アズールレーン&艦これ ~蒼き航路に集いし少女達~ 作:モンターク
まさか核兵器クラスとは……
その手とその手(前編)
海域の異変により、暗かった空は一面、雪が降ることとなった。
そしてその天は「割れて」しまっていた。
「一体これは……」
「海域の情報、なにか得られましたか?」
「偵察機を飛ばしてみましたが、先程の特殊海域の崩壊によって、この辺り一体が不安定化…というしか無さそうです」
「これもすべてセイレーンの仕業…でしょうね……先のエンタープライズさんが起こした謎の現象やそしてオロチ計画……無関係とは思えません」
長門、大和の問いに霧島、鳥海はこう答えている。
この謎の現象により戦いこそは収まったが、それでもまだわからないことだらけであった。
「はいはい、動いちゃダメよ……」
なお損害艦は多数あり、夕張が応急手当をしようと駆け回っていた。
「一体どういうことなの……空まで割れて……」
「私にもわからない…姉ちゃんのことが…」
瑞鶴、ホーネットは空を見つつもそう話していたが、瑞鶴はあることを思い出していた。
(私達が転移した時もこんな感じな雰囲気があったような……空間が不安定だからかな……?)
あの転移する原因となった嵐に巻き込まれた際に感じた妙な違和感があったのだが、それを瑞鶴は再び感じていた。
同時に胸騒ぎもしていたのだが……。
一方、ジャベリン、ラフィー、吹雪、綾波、時雨、夕立は本隊とは別の地点に居た。
どうやら本隊とはぐれてしまっているようだ。
「寒い……」
ラフィーはいつも以上にだるそうな目であった。
「ううっ……急に氷とかが現れましたね……」
「一体どういうことっぽい……」
吹雪、夕立は頭にはてなを浮かべている。
急に光に包まれたと思えば、気がつくと一面氷やら吹雪やらのいわゆる北極のような気候の海域にいたからだ。
「とにかく急いで本隊に戻らないとね……」
「うん…早く合流しないと…」
時雨とジャベリンがそう言うと、綾波は何かを察知したのか、皆の前に出た。
「どうしたの?綾波ちゃん」
「……!」
その風の先には重桜の綾波、そしてニーミが居たのだ。
「……綾波ちゃん……ニーミちゃん……!」
その綾波とニーミは銃砲をジャベリン達に向けていた。
一方のジャベリン達は砲を構えてはいなかった。
「……また…そうやって…!どうして戦わないのです!?どういうつもりなんですか……あなたたちは!」
「そうです……何故ですか……!?」
攻撃さえしてくれれば綾波達の気もなんとか圧し殺すことができたであろう。
だがジャベリン達は攻撃もせずに、ただ「友達になりたい」を訴えてきている。
それ故に、綾波とニーミは精神が擦り切れつつあった。
戦う存在なのに何故戦わないのか?
そして何故自分は躊躇しているのか?
引き金を引くこと自体は簡単であるにも関わらず…である。
それらが混ざり、悩みの種ともなってしまっている。
「前にも言った。綾波と友達になりたい」
「そうです…友達になりたい……それだけなんです」
「敵同士で……何言ってるんですか!綾波たちは船だから敵と戦うのは当たり前なのです!」
重桜の綾波はラフィーと艦娘の綾波の言葉にそう返すが、続けて艦娘の綾波がこう話す。
「当たり前……確かに前の戦いではそうでした…あのソロモンでも……綾波は戦って……」
「そうです……あなたも知っているはずです…」
「でも前がそうだからと言って、それに倣う必要はないんです。人の形をしているこの今……使われる道具ではなくて、一個人としての意思を持っている今だから……」
「今……だから……」
重桜の綾波がそう呟くと、急に横から砲撃が飛んできた
「うわっ!?」
「吹雪、大丈夫?」
「な、なんとか…」
「またっぽい!?」
その先には重桜の時雨、夕立、雪風が居た。
「ぐうううっ!綾波達をいじめんなー!」
「いじめてるつもりはないっぽい!」
その重桜の夕立の牙を艦娘の夕立が止めにかかった。
「また……僕たちはこれ以上戦うつもりは……!」
「惑わされないわよ!」
また、時雨同士の戦いも再び始まってしまっていた。
「なのだー!」
「ゆ、雪風さん!?」
重桜の雪風の攻撃を吹雪はなんとか迎え撃つ。
「お前は……吹雪なのか!?」
「くっ……私じゃ幸運艦は相手しきれないですー!」
ここで再びドンパチする小競り合いとも言える戦いが始まるかと思われた。
だが先程の戦いで双方とも消耗していた上、更に突如その場の大きな氷の塊が一気に崩れ落ちる事態が発生した。
「!?」
その結果、ジャベリン達と重桜の綾波達に分断され、戦いは止まってしまった。
「綾波ちゃん……ニーミちゃん……」
その後、その場には捜索しに来た軽巡「ベルファスト」及び「神通」が到着した。
「大丈夫ですか?」
「良かった……皆さん、無事ですね」
「ベルファストさん、神通さん!」
「行きましょう…ここは危険です」
「ええ、早く合流しましょう」
ベルファストと神通の先導を受け、駆逐艦達はこの場より撤退することとなった。
ジャベリンは綾波が居た方向を見つつ…であるが。
――――――――
「……」
艦娘の赤城は暗いその中に居た。
(あの時……私は光に飲み込まれて……)
そして赤城はその空間の中である3人を見ていた。
そこには重桜の赤城と加賀、そして「天城」らしき人物がいた。
どうやら赤城と加賀が喧嘩をし、天城が仲裁しているようである。
(やはり……私達艦娘には前世としてはあの事件があったけど、戦艦天城はいなかった。だけどこの世界には居た………だからあちらの私達はあそこまで…)
『そうよ……』
その赤城の先には和傘を指し、着物を着た女性が居た。
間違いなく天城型巡洋戦艦の「天城」であった。
「あなたが……天城姉さん?つまり…私は…」
そう言うとその天城は続けてこう言い話す。
『あなたはまだ……生きて…そしてあの子もまだ……』
「あの子?……あちらの私ですか?」
『ええ……あの子達は騙されてしまっているの……私という死者を蘇らせるために……』
「……セイレーンに…ですか……」
こくりと天城は頷き、そしてその表情は悲しげなものであった。
『……どうかあの子達…「赤城」と「加賀」を……助けてあげてください………私はもう……』
「ま、待って!まだ……!」
『大丈夫……私は…空から……見守って……』
――――――――
「赤城さん、赤城さん」
「……くっ……ん……加賀さん……?」
加賀に呼ばれ、赤城は目を覚ました。
どうやら先程の戦いの後、爆心地よりそう遠くないところにいたためか赤城は気絶してしまっていたようだ。
「寒い……一体なにが……」
「わかりません……ただエンタープライズとあちらの赤城さんがぶつかった後、こうなったというだけで……」
「そう……他の皆さんは?」
「軽巡以上は損傷こそあれどすべて無事、駆逐は吹雪やジャベリン達が一時行方不明でしたが、ベルファストと神通からの通信によれば無事とのこと」
「そうですか……」
赤城は先ほどの夢を思い出していた。
いや、これは夢ではないと言える。
本来夢は起きたら基本忘れてしまうものである。覚えていても大まかにしか覚えていない。
だが先程の夢は今もなお赤城の中に鮮明に残っていた。
天城のことも……。
(姉さん……)
――――――――
一方重桜側は少し混乱に陥りかけてた。
多数の艦が怪我をしていた上、旗艦である赤城が行方不明。量産型セイレーンも機能を停止し、深海棲艦も姿を消していた。
そして敵として現れた自分達と同じ系譜の艦のこと、そして超大型戦艦たる「大和」のこともあったがゆえでだ。
「……とにかく、今は状況を建て直さなければなりません」
加賀も怪我をし、取り乱しかけている以上。臨時に二航戦の蒼龍が指揮を取ることとなった。
「でも僕と同じ艦があっちに居るって……なんかまるで僕たちを止めに来た感じだったよね…」
飛龍はそのような感覚を覚えていた。
偽りとは全く断言できない上、そう言うしかなかった。
「そして「大和」ですか……」
「蒼龍、悔しいがあの火力に勝つのは無理だ。あたし達の砲じゃ傷一つつかなかった」
伊勢の言う通り、あの大和に勝てる戦艦は現在の重桜には居ない。
基地防衛のため、この場にはいない金剛型及び総指揮官である長門、陸奥を前線に出したとしてもである。
航空機による攻撃なら別だが、その航空機も敵の第一航空艦隊…つまり赤城達やロイヤル、ユニオンの空母も多数であり、とてもじゃないが空母側は制空権を取るのが精一杯である。
そのため、大和は戦艦4隻でなんとか抑えるのが手一杯であった。
そんな中、翔鶴があることを話し始めた。
「……そもそもどうなんですかね?オロチ計画って…黒いメンタルキューブの正体もセイレーンを操る仕組みも私たち詳しく知らされてないですし」
「ちょっと翔鶴、こんな時に」
「こんな時だからよ、飛龍さん。赤城先輩の結界みたいな術も、何も私達は知らない……秘密が多すぎません?一航戦の先輩方は何を隠してるんでしょうね?」
「貴様……!ぐっ…!」
「加賀先輩!まだ動かないでください!……翔鶴姉、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ」
加賀は吠えようとして傷口を開きそうになり、瑞鶴がなんとかそれを抑えた。
そして翔鶴は続けてこう話す。
「あらあらごめんなさいね。でもあちらと一致する艦達が私達を止めようとしているのも気になってるのよ……まるで私達のしていることが間違っているかのように……もしかしてあの艦達は私達を抑止するために来ていたりして……」
「くっ、バカバカしい……そんなことあるわけないだろう」
「でも加賀先輩、あなたのその目の前に現れたその「加賀」は本物だったんですよね?」
「……それは……」
「だから翔鶴姉ってば!」
長くなりそうな翔鶴のその推測を止めに入る瑞鶴である。
翔鶴はいつもは良いお姉ちゃんなのだが、腹黒い毒舌家であるので、愚痴があればかなり長くなってしまう。
そのため瑞鶴が止めることもたまにあるのである。
「……とにかく、残存艦そして赤城の捜索に急ぎましょう」
とりあえず蒼龍の言葉により、一応の方針が定まったのであった。
――――――――
一方別地点で神通、ベルファストに先導されて、ジャベリン、ラフィー、吹雪、綾波、夕立、時雨が本隊へ合流しようと急いでいた。
相変わらず暗い顔なジャベリンにそれを察したベルファストは口を開いた。
「……あの二人のことが気にしているんですか?」
「み、見ていたんですね……」
「流氷が進路を邪魔してしまって……」
「それに手間取ってしまい、助けに入るのが遅れてしまい申し訳ございません」
なおそのことに関して、ベルファストと神通は特に怒る様子はなかった。
「あの…怒らないっぽい……?」
「怒る必要……ですか?」
「ええ、大いに結構でございます。軽々しく引き金を引くほうがむしろ怒っています」
「そ、そうですか……」
ジャベリンはその言葉で少し安堵した。
その後、ある地点でベルファストは止まった。
「私はここで失礼いたします。エンタープライズ様を捜索しますので。貴方方はすぐに本隊へ合流を」
「え、でも…」
「私はメイドです。エンタープライズ様のお傍にいることが私の仕事です」
エンタープライズは確かにこの海域にいるはずなのであるが、姿は一向に見えなかった。
そのためベルファストが単独で探そうとしている…が。
「私達も探します。大切な仲間を放っておく理由はありません」
神通はもちろんのこと
「手伝うっぽい!」
「うん、帰るためにも……エンタープライズさんを置いていくことはできないよ」
「ラフィーも手伝う…」
「綾波も!」
「ふ、吹雪も…です!」
「うん!みんなで帰りましょう!」
駆逐艦達もその捜索に協力するとのことだった。
昔は敵ではあったが、今は仲間である。
放っておく理由など無い。
「……ふふっ」
その反応にベルファストは微笑みを浮かべていた。
――――――――
「なんだと!もう一度言ってみろ!」
「加賀先輩、落ち着いて!」
「現時刻をもって赤城の捜索を打ち切ります。全艦速やかにこの海域を離脱。重桜本陣に帰投します」
蒼龍より発しられた言葉は加賀を大いに狼狽させた。
瑞鶴がなんとか抑えた上、もし加賀が怪我をしていなければ今にも蒼龍の首根っこを掴みそうであった。
「ふざけるな……!赤城は旗艦だぞ!姉さまを置いていくなどありえん!」
「旗艦だからです……。赤城を失い、量産型セイレーンも活動を停止しています。加えて多数の損害を私達は受けている……私が旗艦任務を代行し、多めに見積もったとしても艦隊に作戦を遂行する能力はほぼありません」
「くっ……だが…!」
「この海域に留まり続けることはもはや不可能です。赤城1隻のために艦隊を危機に晒すことはできません。アズールレーンもおそらくはまだこの海域に」
「姉さま……赤城姉さま……!」
加賀はその場で崩れるしかなかった。
ただそれは蒼龍にとっても苦渋の選択であった。
「だって…仕方ないでしょう……」
「蒼龍姉さま……」
微妙に中途半端なところで切れてしまった…
次回は明日投稿します