あのあと、俺は天龍たちを護衛しながら、天龍たちの案内で針路を佐世保鎮守府に向けて航行した。
佐世保に着くまでの間に、天龍たちからはこの世界の基本的な情報を聞き出しておいた。艦これの世界とはいえ、完全なる異世界である以上、原作の設定と違うことがあるかもしれないからね。
それで、聞いたところによると、やはり艦娘として現れるのは第二次世界大戦前後に存在した艦だけで、基本的には工廠で妖精さんが資材と資源を用いて建造してくれるらしい。
なぜ人形になるのかは現在でも未解明であるが、人権などの問題もあってそれを調べるのには難航しているらしい。後はたまに深海棲艦との戦闘後、海上に突然現れる艦娘もいるようで、そちらははぐれ艦娘と呼ばれる。
ゲームで言うところのドロップ艦だ。
それ以外に、この世界では深海棲艦が現れてからまだ20年ほどで、現在は2020年ということだ。
丁度20世紀末に現れ始めたことになる。当初はエイリアンだとか騒がれていたらしいが、その存在(深海棲艦)が航行中の船舶を襲ったことにより、国が軍艦を派遣したが、あっけなく敗北。その軍艦は沈められた。
それからというもの、深海棲艦は世界各地に現れ、ありとあらゆる海上交通網を寸断し、今では世界の海は深海棲艦のものとなっているらしい。
しかし、そんな絶望的な状況の中で、突如妖精と今日呼ばれている存在が現れ、人類に『艦娘』という戦力を提示した。
初めは見た目が完全に女の子のそれであるから、本当に対抗できるのか?と疑問視する声もあったようだが、人類が今の今まで敵わなかった深海棲艦を撃退に成功したことにより、人類はこぞって妖精と友好関係を築き、艦娘を人権に配慮し、待遇にも気を付けた上で運用を始めた。
彼女らは深海棲艦と戦う存在であっても、人間と同じように考え、感情を持つ同じ人類だと、艦娘を指揮する存在である提督にはその事を強く指導している。
もしも艦娘を『兵器』として扱った時が人類の最期だとして。
しかし、すべての国がそのように深海棲艦に対抗できたわけではなかった。旧時代に三大海軍国と呼ばれたアメリカ合衆国、連合王国、日本国の三国は時期早に戦力を整えることに成功したが、それ以外の国ではフランス、イタリア、ドイツ、ロシアなどが精々だった。
しかも、三大海軍国と呼ばれる三国でさえ、自国の領土を維持するのがやっとで、アメリカ、イギリス、日本、それぞれ離島などの遠隔地は放棄せざるを得なかった。
内陸国はそもそもどうしようもないが、海に面している国家は多かれ少なかれ、被害に差はあるものの、ほぼ例外なく深海棲艦による攻撃を受けていた。
特に中国などは日本国に助けを求めている。自国では有力な艦娘を揃えることが出来なかったからだ。
元来関係の良くない間柄だったが、日本政府側はこれを国の問題と捉えず人類の危機とし、中国政府に対しても、できる範囲での深海棲艦の排除を行ってはいるものの、やはり限定的な効果しか生んでいない。
しかし、そのお陰で日中間の関係は比較的良好である。
しかし、日本としては海上封鎖されては堪ったものではなかった。元々、日本は他国と貿易をしなければやっていけるような国ではなかった。
資源も食糧も他国からの輸入で賄っていたがゆえに、海上が封鎖されてからは国内が荒れに荒れたが、艦娘が揃ってきた頃には最低限の領海の確保には成功しており、その為、韓国を経由しての中国から資源や食糧の輸入は再開したが、やはりアメリカとの貿易再開は絶望的だった。世界は新大陸側と旧大陸側とで分断されたのだ。
■■■■
「着いたぜ。ここが佐世保鎮守府だ」
遠目から見ても大きな建物だと思っていたが、実際に近くで見てみるとその大きさが段違いだと思った。
だがまあ、佐世保はそもそも国内有数の国防海軍の基地であるからその規模が大きいのは当然のことだったのだが。
因みに、この世界では日本国の防衛組織は自衛隊から国防軍に改称され、それぞれ日本陸軍、日本海軍、日本空軍と称する。
海軍内ではそれを国防海軍と自称している。
「それじゃあ提督のとこまで案内するから着いてきてくれ」
「分かったよ」
俺は天龍に従い、後について提督室まで向かった。
「提督、失礼するぜ」
天龍はノックも無しに扉を開いてからそう言った。
「天龍······いつもノックしてから開けてくれって言ってるだろう」
「悪い悪い」
提督が苦言を呈するのに対して天龍は悪びれる様子もなくそう返した。
「で、そちらに居る方が君たちを助けてくれたのかな?」
そう言うと提督は俺の方を見た。ここで始めて提督と顔を合わせた。
提督は思った以上に若く、30代前半と見える。
「ああ、そうだ」
「そうか、本当にありがとう」
そう言うと提督が頭を下げた。
「いえいえ、本当に私は当然のことをしただけで····」
「謙虚なんだね。それはそうとして、天龍からの報告によれば君は何処にも属していないそうだが、本当にそうなのか?」
「はい。目覚めたら海の上で、最初は何が何だかで戸惑いましたから、よく覚えてます」
「そうか······そういうことなら、君は天龍たちの命の恩人でもあるから、この佐世保鎮守府へ歓迎するよ」
「はい!ありがとうございます!!」
「いやいや、お礼をするのはこちらの方だよ。それよりも自己紹介がまだだったね。僕は
「私はジェラルド・R・フォードです。ジェラルド・R・フォード級航空母艦の一番艦です」
俺が自己紹介をすると、金城提督は不思議そうな顔を浮かべた。
「ジェラルド・R・フォード級?」
「あれ?ご存じ無い?」
「いや、聞いたことも無いんだが······」
「本当に?」
「本当だ」
どうやら本当に知らない様子なので、軽く説明することにした。
「私はジェラルド・R・フォード級航空母艦で、ジェラルド・R・フォード級航空母艦はアメリカ合衆国が建造した最新鋭の原子力航空母艦です。搭載機数は70機前後。カタパルトは電磁カタパルトを採用しています」
簡略に纏めた基本性能だけを伝えたが、開いた口が塞がらない様子だった。
「いやはや、まさか原子力航空母艦だとは······それに、電磁カタパルトだって?」
「はい。でも、対応している機が少ないので、蒸気カタパルトもあります」
「······あとで詳しく性能を纏めた資料を用意してくれないか?」
「はい。そんなものでしたら直ぐにでも用意しますよ」
「まあ、何はともあれこれからよろしく頼むよ」
「はい!此方こそよろしくお願いします!!」
こうして俺は佐世保鎮守府に所属することになった。