オーバーロード ~集う至高の御方~   作:辰の巣はせが

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第15話 武技! 六光連斬!

「い、いや、お見苦しいところを見せたな。アインズ・ウール・ゴウン殿」

 

 ようやく落ち着きを取り戻したニグンが、モモンガと交渉するべく歩き出した。

 と、ここで大きく空間が割れる。それは陶器壷が破砕したような音を伴っていたが、瞬時に元どおりとなる。

 

「あ、アインズ・ウール・ゴウン殿! い、今のは?」

 

 怯えの混じった声でニグンが問うので、モモンガは思うところを述べた。

 恐らく、今のは情報系魔法による監視行動である。対象はニグンだったようだが、効果範囲にモモンガが居たことで、対情報系魔法の攻性防壁が起動したのだ。

 

「本国が……私達を監視……」

 

 ニグンが震える声で呟く。彼が想像したところでは、その監視は定期的に行われていたはず。良い気はしないが……それもまた、特殊工作部隊に属する者として許容すべきと判断し気持ちを飲み込んだ。だが、そのニグンにとって無視できないことを、モモンガは続けて述べる。

 

「大して覗き見はされていないと思うんだが、相手側では<爆裂(エクスプロージョン)>が発動しているはずだ。それも強化した奴がな」

 

 そう呟いたモモンガが考え込むと、ニグンが焦ったように問いかけてきた。

 

「あ、あああ、アインズ・ウール・ゴウン殿! その<爆裂(エクスプロージョン)>とは、如何なる魔法でしょうか!?」

 

 え? 知らないの?

 危うく声に出しそうになったモモンガは、気合いと根性で発声を抑制し、誤魔化しの意味合いも込めて咳払いをする。

 

「ご、ゴホン。だ、第七位階魔法の一つで、爆風と衝撃波による攻撃を行う魔法だな。強化しているとは言っても、私達レベルになると、まあ嫌がらせ程度の威力しか出ないのだが……どうかしたか?」

 

 気がつくと、ニグンがアウアウと言葉を発せなくなっていた。重ねて声をかけたところ、ニグンは我に返り、慌ててモモンガに言い連ねる。

 

「いえその、し、知らない魔法でしたので。だ、第七位階ですか……。不勉強なもので申し訳ない。その様な魔法、一度見てみたいものです」

 

 遭遇時や戦闘……もとい、試合開始時と違ってニグンは低姿勢だ。それもそのはず、自身らの最大戦力であった第七位階魔法による召喚天使、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を瞬時に消滅させられたのだ。

 ニグンは元来、スレイン法国の特殊工作部隊隊長として尊大かつ権威を鼻にかけるタイプである。しかし、実力差を思い知らされた今となっては、普段どおりの言動など取れるはずもなかった。

 今の返事とて、おべっかが大半であり、『一度見てみたい』と言ったのも場の勢いのようなものである。ニグンの感覚で言えば、大儀式を執り行ってようやく発動できるような位階魔法を、おいそれと見せて貰えるとは思えないのだ。

 だが……。

 

「ん? 見せようか?」

 

「は?」

 

 余りにも軽いノリでモモンガが言ったものだから、ニグンは固まる。何故、そんな大魔法を簡単に見せるなどと言えるのか。彼の理解を超えていたのである。

 もっとも、モモンガとしては第七位階魔法一つに驚くばかりのニグンに対し、その魔法を見せて脅しておくのも悪くないと考えただけだ。どのみち、監視者の居る場所……恐らくはスレイン法国本土にて魔法が発動しているはずで、威力の程度は知られているのだ。ここでニグンに見せたところで特に問題はない。

 

「じゃあ、あの辺に一発ブッ放すかな」

 

「攻撃魔法が豊富な人って、こういう時に羨ましいですねぇ。派手だし」

 

 ヘロヘロの呟きがモモンガの聴覚を揺さぶる。

 嬉しくなったモモンガは、目標……と呼べる物は無いが、街道外の離れた草原を目し、魔法を発動させた。

 

「<魔法最強化(マキシマイズマジック)>、<爆裂(エクスプロージョン)>!」

 

 次の瞬間、最強化された<爆裂(エクスプロージョン)>が草原で炸裂する。

 

 カッ、ヅドグァアアアアアアン!!

 

「うぶお!?」

 

 押し寄せる爆風は、距離があるためダメージこそ生じない。しかし、先頭に立って見ていたニグンを呻かせ、陽光聖典隊員らのマントや、衣服鎧を大いにはためかせることとなる。

 そして爆風が止んだ後、爆心地を中心として直径数十メートルほどの爆発痕が生じていた。そのえぐれ具合からして、今後、大雨などが降ったらちょっとした池になることだろう。

 ニグンら陽光聖典の者らは、もはや声も出ない状態である。

 

(うんうん。実にナイスなリアクションだ。ロンデスはどうかな?)

 

 陽光聖典との戦闘を見学させ、自分達の素晴らしさを知って貰う。そのために同行させた法国騎士。彼の反応を確認したところ、声もなく爆発痕を凝視していた。これもまた、モモンガ的にナイスなリアクションだ。

 だが……ここでモモンガは、ふと先行きが不安になる。

 これからギルド、アインズ・ウール・ゴウンは、そしてナザリック地下大墳墓は見知らぬ世界へと漕ぎ出していくのだ。なのに多数あると言う国家の内、スレイン法国と早くも事を構えてしまった。

 幸いなことに相手方の戦力は現状、取るに足らないものである。しかし、過去に転移して来たプレイヤーらしき存在。その影が見える世界で、何処まで上手くやっていけるだろうか。

 

(俺一人ならキツい。いや、もっと深く潜行するように動いたかもしれない。けど……)

 

 今のモモンガにはヘロヘロと弐式が居る。ナザリック地下大墳墓とそのNPCらも居るのだ。しかも、ここにギルメンが追加されるかもしれないのである。

 

(やってやれないことはない……と思う。ヘロヘロさんが来て、こっちで弐式さんも合流できたんだ! きっと上手くやれるはず!)

 

 モモンガはギュッと拳を握りしめた。そして、少しだけ肩を落とす。

 

(……たぶん)

 

 

◇◇◇◇

 

 

 モモンガはニグンとの交渉に入った。

 まず、カルネ村は、『旅の巡礼者』であるアインズ・ウール・ゴウンが、襲撃を受けていると見て救助したものだ。暫くの間、村を拠点とするから、今後はスレイン法国の手出しは厳禁とする。

 旅の巡礼者というのは勿論、モモンガ達にとってもニグンらにとっても真実ではない。

 そもそも、それはモモンガ達と遭遇したニグンが、自らの正体を隠すべく口に出した嘘だからだ。ニグンにしてみれば馬鹿にされてるような話だが、これについて、ニグンは即答により了承している。

 一連の村落襲撃は、ガゼフを誘き出すための作戦行動であって、襲撃自体は主目標ではない。作戦が失敗した今、カルネ村を攻撃する理由はもはや無いのだ。

 ニグンとしての本音で言えば、関係者は皆殺しが常であったが、亜人村ならともかく人間の集落などは、ベリュースやロンデスらの仕事である。陽光聖典が動くようなことではない。

 次に、モモンガが要求していたニグンらの謝罪。

 これは陽光聖典ではなく、法国側からの謝罪とし、謝罪対象はアインズ・ウール・ゴウン一党という事にした。カルネ村等、他の襲撃された村への謝罪に関しては、こちらは不問とし、スレイン法国側の自由とする。

 カルネ村に対する責任の取り方は襲撃騎士の壊滅と、ベリュースらのリ・エスティーゼ王国への引き渡しで十分とモモンガらは判断していたし、他の村に関しては知ったことではない。更にはニグンが「陽光聖典自体は人間種の集落に手出しはしていない」と言うので、取りあえず信用……ではなく、言い分を採用したのであった。

 賠償金については、ニグンを含めた陽光聖典四五人、一人につき二〇〇金貨としている。カルネ村の村長から得た情報で、こちら世界の交金貨の相場は把握できており、多少暴利かとモモンガは思ったが、ニグンは了承していた。

 

(もうちょっと、ふっかけても良かったかな?) 

 

 そう思ったりもするが、欲をかいて相手を追い込みすぎても良くない。程々が一番なのだ。

 後日、謝罪に訪れる際は、カルネ村に連絡要員を置いておくので、その者と接触することになる。モモンガは戦闘メイド(プレアデス)の誰かをカルネ村に常駐させようと考えていたが、その人選については後で決めることにした。

 陽光聖典側からは二名残して、同じく連絡要員とする。ニグンは難色を示しかけたが、モモンガが凄んだことで適当に二名抽出したようだ。

 

(<支配(ドミネート)>で色々聞き出して、記憶操作して無かったことにするか)

 

 陽光聖典隊員の残留に掛かる真の狙いは、このように情報収集である。モモンガとしてはニグンで同じ事をやりたかったのだが、今後のことを考えると彼に手を出すのは後回しにした方が良いと判断したのだった。

 

(ドッペルゲンガーと入れ替えて、色々させたりとか……)

 

 現時点、幻術で構築した人化顔の下は死の支配者(オーバーロード)であるため、モモンガの思考はドンドン危ない方向へ進んでいく。すべての約束事を反故にして、陽光聖典全員を纏めて捕縛……とまで行かなかったのは、鈴木悟時代の契約事に関する姿勢が色濃く反映されているためだ。

 最後に、ニグンへの魔法監視を切っ掛けとして攻性防壁が起動し、恐らくは法国本土で<爆裂(エクスプロージョン)>が炸裂した件については、アインズ・ウール・ゴウンに責任が無く、事故として取り扱うことをモモンガは要求している。

 

「まあ、こんなところか。では、ニグン殿。我々はカルネ村でガゼフという男を待つことにするので、これにてお引き取り願いたい。あ、そうそう。襲撃隊の騎士が三人、法国へ向けて帰還中だから。彼らを拾ってあげるといいだろう」

 

「りょ、了解した……」

 

 先程、<爆裂(エクスプロージョン)>を目の当たりにしてからのニグンが、どうも変だ。恐れている点では、威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)を倒した時から変わりないが、そこにどうも畏敬の念のようなものが混じっているのである。

 少し気にはなったものの、モモンガは「俺の魔法の凄さがわかったんだなぁ」程度にしか考えておらず、敢えて指摘することはなかった。

 

「言っておくが、約束事のどれか一つでも違えた場合。私が法国に直接出向き、さっき見せた<爆裂(エクスプロージョン)>なんかよりも大層恐ろしい魔法で……」

 

 威圧感を込めた声で脅していたモモンガは、そこで一度言葉を切った。下顎に手を当て考え込むと……訝しんでいるニグンに顔を向ける。

 

「色々と魔法実験するかも知れないから。約束を違える時は覚悟をもって、そうするようにな?」

 

「もも、勿論、約束を違えるわけがございません! 帰国した後は、このこと漏れなく伝え、けして馬鹿なことは考えないよう働きかけますので! では、我々は、これにて失礼します!」

 

 直角九〇度のお辞儀。

 そんな姿勢でよく立っていられるな、とモモンガ達が感心している中、姿勢を正したニグンは陽光聖典隊員を連れて去って行った。 

 

「ふむ、行ったか。全員捕らえて尋問したり実験に供すれば良かったやもしれんな。いや、やはり……この方が良かったのか」

 

 ユグドラシル時代は諸々あくどいこともやったが、今は現実だ。

 ヘロヘロや弐式の見ている前で、えげつない行為に及んで大丈夫か……という不安もある。

 

「……後は、成り行きを見守るしかない。で、アルベドよ……」

 

 彼らの姿が見えなくなってから、モモンガはアルベドに話しかけている。

 

「例の件、上手く取りはからったか?」

 

 アルベドはヘルムを外し、美麗な顔を表に出すと、モモンガに向かってニッコリ微笑んだ。離れて見ていたロンデスが、アルベドの素顔を見て目を見張っているが、モモンガらにとっては……タブラ製作のNPCが褒められているも同然で、鼻が高い思いである。が、今はアルベドの報告に耳を傾けるべきなので、一先ず置いておくこととした。

 アルベドはモモンガに身を寄せると、囁くようにして報告を行う。

 

影の悪魔(シャドウ・デーモン)五体を陽光聖典に潜り込ませました。法国の位置や得た情報などは<伝言(メッセージ)>により収集が可能です」

 

 つまり、ニグンに影の悪魔(シャドウ・デーモン)を張りつかせることで法国の内情を探れるし、こちらに敵対する意図で軍を派遣することになっても、いち早く察知して行動に移れるのだ。

 

「よろしい。大いによろしい。さすがはアルベドだ」

 

 モモンガは満足して頷いた。

 

「は、はうううう! お褒め頂き、ありがとうございま……す」

 

 褒められたことにより、アルベドが花が咲くような笑顔で頬を染めている。

 が、その歓喜の言葉は、最後の方で突如として沈静化した。

 やはり、アンデッドのような精神の安定化が発生しているのだろうか。

 先程、モモンガが<善なる極撃(ホーリースマイト)>を受けた際も、アルベドは激昂したが、突然、冷静な抗議へと変貌していた。

 このことは後でヘロヘロ達に相談しよう。そう心に決めたモモンガは「あ、うん」と頷き、思考を変えた。この時考えたのは、影の悪魔(シャドウ・デーモン)に関してのことである。

 影の悪魔(シャドウ・デーモン)は、文字どおり影等の闇に潜むことが可能だ。その種族特性と運用目的から、巻物無しで<伝言(メッセージ)>の使用も可能。まさに潜入工作員としてうってつけだった。

 

(あとは……俺がハンゾウとか、隠密・発見能力系のモンスターを召喚して法国に送るか……)

 

 レベル三〇程度の影の悪魔(シャドウ・デーモン)と、レベル八〇超えのハンゾウでは能力差が大きいが費用差も大きい。とはいえ、亜人蔑視の国に対して油断は厳禁だ。ここは惜しむことなくハンゾウを使おう。軽くなる財布に切なさを覚えながら、モモンガは心に決めるのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

 夕刻。

 モモンガらがカルネ村に戻ると、村人達は各々自宅に戻っていた。

 葬儀も終わったことで、ルプスレギナが追い散らしたらしい。

 

「さあさあ、遺族の皆さんには休息が必要っすよー。家に帰って、泣いて食べて寝て、明日以降を元気に生き抜くっすー」

 

 と、村長が語ったところでは、その様な物言いだったらしい。

 言い方が……と思わないでもないが、ルプスレギナのキャラで言えば、何となく従ってしまう空気ができたのだろう。

 村の状況を聞き終えたモモンガは、ロンデスをベリュースの隣りに戻している。この後で来るというガゼフ・ストロノーフに引き渡すためだ。

 残った陽光聖典隊員に関しては装備が悪目立ちするため、森の中……ナザリック寄りに村から少し離れた場所で、グリーンシークレットハウスを貸し出し宿泊場とさせている。

 備え付けの飲食物や、トイレ風呂など自由にして良いと言っておいたので、今頃は快適に生活しているはずだ。社畜生活の厳しさを知ってるモモンガは、更に影の悪魔(シャドウ・デーモン)を一体連絡係として常駐させてもいた。

 

(食料が無くなったら影の悪魔(シャドウ・デーモン)に連絡させればいい。俺って、至れり尽くせりで良い社長になれそうだな!)

 

 その後は陽光聖典隊員を案内していた弐式が戻り、その場に残ろうとしたナーベラルとルプスレギナに関しては、モモンガらの説得によりグリーンシークレットハウスへ移動。

 その後、暫く経った頃、ようやく王国戦士長のガゼフ・ストロノーフが到着した。

 ガゼフは騎兵数十人を同行させていたが、それらの装備は貧弱に過ぎる。モモンガらが見たところ、陽光聖典の装備も特に大したことはなかったが、それでも魔化ぐらいは施されていた。しかし、ガゼフ隊の装備は陽光聖典に比して数段落ちるもので、魔化された装備に到っては一つとて存在しない。

 

(「えらく微妙なのが来ましたね……」)

 

 ヘロヘロの呟きにモモンガは(「陽光聖典は大したことなかったですけど。この人達じゃ勝てなかったでしょうね」)と返し、騎乗したまま近づいてくるガゼフを村長と共に待った。

 

「私は王国戦士長、ガゼフ・ストロノーフ。この村の村長だな。周囲に居るのは……御紹介を頼めるだろうか?」

 

 太く男らしい声だとモモンガは思う。

 体格はガッシリとしており、貧相な甲冑を着ていても筋肉の押し上げがわかるほどだ。

 

「こちらの方々は、旅の途中で……襲撃があった際に助けてくださいまして……」 

 

「なに!?」

 

 驚きの声を発するなり、ガゼフが馬から飛び降りる。そして、そのままモモンガらを見回すと、リーダー格だと判断したのか、モモンガに歩み寄って深く頭を下げた。

 

「かたじけない! 本来であれば村を救うのは我らの役目。それを旅の途中で……。あなた方の義侠心に敬服し、深く感謝する! このとおりだ!」

 

「うぉう……」

 

 呻いたのは弐式だろうか。ヘロヘロだろうか。

 モモンガも今は人化しているので、二人とも自分と同じような気持ちを抱いていると考えている。

 この気持ち、まさに偉人を見て感動した時の感覚に相違ない。

 今はまだ合流が果たせていない、たっち・みー。彼もこのような態度を取ることがあった。

 思えばガゼフはリ・エスティーゼ王国でも知られた人物で、王国戦士長と言うからにはそれなりの地位にあるのだろう。その様な人物が取った真摯な態度に、モモンガ達は一様に感銘を覚えていた。

 

「それで、あそこに積み上げられた死体が襲撃犯ですな?」

 

「ええ。そして、そこで座っているのが隊長と副隊長の地位にある者達です」  

 

 モモンガが視線を動かし、釣られてガゼフが目を向けると、そこにはベリュースとロンデスが決まり悪そうに並んで座っている。

 

「彼らから聞いたところに拠ると、着ている鎧は帝国騎士の物ですが。その所属はスレイン法国らしいですね」

 

「なに!? それは、どういうことだ。ああ……失礼、お名前を聞いていなかったな」

 

「私はアインズ・ウール・ゴウン。そして、弐式とヘロヘロ。全身甲冑を着ているのはアルベドです」

 

「そ、そうか。御丁寧な紹介ありがたく思う。それで、先程の話だが……」

 

 バハルス帝国の騎士鎧を着たスレイン法国の人間とは、どういうことなのか。

 この質問に対し、モモンガはベリュースやロンデスから聞いた情報を、ほぼそのままガゼフに伝えた。話すにつれガゼフの眉間にシワが寄り、渋面となった後……最後には憤懣やるかたなしといった表情に変貌する。

 

「馬鹿げた話だ! 俺を殺すために、村々を襲って皆殺しにするだと? 王国と法国は戦争をしているわけではないのだぞ! スレイン法国は人類の守護をするだとか触れ回っているが、それは自国民限定なのか!」

 

 ガゼフは誰に言うとはなしに不満を並べ立てた。

 

「自国民だけが大事というのであれば、最初からそう言えばいい! 大抵の国はそうしているのだからな! だが、できもしない、やる気もない人類の守護など、冗談でも公言するべきではないと俺は思う! アインズ・ウール・ゴウン殿!」

 

 キッと厳しい眼差しを、ガゼフはモモンガに向ける。それは怒気を込めた視線なだけだが、モモンガは何らかの圧力を感じて少しばかり身を退いた。

 

「法国のやりようは間違っている! スジが通らない! 貴殿はどう思われるか!」

 

 通りがかりの旅人に聞くような質問ではないが、モモンガは日頃からのストレスでも溜まっているのだろうと判断した。事実、勤務地である王城に行けば、通りがかりの貴族に嫌味を言われる。忠誠を誓う王が苦しい立場にあっても、さほど権力があるわけではないガゼフにできることはないのだ。これで不満やストレスが溜まらないとしたら、それはもう聖人の類であろう。

 モモンガは「フム」と唸り、ガゼフを見て口を開く。

 

「貴方を倒す。そのために出来るだけのことをした……ということでしょう。失敗はしましたがね。そして人類守護を標榜できるかと言われると……まあ無理ですね。どの口を裂いたら、出てくる言葉なのかと」

 

「ゴウン殿も、そう思われるか!」

 

(上手く隠蔽できれば話は別だったろうけど。どのみちリスク高いよな。しかも、ガゼフの国は戦争の対戦国ですらないんだし。バレたら人類の守護者どころか人類の敵じゃん)

 

 同意者を得たり! と瞳を輝かせるガゼフを見つつ、一層居心地悪そうにしているベリュースとロンデスも視界に収めながら……モモンガは考えた。

 今回、スレイン法国は暗殺任務に失敗した上、その作戦内容まで知られている。ガゼフが王都に帰還して上に報告し、リ・エスティーゼ王国が正式な抗議をしたなら、スレイン法国の名は地に墜ちるだろう。

 

(スレイン法国って……この先、落ち目になったりとか?)

 

 陽光聖典などという特殊工作部隊を持っているのだから、そこそこの軍事力はあると思うが、こっちの世界では人類は弱者だとのこと。その人類国家の中で、国際的信用が失墜するとしたら……。

 

(その辺を俺達の判断材料にするとかは、ハンゾウ達に調べさせてからでいいよな……)

 

「それにしても不可解なのは、スレイン法国が用意した戦力だ」

 

 モモンガが考え込んでいると、ガゼフも首を傾げた。だが、考えていたことは別のようで、ふとモモンガに顔ごと視線を戻す。

 

「ゴウン殿。自慢しているようで恐縮だが、村を襲った騎士達なら私一人で倒すことができる。弓矢を装備した者も居たようだが、それとて問題ではない。なにせ魔法ではないのだからな」

 

 ガゼフが言うには、もっと他の、自分を正面から討滅できるだけの戦力。すなわち別働隊が居たのではないかとのことだ。これは、なかなかの洞察力。いや、狙われてる立場と自らの強さに自信があるからこその考えだろう。

 少なくとも、モモンガやヘロヘロ達は感心していた。が、ここで、ガゼフが口にした疑問にどう対応するべきか。それが三人の脳内で問題となる。

 陽光聖典について知らん顔を決め込むのは簡単だ。

 しかし、その場合はガゼフの疑念が晴れないだろう。事によるとモモンガ達に疑いの目を向けてくるかも知れない。そもそも、この後で連行されるベリュース達が陽光聖典について話したら、なんでモモンガ達は黙っていたのかと疑われることになる。

 では、陽光聖典のことを教えるとした場合。どのように説明したものだろうか。

 事実としては『アルベドが一働きした後、モモンガが一発凄い魔法を見せてビビらせて、後日の謝罪と賠償金支払いと引き替えに帰って貰った』というものになる。

 そのまま伝えるのはNGだ。

 王国戦士長の立場からすれば、逃がさずにベリュース達の様に捕らえて突き出してくれれば良かったのに……となるだろう。また、王国で村落襲撃を繰り返したのはベリュース達だが、陽光聖典はガゼフ暗殺の実働部隊であった。つまり、その目的で国領に入り込んでいるのだから、犯罪者の一味ということになる。

 ならば、それらを勝手に逃がして後日に金銭を受け取るのは、やはりスレイン法国の関係者として見られ、疑いの目を向けられるのではないだろうか。

 

(き、記憶操作……試してみるか?)

 

 考えることに疲れを感じてきたモモンガは、転移後に試したことのない魔法の使用を思いつくが、そこで弐式とヘロヘロの視線に気づいた。

 二人から向けられる視線。それの意味することは……。

 

(お願い、モモンガさん! 上手くやって!)

 

 であるのは明白だ。

 モモンガは酢を飲んだような表情になるのを、何とか堪えることに成功している。とはいえ、この状況は実によろしくない。

 自分は、底辺サラリーマンだ。

 ガゼフのような、お役所の偉いさんを、弁舌で納得させるとか無理の無理無理。

 ここは一つ、守護者統括……高い知能を持つ者として創造されたアルベドに任せるべきではないだろうか。

 しかし、モモンガが見たのは、ヘルムの隙間から覗く……期待に満ちたアルベドの眼差しであった。

 

(え? なに? その目! 俺に期待してるの!?)

 

 NPCのギルメンに対する高評価。

 これを思い出したモモンガから『アルベドに任せる』という選択肢も消え去る。

 まさに孤立無援。味方が居ない状態である。

 

(ええい! こうなりゃヤケだ! やるだけやって駄目なら記憶操作だ!)

 

 腹をくくったモモンガは、ガゼフに対して話しだした。

 まず、捕らえたベリュースから、陽光聖典の存在を聞き出したこと。そして、潜伏している陽光聖典と交戦し、これを撃退したことを告げる。

 当然ながら、謝罪のことも賠償金についても話していない。

 ロンデスから視線が向けられたような気がするが、モモンガは努めて無視することにした。

 

「なんと! 陽光聖典と言えば、スレイン法国の特殊工作部隊……六色聖典の一つではないか! 私は故あって、最高装備というわけではないから、正面からぶつかっていたとしたら負けただろう。それを貴方達は戦って撃退したと言うのか!」

 

 ガゼフの眼差しから感じられるのは……感嘆だった。

 一人の戦士として、是非とも一手、お相手して腕前を拝見したい。

 ガゼフは、そう申し出る。

 積み上げられた死体は襲撃騎士のものだけ。陽光聖典については聞かされただけで姿が見えず……ともなれば、疑われて当然。こうした申し出は、あって当然だとモモンガは思う。

 

(でもな~……)

 

 一方で、そういう意図はガゼフには無く、純粋にモモンガ達の強さに興味があるのだろう……とも、モモンガは考えていた。

 出会ってからの時間は長くないが、ガゼフという男が剣にかけては真っ直ぐな人物であるのは、モモンガには何となくであるが理解できていたのだ。

 試合を申し込まれたモモンガは、死の騎士(デスナイト)でも召喚しようかと思ったが、ここで弐式が挙手をする。

 

「アインズさん。俺がやってみるわ」

 

「弐式さん? いいんですか?」

 

 確認したところ、モモンガ一人で頑張らせているから、自分も何かしたくなったと弐式は言う。

 

「と言うわけで、ガゼフさん。俺がお相手しよう」

 

 言いながら、弐式はアイテムボックスから、上級と思われる短刀を二つ出し、それぞれの手に持って装備した。その様子を見たガゼフが、楽しげに顔を歪ませ、あるいは凄ませながら笑う。

 

「なるほど。承知した。勝ち負けは、各々が自分で判断する……で、よろしいかな?」

 

「お好きにどうぞ」

 

 そうして二人は歩き出し、少し離れた場所にて向き合った。村長を含めたモモンガ達も、ガゼフが連れていた兵達も後をついて行き、二人を囲むようにして観戦を始める。

 

「その服装。確か……忍者だったか?」

 

「正解。よく知ってるね。こ……忍者……見たことあるんですか?」

 

 危うく「こっちの世界でも忍者が居るのか」と聞きそうになった弐式は、すんでの所でセリフを変えたが、ガゼフは気にすることなく頷く。 

 

「ああ、王都に居るアダマンタイト級冒険者のパーティー。蒼の薔薇に忍者が二人居る。どちらも、かなりの腕前だが……」

 

 言いながらガゼフは剣を抜いた。

 鍛え上げられた鋼鉄製。しかし、モモンガ達からすればゴミアイテムに過ぎない。仮に弐式に当てることができたとしても、弐式に傷一つ付けることはできないだろう。弐式の防具は紙装甲とも言われるが、それはプレイヤー間の話であって、こちらの世界では最高級の防御力を有するのだ。

 

「開始の合図は……アインズさんに頼もうかな。ガゼフさん、それでいい?」

 

「かまわないとも」

 

 承諾を得られたことで弐式が目を向けてくる。それを受け止めたモモンガは、頷くことで返した。

 

「では、よろしいか? ……始め!」

 

「ぬうん!」

 

 モモンガが発した号令と共に、ガゼフが踏み込む。両者は数メートルほど離れていたはずだが、その距離を彼は一瞬で詰めたのだ。

 繰り出されたのは、弐式の左肩から右腰に抜ける斬撃。

 しかし、弐式は髪の毛一本ほどの差でガゼフの切っ先を躱す。

 

(遅すぎるな……。これで周辺諸国最強なのか?)

 

 正直言って期待外れだが、こちらの世界は戦える者のレベルが低いのだろう。

 

「おぁ!」

 

 斬撃の直後、ガゼフは弐式の腹目がけて右足を突き出したが、弐式は自分の左足を上げ、足の裏を合わせるようにしてガゼフを押し返す。ガゼフは片足で後方に跳ぶと、不敵な笑みを浮かべた。

 

「なかなかやるな!」

 

「どういたしまして。他に何か見せたいものとかある? なかったら俺から仕掛けるけど?」

 

 両手に持った短刀をヒラヒラさせながら弐式が言うと、ガゼフは更に凄味を増した笑みを浮かべた。自分の連携技が軽くあしらわれたことに舌を巻く思いはある。だが、これほどの強者と手合わせできることにガゼフは喜びを禁じ得ないのだ。

 

(想像を遙かに超えて強い! 出し惜しみする余裕は無いが、楽しいことだ!)

 

「なんの、まだ見せるべきものならあるさ! ゆくぞ、弐式殿! 武技ぃ!」 

 

 ブギと叫ばれても弐式は勿論、モモンガやヘロヘロも意味は理解できない。それはユグドラシルに無かった言葉だからだ。ただ、『ブギ』というのが『武の技』と書くのであれば、スキルのようなものではないかと推測できる。

 

「戦気梱封! 流水加速!」

 

 一方、ガゼフは<戦気梱封>で剣を魔剣化。その上で<流水加速>によって速度を増し……再度の飛び込みを図った。

 

「おお? さっきより速くなった!」

 

 珍しいモノを見たと弐式の声に喜色が混じる。だが、再び弐式の懐を取ったガゼフは、更に武技を発動した。

 

「これだけではないぞ! 武技! 六光連斬!」

 

 <六光連斬>

 それはガゼフが有する武技の中でも、特に大技とされる一つである。一回の攻撃で六度の斬撃を繰り出し、周囲の敵を攻撃するというものだ。弱点として、通常武技三つ分の集中力を消費し、攻撃がばらけるため命中率が低いというものがある。

 だが、この時のガゼフは攻撃を広げるのではなく、大まかではあったが弐式の上下左右を囲む形で斬撃を放った。ガゼフ本人にとっては、ぶっつけ本番での工夫であり、それぞれの斬撃の威力も普通に放つよりは落ちている。当たったところで弐式を倒せはしない。

 

(しかし、これは手合わせ……試合だ!) 

 

 胸を切る、首を飛ばす、腕や脚の切断。それが可能な位置に当たれば、ガゼフの勝利と言っていい。

 

「おっと~っ!」

 

 ガゼフにとっては当てることが優先の攻撃であったが、弐式にしてみれば武技を使ってなお、遅く見える攻撃動作にすぎない。

 まだまだ余裕がある弐式は、ガゼフの攻撃に合わせるように後方へ跳んだ。そしてガゼフに向けて跳ねなおす。攻撃終了により硬直しているガゼフに対し、一撃くらわそうとしたのだ。

 ところが、六光連斬を振り抜いたはずのガゼフが、続けて動いたのである。

 

「武技! 即応反射!」

 

 発動させた武技……即応反射とは、攻撃後、バランスの崩れた体を無理やり攻撃前の姿勢に戻す効果を有する。つまり大技を振り抜いて硬直していたはずが、そのまま追加攻撃を行えるようになったのだ。

 

「ちぃぇええええい!」

 

 飛び込んでくる弐式に対し、ガゼフは通常の剣技ではあったが、最大限の力と気迫を込めた突きを繰り出す。真っ直ぐ跳ねてくる弐式は宙に浮いた状態であり、これを躱すのは不可能だ。少なくともガゼフは、そう思っていた。 

 だが……。

 

「惜しい!」

 

 弐式は短刀を縦に構えなおし、ガゼフの突き出した剣に当てる。そして火花を散らしながら滑り寄ると、ガゼフの懐にて着地……するなり、斬りつけに入った。

 狙う先はガゼフの首元。

 

 ヂュギィィィィン!

 

 観戦者の鼓膜を揺さぶる金属音と共に、弐式とガゼフが交叉する。

 一瞬のうちに数歩分離れた二人は、暫し動きを止めていた。

 が、ほぼ同時に力を抜いて背を伸ばすと、互いに振り返って相手を見る。

 

「素晴らしい腕前だ、弐式殿。この腕前に、お仲間も加わったのであれば、陽光聖典とて撃退できるだろう」

 

「いやいや。ガゼフさ……殿も。武技って言うんですか? 中々に面白い技で、興味深いですよ」

 

 試合後の爽やかな語り合いに見える。

 しかし、この場で居る者の幾人かは気づいた。

 ガゼフが弐式の強さを褒め称えているのに対し、弐式は武技に対する興味しか口に出していないのである。

 当然、ガゼフ自身も気がついており、楽しげな表情だが目は笑っていない。

 その後、襲撃騎士らの装備の買い取りと、代金の後日受け渡しなど諸々の約束を取り決め、ガゼフは村を去ることとなる。王都には真っ直ぐ戻らず、近くの都市エ・ランテルに寄ってベリュースらを預けるとのことだ。

 

「捕虜を長距離輸送する備えが無くてな。エ・ランテルの駐留兵詰所で捕虜を預け、王都から護送馬車などを呼ぼうと思う」

 

 騎乗したガゼフが説明する。手間のかかることだとモモンガは思ったが、ここで先程から気になっていたことを聞いてみた。

 

「ところで、ガゼフ殿。陽光聖典は私達が撃退しましたが……。もしも私達が居合わせず、陽光聖典数十人と戦うことになったら、貴方はどうしていましたか?」

 

「戦っていたさ」

 

 事も無げに言うガゼフに、モモンガは絶句する。

 ガゼフ自身の強さは先程、弐式との手合わせで把握できていた。弐式は手を抜きどおしであり、接戦のように見えても好きなタイミングでガゼフを叩きのめすことが可能だったのだ。それだけに、余裕を持ってモモンガはガゼフを観察することができたのである。

 

(このガゼフという男の強さは、なんとか死の騎士(デス・ナイト)と斬り結べる程度だ。陽光聖典全員と戦って勝てるとは思えないし、ニグンが投入してきた威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)に勝つことも不可能だろう)

 

 なのに何故、戦うと言い切れるのか。モモンガには理解ができなかった。

 理由を問うたところ、ガゼフは少し困ったような顔をしたが、すぐに表情を改めて答えてくれる。

 

「ゴウン殿。私は平民出の戦士だ。それが腕っ節一つで国王に気に入られ、王国戦士長という過分な地位をも授かった。だが、貴族達には嫌われている。平民だからな。そんな私が、敵わないからと言って国民に害をなす輩から逃げ出したとしたら。貴族達は何と思うだろうな。平民出の兵……いや兵だけではない。あらゆる場所で平民が軽んじられるだろう。そして、私を取り立ててくれた王の顔にも泥を塗ることになる。対外的には王国戦士長が逃げ出したと喧伝され、王国の威信をも失墜させる。……とまあ、理由は色々だ。逃げるわけには、いかないのさ」

 

 立場のため、責務のため、面子のため。

 だが、それだけでは無い何かを、モモンガはガゼフの眼差しから感じ取っていた。

 

「そうですか。お答えいただき感謝します。いずれ、ガゼフ殿とはゆっくり話をしてみたいものです」

 

「私もだ。弐式殿のような強者を仲間とされる貴殿も、相当な使い手なのだろう。フフッ。憧れるな……」

 

 憧れる。

 その言葉を聞き、モモンガは気づいた。それこそが先程、ガゼフに対して感じた気持ちなのだ。

 

(ロンデスにも感じたっけな。ゲームじゃない異世界。こういう出会いは……やはり多いものなんだろうか……)

 

 たっち・みーのような志の高い者に出会えたことで、モモンガは胸が温かくなる思いであった。と、ここでロンデスのことを思い出したモモンガは、ガゼフの許可を得てロンデスに声をかけている。

 ロンデスは手首を縄で縛られ、兵が騎乗する馬に繋がれている。これはベリュースも同じであったが、モモンガはベリュースには目もくれていない。

 

「では、ロンデスよ。これでお別れだな」

 

「アインズ・ウール・ゴウン殿」

 

 ロンデスは一瞬だけ手首の縄に目をやると、フッと笑いモモンガを見た。

 

「俺の願いを聞いてくれて感謝する。それと、せっかくの勧誘を断って申し訳なかったな。改めて詫びさせて貰おう」

 

 対するモモンガは、機嫌良く笑い返している。

 

「ハッハッハッ。何を言う。まだ諦めてはいないぞ? 生きていれば再会できることもあるし。気が向いたら……」

 

 モモンガはロンデスに顔を寄せると、努めて小声で続きを言った。

 

「……の場所にある、ナザリック地下大墳墓を訪ねてくると良い。悪くない待遇で雇用するぞ?」

 

「な……え!?」

 

 驚くロンデスに、ぎこちなくウインクしたモモンガは、スッと離れて弐式達の元へと戻る。

 そして、ガゼフ達がエ・ランテルに向けて出発し、ガゼフとロンデスの後ろ姿を見送った後……モモンガは村長を自宅に帰らせた。彼には、ルプスレギナと配下の者を森に残していくので、安心して良いと言い聞かせてある。 

 

「さて……」

 

 モモンガはヘロヘロと弐式を連れて森に入ると、人目が無いのを確認し、忍者系モンスターのハンゾウを召喚する。その数、五体。五体と言っても八〇レベル超えなので、それなりの金貨は消費したが、彼らには命じたいことがある。 

 二体は、陽光聖典につけた影の悪魔(シャドウ・デーモン)に合流させ、彼らのリーダーとして諜報活動に勤しんで貰う。三体はモモンガの護衛だ。必要に応じて、ヘロヘロや他の者の護衛を命じるのも良いだろう。

 

「良いか? そこのお前とお前、アルベドの付けた影の悪魔(シャドウ・デーモン)に合流してスレイン法国へ潜入せよ。残りは私の護衛だ。適宜任務を与えることもある。解ったな?」

 

「「「「「承知いたしました!」」」」」

 

 見事に揃った声で返事をしたハンゾウらは、それぞれの行動に出る。

 陽光聖典を追う者と、モモンガの影に潜む者だ。

 その後、ロンデスの護衛兼脱出補助として影の悪魔(シャドウ・デーモン)を一体都合し、これも送り出した。

 以上の行動を終えたモモンガは、アルベドに向き直る。

 

「アルベドよ。すまないが、お前の差し向けた影の悪魔(シャドウ・デーモン)に二人加えさせてもらった。念には念を入れてのことだ、悪く思わないでほしい」

 

「何を仰いますか」

 

 モモンガとしては、アルベドが「信用されていないのでは?」と気を悪くするかと思ったのだが、アルベドは頬を染めて喜びの意を示す。

 

「アインズ様のお力添えがあれば、事はより完璧に進みましょう。(わたくし)への気づかいなど、もったいないことです」

 

「そ、そうか……」

 

 頷くモモンガであるが、アルベドの態度には少なからず感謝していた。

 機会を見て褒美でも与えたい……というのは、感謝の気持ち故か、好みの女性に対して行動に出たいだけなのか。そこはモモンガ本人にも判別は付かなかった。

 

「ん、ゴホン。それでは……」

 

 咳払い一つ。場の空気を変えたつもりのモモンガは、弐式とヘロヘロを見回し……朗らかな声で言う。

 

「さあ、ナーベラルを連れてナザリックに戻るとしましょうか!」

 




 何とかモモンガさんに、ガゼフに対する関心を持たせました。 
 が、原作ほど深い思い入れはありません。ガゼフ側でも、弐式さんはともかくモモンガさんを偉大な魔法詠唱者だとは思っていない感じです。
 あと、ロンデスが居るので、モモンガさんが「たっちさんを感じる」箇所が分散されたってのもありますね。
  
≪捏造ポイント≫

・<爆裂(エクスプロージョン)>の位階
・弐式さんの最強防具の硬さ
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