アズールレーン&艦これ ~蒼き航路に集いし少女達~ 作:モンターク
「……ん?」
吹雪がアズールレーン基地内を歩いていると、ある匂いを感じた。
(この匂い………いい匂い……)
その匂いに誘われて足をすすめると、基地内の給湯室にたどり着いた。
そこにはベルファストが紅茶を沸かしていた。
「あら、吹雪様…どうかなされましたか?」
「あ、ベルファストさん……なんかいい匂いがするな…って」
「はい、只今紅茶を沸かす練習をしておりました」
「練習?ベルファストさんほどのメイドさんが練習なんて……」
吹雪がそう疑問に思うとベルファストはこう返す。
「私ほどのメイドこそ、いつも良い紅茶を淹れなければならないのです……ですから手が空いた時はこうして腕を確認しているのです」
「へー……」
「よろしければこの紅茶をお淹れしますが……どうでしょうか、吹雪様」
「い、良いんですか!?」
「ええ、構いません…」
「は、はい!よろしくおねがいします!」
あまり接したこと無い相手故に、吹雪はガタガタになってしまったようだ。
その後、吹雪はテーブルに座り、暫く待った。
そして――
「おまたせしました」
「うわっ、スコーンまで用意してくれたんですか!?」
「はい、ティータイムには必要なものですから……他にもお菓子はご用意できますが……」
「いえいえ、これで大丈夫です!…では……」
そして吹雪はティーカップに手を取り、口に近づける。
ごくっ…と紅茶を口に含ませるとその口の中では紅茶の風味が広まった。
程よく砂糖の甘みもあり、その風味を引き立たせる。
「お、おいしい…なんというか上手く言葉にできないのですが……甘すぎることもなく、風味が強くなく、程よくて……」
「ふふっ……光栄でございます……では私も失礼をしまして…」
そしてベルファストも同じく紅茶を飲み始めている。
「……なるほど……ですがまだ……」
「……」
(ベルファストさんも大変なんだなぁ……)
そう吹雪が思い、紅茶を見ていると
ある「帰国子女」のことを思い出していた。
(そういえば金剛さん、今何をしているんだろう……?)
「吹雪様?何か考え事でも……手が止まってしまってますが・・」
「あ、いえ……元の世界の…艦娘の……金剛さんのことを思い出してて…」
「コンゴウ……?」
「はい、霧島さんのお姉さんの金剛さんです。金剛型戦艦1番艦の」
「ああ、確かにそうおっしゃられていましたね……その方が何か?」
「はい、金剛さんも紅茶を淹れるのが得意だったんです。それで思い出しちゃって」
「なるほど……その「日本」の方も紅茶を…」
「まあその人は帰国子女で……英国生まれだからだと思います」
「なるほど……」
金剛型戦艦は1番艦はイギリス・ヴィッカーズ社での製造、2番艦は横須賀海軍工廠での半ノックダウン製造で、3番艦は神戸で、4番艦は長崎での民間建造となっている。
なお3番艦と4番艦の建造競争は初めて民間で戦艦を建造ということであり、建造競争が凄まじいことになったとか。
そんなところを偶然霧島が通りかかった。
「吹雪さん、どうしたんですか?」
「あ、いえ…ベルファストさんの紅茶を頂いて……」
「霧島様もよろしければございますが」
「ええ、お願いします」
「では……」
ベルファストは霧島にも紅茶を淹れ、霧島はそれをいただく。
「……ふぅ……久しぶりね……」
「はい、それでちょうど金剛さんのことを思い出していたんです」
「姉さま……そうですね……確かに今頃紅茶を淹れて飲んでそうですね」
「それで比叡さんが変なスコーンを持ってきて凄いことになって…」
「比叡お姉さまは…確かにそうなりますね……」
「その比叡様、そんなにお料理が上手ではないのですか?」
ベルファストが再び紅茶を飲みつつ、そう質問すると
霧島はこう答える。
「いえ、元は陛下の御召艦なので上手なのですが……たまに変な具材を入れて空回りさせてしまって……」
「なるほど……気合を入れすぎるということでしょうか?」
「まあそうですね……そう言ってもらえれば差し支えはないかと…」
霧島はそう言いつつもスコーンを食べる。
こちらもまた紅茶に合う絶妙な美味しさだ。
「流石本場の人ですね……お姉さまには負けず劣らずです」
「光栄でございます……」
―――――――――
その後、吹雪は時雨と出会い、そしてある話を打ち明けた。
「時雨ちゃん、ちょっと相談していい?」
「どうしたの?吹雪、急に…」
「いえ……私達、元の世界に戻れるのかな…って……明石さんたちとかが色々と探してるけど、未だに手がかりがないから……」
時雨はそれを聞いて、少し考えた。そしてこう話す。
「…そうだね、僕も不安だけど……でもこの世界に来たことは必ずしも事故じゃないと思ってる」
「……どういうこと?」
「物事にはすべて何かしらの理由があると思ってるんだ……僕たちがこの世界に来て、アズールレーンに協力して、レッドアクシズを止めようとすることも……そう考えると気分も楽なると思うし、実際そうだと思う」
いわゆる充足理由律の原理である。
「な、なるほど……」
「だから吹雪もそんな暗い顔しなくていいよ…ジャベリン達にも心配をかけちゃうかもしれないし」
「そ、そうだね……よし!気合を入れて…」
そしてそのまま歩き出す吹雪
やけにシャキンとした背筋で…。
(そこまでしなくて良いんだけど…まあ吹雪らしいし、良いか)
そんな様子の吹雪に少し微笑んでいた時雨であった。
――――――――
日本
神奈川県横須賀市
海上自衛隊横須賀基地内
横須賀艦娘基地にて。
大和以下20人の艦娘が嵐に巻き込まれ、消息を断ってから一週間が過ぎようとしていた。
「提督!何故私達は捜索隊を出さないのだ!もう一週間は経つのだぞ!」
「まあまあ落ち着きなさい……」
提督は武蔵の訴えをなんとか抑えている。
どうやら武蔵は捜索隊としてただちに出たいということだが、それができないということらしい。
「今は深海棲艦の出現も少なくなったとは言え、ただでさえ主力艦が居なくなった艦娘達を捜索のほうへ回せば、突然の深海棲艦の出撃に対応できなくなる」
「しかし…!」
「今は自衛隊や米軍の方々も必死に捜索を続けている…流されたと考えてかなりの広範囲だ。そして艦娘は艤装があるとは言え、普通の艦よりはとても小さい…見つけようにも骨が完全に折れるくらいのな。だからさ、武蔵も一旦落ち着こうよ。な?」
「提督は大和達の無事を心配していないのか!?」
「そりゃ心配しているよ、大事な仲間だからね…でもこの状況じゃ俺たちにできることはほぼない。無意味に出たところで今度は武蔵達が遭難することになるぞ?」
「そうだが……」
「だから落ち着いて……お茶でも飲んで一息いこうじゃない。大淀、お茶を頼むわ」
「はいはい……」
秘書艦を務める大淀は慣れたようにお茶を淹れるのであった。
武蔵は釈然としていないが。
――――――――
「全く…提督の昼行灯ぶりにはいつも呆れる…陸奥もそう思うだろう?」
「まあまあ武蔵……でも提督の言う通りよ、私達が無意味に出たところで…」
陸奥と武蔵はそう話している。
やはりかなり心配のようで、あまり余裕はない表情だ。
「わかってはいる…わかってるんだが……!大和や…他の皆は無事なのか……」
「……私も長門達のことは心配だけど……でもなんとなく、大丈夫な気がする」
「陸奥?」
「なんとなくの勘だけど……いやでも絶対……大丈夫よ、きっと…だから落ち着きましょう?武蔵」
「……そうか…そうだな……私達は私達でやれることをしよう」
「ええ…」
武蔵と陸奥はなんとか不安が和らいだようであった。
そして続いて深海棲艦の話をする二人
「でも深海棲艦の数が急に減ったのは変ね……出撃もだいぶ減ったし……」
「ああ、大和達が失踪してから更に…だ」
「……まさか関係があるとかじゃないよね…?」
「わからん……だが必ずしも無関係とは言い切れないだろう」
大和達の失踪後、深海棲艦の出撃数がだいぶ消えたのだ。
元々大規模作戦などにより、深海棲艦を次々と撃滅していったため、数は確かに減っていたのだが、ここのところ急に急な下り坂の如く低下したのだ。
(数が急減した深海棲艦……失踪した大和達……無関係とは……)
武蔵の中にはそのモヤがかかったままであった。
ついでに元の世界のことを少し描写しました。
元の世界は国の構成などはほぼこの現実通りですが、紆余曲折こそあれど人類同士では戦わず、深海棲艦という外敵に集中し団結できている世界です。
KAN-SEN側の世界とはある意味対極です。
なお提督については普段は昼行灯だけど、やる時はやる人
某機動警察の某第二小隊隊長のようなイメージです。
ちなみに階級は一等海佐くらい。