オーバーロード ~集う至高の御方~   作:辰の巣はせが

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第97話

「私の忠実な(しもべ)、デミウルゴスよ」

 

「はい! 我が創造主、ウルベルト・アレイン・オードル様!」

 

 玉座の間、本来ならNPC……(しもべ)達が立つ場へと降りたウルベルトが、デミウルゴスの両肩を掴んで語りかけている。

 つい先頃、たっち・みーとセバス・チャンも同じような体勢だったが、こっちは些か情けない部分があった。

 主な会話内容が『再会にかこつけて試すようなことをした件』についての謝罪だからだ。

 この様子を、玉座で座るモモンガ……両隣には、合流済みのギルメンが居並んで居る……は、皆でウルベルトらを注視している。一方、アルベドを始めとする主立ったNPCは、一旦解散して退室していた。今は、玉座の間の外で待機しており、ウルベルトの用件が済んだら再び呼び戻す予定である。これは、ウルベルト……至高の御方がデミウルゴスに謝るのは良いとして、それを他のNPCに見せるのはどうか……と判断した、モモンガの命令によるものだ。

 

(俺とか他のギルメンなら見て良いかというと、それも駄目なんだろうけど。今回はな~……)

 

 モモンガは、この状態に到った原因……金貨投票のことを思い出した。

 先に行った金貨投票では、ギルメンの半数以上がウルベルトの肩を持っている。言うまでもなく、賛成派は非のある立場だ。一方、モモンガを含む残りの反対派は、反対こそしたものの、投票で方針確定した後は特に止めようともしなかった。

 これはモモンガ達、反対派の考えでは、反対派も有罪(ギルティ)となる。

 なので皆で相談し、ウルベルトの謝罪が終わったら、全員でデミウルゴスに謝る……と、そういう段取りなのだ。

 

(問題点は、デミウルゴスの「至高の御方が謝罪するなどもったいない!」ってのが、ゲージ振り切って天高く昇りそうなのがな~……。でも、筋は通しておくべきだし……)

 

「いや、何と言うか、至高の御方オーラって言うのか? そういうのを、お前達は感じ取れるんだってな? 前にも、モモンガさんの変装を見破ったとか何とか……。それを聞いてな、何処までやったら見破れなくなるのか~……と興味が湧いたもんで、試させて貰ったんだ。正直言って、すまなかった」

 

 ウルベルトが謝罪後に頭を下げると、モモンガ達の想定どおり、デミウルゴスが狼狽えだした。

 

「ウルベルト様が頭をお下げになることなど、何一つとしてありません! どうか、どうか!」

 

 デミウルゴスは必死で訴えているが、ウルベルトは頭を上げない。

 

「デミウルゴス。私に悪気は無かったことは、これはもう間違いない事実だが……」

 

 ギルメン達は「嘘こけっ! ノリノリで主導してたくせに!」と思ったが、ここで言っても状況は解決しないので、グッと堪えて見守る。

 

「デミウルゴスを試したことも、また事実だ。本当に済まなかった。どうか許して欲しい」

 

「許すも許さないもありません! この(わたくし)、至高の御方の御命令ならば如何なる事でも受け入れる所存! ですから、どうか……」

 

「そうか……そう言ってくれるか……。感謝する」

 

 確かめるように言うと、ウルベルトは頭を上げた。そして、デミウルゴスの顔を正面から覗き込む。

 

「久々で見たが、やはりイケメンだな。お前を製作するにあたって、眼鏡や目の宝石とか、随分金がかかったし、素材確保のクエストも難儀したもんだ。が、その甲斐はあったようだな!」

 

「もったいない御言葉です!」

 

 ニヤリと笑うウルベルトと、キリッとした面持ちで応じるデミウルゴス。

 何やら、創造主と被創造物でイチャイチャしだした。

 そっとしておきたいのが人情だが、玉座の間の外ではシャルティアらを待たせている。モモンガは申し訳なさを感じながら、咳払いをした。

 

「ごほん。あ~……ウルベルトさん? 実験についての賛成や反対はともかく、今回はギルメン全員が一枚噛んでいましたので……。そろそろ、デミウルゴスに謝罪したいのですが?」

 

 この呼びかけに、ウルベルトは山羊頭を回してモモンガと視線を合わせ……やがてニヤリと笑っている。先程も同じ笑みを見せていたが、今度のは意味合いが違うようだ。

 

((((((((……あっ、悪いことを考えてる顔だ……))))))))

 

 モモンガとギルメンの心は、<伝言(メッセージ)>なしで一つとなった。

 仲間達の目が半目になる中、ウルベルトはデミウルゴスに聞く。

 

「って、モモンガさんが言ってるけど、どうする? デミウルゴス? 一〇人超えのギルメンから一斉に『ごめんなさい』されるとか、滅多にない機会だと思うんだが~……」

 

 デミウルゴスの返答が読めているのか、ウルベルトはニヤニヤ顔だ。対するデミウルゴスは……顔を引きつらせながら申し立てた。

 

「何と言いますか……。ご、ご容赦願えますでしょうか? 私は、気にしておりませんので……」

 

「聞いたとおりですよ、モモンガさん。それに皆さん。本人が良いって言ってるんだし、それで良いと……私は思うんですけどねぇ」

 

 確かにウルベルトの言うとおりだ。

 ただ、それでも「悪魔だな~」という感想が、ギルメン達の脳内で浮かび消えて行く。

 結果的に、ウルベルトは自分だけデミウルゴスに謝って、他のギルメンからは謝罪の機会を奪ったのだ。傍目には『デミウルゴスの意思を尊重した判断』に見えていて、それが間違ったことでもないから、余計に悪魔的だと思える。

 もっとも……。

 

(うひょー! ウルベルトさん、格好いい! 大災厄の魔だーっ!!)

 

 モモンガなどは内心で大喜びしているのだった。

 

 

◇◇◇◇

 

 

「というわけで、円卓に移動したのだが……」

 

 玉座の間から円卓へ移動。

 ギルド長席に座ったモモンガは、話を切り出しつつ室内を見回した。

 現時点での合流済みギルメン。その全員が自らの指定席に座っている。

 ギルメンだけでやった帰還報告会と違っているのは、それぞれのギルメンの背後に制作NPCが立っていること(アルベドのみは、モモンガの左後方で立っている。パンドラズ・アクターは右後方)だろうか。この製作NPCの背後配置は、異世界転移後の会議では、たびたび見られたが、今回は合流済みギルメンの数が過去最大だ。

 

(俺を入れてギルメン数は一四人。で、同席する制作NPCは一二人。合わせて二六人か……。この部屋も賑やかになったな~……)

 

 モモンガは、自分一人でナザリック地下大墳墓の維持費を稼いでいた頃、ごくたまに円卓を覗いたことがある。

 

(随分と寂しい思いをしたよな~……。ガックリきて円卓の照明を落とすんだけど、真っ暗闇になった円卓が、こう妙に怖い感じでさ~……急いで扉を閉めたっけ)

 

 単に室内人数を増やしたいのであれば、命令コマンドでもってNPC達を移動させ、円卓に詰め込めば良い。

 だが、そういう事ではないのだ。

 意思を持つ者が複数居て、皆とワイワイ馬鹿騒ぎしてこそではないか。

 ユグドラシル時代のNPCには、それを求めることは不可能だった。

 

(しか~し! 今は違う!)

 

 意思を持って動くNPC達は、十分に『人数』としてカウントできる。しかも今回、円卓に集めたNPCは、それぞれの創造主が居る状態なのだ。だから、誰々の代替品のような扱いではない。モモンガは精神的な余裕を持って、NPC達を一個人として受け入れていた。

 

「え? 茶釜様……シャルティアの胸が、アレだって御存知だったんですかぁ!?」

 

「ふっふっふっ! 『至高の御方』は、皆のことを知ってるものなのよん!」

 

 座席に座っ……乗ったピンクの肉棒(茶釜)が、背もたれの端から覗き込むアウラに自慢している。反対側の端から顔を見せるマーレは「ふぇええええ! 凄いです! 茶釜様!」と感心する事しきりだ。

 もちろん、それらの会話は、隣で座る茶釜の弟……ペロロンチーノに聞こえており、彼は膝上に乗せたシャルティアの頭を撫でながら、シュンとなっている。

 

「ごめんね~、シャルティア~……。姉ちゃんには、シャルティアのデータを見られてるんだよね~……。ユグドラシル時代の話だけどさ~……」

 

 あんたんとこの子を見せなさい。

 そう言って乗り込んできた姉に、ペロロンチーノは為す術がなかったのである。そんな彼に対し、シャルティアは大きく(パッド多重装備の)胸を張って口を開いた。

 

「まったく問題ありんせん! 私は、ペロロンチーノ様が気に入ってくださるなら、その他はどうでも良いのでありんすえ!」

 

「しゃ、シャルティアアアアアア!」

 

 それまで頭を撫でていたペロロンチーノが、膝上のシャルティアを掻き抱く。

 

「やっぱり、シャルティアは最高の女の子だよぉ! ぺたんこ最高ぉおお!」

 

「ひゃふぁ!? わ、(わらわ)も、最っ高に幸せでありんすぅううう!」

 

 ペロロンチーノに抱きしめられたシャルティアは、とろけきった淫らな顔で歓喜を示した。仲が良くて結構だが、問題だったのは同じ円卓で居るギルメンやNPC達だ。過ぎたスキンシップを見せられて、良い気がしないのである。

 他人様に見せるべきでないような行為は、自室等、二人きりの場所でやって欲しいのだ。

 複数ギルメンの視線がモモンガに向けられ、モモンガがギルド長の職責において厳重注意を……するよりも早く、茶釜とやまいこが行動に出た。まず、茶釜が、アイテムボックスより一番重い金属塊を取り出し、斜向かいのやまいこに放って渡す。それを受け取ったやまいこは、座ったまま右腕のみで投擲。茶釜の隣で座るペロロンチーノの顔面に、金属塊が直撃した。

 

「ぐべらっ!?」

 

「ぺ、ペロロンチーノ様ぁあああああ!?」

 

 椅子の背もたれに向けてダランと脱力した創造主に、膝上のシャルティアが呼びかける。しかし、ペロロンチーノは反応しない。この一撃で死ぬはずもないことから、意識が飛んだだけだと思われる。

 

「あ~……シャルティアよ。ペロロンチーノさんは、暫し休憩するそうだ。そっとしておいてあげなさい」

 

 一連の出来事を、口をカパッと開けて見ていたモモンガは、半泣きでペロロンチーノに縋りついているシャルティアに声をかけた。そして、茶釜に向き直って確認する。

 

「目が覚めたら、治癒のポーションを飲んで貰う……で良いですよね? 茶釜さん?」

 

「おっけいよん! 本当は、そのまま自室にブチ込んでやりたいところだけどね~」

 

 粘体を触腕状にして持ち上げ、サムズアップのような仕草をする茶釜。モモンガは「は、ハハハ……」と乾いた声を漏らすのみだ。

 

(茶釜さんを怒らせるのは、マジでNGだ。わかってたことだが、今は交際中なんだし。より一層の注意が俺に要求されるぞぉ!!)

 

 元の現実(リアル)で、茶釜は憧れの女性だった。それは今も変わらないが、いざ付き合ってみると怖い部分は、怖いまま。普通に接していれば、茶釜の怒りを買うことはそうそう無いはずだが、モモンガとしては背筋が伸びる思いなのである。

 

「そ、それでは、周辺域の支配事業について、デミウルゴスから説明をして貰おうと思います。ウルベルトさん、よろしいですか?」

 

 これまではウルベルトが不在だったので、デミウルゴスに直接命令していたが、今はウルベルトが居る。勝手に指図するのもマズかろうと、モモンガはウルベルトに確認を取った。

 

「かまいません。と言うか、大まかな事情は聞いていますから、ちょっとしたことなら私の了解を得なくて良いですよ。普通に気をつけて貰えれば、それで十分です」

 

 そうウルベルトが言うと、建御雷が「んだんだ、ウルベルトさんの言うとおり!」と続き、他のギルメン達も頷いている。

 

「なるほど……。では、デミウルゴスよ。説明を頼む」 

 

「承知いたしました。アインズ様」

 

 モモンガが対外的に、ナザリック地下大墳墓の代表者として名乗っている名前。アインズ・ウール・ゴウン。それは本来、ギルドネームであるが、モモンガ呼びに戻すと言った宣言をしていないため、ナザリックの(しもべ)達は基本的にアインズ呼びをする。

 モモンガに対して一礼したデミウルゴスは、ウルベルトの背後から半歩左に移動して現状解説を始めた。

 まず、リ・エスティーゼ王国について。

 帝国とは休戦状態になったため、ナザリック勢は目立った戦功を得る機会を喪失していた。その結果、モモンガは六大貴族級の地位を得られていない。しかし、代わりと言っては何だが、六大貴族らが気を遣って尽力し、辺境侯としての地位を得ることとなった。その支配域はナザリック地下大墳墓と、周辺の森林。そしてカルネ村と、エ・ランテルだ。

 

「王国に対する税は、他の貴族よりも多くの免除が認められています。その分、バハルス帝国や、スレイン法国に対しての防備を頼む……という意味合いがあるようですが……。それら両国の戦力を考慮しますと、現状のナザリックとしては通常の対応で問題ないでしょう。なにしろ至高の御方が、大勢帰還されていますので……」

 

 他の報告としては、第三王女ラナーと密約を結び、彼女の功績次第では、望むアイテムを下賜するという事だろうか。

 

「また、王国の冒険者チームで特筆すべきは、アダマンタイト級冒険者チーム『蒼の薔薇』ですが、王国を拠点とする冒険者の中で最強というだけのことでして、脅威ではありません。アインズ様達が実際に手合わせをし、余裕を持って完勝したことからも明らかでしょう。ただ、珍しいアンデッドが所属しているようですが……」

 

 イビルアイについて、デミウルゴスが触れる。

 ただ、イビルアイはモモンガに対し「さえない」等と言い放ったり、態度が悪かったことでギルメンからの心証は悪い。一応、手合わせの時に、モモンガ自身によってボコボコにされているが、事後も節々で態度が悪かったため、ナザリック側の心証は悪いままだった。

 イビルアイについては他に、仮面を取れば美少女……という情報が得られているため、普段ならペロロンチーノが擁護して騒ぐパターンである。だが、モモンガ関連の事情を聞かされているペロロンチーノは、意識が回復してポーションを飲んでいるところだったが特に反応しなかった。

 

「後は……同じく王国の冒険者チームで、『漆黒の剣』ですが……」

 

「そっちは、それとなく動向をチェックしておいてくれるか? 私と弐式さんが世話になったことがあるチームなのでな」

 

 世話になったので目をかけたいのは本当ながら、チーム『漆黒の剣』には、男装女子の魔法詠唱者(マジックキャスター)、ニニャが居ることも理由として大きい。ニニャは、モモンガが個人的に仲良くなった少女なのだ。彼女の姉であるツアレを救い、ナザリックで雇用したのは暫く前のことになるが……。

 

(近々、ニニャに会いに行った方がいいだろうな~。放置しっぱなしと言うのも……)

 

 ニニャと似た立場の人物で、カルネ村のエンリ・エモットが居る。こちらはモモンガとデートしたり等、恋人としての関係は進捗中である。

 

(アルベドとルプスレギナ。茶釜さんとエンリ、そして……ニニャ! 現状で五人! アウラも大きくなったら、俺の后になりたいってことで……彼女も加えると六人! ……これ以上、増えたりしないだろうな? まあ、増やしてるのは俺なんだけどさ……)

 

 人化した状態でも、モモンガには転移後世界の英雄クラスと同等か、それ以上の体力があった。配偶者が多くても、夜の生活で干からびるということはないだろう。しかし、世間体というものがある。あまり、交際女性や配偶者を増やすのは、どうかとモモンガは思う。思うのだが……ここでモモンガは首を傾げた。

 

(まぁ、今更か……)

 

 アルベド一人に絞れず、二人三人と交際女性を増やした時点で、自分は既にハーレム状態なのだ。ここから何人か増えたところで、大差はないし、女性らに対してモモンガが責任を持つことに変わりはない。

 

(現状で、大黒柱役を女性六人分か……。責任重大だな……)

 

 ここで気になるのは、エンリとニニャ……二人と普段接していないことだ。ナザリックで取り込めば良いのだが、エンリは村を離れたくないようだし、ニニャは漆黒の剣を続けたい様子。

 元からナザリックの一員であるアルベドやルプスレギナ、ギルメンの茶釜とは別の交際形態になるだろう。場合によっては、結婚しても一緒に住むことがないかもしれない。その辺は、エンリ達の自主性と意思、あるいは選択を尊重することとして、モモンガはデミウルゴスの説明に意識を戻した。

 

「続きまして、カルネ村とエ・ランテルからの税収ですが……。カルネ村は、アインズ様の御命令により、税に関してはほぼ免除状態です。ですので、主にエ・ランテルについて御説明いたします」

 

 デミウルゴスによると、エ・ランテルに関しては期待した程の税収ではないとのこと。ただし、カルネ村の税収や、モモンガ達の冒険者働きで得られる報酬よりは額が大きいため、現状維持。その他では、生産物などについてナザリックの力でテコ入れし、税収アップを狙うとのことだ。

 

(そう言えば、六大貴族と第二王子は味方についてるんだっけ? そこら辺を上手くやりくりして、色々と増税したら……もうちょいエ・ランテルから搾れそうだな~。……なんて事は、デミウルゴスならとっくに考えついてるか?)

 

 黙って聞いていると、思ったようなことをデミウルゴスが解説したので、モモンガは「俺も、少しは支配者が板についてきたかな……」と、ほくそ笑んでいる。

 だが、ここでウルベルトが発言した。

 

「デミウルゴス。村や都市からの税収と言うけれど、無理な徴収はしていないだろうね? アレもコレも税をかけて、生きてるだけで罰金……みたいなことはしてないか? ゲームじゃないんだから、支配下の民を豊かにしないのは、支配者として無能……いや、有害の極みだからね?」

 

「ぐふっ!?」

 

 見えない何かが、モモンガの胸をえぐる。

 デミウルゴスは「承知しております。ご安心を!」と答えたが、モモンガはと言うと、心にダメージを受け、胸を押さえて呻いていた。それに気がつかないウルベルトは、デミウルゴス相手の会話を続行する。

 

「本当に、大丈夫なのだろうね? デミウルゴス?」

 

 元の現実(リアル)ではテロリストだったこともあり、ウルベルトは『国民を苦しめる支配者層』という構図を特に嫌っているのだ。

 

「その点については十分に配慮しています。エ・ランテルからの税収増につきましては、民衆受けの良いモンスターによる運送業などを新規に興し、そこからの税収を想定したものですので。現地では雇用の受入口となり、市民の生活水準向上が見込まれます」

 

 聞けば、他にもゴーレムのレンタルなどをしているようで、エ・ランテルやカルネ村の住人達の生活は楽になっているらしい。

 

「なるほど、よく理解できたよ。さすがは私のデミウルゴスだ。続けてくれたまえ」

 

「光栄です。ウルベルト様! では、続きまして……」

 

 尻尾をブンブン振るデミウルゴス。その彼による説明が、スレイン法国関連に移行した。

 

「法国は、奴隷制について段階的に廃止する模様です。何しろ重要な資金源であることと、一気に廃止すれば経済が混乱するとのことで……」

 

 加えて言うと、奴隷制が廃止となれば、今居る奴隷はどうなるのか……という問題が発生する。法国側は、希望者には功績次第で市民権を与えたりするなどして対応するつもりのようだ。

 

「ただ、今後、新たに入手したエルフなどについては、一部、王国ないしナザリックで面倒を見て貰えないか……といった議論もされているようで……」

 

 奴隷ではない人口増、そして労働人口の増加でもある。

 この問題に関して、モモンガはギルメンらと相談した。その結果、王国の都市に行きたい者は、手続きの面倒をナザリックが見ることとし、ナザリックの世話になりたい者は、トブの大森林で住めば良いということになった。どのみち、トブの大森林は(転移後世界の基準で)強力なモンスターが多く、人類国家の支配は及んでいない。好きなように住めば良いのである。

 そこまで話が進むと、モモンガは一声唸ってから呟いた。

 

「トブの大森林か……。ある程度の伐採などは必要だな……。人を襲う獣……的なモンスターは、ナザリックで処理すれば良いことだし。定期的に(しもべ)を巡回させるか……。茶釜さん? アウラに任せてもいいですか? 支配下のモンスターで居住区を整備し、新たに住む奴隷やエルフ達を守れれば……と。それとマーレには、耕作などする場合の指導や、チェックなどを頼みたいです。あ、これはブルー・プラネットさんにも、お願いしたいですね」

 

 トブの大森林で住むことになるエルフ達や元奴隷には、基本的に自給自足をして欲しい。とは言え、妙な作物を育てられて、それで問題が起こっても困るのだ。

 

「おっけ! 聞いてみるわね~」

 

 軽い口調で返事した茶釜は、頭部……ピンクの肉棒の頭頂部を左右に振りながら、後方のアウラ達を見た。

 

「アウラ、マーレ? モモンガさんからのお仕事、引き受けられる?」

 

「はい! 問題ありません!」

 

茶釜の背もたれの向かって左側から顔を出したアウラが、挙手しながら返事をする。

 

「森の中のモンスターは、私がバッチリ締めておきますので! 巡回も、そいつらにやらせます! 伐採も問題なくて……ああ、ハムスケを使う手もあるか。かまわないですか? アインズ様?」

 

 ハムスケは以前、モモンガと弐式、更にお供として同行していたルプスレギナによって面白おかしく捕獲された魔獣だ。人語を解し、モモンガを『殿』、茶釜を『お(ひい)様』と呼ぶ。現在は、カルネ村付近にて放し飼い状態であり、たまに遊びに行くモモンガなどとは、よく顔を合わせていた。

 

「かまわないとも。どうせ森の中で食っちゃ寝しているだろうから、好きに使ってよろしい。……マーレは、どうだったかな?」 

 

 姉のアウラが話し終えるのを待っていたのか、マーレは茶釜の向かって右側で姿を見せ、両拳を胸前で握って気合いを溜めている。

 

「は、はい! アインズ様! す、スケジュールを組む必要はありますけど、定期的に見回ったり指導したりするのは、も、問題ありません!」

 

「うむ、よろしく頼む。ブルー・プラネットさんは、どうでしょうか?」

 

 モモンガがブルー・プラネットに視線を向けると、古い映画に登場する『冒険する考古学者風』の樹人……ブルー・プラネットが、少し驚いたように肩を揺らした。

 

「どうかしました?」

 

 モモンガが首を傾げたところ、ブルー・プラネットは動かない帽子を手で押さえながら苦笑する。

 

「い、いや~……マーレと話してたときの重厚さから、一転して、普段のモモンガさんの口調になったので……。合流してから、それなり日が経ってますけど、切り替えの凄さには驚かされますね~。ああ、耕作指導については了解です」

 

 ブルー・プラネットの感想には、他のギルメン達も同感だったようで、「俺も思った。モモンガさん、やっぱスゲーわ」とか「魔王っぽくて素敵よね~、いつもの口調も素敵だけど!」と言ったギルメンの声が聞こえた。ちなみに前者が建御雷で、後者は茶釜だ。

 なお、NPC達も全員が頷いており、特にアルベドは茶釜の感想に大きな共感を覚えたようで、腰の黒翼をパタつかせながら何度も頷いていた。

 

(うう……アルベドからの視線を感じる……。照れ臭い……)

 

 モモンガからは、角度的にルプスレギナが腕組みしつつ頷く姿が見えており、これもまた照れ臭い。しかし、左斜め後方で居るアルベドの視線を感じるとは……。

 

死の支配者(オーバーロード)のスキルに、視線感知とかあったかな?)

 

 なかったはずとモモンガは記憶するが、それはさておき、別の懸案事項について考えることとする。

 

(法国関連と言えば……アレはどうなってたっけ? 世界級(ワールド)アイテムを寄こせって言った件……)

 

 以前、法国は親善使節と偽り、ナザリック地下大墳墓に攻撃部隊を送り込んできた。それを返り討ちにした際、モモンガは手打ちにする条件を幾つか突き付けている。その中に、『世界級(ワールド)アイテムの傾城傾国を、ナザリックに譲渡する』というものがあった。これが実行されたかどうか気になったのだ。

 このことについては、タブラが挙手しながら発言している。

 

「モモンガさん。それについては、私がデミウルゴスから報告を受けてますよ。先日、ようやく届いたそうです」

 

 時期的に、たっちとウルベルトの帰還が重なったため、報告を聞いて対応したタブラがモモンガの耳に入れるのを忘れていたのだ。

 

「手の空いてた建御雷さんに着せてみましたが、問題の洗脳効果は発動できませんでしたね。やはりレベルが足りてても、女性でなければ無理っぽいです」

 

「いや~、半魔巨人(ネフィリム)の身体でも着られるんだから、ビックリしたぜ!」

 

 タブラの説明で名前が出たことで、建御雷が反応し「まいったまいった」と頭を掻く。

 

(まいったのはこっちだよ! 半魔巨人(ネフィリム)状態の建御雷さんが、チャイナドレス着用って……傾城傾国は女物でしょ!?)

 

 モモンガは唖然となった。

 想像してはいけないモノを想像したことで、精神の安定化が発生し、誤魔化すように咳払いをする。

 

「ごほん! 事が世界級(ワールド)アイテム関連ですから、次からは早めの報告でお願いしますね? タブラさん? 建御雷さん?」

 

 二人のギルメンから「気をつけます」との返事があり、モモンガは話題を変えることにした。と言っても、口から出たのは傾城傾国を運んできた法国関係者のことだ。

 

「タブラさん。傾城傾国は誰が持って来たんです?」

 

「ああ、ニグンと陽光聖典ですよ。カルネ村に到着したときは、建御雷さんがブレインと一緒に野良仕事の手伝いをしてましたから、『プレイヤー様が増えてる!?』とか言って驚いてましたけどね」

 

 聞かれたタブラが、立てた人差し指(?)を振りながら説明する。

 

「カルネ村の近くの待機所……グリーン・シークレットハウスは、モモンガさんの私物だから回収したでしょ? 最近、新たに家を建てましてね。そこに居る二名の交代も兼ねて、ニグン達が来たようです」

 

 タブラの説明でも触れたように、法国はカルネ村近く……森の中で、常時二名の隊員を待機させている。概ねは陽光聖典の隊員で、普段は村人との交流を行っていた。

 

「野良仕事の手伝いとかする中で、法国の教義を説くなど布教活動もしているようですがね。ああ、亜人蔑視を説くとかは禁止させてますので、御心配なく」

 

「ニグン達は、今は待機所ですか?」

 

 聞いてみたところ、待機所に居るのだが、手狭なので何人かは空き家で寝泊まりしているらしい。

 

「なんで空き家があるかと言えば、法国がガゼフ・ストロノーフを狙って襲撃したからなんですけどね~……」

 

 襲撃により大勢の死者が出た結果、空き家が多くなっている。

 タブラが肩をすくめながら言うが、モモンガとしては苦笑……するのもどうかと思ったので、ムニムニと口を動かすのみだ。もっとも、今は骸骨の姿なので、動かすべき唇は存在していない。

 

「おっと……デミウルゴスよ、話の腰を折ってすまなかったな。続けてくれ」

 

「はい! 続きまして……」

 

 モモンガに説明の再開を促され、デミウルゴスが元気よく返事をした。ここからは、たっちとウルベルトがローブル聖王国を再訪問する話となる。

 元々、二人が聖王国を出発し、王国を目指して移動していたのは、モモンガ達……ギルメンが居るかどうかを確認するためだ。居なければ居ないで、聖王国に戻るつもりだったが、モモンガ達が、ナザリック地下大墳墓込みで転移してきたことが確認できたため、今後の根拠地はナザリック地下大墳墓ということになる。

 そこで、目的が果たせたことを報告するべく、聖王国に行きたいと言うのだ。

 

「こっちの世界って、<伝言(メッセージ)>が信用されてませんからね。使いを出すのも何ですし。自分達で戻ってみようかと……」

 

「たっちさんの意見に賛同するのは(しゃく)ですけど、まあそういうことです」

 

 普段は仲の悪い二人が、特にいがみ合うでもなく同じ行動を取ろうとしている。

 異世界転移したことで、元の現実(リアル)でのしがらみが無くなり、お互いに歩み寄ったのだろうか。

 

(いや、違うな……)

 

 モモンガは、白骨剥き出しの下顎に指を当てる。

 

(たっちさんとウルベルトさんは、お互いの事情があるそうだけど、性格自体も合わないから仲が悪かったんだし……。となると……)

 

「聖王国で……何かあったんですか?」

 

 モモンガの声が低くなった。

 これは、二人が何らかの弱みを握られて、聖王国に行かざるを得ない状況に追い込まれているのでは……と心配したことによる。それは、タブラやぷにっと萌えも同様だったらしく、それまで場の雰囲気を楽しんでいたのが、今ではジッとたっち達を見ていた。モモンガ達の雰囲気が変わったことで、それは他のギルメン達に伝播……円卓はギルメンもNPCも皆が静まりかえる状況となっている。

 ところが、問題のたっちとウルベルトは「え? なに? み、皆さん、どうかしたんですか?」と言動が怪しい。警察関係者だったたっち風に言えば、挙動不審な様子だ。

 

「……たっち・みーさん、ウルベルト・アレイン・オードルさん……。お二人は、聖王国で、なにか、あったんですか?」

 

 モモンガはドスの利いた声で、区切りつつ言う。他のギルメンらの視線もキツくなり、たっちらは身を小さくしていたが……やがて、総てを白状した。

 異世界転移後、たっち達は聖王国を拠点としていたが、その間に世話になったり、親しくしていた女性に会いに行きたい。

 つまりは、これが二人の本音である。

 観念したたっちは性格上、堂々と言い放ったが、ウルベルトは幾つかの理由を持ち出して、『仕方なさ』を強調しているのが印象的だ。

 一方、二人の遠出理由が『女性目当て』であると知ったギルメン達は、円卓を揺るがす大爆笑……をしかけて、瞬時に沈静化した。ウルベルトだけの話題なら、「ウルベルトさんに春が来たーっ! ギルメン全員でバックアップだーっ!」と騒ぐところである。しかし、今回の『春到来』に関係する、もう一人が大問題なのだ。

 その、もう一人とは、元の現実(リアル)において妻子に逃げられ、傷心のあまり、拳銃片手にテロリストの集合地へ乗り込もうとしていた……たっち・みーである。

 転移後世界での合流後、自身の事情を話していた時のたっちのドス黒……もとい、暗い雰囲気を知っているだけに、「たっちさんには癒やしが必要だし。茶化すのは駄目だろ?」と、モモンガを始め、皆が直感したのだ。

 そして、たっち以外の者達(NPCは思考停止中)はこう思った。

 ……これ、どうしよう……と。

 皆の視線が、ある一点を指向し出すが、そこに居るのは……。

 ギルド長こと、モモンガである。

 

(俺か!? 俺が何とかするのか!? この状況を!!)

 

 異形種化中のモモンガは、精神の安定化を一回挟んだ後で、頭蓋骨の中に詰まっていないであろう脳細胞を活性化させた。

 

(考えろ! 考えるんだ! こうなったら、二人には気分良く聖王国に行って貰うしかないじゃないか! 話の流れを誘導するんだ! なんかこう、『ソレナラ、シカタナイデスネ~』的な、流れで! なんか、あったか? 聖王国関連で、俺が口に出しても不自然じゃないネタとかさぁ!)

 

 モモンガは考えた。

 そして、口から出たのは……。

 

「女性に会いに行く。いいじゃないですか! そう言えば、聖王国については王女が凄い美人だって聞きましたっけ。興味ありますね! 俺も一緒に行っていいですか!」

 

 というものだ。

 基本的には、「自分も興味あるから一緒に行くし、いいんじゃないの?」というニュアンスである。

 ただし、同じ部屋にアルベド、ルプスレギナ、茶釜。三人の交際女性が居る状況で、言って良いことではない。

 それにモモンガが気づいたのは、言い終わる寸前であり、すでに手遅れの状態だった。

 




 さて今回、最初は、モモンガさんを筆頭にギルメン全員でデミウルゴスに謝るシーンを考えてましたが、本文のような展開になりました。
 全員土下座は、ちょっと悪乗りが過ぎる気がしましたし。

 
 円卓における席配置ですが、本作ではきっちり決めていません。
 モモンガさんは、端っこ(遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング))が置かれる側。
 茶釜姉弟は二人並ぶ。
 やまいこさんは、茶釜さんの斜向かい。
 たっち&ウルは茶釜姉弟のそれよりも間隔が開く形で斜向かい同士。
ぐらいしか決めていません。後はテキトーです。

 ベルリバーさん、ぷにっと萌えさん、ブルー・プラネットさんには製作NPCが居ないものとして書き進めてますが……居ませんよね?
 ぷにさんかブルプラさんが、オーレオール・オメガの創造主って展開はいけそうなんですけど。ぷにさんはウィキ、ブルプラさんは、他作家さんのSSで見かけましたかね~。


 感想でナザリック無双の希望がありましたので、竜王国にも行ってみますか。
 予定される被害者はビーストマン。
 そんなに深く書かないかもですけど。


 アンケートで、カルカの『モモンガハーレム入り』がトップを取ったことにより、ノリノリでハーレム増員なのです。
 『たっちの嫁』はともかく、『未婚の生涯』が人気集めたのはビビりました。
 未婚の生涯がトップを取ってたら、子供抱きかかえて里帰りしてきたレメディオスやケラルトに煽られて、こめかみに青筋立てるカルカとか、そういう展開を書いてたと思います。

ケラ「やっぱり子供って良いものよね~。姉さんも、そう思うでしょ?」
レメ「そうだな! そう言えば、カルカは結婚とかしないのか?」

 みたいな感じ?
 あと、レメやケラがそれなりに老けてる時期になっても、カルカだけ自力で二〇代半ばの容姿とか……。
 逆にカルカだけ老いが目立つのに、カストディオ姉妹だけ若いままとか。

 カルカは人柄は良い方だし、一応は国のトップ(王様序列は低いけど)なので、モモンガさんに対して、人間よりな施策の相談役にはなるんじゃないですかね。……色々現実を見て、ナザリックに染まるかもですけど。

 次回以降は聖王国行きになりますけど、合間合間で、ぷにっと萌えさんややまいこさん、ベル&メコあたりの話を挟もうかと考えています。


<誤字報告>

D.D.D.さん、はなまる市場さん、佐藤東沙さん

毎度ありがとうございます
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