アズールレーン&艦これ ~蒼き航路に集いし少女達~ 作:モンターク
最終回まだ見てない(少し怖い。投稿したら見る)
光に包まれし想い(前編)
「あ……」
綾波はベッドの上で目が覚めた。
自分の様子を見ると、あちこち包帯が巻かれている。
「……」
窓の外を見てみると青い空で、日差しもある。
あの時の雪の世界とは大違いであった。
「逃げようとしても無駄だぞ」
そこへ声をかけてくる一人の艦
「見張りが付いてる。何も取って食いはしないさ……」
この種類の言葉が何故か全く信用できないように聞こえてしまうロイヤルの航空母艦「アーク・ロイヤル」であった。
「……ここはアズールレーンの基地ですか?」
「さすが詳しいな。よく調べてある」
そうすると袋で持っていたりんごを綾波に投げ渡した。
「戦いの後、気絶したお前を基地に運んだ。扱いとしては捕虜ということになる」
「あの2人や…他の方はどうしてるんですか?」
「気になるか?あの子たちのことが……」
――――――――
そして指揮官室において、綾波を救出したジャベリン、ラフィーとそれを手助けしたベルファスト、神通が呼び出されていた。
なお吹雪、夕立、時雨、艦娘の綾波も来ている。
「まったく。無茶してくれたよ……それで捕虜は2名確保したわけだけど……」
クリーブランドが言う通り、無茶も良いところであった。
「敵を助けるための無謀な突貫。ま、あまり褒められたことじゃないよね?」
「人道的ではありますが……もし一歩間違えればあなた達は……」
ホーネット、大和も同様の考えであった。
下手すれば異空間に飛ばされるかもしれなかったのである。
「ご、ごめんなさい…」
「お待ち下さい。お2人をけしかけたのは私です。責はこのベルファストにあります」
「いえ、私も同じく背中を押しました。責任は私にもあります」
「いえ、綾波達もです」
「そうっぽい……ジャベリン達が罰を受けるなら私達も受けるっぽい!」
ベルファストと神通と艦娘の駆逐艦達はその2人を庇い立てた。
なおウェールズと大和、ホーネット、クリーブランドはやれやれといった様子で特に怒っているというわけではなかった。
「そうは言うが……一応は軍隊である以上、ケジメは付けなければならない…大和」
「はい、規律が整っていなければ統制は取れませんからね…」
その発言でジャベリンの顔はかなり暗くなるが……。
「というわけだ。ラフィー、ジャベリン…両名には懲罰として捕虜の監視任務を命じる」
「え?」
そのホーネットの言葉にジャベリンは少し驚いた。
てっきり結構な罰が振ってくると思ったからだ。
「捕虜は丁寧に扱うのが決まりだからね…条約にもそう書いてあるわけだし」
「はい。そして吹雪さん達にはジャベリン、ラフィーの任務への協力を命じます」
「は、はひ!?」
吹雪は大和からの突然のそれで少し「はい」が空回りした。
こちらもどうやらかなりの罰を覚悟していたようだ。
「落ち着くっぽい……」
「え、えっと……つまり……」
「そういうこと…ですよね…?」
「ああ、頼んだぞ」
ジャベリンと吹雪のその問いにホーネットはYESと答えた。
「「は、はい!」」
ジャベリンと吹雪はそれに元気よく返事をした。
その2人には笑顔が再び戻っていた。
――――――――
その後、駆逐艦達が退出した後。
ウェールズ、ベルファスト、クリーブランド、ホーネット、大和、神通が紅茶を嗜みつつ、ある話し合いをしていた。
「…我ながら甘いな」
「良いじゃないか、別に……キツく縛りすぎる方もおかしいし」
「そうですね……旧軍時代ならどうかと思いますが……今はもうそんなことは関係ありませんから」
「そうそう。コーヒーも紅茶も人生も甘い方がいいのさ」
と言いながらもホーネットは紅茶に砂糖を多めに入れている。
なおクリーブランドのほうはそうでもない。
「そうだな……しかし、問題はこちらのほうだ」
ウェールズが紅茶を飲む手を止めると、黒いメンタルキューブのほうを指す。
その黒いメンタルキューブは戦いの前よりもずっと異常な反応をしていた。
今にも爆発してしまいそうな風にも見える。
「あの戦い以降、キューブは異常な反応を示してます。これが何を意味するかまでは分かりませんが……」
「黒いメンタルキューブはオロチ計画の鍵。セイレーンの企みであることは間違いない」
ウェールズの言う通り、その黒いメンタルキューブはセイレーンの類に近い反応のものであった。
「これってやっぱり姉ちゃんと関係があるよね?」
「ベルファストさん、エンタープライズさんの様子は?」
「2人の明石様が現在猛スピードで身体と艤装の検査を行っていますが、今のところ異常は見つかっておりません」
大和の問いにベルファストがそう答えるとクリーブランドはこう話し始める。
「いや、凄い船だとは思ってたけどさ……あの時のエンタープライズはなんだか……」
「はい……まるで本当に「グレイゴースト」のようになったようで……」
「クリーブランド、神通……あれは姉ちゃんじゃない。正確に言えば姉ちゃんの体を借りた何かだとは思う」
「ホーネットさん……」
「あの時の姉ちゃんには正気もなかったし、こっちの翔鶴さん達からの報告によれば、下手すればこっちにも攻撃を加えかねないとかだったし……いくら強い姉ちゃんだからって…」
ホーネットがあの時見たエンタープライズは姿こそエンタープライズであるが、感情の持たないロボットのようであった。
ホーネットがこのような発言をするのは当然であった。
「ああ、そう考えるのが自然ではある。あれはエンタープライズと言えて、エンタープライズではないもの…だが今の所は証拠はなしか……」
「セイレーンが関わっているのは確実とは言えますが……暫くの間はセイレーンの動向に注意しなければなりませんね、ウェールズさん」
「ああ、哨戒の回数の数を増やさなければ」
大和の意見に賛同したウェールズは残っていた紅茶を飲み干していったのであった。
――――――――
「通信端末ねぇ……」
瑞鶴はある式神を手に取り、そう呟いていた。
これはなんとあちらの瑞鶴から手渡されたものだが、これに関しては時間を遡ることとしよう
~~~~~~~~~~
「よかった……」
「危ないところでしたね……」
「ええ…」
「ホントね……」
重桜の綾波が救助されたことを確認した、4人の五航戦達
そして艦娘の瑞鶴は重桜の瑞鶴にこの戦いをどうするか問いた。
「で、どうすんの?まだやる気?」
「何言ってるの……興ざめよ」
そうすると、重桜の瑞鶴は構えるのをやめてしまった。
「そもそも、私達もオロチ計画についてわかってるわけじゃないし……」
「ええ、先輩方は何か隠し事しているんです。長門さんや陸奥さんにも詳しく伝えずに!」
「そ、そうなんですか……」
艦娘の翔鶴がそう言うと、重桜の瑞鶴は艦娘の瑞鶴にあるものを投げ渡す。
「……なにこれ?式神?」
「ただの式神じゃないわ。まあ簡単に言えば通信端末ね」
「通信?」
「あんたと私が連絡取れるように…よ。まあ仕組みは説明がめんどくさいから省くけど、これを持っていればどこへでも通信できるスグレモノよ。もちろんこの式神を持っている者同士だけだけど」
(オーバーツーね……まあこの世界はあの時とは厳密に違うものなんだろうけど)
艦娘の瑞鶴としてはただの紙でできた式神としかわからなかった。
「ふーん…でもなんで私にこんなの渡すの?」
「……「私」を信じるから…よ。あと、これから嫌な予感がするのもある。幸運艦の勘って言うのかな?最後の戦いのとき以上の……」
「うーん…確かに私もあんまりいい気持ちじゃないわね…」
双方の瑞鶴はどうやら胸騒ぎがしていたようだ。
ただこれを言い表すにはまだ情報が足りない。
「だからこれは緊急連絡先…みたいな」
「……一応敵なのに渡していいわけ?これを利用してあなた達をおびき寄せて叩くこともあり得るのよ?」
至極当然な意見に対し、重桜の瑞鶴はこう返した。
「そんなことしないってのはわかってるわよ?「私」なんだから……そもそも「ヒト」なら道理に合わないこともするんでしょ?」
「まあそうだけど……」
自分で言ってアレだが、実際されてくると微妙にむず痒い艦娘の瑞鶴であった。
そして続けてこう問う。
「じゃあこれからどうするの?」
「オロチ計画やセイレーンについて探って、重桜のことを良い方向に変えれるようにする。もう二度と、あんた達に間違ってるって言われないように……」
「先輩達の間違いを正す、いい機会です!これを機に微妙に冷遇されてた私達の待遇改善を…!」
「いや、そういうのじゃないから。翔鶴姉」
腹黒さがでまくっている重桜の翔鶴に瑞鶴はなんとか抑える。
「そう……じゃあ私達はこの場は見逃すしか無いね」
「まあね……本当は綾波とニーミも連れて帰りたいけど、あの様子じゃそっちに預けたほうが良いと思うから」
「ふーん……ま、手荒い真似なんかするつもりないし。引き受けたわ」
そうすると五航戦は手を取り、「握手」をした。
双方とも信用できると判断したからか、表情も「戦い」のものではなく「平穏」なものであった。
その後、重桜の五航戦は速やかにこの場から立ち去った。
そして艦娘の瑞鶴はあることを呟く。
「はぁ……さっきまであんなに戦ってたのに、いくら「私」でもチョロいと思うんだけど……」
「どうかしら?瑞鶴」
「翔鶴姉?」
「あちらの瑞鶴もお人好し…ってことよ?」
「あー……」
照れくさそうにポリポリと頭をかく瑞鶴であった。
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このような経緯があり、今に至るというわけである。
なおこのことに関しては大和や赤城などには話したものの、他には秘密である。
だが、瑞鶴は引き続きその式神をじーっと見つめていた。
「しかし、これって……どうやって使えばいいんだろ。念じるとか?葛城とかに聞いておけばよかった…」
自身が使うのは弓矢であり、雲龍型など一部空母とは違い、式神は扱えないため、流石に?を浮かべてしまった。
そしてそれを試行錯誤していくのであった。
―――――――――――
一方その頃、綾波と綾波が対面していた。
「改めて、よろしくおねがいしますね」
「……よろしく…です……」
片や黒髪のサイドテールのお淑やかな少女
片や白髪のポニーテールで機械のような耳も持つ、物静かな少女
同じ「綾波」であるのだが、こうも違っていた。
「本当に同じ艦なのですか……?」
ニーミは双方を見比べつつも、やはりと言ってなんだが、驚きの表情であった。
「同じ…です」
「同じですね♪」
「…………」
「そんなにじっと見つめても変わらないと思うよ?」
「っぽい?」
「?」
なお綾波達だけではなく、時雨、夕立、吹雪といった面々にも驚いている。
そもそも自分が出会った重桜の艦と少し姿が違えど、同一艦が普通にいるからである。
一応艦娘という説明は受けたが、それでもである。
「まあ…色々と処理が追いつきませんがもう良いです……それより……何故私達は普通にしていられるんですか?手錠とかもしないで」
一応捕虜というわけだが、綾波とニーミは共に手錠などはしていない。
「手錠する必要ありますか?」
艦娘の綾波がそう問いかける。
「いや……ですが」
「まあ逃げるならすぐに追いかけるっぽいけど、二人共そんなことはしないっぽい」
「信用しているからこそ……というべきかな。敵を信用するなんて変な話かもしれないけど」
「そもそも私達自身が「変」で……あ!別に「死の行進」をするつもりじゃありませんから!」
死の行進
主にバターン死の行進のことであり、アメリカ軍守備隊が降伏した際、日本軍が想定した捕虜の数より多かったためか、かなりの数の捕虜が88kmという広大な距離を歩く羽目になってしまった。
それにより日米双方で死者の数の食い違いがあるものの、結構な数が犠牲となってしまった。
「死…?」
「吹雪、そこまで神経質にならなくていいと思うよ?」
「えーでも!」
「……」
(………この感じ……)
重桜の綾波はこんな様子の艦娘達に不思議と思いつつも、悪い気分ではなかった。
―――――――――――
「いらっしゃいませー」
「いらっしゃいませにゃ!」
「………」
そして色々な物を買うために明石商店に案内された綾波とニーミであるが、綾波は何食わぬ顔で商売をしている明石に流石にツッコミも一つ入れたくなったようで…。
「こんなところで何やってるんですか、明石」
「お客様がいれば世界のどこでも商売はできるにゃ」
「ああ、あなたが噂のもうひとりの綾波さんですね!」
「……明石も2人なんですね……」
「はい!二人がかりで商いしてます!」
「ねぇねぇ、これまけてよー」
「駄目にゃ」
「駄目です。これでもカツカツなんですから」
「えー」
ロングアイランドの値切りにも相手をしなかった2人の明石。
(違うけど……本当に同じなんですね……)
どこかに腑に落ちた綾波であった。
その後、艦娘の明石は商品整理をする中、重桜の明石と綾波は「赤城」のことに触れていた。
「赤城さんがセイレーンと……」
「赤城はおっかないけど仲間を裏切るようなヤツじゃなかったのに……でもこっちの艦娘の赤城は随分と違ってたにゃ」
「やっぱり違うんですか?」
「加賀もそうだけど……今に限っては艦娘のほうが羨ましいと思えるくらいにゃ……昔はあんなんじゃにゃかったけどにゃ……」
「……」
そんな重桜の綾波にトントンと肩を叩く艦娘の綾波。
「ど、どうしたんですか?」
「マグカップ、どういうのが良いですか?」
「あ……」
どうやら自分が使うマグカップを選んで欲しいということらしい。
「こういうのもあるっぽい!ニーミも選ぶっぽい!」
「う、うむむむ……」
「……」
そんな様子の駆逐艦達の近くにいるアーク・ロイヤル
「うん…うん……」
と長門である。
「貴様、何をしている?」
「な、何とは……ただここに居るだけだが……?」
「嘘を言うな、ストーカー紛いのことをしていると他の艦から通報が入った」
「な、何を言う!駆逐艦を見守るのも年長者の務めではないか!」
「その務めの仕方が怪しいんだ!綾波の目覚めをずっと待っていたこともいい……」
色々と怪しいアーク・ロイヤルを叱りつけている長門であった。
五航戦は五航戦で動いてます。