「では、これより魔法の実演を始めます。よろしいですか?」
「う、うむ……」
晴天下……ランポッサ三世があらかじめ用意されたマーキーテントの下で頷く。彼が座っているのは大理石の椅子だ。座席が軽やかに回転する優れもの。そして同じく大理石のテーブルがランポッサ三世の背後にあり、テーブルの周囲には謁見の間に居た貴族達が座っている。
ここは王都を遠く離れた街道を、更に遠く離れた荒野。
モモンガが魔法のデモンストレーションをするので、王城……謁見の間から<
ランポッサ三世は、ぎこちなく返事をしたが、並んで座る王族や貴族達は、ラナー王女を除いて顔色が悪い。何故なら、<
ただ一人……第一王子のバルブロのみは、顔色が悪いながらも不平を漏らしていたが……。
「て、ててて、転移ができたからと言って、それが何の役に立つ! 兵站において大いに役に……あ、ごほん……。と、ともかく! 戦場で第一に役立つのは破壊力だ! それを見るまでは、ゴウンを認めるわけにはいかん!」
一人席を立ち、身振り手振りを交えて叫んでいる。
(「<
ボソリと呟いたのは第二王子のザナックだ。バルブロのすぐ隣という席位置で言うのだから大変な度胸だが、バルブロ自身が大声を出して騒いでいるので、本人には聞こえていない。
「おい、妹よ。お前なら……あのゴウンを、どう使う?」
隣でバルブロが騒いでいるままだが、ザナックの声は左隣のラナーに届いていた。そういった発声のコツがあるのだ。ほとんど口を動かさずに、背後の者に声を聞かせる技術もあるとザナックは聞くが、そこまでは体得していない。
ゴウンを、どう使うか。
ザナックにしてみれば、攻撃魔法で<
(こんなところか? しかし、妹……ラナーは、俺の思いも寄らないことを考えるからな……)
人としての人格や、他者に配慮する点。他人の気持ちを考えるなど。
自分がラナーに勝る部分は確かにあると思う。ただ、結果に結びつける手腕や知謀に関しては、ラナーの方が遙かな高みにあると言って良い。
(こいつのは……アレだ。人外の知謀の余録で、国政とか上手くやりそうな感じで……)
ラナー自身は、国民の安寧などに興味無いのかもしれない。
考え続けるにつれ、ザナックは背筋が寒くなってくるのだが……。
「私なら、使う……などとは考えませんね」
「……なに?」
不意に聞こえたラナーの返答を、ザナックは脳内で咀嚼した。
アインズ・ウール・ゴウンが使えない人物という意味だろうか。
(そんなはずは……。いや、使ってはならない? 使う……『使う』が駄目なのか?)
徐々に、ラナーが言った言葉の意味が飲み込めてくる。
ザナックは、話しかけた時点ではニヤニヤしていた顔を強張らせた。
「奴……いや、ゴウン殿を使う……利用するという考えが危険だとでも? それ程なのか?」
「はい。我が国での
そう言って、ラナーはニッコリ微笑む。
「……そう思う根拠については?」
「話せば長くなりますので……」
どうせ、メイドから漏れ伝わった話で、ラナーが推測したのだろうな……とザナックは判断し、聞くのを止めた。
(いずれにせよ、ゴウンが行使する魔法の程度で判断できるだろう。しかし、俺の想像を超える魔法か……。兵士千人を吹き飛ばすとか、そんなところかな……)
このザナックの目算は、王国において、中堅貴族が聞けば「第二王子殿下も、御冗談がお好きで……」と笑い話にされるものだ。つまり、真に受けてもらえない与太話の類いである。
◇◇◇◇
ザナックとラナーが話していた内容は、モモンガには伝わらなかった。
騒ぎ立てるバルブロの声量がありすぎて、声が紛れてしまったのである。モモンガにしてみれば聞き分けることは可能だったが、バルブロ独演会に飽きてしまい、聞き分ける必要性を感じていない。
「……というわけで! 貴様のペテンを見抜いてやる! 覚悟しろ! ぐはっ!?」
鼻息も荒く言い終えたバルブロが、どっかと腰を下ろして尻の痛みに顔をしかめる。
(大理石の椅子だっつーの。バーカ……)
営業スマイルは崩さないが、いい加減に腹の立っていたモモンガは、心の中で吐き捨ててから、ランポッサ三世に対する説明を再開した。
「では、実演に入ります。まず、比較対象として、御覧になったことのある方も多いと思われます、第三位階の<
ちまちまと見せていくのが面倒なので、第三位階から始めて一段飛ばしだ。
「第七位階の<
いい調子で語っていたモモンガは、ふと首を傾げた。
(戦争相手の帝国は、軍隊を出してくるはずなんだから……。もっと見栄えがいい魔法にしたいかな? 第九位階の<
使用前に<
そんなことも考えたが、最終的に<
(やっぱり、凄い魔法を見て感動してる人の顔って、間近で見たいし? となると……)
モモンガは、ランポッサ三世らから少し身体を背けるようにして<
「ぷにっと萌えさん? モモンガです。デモンストレーションで使用する魔法なんですけど……」
事前の打ち合わせでは、第七位階の<
『ふ~む。あまり情報は与えたくないんですけど……。見てる俺達も、派手な方が楽しいですしね。いいんじゃないですか?』
「ああ、そういえば、
遠隔視の鏡改は、遠隔視の鏡を課金アイテム等を使用して改造したものだ。
従来の遠隔視の鏡は、音声が伝わらないという欠点があり、受像対象の声を伝えるには相手に<
しかし、タブラの手が入った遠隔視の鏡改は、現場の音声を届けることができるのだ。
『双方で会話をするためには、やっぱり<
理想形は、現場のモモンガが念じるだけで、ナザリック地下大墳墓内の
『それをするには更なる開発が必要でしょうね~。俺的には手の平サイズの遠隔視の鏡とかで、お互いの映像を見ながら会話とかを目指したいです。おっと、魔法の話でした!』
ぷにっと萌えが話題を元に戻した。
ランポッサ三世らに対して見せる、大トリの魔法。それに相応しいのは何か。
<
『事前にもうちょっと詰めておけば良かったですね。情報秘匿だけに注目してたのは良くなかったです。ええと、第十位階の<
「え? いいんですか? スレイン法国の訪問団にも、そこまでは見せてないんですけど?」
スレイン法国の訪問団に対して、実際に見せたのは第七位階までだ。
法国側が、ナザリックの魔法位階を高く見積もったとして……第七位階の次の第八位階。それより上を見ても第九位階や第十位階止まりであろう。
このようにモモンガ達は、運用できる魔法位階の上限を偽ることで、超位魔法の存在を隠そうと考えていた。なのに、ここで第十位階を使用すると、超位魔法の存在を勘ぐられるのではないだろうか。
『法国とのことは聞きましたけど、あの時とは状況が違います。考えてみてください、モモンガさん。合流できているギルメンの人数が違うんですよ。敵性ユグドラシル・プレイヤーのことを考えたところで、居たら居たでプレイヤー相手の戦い方をするだけです。ここは……今回のデモンストレーションを最大限に利用することを考えましょう!』
ぷにっと萌えは言う。
第十位階の魔法。しかも、見た目に派手な<
『アインズ・ウール・ゴウンの名を広めて、ギルメンに知らしめる……でしたか? 良い考えだと思いますよ? やまいこさんや俺も、噂を聞いて合流できた口ですから。でしたら、帝国に情報を売っていたブルムラシュー侯の情報ルート。あれが、かなり使えると思うんです!』
情報を流す方法には幾つかある。例えば次の二つだ。
情報屋を雇って、情報を流す。
名を上げて、それが広まるのを期待する。
モモンガ達が冒険者チーム漆黒として活動していたのは、後者にあたる。
今回、ぷにっと萌えは二つの方法を合わせようというのだ。
『このデモンストレーションで確固たる実績をあげて、情報屋……ブルムラシュー侯に、あちこち触れ回って貰うんですよ』
王国の六大貴族からもたらされる情報。その価値と確度は、裏社会の情報屋の比ではない。確かな情報として、帝国や法国のみならず、聖王国や竜王国にまで届くことだろう。
『一笑に付される……「そんなことが、あるはずがない」とかですか。そうなる可能性も低いですよ? そっちに居る、国王や中堅貴族の人達も目撃しますし。情報の裏取りをすればするほど、情報の確度が高まるでしょうね』
だから、構わずやって良いと、ぷにっと萌えは言うのだ。
『まだ合流できていない人達の合流が早まるのなら、第十位階魔法や超位魔法の情報なんて安いものです! 次は誰が来ますかね~。あまのまひとつさんですか? ホワイトブリムさんですか? それとも、たっち・みーさんやウルベルトさん……』
言っているうちに、ぷにっと萌えの声には熱が籠もってきた。モモンガも同様だ。ここで大盤振る舞いすることで、ギルメン達の合流が早まる。その可能性が少しでもあるのなら……。
(全力全開で<
問題は、人化中は第六位までしか使用できないこと。悟の仮面を着用した場合でも、仮面の下で異形種化して第八位階までが限界なのだ。つまり、第十位階魔法を使用するためには、異形種……
(まあ、今着ているのはローブだから、手甲を装着してフードを被れば良いだけだしね~)
そして、第十位階魔法を発動する際は、ランポッサ三世達に背を向けていれば良いのだ。第八位階よりも下位の魔法を使うときにも背を向けていれば、不自然ではないだろう。
(更には、幻術で人化時の顔を作っておこう。手甲は念のために装備! もう完璧だな!)
『何事にも完璧っていうのは、無いんですけどね~』
「……ぷにっと萌えさん。俺の心を読むの、やめて貰えます?」
僅かに憮然となりながら抗議するが、そんなことはすぐに忘れ去り、モモンガは確認した。今、ぷにっと萌えはナザリック地下大墳墓の円卓に居て、他に合流済みのギルメンが勢揃いしているはずだ。皆の意見は、どうなのだろうか。
『他の人達? みんな賛成してますよ。と言うか、円卓に食べ物や酒やらを持ち込んでドンチャン騒ぎしてます。異形種化してるから、すっごく混沌……本当の意味で人外魔境です。酒の入った建御雷さんが「頑張れ! モモンガさん!」とか、ペロロンチーノさんが「きゃほー! モモンガさん、日本一ぃ!」とか、茶釜さんが「ね~? 花火大会は、まだ~?」とか言ってますし~』
「……宴会芸の出し物じゃないんですけどね~……」
苦笑する一方で、その宴会に交ざりたいという気持ちがわき上がってくる。
かつて、元の
そう考えたモモンガは、気合いを込めて言い放った。
「二次会に間に合うようにしないといけませんね!」
『その意気ですよ! モモンガさん!』
こうして<
しかし、いささか長話が過ぎたかもしれない。ランポッサ三世達を待たせすぎた。
両脇で立つデミウルゴス(今はヤルダバオト仮面を着用中)とアルベドをチラ見したが、二人とも涼しげな表情で居る。来賓を待たせていることについて、何も気にしていない様子だ。
(デミウルゴスの顔は見えないけどな! ……一言謝ってから、シレッと続行するか~)
だが、そう思ってランポッサ三世達に意識が向くと、<
「だから! 第七位階などと言うのは、まやかしで大ボラだと言ってるだろうが!」
「ば、バルブロ殿下、落ち着いて!」
腕を振り回しながら叫んでいるバルブロを、エリアスや他の六大貴族らが縋り付くようにして押しとどめている。ザナックは無視を決め込んで顔を背けているし、ラナーはニコニコしていた。
そして、ランポッサ三世は……両耳に人差し指を突っ込んでモモンガを見ている。
「む? もう、良さそうか? バルブロ! 少しは静かにせんか! 見苦しい様を晒して、王家に恥をかかせる気か!」
モモンガと目が合うなりバルブロを叱り飛ばしたので、どうやらモモンガが背を向けている間は、騒いでいるバルブロを放置して間を持たせてくれていたらしい。
(取引先から来た社員に対して優しい対応! 見習うべき気配りじゃないか!)
ランポッサ三世は、一国の王としては色々と問題がある。
これはデミウルゴスから聞かされていたし、ぷにっと萌えやタブラも、高く評価はしなかった。しかし、今の対応で、モモンガのランポッサ三世に対する心証は上昇している。
「お待たせしました! 最後の魔法実演ですが、第十位階魔法……<
この宣言により、バルブロがより一層に騒ぎ出したが、モモンガは構わず続けた。
アイテムボックスから手甲を取り出し、ローブのフードを目深に被る。まだ異形種化はしていない。モモンガは人化状態で、第六位階までの魔法を使用できるからだ。
「まずは、第三位階の<
◇◇◇◇
ランポッサ三世らが、実演される魔法について感想を述べられたのは、最初の第三位階……<
「くくくっ、第五位階程度で絶句とは……」
「あら、笑っちゃ駄目よ。デミ……ヤルダバオト。帝国のパラダインとか言う人間で、第六位階が限度なのでしょ? ましてや王国ではねぇ……」
<
(お前ら! 煽るようなことを言ってるんじゃない!)
この場の全員に背を向けたままのモモンガは、僕二人(片方は恋人だが)の会話に心の中で突っ込みを入れた。今のところ、観客達に声は届いていないようだし、彼らの目の前で身内を叱責するのは避けたい。
(みっともないからな!)
だが、この先、何処でボロが出るかわからないのだ。そうなる前に畳みかけるべきだろう。
モモンガは、「次は第七位階の<
キュドォォォォオオ!
天高く火炎が吹き上がる。
「え~、このように猛烈な火炎が吹き上がります。地上の敵のみならず、上手くやれば低い高度を飛ぶ相手を炙ることも可能です。飛び掛かってくる相手の目の前で発動すると、『飛んで火に入る夏の虫』的な光景を楽しめますので、修得の際には是非試してください」
この世界の、いったい誰が第七位階魔法を修得できると言うのか。しかも、ここは魔法後進国のリ・エスティーゼ王国なのだ。そういったツッコミを、ランポッサ三世以下の全員が思い浮かべていた。いや、一人、第一王子バルブロのみは不服そうに唾を吐いている。これをモモンガが見ていたら、「この人……王族なんだよな?」と、あまりの下品さに呆れていたことだろう。アルベドやデミウルゴスだったら、モモンガが止める前にバルブロを殺害していたかもしれない。
だが、バルブロにとって幸運なことに、モモンガ達は彼に対して背を向けていた。先にアルベドらが嘲笑したときでさえ、背後のざわめきや驚愕の声が途切れたことが原因であり、後方を見ていなかったのだ。
……が、そのバルブロの幸運も、そこで終わりを告げる。
現場のモモンガ達は、背後の光景を見ていないので気にしていなかったが、ナザリック地下大墳墓の円卓に居たギルメン達は別なのだ。加えて言えば、シャルティアやアウラにマーレ、コキュートスなど、主立った守護者が揃っているし
「あんだぁ? あの髭マッチョぉ。モモ……ンガさんに、ひっく! 唾ぁ吐いてんのかぁ?」
ベロンベロンになる一歩手前。上半身裸になっている武人建御雷が、大ジョッキでビールをあおりながら巻き舌で唸る。
「モモンガさんは一生懸命に頑張ってるというのにね~……。ソリュシャンは、どう思いますか?」
「殺すべきかと……」
その他、何人かのギルメンも似たり寄ったりの会話をしており、宴会……もとい、円卓は一転して雰囲気が悪くなりつつあった。
「はわわ……」
元の
宴会における『食べ専』組。
その一人が、目の据わりだしたギルメン達を前に呆然とする……ぷにっと萌えだ。
(いけない! このままでは酔った勢いで……皆が、モモンガさんのところへ行ってしまう!)
そして生じるのは、父親のランポッサ三世(他に息子と娘が一名ずつ)の前で催される、バルブロ王子惨殺イベント……。
高位の蘇生魔法や、<
「こ、これは……どうしたものか……」
まったく酒が駄目というわけではないので、ちびちび飲んでいた彼だが、ほぼ素面の状態であることで酔っ払い組の有様に焦っていた。そして、彼と同様のポジションであるギルメンに、ブルー・プラネットとメコン川、そしてタブラが居る。一応、正気を保っている彼らは、一箇所に集まり、ケチャップのかかったイカリングなどを食べていたのだが……。
「おいおい、やべー雰囲気だよ。どうすんの、ぷにっと萌えさん? ベルさんも、こんな感じだし……」
白獅子の顔をほんのり赤くしたメコン川が、グラスの日本酒を舐めながら聞く。彼の相棒たるベルリバーは……多くの口を持つ異形の姿で、悪い酔い方をしていた。
「美味い酒と食いもんでさ~。贅沢で幸せだよ~。でもな~……元の
突然、ジョッキをテーブルに置くや、メコン川に話を振ってくる。
「聞いてるって……」
面倒くさそうに言いながら手の平で押しのけ……ると、ベルリバーの口の一つに手を突っ込んでしまうので、メコン川は左手の人差し指で、口と口の間を突いて押す。
「ぬわ~~~~っ」
大げさな声と共にベルリバーが反対側に傾き、そのままテーブル上で突っ伏した。
「ふごごご~、すぴ~~。もう食べられないよ……」
「寝ちまった……。てか、異形種化したベルさんが言って、これほど似合わない台詞も無いな……。さて……」
メコン川はグラスを置いて、ぷにっと萌えを見る。
「マジでやべーぞ、ぷにさんよ。皆が、暴走する前に何とかしなくちゃ……。こんな時、軍師的には、どうすんの?」
「む、むうう。どうにかして、みんなの興味を逸らさないと……。もうすぐ、モモンガさんが<
後は、なし崩しで酒盛りの場を盛り上げれば、<
「……ここは、私に任せて貰いましょうかね……」
ゆらりと立ち上がったブレイン・イーター……タブラ・スマラグディナが、ぷにっと萌えを見た。
「私に、秘策があります!」
「秘策っ!?」
オウム返しに言うぷにっと萌えに対し、タブラは一つ頷いてから歩き出す。そのまま円卓各席の外側を周り込み、ギルド長席の対面側……
「え~、皆さん。宴たけなわですが、ここで一つ芸などを……」
これを聞き、ギルメン達が囁き会う。
元の
更に言えば、タブラがホラー好みなこともあり、「怖い物を見せられるのでは?」と皆が身構えたことも、場が静まった一因であった。
「取り出したのは何の変哲もない、大きな板ですが……」
タブラは淡々と準備を進めていく。
アイテムボックスから取り出した大きな板。それを自分の背後……
「秘技! タコの干物! 板張りで作成中!」
クワッ!
「……つまり、タブラさんは『タコの干物作成風景を』再現しているわけで……」
「やめろ、ブルプラさん。ギャグのマジ解説は止めるんだ……」
ブルー・プラネットをメコン川が制した。それほど酔いが回っていない彼らにしてみれば、お寒い限りのギャグとしか言えない。しかし、浴びるほど酒を飲んだギルメン達は、どうだろうか……。
……止まっていた時は……再び動き出す……。
「きゃははははは! タブラさん、超サイコー!」
ペロロンチーノがタブラを指差し、ケタケタ笑い出した。
かと思えば、建御雷が「ちくしょう! タブラさんめ、身体張ってるじゃねーか! 俺も一肌脱ぐか!」と言って、残った衣服に手を掛け……弐式に「たけやん! 下は駄目だ! 運営が異世界転移してきて、垢バンされるからマジで!」と縋りつかれている。
その二人の様子を、ユリとナーベラルとコキュートスが顔を赤くしながら目を両手で覆い……指の隙間から見ていたりするのだ。
「人外魔境の混沌が、更に濃くなった!? でも、悪い空気は無くなったから……これでいいのか。いいんだっけ?」
「やあ。少しは間が持ちましたかね?」
ぷにっと萌えが状況把握に努めていると、タブラが戻ってきた。
「何とかなって良かった。酒が入った人達には、くだらないギャグの方がウケやすいんですよ」
そう言ってタブラは笑う。そして、ふと考え込み「古典ギャグでも、いけたかもしれないな~。ぐるりと回って、う○こち○ちんとか……」等と呟いているので、ぷにっと萌えはブルー・プラネットと顔を見合わせた。
「タブラさん。あれで結構、酔いが回ってるんじゃ……」
「ブルプラさんも、そう思いますか?」
タブラは酒が強くない。好きで飲む習慣もないため、大酒飲みのグループから離れていたのだが、宴会の場の雰囲気で酔ったのだろうか。
(素の可能性も大いにあるんだけど……)
ぷにっと萌えは、それ以上深く考えることをやめる。
ともかく、タブラの活躍により危機は去った。遠隔視の鏡改の方を見ると、黄金鎧の上から帯を巻いたペロロンチーノを、ピンクの肉棒……茶釜が帯を退くことでグルグル回している。
「ほれほれ、回っちゃえ! 弟~っ!」
「あ~れ~っ! って、こういうのは女の人の役でしょ! 姉ちゃ~~~ん!」
「うっさい! 女の人を回したらセクハラでしょうが! 男が回されてこそのお笑い芸! 大人しく回されるのよ!」
「それはそれで、セクハラだーーーっ! あ~れ~っ!」
再び帯回しをされ、ペロロンチーノは悲鳴をあげた。
その姿を見た建御雷と弐式が、やんややんやと囃したて……ルプスレギナが「僭越ですが、私も帯を回されたく……」と挙手するも、メコン川に睨まれて挙げた手を下ろしている。
「後は……モモンガさんに期待ですか」
ぷにっと萌えは胸を撫で下ろし、板が撤去されたことで見えるようになった遠隔視の鏡改を見た。そこでは「最後の魔法実演に移ります。今まで以上に大きな音が……」と注意を促すモモンガの姿が映し出されている。
<
その後は、ランポッサ三世のコメントを貰ってから、彼らを王城へ送り届け……それらを済ませたモモンガ達が帰ってくるのを待つだけ。
自分の席に座り直し、ぷにっと萌えは呟いた。
「モモンガさんなら、最強化とか三重化とかやりそうかな。まあ、問題はないと思うんだけど……」
タブラさんの一発芸。
なんかこう、自然に書けていました。と言うか、あの流れを変えられなかったです。
そして、上昇するランポッサ三世の評価。
出先で親切にされると嬉しいものなのです。
元々、魔法実演会は今回で終わらせる予定だったのですが、『現場の判断』(書き手の思いつき)で、法国に見せたよりも上の位階の魔法を使おうと考えたところから、ギルメンの宴会路線にシフト。
気がつくと、ペロロンチーノさんが回されることに……。
回されるペロロンチーノさん……。
薄いBL本が厚くなりそうです。
あと、素面では押さえ役の建御雷さんが、酒が入ったら脱ぐ感じになりました。
弐式さんは結構飲んでも大丈夫なタイプ。
さて、第十位階魔法を披露しただけのギルメン誘因効果はあるのかどうか……。
そりゃあ、ありますとも! 本作のタイトルは『集う至高の御方』ですから。
不発に終わって情報開示しただけ……なんて事にはならないのです。
現在、土曜の午前8時40分。
室内は程良くサウナ状態……。
オリ小説の方、土日で書けるかな……。
<誤字報告>
D.D.D.さん、トマス二世さん
毎度ありがとうございます。
今回、暑くて読み直しは二回しただけ……。
結構な数の誤字取りをしたのですが、まだあるかも……。
もう一回読み返しておくか……。