オーバーロード ~集う至高の御方~   作:辰の巣はせが

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第121話

 ナザリック地下大墳墓、食堂。

 (しもべ)達の姿が消えたその場所で、ペロロンチーノは、たっち・みーとウルベルト、それぞれの交際相手であるレメディオス及びケラルトと対峙していた。周囲を複数のギルメンに囲まれ、相棒たる弐式炎雷が武人建御雷に取り押さえられた状況下で……である。もっとも、弐式は背後から両肩を掴まれているだけであり、見方によっては肩を揉む等、友人同士で巫山戯あっているように見えた。だから、場の絵面がギスギスしているということはない。

 ただ、ギルメンらによる包囲という状況が、ペロロンチーノにプレッシャーを与えているのだ。そう、後方の弐式からは、ペロロンチーノが空気を読まずに行動している様に見えていたが、ペロロンチーノも鳥的な超感覚で周囲の状況を把握していたのである。

 

(くわわ~っ、お家……じゃなかった自室に帰りたい~っ!)

 

 内心で悲鳴をあげるが、同時に不本意でもあった。

 自分達は悪いことをするつもりではない。なのに、この状況は何なのか。何かしようとする度にピリピリされると、まるで自分が問題児みたいではないか。あのナザリックの困ったちゃん……るし★ふぁーでもないのに。

 と、比較対象がアレ過ぎるのはさておき、自身の過去の行いを無視しつつペロロンチーノは気を取り直した。ペロロンチーノが思うに、この後、自分が酷い目……具体的には折檻される展開になる可能性は低い。そもそも、悪いことをするのではないから一割以下と見て良い。ならば、計画通りに突っ走るまでだ。

 

(ナザリックのサプライズ王の真骨頂! 見せてやんよーっ!)

 

 爆撃の翼王は何処へ行ったのか。言われたこともない異名で気合いを入れ、ペロロンチーノは両手で抱えた二つの衣装ケースをたっちに差し出すのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「では、お預かりします」

 

 元警察関係者なだけあり、きちんとした態度でたっち・みーは衣装ケースを受け取っている。そして、顔には出さないが、手に持ったケース二つの重さなどを吟味していた。

 

(不自然に重いということはないな。普通の衣装ケースのように思えるし、中身が服ということが予想されるくらいか……)

 

 たっちに判断できるのは、この程度である。

 これが弐式のように探査系スキルを多く持っていたなら、また違う見解があったかもしれない。だが、殺気や気配を感知する能力ではケースの中身が本当に衣服なのか知ることができないのだ。これはまるで爆発物を持たされたような気分だ。しかし、相手がペロロンチーノだからと言って気を回しすぎたかもしれないと、たっちは肩の力を抜いた。

 

アレイン(ウルベルト)さん、このプレゼントですが……レメディオスさんとケラルトさんにだそうで」

 

 肩越しに振り返って言うと、ウルベルトが「聞いてましたよ。ありがたいことです」とウルベルト口調で言い席を立つ。ケラルトも一緒に席を立ち、二人でテーブルを回り込んで、たっちの居る位置まで移動してきた。この頃にはレメディオスも席を立っていたので、ペロロンチーノから見た場合、左からたっち、レメディオス、ケラルト、ウルベルトの順で並んでいる。衣装ケースはすでに受け取っていたため、ペロロンチーノの「デザインはどっちも同じですから」という助言を聞きながらレメディオス、そしてケラルトに手渡していく。

 

「その服には、ちょっとした機能がありまして! まずは開けてみてください!」

 

 たっち達の動きを見たペロロンチーノが言うので、たっちとウルベルトは顔を見合わせた。

 

((機能?))

 

 どういうことなのか。耐汚れとか耐ほつれとか、あるいは斬撃耐性や刺突耐性でも附与したのか。たっちは一瞬考え込み、ウルベルトはギルメンからの贈答品だからと言って鑑定すらしなかったことに舌打ちする。そして、二人は交際女性らに声をかけようとしたが、それよりも先にレメディオス達は衣装ケースを開けてしまった。

 結果……瞬き一回より遙かに短い時間で、カストディオ姉妹の姿は変わっている。

 それぞれ騎士服と神官服での姿だったのが、純白の花嫁衣装に身を包んでいたのだ。

 

「「「「「「おお~っ!!」」」」」」

 

 居合わせたギルメンらの口から感嘆の声が発せられる。ちょうど食事を終えていたモモンガも、口元を拭いながら固まっていた。

 ヘロヘロが提供したという花嫁衣装は、フリルやレースがふんだんに、しかし上品に纏まるようあしらわれており、アイテム提供者の性癖を反映したのか胸が強調されるデザインだ。とはいえ、総じて上品かつ華麗と言って良い。転移後世界の服飾レベルでは、これほどの逸品を見ることは困難を極めるだろう。

 そして、アイテムとしての効果たるやデザインの良さも相まって絶大だった。黙っていれば淑やか美人のケラルトが、王族の姫君のようになり、がさつ美人なレメディオスさえ深窓の令嬢のように見えていた。着ているのが花嫁衣装だから、古い日本の言い回しで三国一の花嫁姿……と言っても過言ではない。

 

「嘘、こんな素晴らしい……。私、こんな……」

 

 あのケラルトが、自身を包む衣装を見て感激している。レメディオスはどうだったかと言うと、こちらは頬を赤らめて俯いていた。普段を知る者が見ると、異常なほどに可愛らしい。

 そして、この二人を目の当たりにした交際男性らの反応は……。

 

「これは……」

 

 掠れた声がウルベルトの口から出ている。

 彼は異世界転移してから多くの美男美女を見てきた。そもそも、この転移後世界の人間は多くが美男美女だ。顔面偏差値が高いと言っていい。交際相手のケラルトや、その姉のレメディオスも数多く居る美女の一人であったが、今の姿は……。

 

(やべぇ、うちの(しもべ)達はゲームでのデザインが反映された美形揃いなんだが、それに負けてないように見えるぞ!? 何か変な効果が出てやしないか、あの服ぅ!? ひょっとして見てる俺の耐性を貫通してたり!?)

 

 大いに動揺するウルベルトだが、考えすぎである。これは交際相手に対する贔屓目が影響しており、早い話が、「さすが俺の見込んだ女、美人だ!」的なところから始まって、自分でケラルトらの映像的評価を高くしているのだ。

 

(こ、この素晴らしき眼福感は……そう! (にょ)モンガさんにすら迫るレベル!)

 

 などと、以前に目撃した女体化モモンガの魅力や美しさを引き合いに出していたりもする。これを口に出さなかったのは幸いなことだろう。何しろ、この場には当のモモンガが居るのだ。転移後世界では天上の美と謳われる一般メイドやアルベド達の美貌。自分の女としての姿が、それらに迫るか()するほどだとウルベルトに思われていると知ったら、モモンガは大きなショックを受けたに違いないのだから。

 では、たっち・みーは、どうなっていたか。こちらは渋い顔をしている。

 花嫁衣装を着たレメディオスを見て、自分を捨てて逃げた元妻を思い出したからだ。元妻とレメディオスでは性格はもちろん、見た目での共通点はほぼ無いというのに……。

 今までに一回だけしたことのある結婚式。花嫁衣装に身を包んだ、最後に見た時よりも幾分若い元妻。その姿を幻視したたっちは、否定するように小さく首を振った。

 

「彼女とは違う……」

 

 口の中で呟き、その後はレメディオスの姿に見入っている。

 たっちとウルベルトは、それぞれカストディオ姉妹の一人と交際宣言をしたわけではない。告白だって、まだだ。だが、男側の方では(カストディオ姉妹の本意は不明なままだが)すでに付き合っている気になっていた。もっともカストディオ姉妹の方でも、たっち達をロックオン済みなので、この時点で相思相愛と言って良いのだろう。

 たっちとウルベルトがカストディオ姉妹に見入り。

 カストディオ姉妹は、男達の反応に御満悦。

 居合わせたモモンガらギルメン達は、心配したような展開にならなかったし、良い場面を見られてホッコリ感動していた。

 万事めでたし、なんだ良い話で終わったじゃないか。

 そう皆が思い、建御雷に両肩を掴まれた弐式がホッとしたとき、ペロロンチーノの朗らかな声が食堂に響いた。

 

「気に入っていただけましたか! その衣装、弐式さんに頼んで簡易アイテムボックス付きにしたんですよ!」

 

 これを聞き、ナザリック勢は「ああ、なるほど」と思う。

 瞬時に着替えをしたのは、元から着ていた服が簡易アイテムボックスに収納され、花嫁衣装と入れ替わったからだ。要はアイテムスロットに装備一式を登録し、瞬時に装備替えするようなもの。

 ここまでは良い。

 しかし、続くペロロンチーノの台詞が食堂内の時を止めた。

 

「下着もセットですから! 本当に着替えの手間が要らないんですよ!」

 

 ……。

 

「「はっ?」」

 

 一瞬で静まりかえった食堂に、今度はたっちとウルベルトの声だけが重く響く。

 おい、そこの鳥。今なんつった。

 数秒のフリーズの後、ウルベルトが震える手を持ち上げペロロンチーノを指差す。

 

「下着も入れ替わると言ったか? 今……」

 

 もしもこの場にデミウルゴスが居たら、恐怖で失禁するかもしれない。それほどの怒気が声に籠もっていた。しかし、サプライズが成功したと考えるペロロンチーノは、変わらぬ朗らかさで頷いている。この反応にウルベルトは一度口を閉じたが、代わりにたっちが口を開いた。

 

「あらかじめ知らせているなら兎も角、ぶっつけ本番で下着込み……」

 

 声が震えている。もちろん怒りによってだ。

 この時点で他のギルメンらも事情を察しており、弐式は面の下で顔面蒼白、その肩を掴む建御雷は「お前、気づいてなかったのかよ?」と呟きながら呆然としている。呆気に取られているのは他の男性ギルメンも同じだが、中でもモモンガは、驚きの余りスプーンを取り落としかけていた。

 そんな中、いち早く我に返り、行動に出た者が居る。

 この場における唯一の女性ギルメン……やまいこ。

 彼女は衣服はそのままで人化し、小柄な黒髪女性になると、カストディオ姉妹の前に進み出た。

 

「ええとね? その衣装の仕様について説明したいことがあるから。ボクと一緒に来てくれる?」

 

 そう言って見上げるやまいこは笑顔だが、口元は微かにひくついている。カストディオ姉妹側は顔を見合わせ戸惑っていたものの、場の空気が妙なこともあって素直に従った。そうしてカストディオ姉妹が出て行き、食堂内はギルメンだけの状態になる。ここに食事を終えて立ち上がったモモンガも加わり、ギルメン達はペロロンチーノを包囲した。弐式は逃げようと思えば逃げられたが、後が怖いので建御雷の前に立たされたままだ。

 

「え、ええと……ですね」

 

 ペロロンチーノは後ずさろうとするも、後方にはベルリバーが移動していたので、逃げることができない。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! どうしたんですか皆さん! 俺は何も悪いことは……」

 

「無断で、女性二人の下着を替えておいて? それに非がないとでも?」

 

 詰め寄りつつ言ったのはたっちだったが、ここでようやく、ペロロンチーノが自分のおかした失態に気づいた。

 

「は、はわわわ……」

 

 救いを求めるように視線を巡らせるも、誰も彼もが怖い顔をしている。モモンガは……モモンガも怖い顔をしていたが、最終的には目を逸らされてしまった。ギルド『アインズ・ウール・ゴウン』のギルメンが、ギルド長によって見捨てられた瞬間である。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 ペロロンチーノが『いつものペロロンチーノ』をしたことで、ギルメン会議が開かれることとなった。弐式も共犯なのだが、ペロロンチーノが常習犯過ぎるので目立ってはいない。無論、見逃して貰えるわけではないが……。

 カストディオ姉妹には別室で着替えさせ、やまいこと共に待機して貰っている。お茶菓子やジュース類は飲食し放題だ。ナザリックの飲食物は美味極まるので、喜んで貰えることだろう。

 これで気兼ねなくギルメン会議ができると判断したモモンガ達は、場所を円卓に移していた。なお、別室で接客中のやまいこと、請負人(ワーカー)のフォーサイトに交ざって依頼遂行中だった獣王メコン川は不在となっている。メコン川には、タブラが<伝言(メッセージ)>で状況を伝えたが、暫しの沈黙後、「今忙しいから、そっちでよろしいように」とだけ言って通話が切れたらしい。

 さて、集まったギルメンの中には、ペロロンチーノがやらかした際、その場に居合わせなかった者が居る。ブルー・プラネットとヘロヘロと……そして、ぶくぶく茶釜の三名だ。

 ブルー・プラネットは今回の件に無関係で、カジット及びブレインと昼食後の農作業中だった。趣味の農園とはいえ仕事中だったわけだが、招集内容を聞いて応じている。今は異形種化して樹人の姿であり、自分の席で濃い面構えをニコニコさせていた。いったい何が嬉しいのか。彼は語ろうとしなかったが、ペロロンチーノがやらかしたことで、自分の黒歴史の影が薄くなるのが嬉しいのだ。何となく察したギルメン達は、敢えて触れようとはしない。

 ヘロヘロは、ソリュシャンと王都デート中だった。こちらも良いところを邪魔された形だが、この事態を予想していたのか嫌な顔をするでもなく円卓に顔を出している。

 ぶくぶく茶釜が<伝言(メッセージ)>を受けたのは、アウラとマーレを抱き枕としてお昼寝中のこと。通話相手がタブラだったことで不機嫌な応答にはならなかったが、ペロロンチーノの名を出した瞬間、声が重くなったらしい。タブラが言うには、かなり怖かったとのこと。こういった呼び出し事情だったので、モモンガ達は茶釜がキレて暴れ出さないか戦々恐々としていた。

 

「では、今回のペロロンチーノさんの『やらかし』について、取り纏めてみますか」  

 

 肩を落としたモモンガが話を切り出す。実に気の乗らない声だ。

 やらかしたペロロンチーノをとっちめるのは、これは当然のこと。しかし、やらかされる都度、自分がギルメン会議を仕切るのは疲れるのだ。そもそも、モモンガの性格上、ギルメンを糾弾するというのはストレスが溜まる。また、ペロロンチーノ案件だと、その姉……交際相手の茶釜が気になるので、これもまたストレスの要因だった。

 

(て言うかさ~、お昼寝中のところを起こしちゃったものな~。あとで声かけてフォローしなくちゃ。彼氏として! うひょー……はああ……)

 

 一瞬、テンションが上がるも長続きはしない。だるいやら胃が痛いやらで、モモンガが纏う雰囲気は重かった。

 

「まずは~……」

 

 ギルメン達の大半が苦笑交じりで見守る中、ペロロンチーノのやらかしが纏められる。

 一つ目、衆人環視の中、女性の衣類を下着込みで着替えさせたこと。

 二つ目、あろうことか本人達に事前相談しなかったこと。

 大きく言ってこの二つになる。

 

「弐式さんについては、まあペロロンチーノさんとセット扱いとして……」

 

「酷い! 俺は、衣装に簡易アイテムボックスを付けただけなのに! むぎゅ!?」

 

 このままではペロロンチーノと一緒に折檻されてしまう。その恐れが弐式を叫ばせたが、言い終わりで建御雷により頭を掴まれた。

 

「お前も結構やってるじゃねぇか……。主導したのはペロロンさんと言っても……なぁ?」

 

 掴んだまま手を左右に揺らすと、弐式の身体は追従して左右に揺れる。「建やん、や~め~て~」という弐式の声を聞き流し、モモンガはヘロヘロを見た。

 古き漆黒の粘体(エルダー・ブラック・ウーズ)は、椅子の上でゆらゆら揺れていたが、モモンガの視線に気づいたことで動きを止めている。

 

「ヘロヘロさん? そう言えば、アイテム……花嫁衣装の提供者はヘロヘロさんでしたっけ?」

 

「そうですよ~。レメディオスさん達に似合う、良い感じの衣装がないか聞かれましたので~。レンタルにするか買い取りするかに関しては、後日決定だったかな?」

 

 その花嫁衣装の件でペロロンチーノと弐式が針のムシロだというのに、ヘロヘロは平然としていた。それも当然のことで、ヘロヘロは衣装の使用目的は聞いていたが、どのように手渡すかについては聞かされていないのだ。

 

(この状況を丸々予測したわけじゃないですけど、あの時に逃げて正解でしたね~)

 

 ヘロヘロがペロロンチーノ達に衣装を渡したときのことを説明すると、モモンガやギルメン達は皆が納得したような雰囲気になる。鳥と忍者からは恨めしそうな視線が飛んできたが、ヘロヘロは素知らぬ顔で受け流していた。

 

「それでは、ヘロヘロさんには負うべき責任が無いということで」

 

 モモンガが判断し、ギルメン達が頷く。

 そして議題は、ではペロロンチーノ達を如何するか……に移った。

 ここで問題が発生する。

 

「うう~~ん……」

 

 ヘロヘロと同様、椅子に乗ったピンクの肉棒が唸っているのだ。怒りに震えているのではなく、こちらは戸惑いの色が強い。モモンガが聞いてみたところ、茶釜は苦笑交じりで次のように答えた。

 

「呼ばれたときは、また愚弟が何かやらかしたかと思ったんだけど。いや、やらかしては居たんだけど~。何と言うか動機が悪い感じじゃなくて~。こう、激烈な折檻地獄に叩き込むとか、そういう気にならないのよね~……」

 

 言われてみるとそうだ。

 ペロロンチーノ達の本来の目的は、サプライズ。そして、やったことは花嫁衣装のプレゼントだ。その譲渡方法に配慮がなかっただけで、悪気があったわけではない。

 では、今回はお咎めなしとするのか……と言うと、そうはならない。視認できないとはいえ、下着込みで婦女子を着替えさせたのは事実だからだ。しかも、事前相談も本人同意も無しである。これについて何のペナルティもないのでは、今後、ペロロンチーノ達が何かするときに増長しかねない。やはり、何か痛い目を見てもらうのが良いのだ。たっちとウルベルトにモモンガが確認すると、二人ともペナルティはある方向で頼みます……とのことだったので、会議はペナルティの内容について話し合う方向にシフトする。

 まず、ベルリバーが挙手した。

 

「向こう一ヶ月、自室謹慎というのは?」

 

 この第一提案は、ギルメンらから却下される。ペナルティとしては軽めだと判断されたからだ。

 続いて、ブルー・プラネットが「向こう一ヶ月の第二段。俺の菜園の手伝いをして貰う」と提案したが、これも却下。元の現実(リアル)でならともかく、今のモモンガ達は人化した状態ですら常人を超える身体能力を有している。野良仕事など、何の痛痒も感じないからだ。

 

「……お二人の嫌がる傾向は知ってるから、なんかこうキツい映画を数十本視聴させるというのは?」

 

 タブラによる提案だが、こちらは仕置きのキツさが過ぎるということで却下されている。もちろん、ペロロンチーノと弐式が震え上がっていたのは言うまでもない。

 

「嫌な拷問を……。タブラさん、あなたって人は……」

 

 弐式が下顎の汗を左手の甲で拭っている。もっとも、面を着けたままだし、中身はハーフゴーレム状態なので汗などかかないのだが……。

 その後、建御雷から「俺と一緒に武技を学ぼう」が提案されるも、またもや却下。鍛えて武技を得るのは良いとして、それはペナルティではないだろうと判断されたのだ。

 考えあぐねている茶釜は黙したまま。たっちとウルベルトらは交際相手にプレゼントされた側であり、会議の流れ上、強くペロロンチーノ達を糾弾できなくなっている。

 

(ペロロンさん達の失態を最初に指摘したのは俺なんだけどな~。変な流れになっちゃったよ……)

 

 山羊顔からは表情を読めないが、ウルベルトは面倒くさい気分になっていた。この辺はたっちも同じのようで、腕組みしたまま沈黙。

 そして、この状況下、ギルド長……モモンガは内心で狼狽え出していた。

 

(どうしよう。会話が止まっちゃったよ~~)

 

 司会進行役として場が滞るのは困るのだ。どうにかしてみせるのが腕の見せどころとはいえ、自分の口から積極的にペナルティ案を出したくはない。いつもなら怒りに任せて折檻へ持ち込む茶釜が黙っているのも痛かった。

 

(誰か! 何か言って~っ!)

 

 骸骨の心の悲鳴が本人の中だけで木霊する。

 だが、ここで救いの神と言うべきか、ギルメンの一人……ぷにっと萌えが挙手をした。

 

「一つ……提案があるんですけど」

 

 全身を蔦で構成し、シルエットだけなら小柄な魔法使いに見えるヴァイン・デス。そんなぷにっと萌えは、デザイン上、表情はわからないものの、闇の中で光る双眸を瞬かせた。

 モモンガ達は興味深く彼の説明を聞き入り、満場一致で採択。ペロロンチーノと弐式は悲鳴をあげることになるのであった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 ギルメン会議の翌日。

 弐式炎雷の自室では、弐式炎雷と彼の製作NPC……ナーベラル・ガンマが居た。

 戦闘メイド(プレアデス)のナーベラルであったが、今は一般メイドの服を着用している。過日、やまいこに対する不始末の罰で、一ヶ月限定で弐式専属メイドを拝命していたが、それが終了して間もないのに再び専属メイドとなっていた。

 言うまでもなく、先日のギルメン会議で決定したことなのだ。

 今度の期間は、前よりも短くて一週間。その短さを残念に思うものの、ナーベラルは幸せ一杯である。キリリとした表情を保っていると思うのは本人だけで、囲炉裏の傍らで正座するナーベラルは笑み崩れていた。

 その対面であぐらを掻いているのが弐式だが、こちらは落ち着いた体を装いながら心の中では血の涙を流している。

 いったい、どうしたのか。

 実は、今の弐式にはナーベラルの姿がまったく別人に見えていた。

 長身かつ細身に見えながらも筋肉ムキムキ。切れ長の瞳と水色の長髪が印象的な男性。

 愛するナーベラルが、よりによってガッシリした男に見えてしまう状況は、これまたギルメン会議で決定したことだ。当時、提案したぷにっと萌えは次のように語った。

 

「ペロロンさん達は、御自身製作のNPCにぞっこんですし。そのNPCの姿が、期間限定で男に見えるようになったら……少しは反省するんじゃないですか?」

 

 この時点でペロロンチーノ達からは「鬼ーっ! 悪魔ーっ!」「なんて恐ろしいこと考えるんだー!」とブーイングが飛んでいたが、それぞれ茶釜と建御雷によって黙らされている。そうして静かになったところで、ぷにっと萌えは説明を再開した。

 

「と、このように効果は抜群だ! なわけでして、この案の良いところはシャルティアやナーベラルには、ほとんど害がないところですね!」

 

 ペロロンチーノら側の打開策として、シャルティア達に状況を告げて、彼女らからモモンガ達に泣きついて貰う手が考えられる。だが、そんなこと軍師ぷにっと萌えには『全てまるっとお見通しだ』である。アイテムを使用した誓約下において、ペロロンチーノ達にはNPCに真実を告げられないようにすれば良いのだ。加えて言えば、どうにか状況を告げられたシャルティア達が罰の軽減を訴えてきたら、それをもって別の罰を考えれば良いということで、もはや何をしたところで状況が良くなることはなかった。

 

「弐式炎雷様。どうかなさいましたか?」

 

 ナーベラルが話しかけてくるも、その声は色男の声に聞こえる。幻術によって視覚だけでなく、聴覚まで変更されているのだ。

 

「いや、何でもない……」

 

 絞り出すような声にするとナーベラルが気遣ってしまう。なので、弐式は努めて平静を装っていた。

 

(せめて女と見まがうような美少年とかなら、手出しはしないけど俺も落ち着いていられたのに~っ! なんで、何とか水鳥拳を使いそうなゴツい兄ちゃんにするんだよ~! オマケに、声も一番最初のアニメ版の声だし~!)

 

 とある世紀末を舞台にした漫画作品。その初アニメが放映されてから軽く百年以上が経過しており、当然だが担当声優は亡くなっている。しかし、その音声は最古図書館にデータとして残っていた。なので、ナーベラルの声を替えることも容易なのだ。

 

(一週間! 一週間さえ過ぎれば~~~~っ!!)

 

一週間。それはナーベラル達の特別任務期間であるが、同時に弐式達のペナルティ期間でもある。更に言えば、自室謹慎期間でもあった。弐式は、そしてペロロンチーノは、一週間、声も姿も男性にしか思えないNPCと過ごすことになる。

 ザ・ニンジャの心に平穏が訪れるまでの期間は、短いようで長いのであった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 そして、ナザリックのサプライズ王こと、ペロロンチーノはどうだったか。

 今、彼が居るのはナザリックの自室だ。家具など調度類は豪華の一言に尽きるが、これらは各ギルメンの私室を設定した際、共通して用意された物である。とはいえ、やはりペロロンチーノ色というものは存在しており、それはエロ……くはないものの、ユグドラシル時代に入手した女性型モンスターのフィギュアだったり、それらを並べる棚だったり、壁に数枚貼られたシャルティアのグラビアポスターだったりする。ちなみにグラビアポスターはユグドラシル時代に作成した、垢バンされない程度に控えめな水着悩殺ポーズとなっていた。

 弐式の場合、忍者屋敷を模した囲炉裏ありの板の間で座っていたが、ペロロンチーノは応接セットのソファに腰を沈めている。そして、対面側のソファではシャルティアが居て、嬉しそうにしていた。創造主と一緒に居られるのが嬉しいし、こうして向き合ってソファで座るのも常にペロロンチーノを見ていられることで眼福なのだ。

 双方にとって幸せそうなシチュエーションであったが、紅茶をすするペロロンチーノは内心で歯ぎしりしている。

 

(くそ~、いつもの服か~……。俺も弐式さんと同じで、一般メイドの服にしておけば良かった~。なんかこう、俺のシャルティアが穢された気分~……。服だけの問題じゃないんだけどさ!) 

 

 異形種化しているので頭部は仮面を着けた鳥。仮面下の表情はシャルティアからは見えないだろうが、雰囲気から不機嫌なのを悟られても良くない。ペロロンチーノは顔で笑って心で泣いて……目の前のソファで座る巨漢を見直した。

 本音を言えば直視したくない。

 ギルメン会議で決定したペナルティによって、ペロロンチーノと弐式は自身の制作NPCが男性に見え、声も男の声に聞こえるよう幻術をかけられている。一応、この幻術にはモデルが設定されており、弐式の場合はナーベラルが大昔の漫画に登場する若い男性に見えていた。引っ掻くように手を振ると、相手が輪切りになる拳法を使うキャラだ。

 では、ペロロンチーノにはシャルティアがどう見えていたのか。

 

「ペロロンチーノ様? どうかなさいましたでありんすか?」

 

 口調は普段どおりだが、声が野太いバリトン。のどちんこをぶるぶる震わせるような声とでも言うべきだろうか。そして、見た目は小柄だったシャルティアの面影など、微塵も感じさせない大柄になっている。ギルメンの中では長身な方であるペロロンチーノと同程度、だが、筋肉による身体の厚みがまるで違っていた。

 

「い、いや……何でもないよ! ちょっと考えごとをしてただけ!」

 

 朗らかな声と勢いで誤魔化したペロロンチーノは、シャルティアが納得したようなので、内心、胸を撫で下ろす。

 

(何とか誤魔化せた……。しかし、誰だよ! よりにもよって幻術モデルに世紀末覇者をチョイスしたのは~~~っ!)

 

 そう、ペロロンチーノには、今のシャルティアが作中で拳王(賢王ではない)を自称していた一子相伝の拳法使いに見えている。そして服装は、シャルティアの普段着のままだ。

 

(ぐっは~。いつもの服がパッツンパッツンになってるというか、なんで破けてないんだよ。無理があるだろ! 幻術にしても! いや、破れてるように見えても嫌だけどさ!)

 

 やはり、一般メイドの服にすると言っておけば良かったのだ。シャルティアには、いつもの服が普段着で決定なんです! などと、こだわりを見せた結果がこれだ。

 

(この見た目と声で『ペロロンチーノ様、どうかなさいました?』って言われても、『ペロロンチーノよ、うぬはどうした?』って幻聴が聞こえちゃう~っ!)

 

 元の現実(リアル)で居た頃、、タブラとたっちに誘われて、TVアニメの全話を視聴させられたことがあり、ペロロンチーノ自身はロリキャラ(よく危機的状況になってはケーン! と叫ぶキャラ)が出ていたこともあって面白いと感じていたものだ。当時は「こんなバイオレンスアニメにもロリは居るもんですねぇ」などと感想を述べて、たっち達から白い目で見られたが、それも今となっては良い思い出である。

 だが、今のペロロンチーノは間違いなく『嫌な思い出』を記憶に刻みつつあった。

 

「ペロロンチーノ様?」

 

「な、何かな?」

 

(目の前のゴツいオッサンは、実はシャルティア。シャルティアなんだと言ったらシャルティア! オッサンに見えてるだけ!)

 

 自分に言い聞かせつつ聞き返すと、今日は何処かに出かけないのかと聞かれる。

 今日はどころか、向こう一週間は自室で謹慎だ。しかし、そのことをシャルティアに伝えることはできない。

 

「う、う~ん。たまにはね部屋で色々して籠もってみようと思うんだよ!」

 

「そうでありんしたか。では、この後は?」

 

 小首を傾げて拳王様……いや、シャルティアが言うので、ペロロンチーノは鳥肌をたたせながら置き時計(針がエロゲのロリキャラになっている)を見た。

 今は夜の十時過ぎ。

 

「そうだね~。お()っ!? げほっ! えほっ!」

 

「ぺ、ペロロンチーノ様!?」

 

 急にむせたペロロンチーノをシャルティアが気遣う。

 

「え? うふぉ!?」

 

 驚き顔の拳王様が机越しに顔を寄せてくるので、顔面圧が凄まじい。強烈な光を遮るように両腕で防御したくなるが、相手の正体はシャルティア。ペロロンチーノは気合いと根性で耐えることに成功した。

 

「な、なんでもない。なんでもないよ!」

 

(顔が怖ぇええ! そして危なかった! お風呂なんて言おうものなら、今のシャルティアが入って来ちゃうじゃないか! 俺の部屋の風呂はギルメン私室の初期設定のままで狭いから、この大男と一緒に入ったら……おえっぷ)

 

 とっさに言うのを止めて本当に良かった。

 安堵したペロロンチーノはピッと人差し指を立てて、お風呂以外の行動予定を述べる。

 

「そこそこ遅い時間だし、今日は早寝しようと思うんだ! あっ……」

 

 ……それは、自分自身に対する死刑執行の宣言であった。

 数分後……。

 ペロロンチーノは拳王様と並んで寝ていた。

 ペロロンチーノは鳥人姿のままでパジャマ着用(ナイトキャップあり)。拳王様は紫がかったスケスケのネグリジェと、その下にショーツ一枚きり。もちろん第三者や拳王様……シャルティアにしてみれば、寝間着姿のペロロンチーノとシャルティアがベッドで横になっているだけなのだが……。

 

(嫌ぁあああああっ!? 男っ、いや(おとこ)臭さを感じるぅ! シャルティアって香水使ってたよね!? 嗅覚までいじられてたっけ、俺ぇええ!? ちっとも寝付けなぃいいいいい!!)

 

 仰向けになり天井を見るペロロンチーノの目はギンギンに見開かれていた。ついでに言えば血走っている。性的に興奮しているのではなくて、恐ろしさとおぞましさで混乱しているのだ。

 そして、すぐ左隣では肩が触れあうほどの位置で、筋肉ムキムキのオジサンが横になっている。このシチュエーションで寝落ちできるはずがなかった。

 

(このまま襲われたらどうしよう!)

 

 相手の正体はシャルティア……というより、ペロロンチーノの視覚が拳王様に変換しているだけなので、行為に及んだところで問題はない。しかし、そうなったとしたらペロロンチーノは心に深い傷を負うことだろう。

 ちなみに、弐式の方ではナーベラルが積極的に寝床に誘うタイプではなかったため、弐式はこの類いの脅威にさらされていない。

 

(こ、これを、あと一週間? 地獄! まさに地獄!)

 

 自分は悪いことをしたつもりがなく、そこだけはモモンガ達も認めていた。なのに、この仕打ち。まったくもって納得がいかない。

 

(人前で他人の交際相手を、本人に無断で下着込みの着替えをさせたら……それってそんなに悪いことなの!?)

 

 この内心の独白を茶釜が聞いたなら「たりめーだ、愚弟」と吐き捨てていただろう。

 と、このように内心で悲鳴をあげつつ、寝かせた鳥人立像(パジャマ着用)と化していたペロロンチーノであるが、不意に隣の拳王様から声をかけられた。

 

「あ、あの~……」

 

「ぐうっ……。ど、どうかした?」

 

 横を向きたくない気持ちを抑え込み、ペロロンチーノは左側を向く。

 そこでは、頬を赤らめた拳王様がペロロンチーノ側に向き直っており、恥ずかしげに目を逸らしていた。

 

「こ、今宵は妾と……なさいませんのでありんすか?」

 

(ひっ……ひいいいいいいいいいいいいっ!?)

 

 白目を剥き泡をふいて失神するペロロンチーノは、薄れ行く意識の中、悲鳴を声に出さなかった自分を誇らしく思っていたという。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 一週間後。

 ナザリックを満喫したカストディオ姉妹が去ろうとしている。お供の騎士や神官達も、菓子や化粧品などの土産物を格安購入しホクホク顔だ。

 そして、それを異形種化したたっち・みーとウルベルト・アレイン・オードルが見送ろうとしている。レメディオス達は、モモンガらは『魔法により異形種の力を身に宿して戦う』という嘘を信じており、居並ぶ異形種に対しても、そこまで気にしている様子はなかった。

 見送りメンバーには、せっかくだからとモモンガ以下のギルメン達も顔を見せている(こちらも全員が異形種化している)が、その中に弐式炎雷とペロロンチーノの姿があった。

 弐式は面を着けているのに、やつれているのがわかる。まるで燃え尽きたように……。

 ペロロンチーノも同じく仮面着用者だが、こちらはもっと酷い。イメージ表現で言えば、火で炙りすぎた鳥串のように真っ黒焦げだ。ブツブツ呟いている声を拾うと「貞操、貞操は守りきったよ。シャルティアアアアア」とのことなので、期間中は行為に及ばなかったらしい。シャルティアが気の毒である。

 モモンガ達は、相当にキツい思いをしたんだろうな……とは思っていたが、敢えて触れることはなかった。

 

「うふふふっ! アレイン! ナザリックは極上だったわ!」

 

 ギルメン二人のズダボロ振りには気がついているものの、ウルベルトらが気にしていないので、ケラルトは目の前のウルベルトにのみ意識を集中している。キラキラに輝く笑顔はナザリックでエステを体験したことで、美人度が格段に上昇しているようだ。一方、ナザリックを褒められたウルベルトは機嫌を良くしていた。

 

「そうでしょうそうでしょう。ナザリックは極上なんですよ!」

 

 山羊顔を揺すって笑う様は、見る人が見れば怖いのだが、ケラルトは「やだ、可愛い……」などとコメントしている。その声は聴力強化したモモンガ達も聞いており、「強者だな~」と皆が感心していた。

 

「タチ、ここは食べ物が美味しいし風呂も広い。強い者が多くて勉強になるし……そしてタチも居る。名残惜しいな」

 

 レメディオスも、たっちとの別れを惜しんでいるようだ。たっち側でも名残惜しそうにしている。もっとも、かつての妻子と一緒に過ごせない期間が長かった結果、離婚に到った経験があるので、あまりレメディオスとは離れたくないというのもあるが……。

 

「私もレメディオスさんと別れるのは辛いですよ。可能であれば一緒に付いて行きたいです」

 

 たっちは視線を地面に向けた。

 交際相手とナザリックを天秤にかけて、普通なら交際相手の方が重くなるのだろう。だが、今度こそナザリックから離れはしない。ゲームではなく現実になったから尚更だ。それは拠点としてナザリック地下大墳墓は優秀ということもあったが、やはり気心知れたギルメン達と離れたくないからだ。

 

(以前に引退したときのようにはしたくない。けれど、これでは妻子と別れることになったのと同じで……)

 

 考えれば考えるほどに鬱ゲージが溜まっていく。最近は調子が良かったのだが、やはり完治はしていないようだ。おろした手のひらを握り込んで力が籠められていく……。

 

「タチも私と離れるのが辛いのか? だが、気にすることはないと思うぞ?」

 

「えっ?」

 

 顔を上げたたっちにレメディオスは言った。立てた人さし指を振りながら言う様は、お姉さんぶっているようで妙に可愛らしい。

 

「<転移門(ゲート)>と言ったか? あの凄い魔法でいつでも会えるじゃないか。お前達にとっては別に大儀式というわけでもないのだろう? ならば寂しいことにはならない! きっとな!」

 

「そ、そうですね! まさに、そのとおりです!」

 

 言われてみると、何故こんな簡単なことを失念していたのかと、たっちは気恥ずかしく思う。<転移門(ゲート)>に関しては誰かギルメンに頼むか、ウルベルトやタブラあたりに転移アイテムを作ってもらえばいい。

 気を取り直したたっちは嬉しくなってきたが、そこへレメディオスが囁きかけてくる。顔が近いが、そこはリア充たっち、落ち着いて彼女の話に耳を傾けた。

 

「それとな、あの花嫁衣装のことだが、ペロロンチーノ殿と弐式炎雷殿。そしてヘロヘロ殿にも礼を言っておいてくれ。いや、私とケラルトからは、もう言ったのだが貰った品が素晴らしすぎるので……な」

 

「わかりました。伝えます」 

 

 下着込みでの着替えをさせられたことについて、レメディオスやケラルトは気にしていないらしい。実際、あの装備換えシステムは全裸の姿など目視できないし、『下着込みでの勝手着替え』という点さえ気にならないのなら、彼女らに害は発生していないのだ。

 この会話もモモンガ達は聞き取っており、そういうことであれば……と、ペロロンチーノと弐式に関しては(お仕置き期間も終了したことだし)もう勘弁してやろうという気分になっている。

 その後、ウルベルトの<転移門(ゲート)>によりレメディオス達は帰って行った。

 ローブル聖王国の使節団……の名を借りた、カストディオ姉妹のナザリック観光及び交際相手とのデートは大成功と言って良いだろう。

 二人のギルメン、ペロロンチーノと弐式炎雷の心に大きな傷を残した以外は……。

 

「ねえ、ペロロンさん。幻術に関してはさっき解いて貰いましたが、このあとどうします?」

 

 比較的近い位置に居た弐式が作法のペロロンチーノに問いかけると、ペロロンチーノは顔だけ弐式に向けて口を開いた。

 

「決まってます。自室でシャルティアと、この一週間分を取り戻すくらいのエッチ行為をするんですよ。弐式さんは?」

 

「同じに決まってるでしょう! ナーベラルとアレしたりコレしたり、ああ今から妄想がはかどるなぁ! これってオナ禁明けのエッチみたいな感覚ですよね!」 

 

「まさに! 上手いこと言いますねぇ! 弐式さん!」

 

 ゲヘヘヘヘという笑い声。このことからも解るように、お仕置き期間は確かに辛かったのだろうが、反省の色は余り見られない。

 モモンガ達はペロロンチーノと弐式を見て、次いで苦虫を噛み潰したような顔……あるいは雰囲気の茶釜と建御雷に目をやって大きく溜息をつくのだった。

 




 毎度毎度、直接的な折檻では目新しい物がないので、変化球にしてみました。本作で最後の折檻となりますかどうか。

<誤字報告>

D.D.D. さん

毎度ありがとうございます
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