アズールレーン&艦これ ~蒼き航路に集いし少女達~   作:モンターク

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その果てに何を得る?


決戦、その愛の果て(後編)

「……おっと…!」

 

突然の砲撃を避ける艦娘の時雨、その先には重桜の時雨がいた。

 

「佐世保の時雨よ!此処から先は通さないわよ!」

 

「よく知ってるよ。僕も…その時雨だからね……!」

 

姿としては双方かなり異なるもの

かたや犬耳を持つ艦と普通の三編みの艦である。

 

「あなたが噂のね……まあいいわ、雪風との幸運対決より前に自分との決着をつけてやるわ!」

 

「止まない雨はない……君のその雨を止めてみせるよ…!」

 

時雨

かつては「呉の雪風、佐世保の時雨」と言われるほどの二大幸運艦として日本海軍で名を馳せていた。

西村艦隊の一員としてスリガオ海峡を超え、レイテへ突入しようと試みるも惨敗し、時雨以外の艦は撃沈されてしまった経験もあり、最後は雪風のように生存もできず、米潜水艦の雷撃により沈んでしまっている。

 

「ここは……譲れない…!」

 

「私も譲らないわよ!」

 

その時雨は幸運を前面に出す時雨と止まない雨はないと強く想う時雨とまるで正反対であるが、だが奥の気持ちは変わらないものであった。

 

一方「夕立」も同じく対峙していた。

 

(本気を出すっぽい……)

 

(一歩でも引いたら殺られちまうな……!)

 

双方は双方で同じくらいの殺気を感じていた。

同じ艦であるがゆえに…だがそれで完全に息をも殺していた。

 

「さあ……素敵なパーティをはじめましょ…「夕立」…!」

 

「おう……藻屑となれ!「夕立」…!」

 

その言葉と共に二人は急激に攻撃を開始する。

砲撃、雷撃などすべてをフル活用し、そして近接戦闘もこなしている。

 

((この距離なら……!))

 

更にはほぼ同時に砲撃をし、その砲弾と砲弾が掠れ、爆発するという珍しいことまで起こった。

 

「す、凄い……」

 

近くに居た吹雪はセイレーンと交戦しつつもその光景を眺めることしかできなかったほど、その攻撃の素早さは予想以上であった。

 

――――――――

 

「超弩級戦艦……主砲、撃てーっ!」

 

重桜の伊勢の号令により大和へ砲撃が集中する。

普通の戦艦ならひとたまりもない。

 

「やったか!」

 

「やったの!?」

 

日向、山城はそう発言するが……

確かに普通の戦艦ならひとたまりもない……()()なら

 

だが――

 

「いえ……これは…!」

 

「……」

 

扶桑が驚く通り、彼女は損傷らしい損傷もせず、健在であった。

 

戦艦というものは基本自分の砲には耐えられる装甲を持っており、35.6cm砲搭載ならば35.6cm砲までの砲撃に耐えるということである。

そして大和が持つ主砲は46cm三連装砲3基……つまり46cmの砲までには耐えられるということであった。

そして扶桑型及び伊勢型が持つ35.6cm砲による遠距離射撃では全く傷がつかないことになるのである。

 

「なん…だと…?」

 

(航空機はこちらには来ていない……よし…)

 

伊勢が驚いている間に大和は上空の状況を察する。

史実において航空機の援護もなかったため、航空機からの攻撃を受けて大和は撃沈してしまったが、逆に言えば制空権を取れさえすれば邪魔者はいないということである。

実際、敵の航空機も味方の航空機との相手で手一杯であるため、こちらへ割く余裕はなかった。

つまり大和が活躍できる土台は整っているということであった。

 

「どこからでもかかってきなさい!この大和が…受けて立つわ!」

 

 

――――――――

 

一方、航空戦も熾烈なものとなっていた。

 

他の空母がセイレーン・深海棲艦戦に集中する中、艦娘の空母達は相手の重桜主力空母の全面的な相手となっていた。

 

「まさか自分同士と戦うことになるなんてね…!全航空隊、敵の「二航戦」の航空隊を迎え撃って!」

 

「いくよ……多聞丸、力を貸して……!」

 

「無意味な戦闘は避けたいのですけれど……自分が相手な手を抜くことはしません!航空隊、迎撃急いでください!」

 

「最後まで戦ってみせる……自分だろうと……!」

 

双方の蒼龍、飛龍も激しい航空戦の争いを指揮している。

激しいエピソードも数ある一航戦、五航戦に比べれば少し格が劣る二航戦であるが、だがその分、艦隊の縁の下の力持ちとして戦い抜き、特に飛龍は「飛龍の反撃」により敵のヨークタウンを大破させるなど、決して薄くはなかった。

 

だがそれ以上に争いを繰り広げていたのはもちろん一航戦、五航戦である。

 

「自分を超えてみせる……そして皆を守ってみせる!」

 

「くっ…いい度胸してる…負けないわよ…!「私」…!」

 

五航戦は接近戦を繰り広げる瑞鶴と遠距離戦を行う翔鶴に別れていた。

 

「あんたはなんでそんなに強いのよ……!同じ私なのに…!」

 

「決まってるじゃない……皆を守るためよ…!あの時の…マリアナやレイテのことを繰り返さないためにも……!」

 

「「翔鶴姉!」」

 

「ええ、戦闘機隊はただちに散開して!」

 

「瑞鶴のためならお姉ちゃん頑張るわ!」

 

援護要請タイミングがほぼ同時に二人の瑞鶴から発せられ、翔鶴達も援護に入った。

 

「瑞鶴を思う気持ちは負けないんだから!」

 

「私も負けません……!あの時のようなことは絶対に……させない……!」

 

その「妹」を思う気持ちは同じ、ほぼ同格であった。

かつてのマリアナで先に沈んでしまったその無念。

その無念と後悔を胸に戦っているからであろう。

 

「これなら……!」

 

重桜の瑞鶴が艦娘の瑞鶴のスキを突き、一撃を加えようとした。

 

「させない…!」

 

だがその一太刀も弾かれてしまった。

 

「なっ…!直撃のはず…!」

 

「残念…今の私は航空艤装を全面的に改装して……装甲空母になってるもの!」

 

史実における日本海軍の装甲空母は大鳳一隻のみであるが、その大鳳は翔鶴型をベースにしたものである。

艦娘の今の翔鶴型はその大鳳型のその設計を逆にフィードバックし、改装したものであった。

 

「な……なによそれ!?」

 

「そ、装甲空母!?」

 

当然ながら史実にはそんな計画はなかったため、重桜の翔鶴型は再び面を喰らってしまった。

そして艦娘の翔鶴型は冷静に態勢を立て直した。

 

「翔鶴姉、まだいける?」

 

「ええ、瑞鶴のためなら……どこへでも…です!」

 

「そこまで頑張らなくて良いんだけどなぁ……まあでも援護引き続きお願い!」

 

「はい!」

 

そして再びぶつかり合いとなっていった。

 

だが最大のぶつかり合いはやはり一航戦である。

 

 

「お前は……!」

 

「やはりそうですか…加賀…いえ、「私」……」

 

そこでは蒼き弓道服に身を包んだ「加賀」と同じく蒼と白の九尾の狐である「加賀」が対峙

していた。

 

「何故セイレーンと組んだの?本来なら敵のはずです」

 

「明石から聞いたか……!何故お前がここにいるかは問わん……だが何故邪魔をする!」

 

「決まっています。貴方のしようとしていることが間違っているからです。セイレーンと組んでその事実を仲間に隠し、オロチ計画を立てそしてこの戦争を引き起こした…それは仲間への裏切り行為に他ならないわ」

 

「これは姉さまの祈願だ!貴様に何がわかる!」

 

「わからないと思っているの?同じ「私」なのよ……あなた達がそのオロチ計画である艦を蘇らせようとしているのも…!」

 

「貴様……!」

 

重桜の加賀はその怒りで式神を放ち、艦娘の加賀へ攻撃を仕掛ける。

 

「あたりのようね……!」

 

だがそれをわかっていた艦娘の加賀は直掩機を回し、すぐにその敵機を撃墜する。

 

「死者を蘇らせることなんて不可能よ!」

 

「だがオロチ計画はそれを可能にする!」

 

「それがセイレーンの技術なの……貴方はそれで良いわけ?赤城さんを止めるという選択肢もできたはずよ?」

 

「姉さまの祈願は私の祈願でもある!それを止めることなどはない!」

 

「それがいけないのよ。「あの時」のように思考停止して従ったままではダメ…いずれ貴方自身を壊してしまうわ」

 

「黙れ!」

 

重桜の加賀は怒りに任せ、次々と攻撃を仕掛けていく。

 

「くっ…」

 

(自分自身の説得というのはうまくいきませんね……!)

 

艦娘の加賀は攻撃を回避しつつ、なんとか迎撃態勢を整えていった。

 

 

そして「赤城」のほうでは……。

 

「何故あなたは……こんなことをしているんですか!」

 

「わからないの?「私」……これは私の愛によるものよ……」

 

「意味がわかりません……!セイレーンと組んでまで……貴方がしたかったことはこんなことなんですか!」

 

「ええ、そうよ……「姉さま」に会うためには犠牲はつきものよ……?」

 

(会うため……やっぱり……!)

 

こちらの赤城も相手の赤城の「目的」を確信した。

重桜の赤城は「天城」を蘇らせようということを。

 

「でもそんなことをして……蘇ったとしてもそれは「姉さん」じゃないわ!」

 

「形も中身も寸分違わず同じものならそれは既に本物よ…?」

 

「すべて同じにしたところで新たに作ったという時点でそれは…姉さんの形を取った別の何かよ!」

 

「黙りなさい…!」

 

重桜の赤城は別空間より多数の20cm単装砲6門を具現化させる。

それはかつて赤城が装備していたものであり、ミッドウェー海戦でも使われた代物である。

当然ながら重巡砲クラスであり、空母でも当たればひとたまりもない。

 

「!?」

 

「させるか…!」

 

そこへ割り込んだのは航空機により飛んでいたエンタープライズであった。

 

「エンタープライズさん!?」

 

「くっ……!」

 

「あらグレイゴーストも……だけど……終わりよ…!」

 

重桜の赤城はエンタープライズへ25mm連装機銃及び12cm連装高角砲も具現化させ、20cm砲を含め、すべての火力をエンタープライズへとぶつけた。

 

「なっ……!?」

 

結果、エンタープライズが乗っていたF4Fは撃破、エンタープライズ自身も受け身を取れずそのまま海の深くへ落ちてしまった。

 

「エンタープライズ様!」

 

ベルファストの呼びかけも虚しく…であった。

 

 

――――――――

 

その海は冷たかった。

最初は明るかったが、徐々に徐々に落ちていくにつれ、暗くなっていく……。

 

『見て…今日は海が綺麗よ…』

 

走馬灯のようにエンタープライズは姉のことを思い出してもいた。

 

そして――

 

(生まれた時から海は戦場で…轟く砲声、硝煙の匂い、燃える炎の熱さ、海の水の冷たさ)

 

(私にとって海は……!)

 

その目は……空母「エンタープライズ」とは違う…()()()であった。

 

――――――――

 

 

「お眠りなさい…灰色の亡霊。あなたの思いは黒箱に宿り…大いなる力の一部となるのよ……そして貴方も…」

 

「くっ……!?」

 

その時、そのエンタープライズが沈んだ地点より発しられた「光の柱」

 

「何事だ!?」

 

「あれは…!?」

 

別の方面で交戦していた二人の加賀からもわかるその眩い光。

 

「………」

 

その中心には「エンタープライズ」がいた。

 

「覚醒したわね……」

 

別の所ではその戦いを見ていたオブザーバー。

そしてこうも発した。

 

「多少の変わりはあったけど……この世界でもあなたが鍵となるのね……『エンタープライズ』」

 

「今…何を……!」

 

そして重桜の加賀はそのエンタープライズに近づこうとするも、すぐさまの反撃を受け撃墜されてしまう。

 

「加賀!」

 

「赤城先輩!加賀先輩!」

 

「なんだ……あれは…!」

 

長門、大和も同じくその光に驚いていた。

その光は徐々に海域全体を包みつつあった。

 

「姉ちゃん……何したんだ…!?」

 

「どういうことっぽい……?」

 

――――――――

 

そして大雨が降る…「その空間」では……

 

「あなた、何者なの…?」

 

「……」

 

重桜の赤城の問いかけにも応じない「エンタープライズ」

その目は異様なものであった。

 

「邪魔はさせないわ。これが私の愛のありかたよ……!」

 

「私の愛は時を越え…神ですら凌駕して重桜を……そして姉様を!」

 

「………」

 

赤城は「龍」を展開するもエンタープライズは一切動じず、そのまま構えた。

 

「……!?」

 

「……」

 

そしてその弓は間髪入れずにそのまま放たれ……

 

()()をそのまま貫いた。

 

「……あなた……は……!」

 

「……はっ……お前……!……あ、ああ……っ…!」

 

エンタープライズは正気を取り戻したが、時既に遅し、そのまま「赤城」は海へ没してしまった。

 

『海が…怖いの?』

 

(ああ……そうか…そうだったのか……私は…)

 

ユニコーンのあの時の問いに今なら嫌でも自分の答えがわかってしまった。

 

(海が…怖いんだ…)

 

雨が振り続けるその空を見つめながら……。

 




ドンパチ戦はとりあえず終わります。
だがまだ色々と残っていたりする……。

11話まで後少し…
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