ファイアーエムブレム 風花雪月 異界の戦士達 作:カオスキマイラ
天帝の剣のことをゴジョウに聞いてから二日後……
ベレトはレアとセテスから今節の課題を聞いた後、ディミトリと合流して青獅子のクラスに戻ってきた。このとき二人の同行者が彼らとともに教室に入ってきた。
「おや?殿下に先生!」
「どうやら課題がわかったみたいね……」
「あれ?後ろの二人は……?」
「ちっ…………。」
青獅子のクラスに入って来た二人を見てフェリクスは舌打ちをした。二人とも彼がよく知る人物であったからだ。
「フェリクス様……ご当主様を前に舌打ちをするとは……よろしくございませんよ。」
「……お前がいるとはな……。」
「私がいたらまずいことでもおありでしょうか……?」
「誰?」
舌打ちをしたフェリクスに謎のメイドが注意して、それでも態度を変えない彼にメイドが毒舌を吐く様子を見たシンシアは事情を知っているであろうイングリットに聞いた。イングリットが答える前に男性から名乗りだした。
「すまないな。……倅の態度を見るたびいつもこうなるんだ……。さてと、初めてのものも多いだろうから名乗らせてもらおう。私の名はロドリグ=アシル=フラルダリウス。そこにいるフェリクスの父だ。」
「これは失礼しました。では、僭越ながら私も名乗らせていただきます。シェフィ=サウサンプトンと申します。フラルダリウス家にお仕えさせていただいておりますメイドでございます。」
「ロドリグは父の古い友人でな。昔から懇意にしていた信頼できる人だ。」
「……それは別にいい。それよりなぜ親父殿がここにいる?」
あまり、クラスで父親と話したくないフェリクスはさっさと本題を話すように促した。しかしどう見ても恥ずかしがっているようにしか見えなかった。
「…ご主人様。どうやらフェリクス様は照れているご様子です。」
「おい、シェフィ!」
「ふむっ、確かにこの場所で父親に会うのは気まずいか…。」
あからさまに恥ずかしがっているフェリクスの様子を見た青獅子の面々はすこし驚いていた。
「フェリクスもあんな顔するんだね……」
「そうですね。シェフィがいると結構賑やかになるんですよ……。」
「まあ、俺に対する扱いはイングリット以上にひでぇがな……」
「ああ、見覚えのある顔がいると思ったらシルヴァンでしたか、てっきり害虫かと思ってしまいました。」
「……こんな感じなんだよな……。」
「あはは……。」
シェフィはシルヴァンを見つけると容赦なく毒舌を吐いた。その様子を見たアネットは乾いた笑い声を出していた。
「……脱線しているようだから。俺から本題を話そう。」
「まあ……それがよさそうね~」
脱線して話が続かないことに呆れたベレトが本題を話し出した。
「彼らがここにいるのは今節の課題がファーガス貴族にかかわっているからだ。」
「……もしかして、馬鹿兄貴がやらかしましたか?」
「鋭いなシルヴァン……。そうだ、君の兄であるマイクランが英雄の遺産を盗み出した。」
ベレトがファーガスが関わっているということをいった途端に、シルヴァンは今節の課題のないように察しがついた。
「彼は英雄の遺産を盗み出した後、盗賊団を結成して各地で暴れまわっている。もはやゴーティエ家だけの問題ではなくフラルダリウス家の領地でも問題が起こってしまっているのだ。」
「あの害虫がやらかしたことで、民が不安になっているためご主人様と私は修道院に参らせていただきました。」
「……ったくあの馬鹿やろうが……。」
「シルヴァン……」
「悪ぃ、ちょっと風に当たってくる。」
シルヴァンは気分が悪くなってしまって教室から退出していった。その様子を見た青獅子の面々は何もいえなかった。
「もしかして盗賊団の討伐が今回の課題ってことか?」
「ああ。それとマイクランが盗んだ英雄の遺産も回収してくるように言われたな。」
「君たちが盗賊を討伐したことは倅から聞いている。だが、マイクランは将の器がある人物だ。ゴーティエ家とフラルダリウス家が彼らを抑えるので君たちは盗賊団の本拠地に向かってほしい。」
「ファーガス国内の問題でもあるが、英雄の遺産は悪しきものが使うと大変なことになってしまう。どうか協力してほしい。」
「「「はいっ!」」」
ディミトリの頼みを聞いた青獅子の面々は承諾した。
「……でも、将の器か。ロドリグさんが言うんだから相当指揮に優れているのでしょ?」
「ええ、あの害虫はゴーティエ家にいた時は軍隊長としての素質を発揮しておりました。」
「軍隊長か……これは警戒しながら戦わないとまずそうだね。」
「……彼らの討伐は君たちに一任する。十分注意しておいてくれ。……それではフェリクス、またな。」
「……ああ。」
「それでは皆様これにて失礼いたします。」
ロドリグは青獅子の面々に警告をするとシェフィと共に去っていった。二人がいなくなった後シンシアが唐突に呟いた。
「それにしても、シルヴァンのお兄さんは勘当されたんでしょ?余程素行が悪かったのかなー?」
「勘当された理由を知らないのっ!?……って、そうかフォドラの外から来たんだったよね……。」
「……済まないが、そこら辺に関しては色々と事情があるんだ。マイクラン討伐の時にでも話させてもらうよ。」
「……どうやら、フォドラ大陸における根深い問題があるみたいだね……。」
「まあ、其処等に関しては俺らでも調べさせてもらうわ。」
マイクランが勘当された理由に関して青獅子の面々は知っていたが、今は話そうとしなかった。シンシアも不満気であったが、後で話すと言われたのでその場は引き下がった。
その後はベレトの授業に戻ったが、その日はシルヴァンは教室に戻ってこずに寮に戻っていった。血のつながった兄を討つということに気持ちの整理がかかることを察した青獅子の面々はそっとしておいた。
◇◇◇◇◇◇
マイクラン叛乱の話を聞いてから少しするとシルヴァンはいつもどおりに振舞っていた。しかし、イングリットやフェリクスから見ると無理しているように見えていた。しかし、彼がいつも通りに振舞う理由も理解しているので何も言わないでそっとしておいた。
そんなある日ノワールはアネットに頼まれてある物を作っていた。彼女が得意とするお守りである。その様子を興味深そうにメルセデス、アネット、リシテアの三人が見ていた。
「え~っと、これをこうして……と。」
「………。」
「………。」
「………。」
「……そんなにジーッと見られるとちょっと居心地が悪いんだけど……。」
「あら、ごめんなさいね~。」
「ごめん、ノワール。ちょっと魔導学院でも見たことがない物を見たからつい……。」
「私もこんな魔法を見たことがないのでついつい観察してしまいました……。」
三人にとってはノワールが行っている魔法は未知の領域であるため興味深いものであった。そのことは承知している彼女であったが、やはり見つめられると気まずいものがあるのであった。
「……まあ、母さん譲りの呪術だからね……。気持ちは分かるけど……もう少し離れてくれない?」
「あっ、ごめん。」
「……そういえば、ノワールのお母様であるサーリャさんは変わった人なのよね?」
「ええ、でも母さんは魔法と呪術の天才で……父さんやクロム様の役に立っていたわね……。」
「なるほど……潜在的な魔力の素質は感じていましたが……あんたの母親譲りなんですね……。」
「………そうね。」
「どうやらお母さんから前に言われていたんだね……。」
とある事情で魔力に敏感なリシテアはノワールの潜在能力を母親譲りであることに気が付いていた。前にそのことをサーリャから聞かされていたノワールは否定をしなかった。
「でも、母さんは呪術を多くは教えてくれなかったわ……。」
「えっ!?潜在能力があるのに教えてくれなかったの!?」
「……何か事情がありそうですね……。」
「もしよかったら、教えてくれないかしら~?」
サーリャがノワールに呪術を多くは教えなかったことに三人が驚いているとノワールが説明しだした。
「……そもそも呪術という魔法は危険なものが数多いわ。あなた達が知っている闇魔法は此方では基礎として習うものよ……。」
「……もしかして、あんたは闇魔法を一通り習っているのですか?」
「ええ、主に母さんから習ったわね……。」
「……今も闇魔法は使えるのですか?」
「ええ、ある程度は使えるわ……。」
「ふふっ、よかったら今度見せて頂戴ね~。」
「分かったわ。丁度練習したかったところだから、今度ね…。」
「う~ん、この感じだとウードよりもできる気がするな~。」
闇魔法を一通り使えるというノワールに三人が闇魔法を見せてほしいと頼むと彼女も久しぶりに練習したいらしく快く引き受けた。
「さてと、ここからは集中させて……結構シビアな場所だから。」
「ええ、邪魔にならないように見学させてもらうわね~」
彼女が集中したいと言ったので、見学者三人は黙ってノワールの作業を見学しだした。
「……これをこうして……ここにこれを入れて……」
「………。」
「……最後にここをこうすれば……よしっ、出来た!」
ノワールは完成したペンダントタイプのお守りをアネットに手渡した。
「一通りの作業は終わったわ。後はあなたの髪の毛を入れてから自分の魔力を込めて……この修道院の範囲内にいたらアネットの探し人は見つかるわ……」
「分かった!………。」
「さてさてどうなるのでしょうか……」
アネットはノワールからお守りを受け取ると自分の髪の毛をお守りにいれて、魔力を込めた。その様子をメルセデスとリシテアがドキドキしながら見守っていた。
「……反応ないわね~」
「……手順は間違っていないから……となると今修道院にいないかもしれないわね。」
「なるほど……外出中だから分からないのですね……。」
「そっか……。」
アネットはすぐに会えないことにガッカリした様子を見せた。その様子を見たノワールは修道院の地図を取り出してその上に小麦粉を振りかけた。
「ノワール?」
「どうして小麦粉を……」
「……ちょっとお守りを貸して?」
「ええ。」
「何をするのですか?」
「アネットの父さんがセイロス騎士団にいるならなんと名乗っているか、この小麦粉の上に描くわ……。」
「そっか……あたしに見つからないように名前を変えている可能性もあったわね……。」
「確かに……アロイスさんに聞いた限りではギュスタヴという騎士はいなかったみたいだしね~」
ノワールはアネットからお守りを受け取ると修道院の地図の上に置いた。そして何かブツブツと呪文を唱えだした。するとお守りが動き出した。
「お、お守りが動いた!?」
「あれ……でも誰かの名前を書いていますね……。」
「え~っと、ギ……ル……べ……ル……ト……ギルベルト?」
お守りが動いて描いた文字にはギルベルトと書かれていた。
「こ……これって……」
「アネットの父さん……ギュスタヴさんだったよね?」
「ええ。アンのお父様はギュスタヴというわ~」
「……もしかして、ギュスタヴさんは今はギルベルトと名乗ってセイロス教団に仕えているのでは……」
「ほ、本当なの!?」
ピンときたリシテアがギュスタヴがギルベルトと名前を変えていることに気が付いた。それを聞いたアネットは興奮した様子を見せた。
「私の呪術の結果だとギルベルトさんは現在教団の任務で外出中ね。でも、戻ってきたらそのお守りに反応があるわよ。」
「そ……そっか。よかったぁ……。」
「アン、お父様の居場所が分かってよかったわね~」
「うん、ありがとうノワール!」
ノワールのお陰で探していた父親の場所が分かったことでアネットは大喜びをしていた。
「それにしても、ノワールの呪術は凄いですね……。」
「うん。父さんの居場所をこんなに早く見つけてくれるなんて……。」
「呪術というよりは
「うん、ありがとう!」
「それにしても、大変興味深いですね……。」
リシテアはノワールの呪術に興味を惹かれていた。それを見た彼女はリシテアに提案をした。
「よかったら、今度簡単なものになるけど……すこし教えようか?」
「いいんですか!?」
「ええ、簡単なものでよければだけど……。」
「ぜひお願いします!」
「あっ、それはあたしにも教えて!」
「わたしにも教えてほしいわね~」
「それじゃあ、今度教えるわね。」
リシテアに簡単な
「あれっ!?お守りが光っている……?」
「あっ、ギルベルトさんが修道院に戻ってきたみたいね。」
「本当!」
「あっ、行くなら私も付き合いますよ。でも先に道具を片付けてからにしましょう。」
「アン、気持ちは分かるけど先にお片付けをしましょうか~」
「うん、それじゃあ。さっさと片付けまよう!」
四人は手分けして道具を片付けていった。途中アネットがドジを踏んで転ぶ一面があったが、何とか片付けた。
「えっと、お守りは……まだ光ってるね!」
「それじゃあ、ギルベルトさんを探しに行きましょう~」
四人はお守りが導くままにギルベルトの場所へと向かった。大広間を抜けて教員の個室の方へお守りは導いていた。
「……あれ?ここって……ジェラルトさんの部屋だよね?」
「ここにいるというのですか?」
「覗いてみましょうよ~」
四人がジェラルトの部屋をのぞき込むとジェラルトが教団の騎士と話していた。
「……そうかい。やはり、マイクランは将の器だったってことか……。」
「ええ……彼がこのようなことをしてしまったことが残念でなりません……。」
「そういえば、お前さんは元々は王国の騎士だったな……。」
マイクランの一件に関して二人は真剣に話し込んでいた。
「あれは……やはり、父さん……。」
「あの人がギルベルトさんか……会わなくいいのアネット?」
「真剣に話しているみたいだし……あの話が終わってからにするよ……」
「それがよさそうですね。……って押さないでください!」
「わわっ!」
四人は二人の会話をもっと聞こうと身を乗り出しすぎて、部屋の中に入ってしまった。
「……さっきから誰かが覗いていると思ったらお前等か……」
「流石は歴戦の傭兵……私たちに気が付いていましたか……」
「父さん!」
「……アネット!?……どうしてここに……」
「やっと見つけたよ、父さん!」
誰かが覗いていることに気が付いていたジェラルトとギルベルトであったが、ギルベルトは予想だにしない人物がいて動揺した。
「……っておいおい。どうなってやがるんだ?」
「実は~。」
事情が理解できていないジェラルトにメルセデスが一通り説明した。
「……成程な。ギルベルトの娘か……ノワールの嬢ちゃんの呪術でギルベルトの場所が分かったな?」
「よく分かりましたね?」
「まあ、俺の勘だが……」
「流石はジェラルトさんですね……。」
ノワールの呪術と当てて見せたジェラルトに三人は感心していた。一方のアネットとギルベルトは感情的になっているアネットの話をギルベルトは黙って聞いていた。
「父さん!黙っていないで何とか言ってよ……。」
「アネット……私は……」
「……心配したんだよ!手紙も一通もよこさないで……あたしと母さんと伯父さんがどんだけ心配したか……」
「……連絡を取らなかったことは済まないと思っている……だが……私はお前たちに合わせる顔がないんだ……。」
「あの事件でランベール様を死なせてしまったこと?あたしと母さんを捨ててセイロス騎士団に入ったこと?ねぇ……答えてよ……父さん……。」
数年ぶりの親子の再会であったが、連絡をよこさずに失踪したことを責めるアネットの問いかけをギルベルトは申し訳なさそうに俯いていた。
「……まだ殿下とお前に対する償いが終わったわけじゃない……。済まないが…任務中だ……。」
「待ってよ……父さん!」
「すみませんジェラルト殿。レア様にもご報告せねばなりませんので……。」
「……ああ。だが、ちゃんと娘さんと話す機会を作れよ……。」
「ええ、失礼します。」
「父さん……。」
ギルベルトは逃げるようにジェラルトの部屋から退出すると大司教の部屋に向かっていった。その様子を見たアネットは涙を流しながら見ていた。
「……アン。一先ずは帰りましょう……あなたのお父様は健在だった……また話せばいいじゃない……」
「メーチェ……。」
「……両親と和解したい気持ちは私もよく分かります……。でも、感情的になっていては彼を連れ戻すことはできませんよ……。」
「そうね……。そのお守りがあれば、近くにいるときはギルベルトさんがどこにいるか分かるわ……話はゆっくりとした方がいいわよ……。」
「リシテア……ノワール……。」
一緒に来た三人に諭されたアネットは一先ず父が無事であったため、ゆっくりと話していくことを決意した。
「……うん。ありがとう三人共……。」
「それじゃあ、帰りましょうか……」
「もしよければ、食堂で四人でお菓子を作らない?」
「あっ、それはいいですね。」
「ふふっ、それじゃあ。行きましょうか~」
「あっ、でもアネットは周りをよく見てよね。」
「いったーーーーいっ!何でこんなところに木箱がーー!!」
「……言われた傍からドジを踏んでますね……。」
その後は四人でお菓子を作ってたのしく過ごすのであった。久しぶりに父親に会えたアネットは心なしか安心した様子を見せるのであった。
次回はコナン塔の戦いになります。
マイクランは原作より強化されております。
因みにウードも同じような呪術は使えますが、アネットは女性同士の方が良いと判断してノワールに頼みました。