを操作しているスカリエッティ博士に
「……何をしているのですか?」
「ん? シャーリーの所のPCのデータと演習場のカメラのデータからね。君のカルテに必要なデータを揃えようと思ってね。すぐ終るからちょっと待っててくれるかい?」
私の身体の事だ。ちゃんと調べてもらったほうが良いに決まっている。しばらく龍也様と話をしながら待っていると
「よし……完成だ。はいちゃんと目を通してね」
渡されたカルテに目を通し。自分が気になっている所を呼んでいると
デバイス類が使用できない理由
元々デバイスの使用にはリンカーコアが必要となるのは当然の事である。だがリーエ君のリンカーコアの半分はネクロの物に酷似した物となっている為。リンカーコアと認識できず、使用が出来ないと推測される。だがネクロの因子がデバイスの代わりを
しているため魔法の使用は可能である。
改善方法
デバイスを用いた戦闘は諦め。自身の体術と魔法に対する知識を深め。 いずれ可能になるであろう。魔力の物質化能力と併用し防御力を補う戦闘スタイルを身に付けるのが良いと思われる
通常時と魔力使用中の身体能力の比較
魔力発動時は魔導師・ネクロ両方の魔力が同時に使用されるため。極めて高い身体能力を得ている。魔導師ランクで換算するのは難しいがC+からB-ランクの間であると推測される。当面は魔力の物質化を行わず、体術・魔法に対する理解を深める
事を勧める
「……結構細かく分析してくれてるんですね」
「研究者としては当然だよ。私としては君が普通に暮らせるように色々と物を考えているよ」
スカリエッティ博士はにこにこと笑いながら
「これから大変だと思うけど。六課の皆はリーエ君の味方だ。何も不安に思うことは無いよ、それに」
スカリエッティ博士は私の隣の龍也様を指差して
「龍也がいるんだ、何も不安に思うことはないよ」
「ま、当然だな。私がいる限り六課の者に手を出せる人間など居ないからな」
そりゃそうだと、あはははと笑うスカリエッティ博士は
「だから。何も不安になる事も恐れる事は無い。龍也も私も六課の皆も君の味方で、ここは君の居場所だ」
ねっ? と笑うスカリエッティ博士に頷き。龍也様と一緒に地下の研究室を後にした
「さて……このまま家に帰るのもなんだな。買い物にでも行くか」
「……いってらっしゃい。1人で帰れますから」
と私が言うと龍也様は何を言っているんだ? と言いながら
「リーエの物を買いに行くんだ。お前が来なくてどうする?」
「え……ええ?……良いですよ。私は」
リィンさんとかが着なくなった服とか一杯あるし、欲しいものも無いから良いと言うと
「いいから。いいから、行くぞリーエ」
「……えええ……」
龍也様に手を引かれ六課の門の所まで連れてこられた所で
「渡した眼帯で左目隠して。ブレスレットで魔力の波長を隠さないと駄目だからな」
もうここまで来て抵抗できるとは思わず。私は言われたとおり眼帯を着けてブレスレットを操作して。結界を発生させた
「良し、では行こうか」
「……はい」
そして私は龍也様と一緒に色々と買い物をし、家にと戻った。この時の話はまた別の機会に話す事にしようと思います
第9話に続く
次回は久しぶりに戦闘回。そしてその次にリーエの日記、その次に日常編。そしてその次の最後くらいからリーエの旅を始めようと思います
それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします