異世界で勇者してた親友がTSして帰ってきた件   作:(๑╹◡╹)ノ

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(幕間)

 俺は今、異世界帰りの親友と自宅前の玄関先で相対している。

 

 

「どうしたの? ……こんな夜中に会いたいなんて」

 

 

 ついさっき別れたばかりのミサキが、少し湿らせた髪を弄りながら首を傾げている。

 風呂上がり直後なのか、なにやらいい匂いがする。

 

 家族水入らずのところを邪魔しちゃって悪いな。……また風呂に入ってたのか? 

 

 

「うん、折角すすめられたし… 『もう入ってきた』ってのもなんだか言い出せなくて」

 

 

 困ったような表情で笑って、「それにまたキミに臭いって言われたくないし」と付け加える。

 ……気にしてたのか。

 

 なんだか照れ隠しとはいえ悪いことを言ってしまったな、と考えないでもない。

 確かにコイツは元男だし、気兼ねなく何でも言い合える仲だったが仮にも今は女だ。

 

 いや、仮にどころではない美少女だ。もっと言い方というものがあったのかも知れない。

 

 

「それで、電話では言い難い話って?」

 

 

 少しばかり考え込んでいるところを、ポンと肩を叩かれて中断させられる。

 

 

 おっと、そうだった。まずは見て欲しいモノがある。

 電話口で言うのもアレなんで取り敢えず足を運んでもらったんだ。……悪いな。

 

 

「おお、なんだろ? やけにもったいぶるね。……サプライズなのかい?」

 

 

 ……まぁ、ある意味で。

 

 

 歯切れの悪い俺の返事に再度首を傾げながらも、ま、いいかと足を進めるミサキ。

 内心で大きなため息を吐く。

 

 さて、『アレ』のことをなんて説明しようか? 

 いや、そもそも俺が説明される側なのではないだろうか? 

 

 リビングに入った俺が見たものは…

 

 

「はぁあああああ! ミサキ、ミサキ、ミサキ! この衣服からミサキの香りがするぅ!」

 

 

 先ほど我が家の庭で採れた騎士王子を名乗る不審者が、何処から発見したのかミサキの忘れ物(パーカー)を思う存分吸引して床で転げ回っている姿であった。

 

 

 

 

 

 

 予想を超えた衝撃の光景に、俺は思わず絶句し硬直してしまう。

 

 ……そして恐る恐る隣を見やる。

 暖かな光を放っていたミサキの瞳は一瞬で温度を喪い、淀んだ色へと変化している。

 

 むべなるかな。

 

 大人しく待っているように言い聞かせたはずなのに…

 俺はどうしようかと頭を抱えてしまう。

 

 そこにミサキが輝くような笑顔にドス黒いオーラをまとわせながら口を開く。

 

 

「警察に通報しようか」

 

 

 いや、待って。ちょっと待って。

 ホラ、アイツ。

 

 ……見覚えとかない? 

 

 

「知らない。まったく知らないなぁ。ホラ、余計なしがらみ全部捨てて帰ってきたから!」

 

 

 おおう、取り付く島もないとはこのことか。

 

 

 ていうか、不審者! おまえもその変態行為をやめていい加減こっちに気付け! 

 

 

 俺はこの状況に至らしめた不審者の後頭部に怒りのキックをかます。

(良い子は真似しないでください)

 

 不審者は「ぐふぉぅ!?」と珍妙な声を上げて転がり、壁にぶち当たって動かなくなる。

 ……それでもミサキのパーカーを手放さないのはある意味ですごい根性と言えなくもない。

 

 

「貴様ァ、何をするか! 我の高貴なる頭を何だと心得る!?」

 

 

 あ、起き上がった。耐久力凄いな、さすが異世界人。

 

 

「いや、ディハルトは敵の自爆魔法に巻き込まれても死なないくらいタフでね…」

 

 

 へぇ、なるほど。異世界人だからじゃなくてコイツが特別なのか。

 ……で、ミサキさんや。しっかりと覚えていらっしゃるようですが? 

 

 

「……う」

 

「おお、ミサキではないか! 我だ! 戦友にして婚約者の騎士王子ディハルトだ!」

 

 

 ダメ押しに騎士王子がようやくミサキに気付き、喜びの声を上げる。

 

 

 ホラ、先方(?)もこう言ってらっしゃる。

 結婚する・しないは置いておくにせよ、話くらいは聞いてやってはどうだろうか? 

 

 

 ミサキに断られるとは微塵も思ってないようなキラキラ輝くような笑顔。

 これを問答無用で踏みにじってしまうのは、どうにも気が引けるのだ。

 

 これは甘い考えなのだろうか? ……きっと、そうなんだろうな。

 少なくともミサキを巻き込む前に出来ることは、それこそ幾らでもあったはずだ。

 

 近所迷惑になるこの騎士王子様を慌てて家に引っ張り込んでからは頭が回ってなかった。

 むぅ、反省しなくては。

 

 そんな俺と騎士王子を交互にみやってから、ミサキは深い深いため息を吐いた。

 

 

「はぁ、分かったよ。話、聞くだけは聞くよ。……でも、夜も遅いから手短にね」

 

 

 何故俺まで若干呆れられたような表情を向けられているのだろうか。……解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

「ついつい語りに熱が入ってしまったが、そういうわけだ! ともに帰ろう、ミサキ!」

 

 

 それからは騎士王子ディハルトの長い長い語りが続いた。

 事あるごとに自分をアピールしてくるので、ついに無関係の俺まで名前を覚えてしまった。

 

 今現在世界一無駄な知識だと思う。

 

 内容を端折って説明すると、このディハルトは婚約者のミサキを追い掛けてきたらしい。

 

 愛ゆえに。

 王家に代々伝わる秘宝を、無断で使用して。

 

 さも武勇伝か美談のように語っているけれどそれは犯罪なのではないだろうか? 

 いや、異世界の法律とか良く分からないけどね。

 

 やはり、勝手に人の家に上がり込んでタンスを漁る系の勇者とは分かり合える気がしない。

 

 

「ボクはそんなことやってないからね!?」

 

 

 ……まだ何も言ってないですよ、ミサキさんや。

 

 

 手短にと言ったにもかかわらずこの長さ、俺もミサキもよく耐えたものだと思う。

 そして彼は今、膝を突き手を差し伸べてミサキの返事を待っている。

 

 それに対するミサキの回答はシンプルだった。

 

 

「帰らないよ。……ううん、ボクの『帰るべき場所』はここだから」

 

 

 ほんの少しだけ申し訳無さそうな、しかし、迷いのない表情で言い切ったのだ。

 

 思わず見惚れてしまった俺の視線に気付いたのだろう、花も綻ぶような笑みを返してくれる。

 それでさっき別れ際に『大好き』だなんて言われことを思い出し、胸が高鳴ってしまう。

 

 自然、見詰め合う形になる。

 

 

「何故だぁ! 何故だ、ミサキぃ!」

 

 

 と、ここでディハルトが崩れ落ちて雄叫びかなんだか良く分からない声をあげる。

 思いもよらず意識を逸らせたことで、平静を取り戻せた俺はミサキに提案する。

 

 

 ま、まぁ… おまえの気持ちはこれ以上ないほどハッキリ伝えたし後は俺が引き受けるよ。

 

 

「で、でもそれじゃキミに迷惑が…」

 

 

 いやいや、そもそもバカ正直におまえを呼んだ俺のほうが迷惑をかけてるって。

 警察沙汰を避けるにせよ、すっとぼけるとか他にもっと色々と手はあったんだろうし。

 

 

「そうかもしれないけれど、ボクは話してくれて嬉しかったよ。……ありがとう、親友」

 

 

 お、おう。

 

 ……そうだ? パーカーどうする? 持って帰るか? 洗ってから渡そうか? 

 そう尋ねるとミサキはなんとも嫌そうな顔をして一言。

 

 

「……いや、ボクはもう使いたくないし。キミに任せるよ」

 

 

 衝撃的なことを言い放った。

 俺が反応するよりも早く、床に崩れていたはずのディハルトが声を上げる。

 

 

「なに!? くれるのか! ありがとう、ミサキ! やはりそなたも本当は我のことを…」

 

「誰がキミに渡すかぁ! だぁれぇがぁ! キミにぃ! わぁたぁすぅかぁっ!?」

 

 

 全身甲冑の青年を軽々と持ち上げてギリギリと締め上げるミサキさん。

 ちょ、ステイステイステイ!? 

 

 これが異世界を救った勇者の力だというのか。

 ……俺も怒らせないように注意しなければ。

 

 動かなくなったディハルトからパーカーを取り戻したミサキは疲れたようなため息を吐く。

 そしてそのまま有無を言わさず俺に押し付けてきた。

 

 いいのだろうか? 

 この世界との唯一の絆とかなんとか言ってなかったか。

 

 

「まぁ、うん。思うところがないわけじゃないけど…」

 

 

 そう言って、どこか嬉しそうに自分の着ている服を示すかのようにクルリとその場で回る。

 それは昼の外出で俺が買ってやった外行き用の服一式。

 

 

「新しい絆なら、貰ったから。……えへへ、まだ女物の服は慣れないけれどね」

 

 

 その笑顔はとても可愛い。

 可愛いのだが、床でピクピクしながら倒れているディハルトを思うと複雑な思いがある。

 

 ディハルトはひとまずこのままにして、ミサキを送りに表まで向かう。

 パーカーは… 使ってない親父の金庫があったからそこにしまっておくか、うん。

 

 

「じゃあね、親友。また明日」

 

 

 あぁ、アイツについては俺から話しておくから心配するな。

 ……でも、良かったのか? 

 

 

「? なにが?」

 

 

 いや、婚約者だとかなんとかって言ってたし。アイツもその気だっただろうから。

 

 そう言うと、ミサキは心底嫌そうな顔をしながら口を開く。

 

 

「……まぁ、悪い人ではないと思うよ。むしろあの世界じゃ一番良い人まである」

 

 

 ほほう。まぁ、確かに悪人ではなさそうだったな。

 俺自身も聞いていた異世界の人のイメージとちょっと違った印象を受けた。

 

 

「でも生理的に無理かな」

 

 

 一刀両断ですな。

 

 

「あとご覧の通り思い込みが激しくて人の話を聞かないところもマイナス。絶対に無理」

 

 

 ……うん、よく分かった。

 一人で帰れるか? 

 

 

「うん、ありがとう。……ごめんね、嫌な役回りをさせて」

 

 

 気にするなって。俺たち、親友だろ? 

 

 

 そう返せば、ミサキはニコッと微笑んで大きく手を振って帰っていった。

 そして俺は背後を振り向かないままに声をかける。

 

 

 聞こえてただろ? ……まぁ、そういうことらしい。

 アンタが本当にミサキのためを思うなら、諦めて帰ったほうが良いぞ。

 

 

「ミサキ… 我は、そなたが望むならば王子の地位を捨てることすら厭わなかったのに…」

 

 

 そのまま声を押し殺し、静かに嗚咽を漏らし始める。

 

 咽び泣くその声を、どうして無様だと笑うことができようか。

 コイツの苦労はコイツにしか分からない。

 

 それでも並々ならぬ覚悟を持ってこの世界にやってきたであろうことは容易に想像できる。

 ……ある程度泣き止んだら、晩飯の一つくらいは奢ってやるとしようか。

 

 まぁ、俺に出来る料理なんてレトルトのカレーくらいのものなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだこれは! なんという味わい深さ… それにもしや、これは香辛料では!?」

 

 

 うむ。この料理、その名をカレーと言う。

 ご明察の通り、香辛料をふんだんに使った刺激的かつ奥の深い味わいが特徴である。

 

 異国からの客人たる王子に振る舞うために特に調理した。しかと味わわれよ。

 

 

「なんと… これがミサキが折りに触れ食べたいと口にしていた『カレー』か。美味だ…」

 

 

 わなわな震えている。なんだコイツおもしれぇ。

 俺がニヤニヤ見ていることに気付いたのか、王子はそっぽを向いて喋り始める。

 

 

「フ、フン… 貴様からの誠意、ありがたく頂戴しよう。礼を言う」

 

 

 ほう。随分と素直じゃないか? 

 

 

「ここまで歓待されて意固地になるほど無粋ではない。……この恩は生涯忘れぬと誓おう」

 

 

 いちいち大袈裟だけど、ホントに根は悪いやつじゃないんだなぁ。

 なんだか市販のレトルトパックで済ませているこちらが悪者みたいに感じてくる。

 

 コイツもミサキと一緒にサバイバルな冒険を繰り広げてきたのだろう。

 案外、人からの歓迎に飢えているのかも知れないな。

 

 そんなことを考えながらぼんやりしていると、ディハルトがしんみりと口を開いた。

 

 

「ミサキに… 拒絶されてしまった」

 

 

 ……そうだな。

 

 

「おまえはミサキの恋人なのか?」

 

 

 ブッ!? い、いきなりなにを…

 

 

「何故吹き出す? そうおかしな質問をした覚えはない。むしろ当然の疑問ではないか」

 

 

 いやまぁ、そう言われればそうなのかもしれんが… あ、いやいや。恋人ではないぞ? 

 ただ、俺にとってアイツは男の幼馴染であり親友であってだな…

 

 

「貴様は何を言っている? ミサキはどこからどう見ても女ではないか。ややゴリラだが」

 

 

 うん、そうだね。それには深い事情が… え、異世界にもゴリラっているの? 

 

 

「学名をゴリル・ゴリロ・ゴリレという猿型の魔獣だ。立てば大人3人分の体長となる」

 

 

 マジかよ、めっちゃ危険そう。

 

 

「危険だぞ。怪力の代名詞でもある。オマケに知能も高く群れをなす。まさにミサキだ」

 

 

 それ本人に聞かせるなよ? 

 

 ミサキが殺人犯にならぬよう、コイツの言動には注意を払わねばならない。

 

 しかし、そのへんはこっちのゴリラとあまり変わらないな。

 その大きさとか危険度とかは、かなり違ってるみたいだけれど。

 

 

「そうなのか? では、貴様も『走れゴリラ』という詩を知っているか?」

 

 

 なんだそれ!? え、走れメロスじゃなくて!? 

 

 

「うむ。ゴリラが走ってとある暴君を… って、ちがう! 今はミサキの話だろうが!」

 

 

 いや、でも、ゴリラの話めちゃくちゃ気になるんですが。

 

 

「話を逸らすな!」

 

 

 ……す、すまん。なんだか納得できないが、とにかくすまん。

 

 

「まったく… それで、どうなんだ?」

 

 

 ……どう、とは? 

 

 

「ミサキのことだ! おまえは一人の男として彼女の想いに応える覚悟があるのか?」

 

 

 いや、ちょっと待て! おまえはきっと何か勘違いしている! 

 

 

 俺はディハルトの言葉を遮ると、しどろもどろになりながら説明する。

 

 俺とミサキは間違いなく男同士の親友であったこと。

 それがある日の事故でミサキは姿が消え、そちらの世界に転移したこと。

 

 ミサキによると異世界転移をした女神の力の影響で性別が女になってしまったこと。

 今は女になっているが互いに男同士の親友として振る舞っていること。

 

 それらを、この思い込みの激しい猪突猛進型王子は意外にも黙って聞いていてくれた。

 そして、聞き終えると口を開く。

 

 

「……なるほど。俄には信じ難いが女神の力ならばそういうこともあるだろう」

 

 

 信じるのか? こんな荒唐無稽な話を。

 

 

「うむ… 一時は貴様を不実な輩とも疑ったが、それはないと信じよう。しかしだ!」

 

 

 しかし? 

 

 

「我が身を引くには些か足りぬ…」

 

 

 なんでドヤ顔なんだ、コイツ。

 

 ……そしてイケメンのくせに悲しいほどオーラが感じられない。

 多分コイツが残念なやつだと既に知っているからだろうな。

 

 そんな俺の内心を知ってか知らずか、得意げな表情のままディハルトは堂々と言葉を紡いだ。

 

 

「よって、我はこれからもミサキの説得を続けよう! 彼女の気が変わるまでな!」

 

 

 いや、帰れよ。

 

 

 俺の放つ容赦ないツッコミに、ディハルトは呆気にとられた表情を浮かべて硬直する。

 そこで何故『そんな反応を返されるとは思ってなかった』って表情が出来るんだ、おまえは。

 

 

 おまえの意気込みのほどは嫌というほど伝わってきた。

 おまえが悪いやつじゃないことも分かる。

 

 けれど、それとこれとは別の話だ。

 気持ちは分からないでもないが、帰ってくれ。

 

 ミサキは今、離れ離れになっていた家族との再会を心から喜んでいる。

 ミサキの家族も失ったと思っていたアイツの帰還を喜び、月日の溝を埋めようとしている。

 

 それを引き離そうというのは、止めてくれないか。

 おまえにも家族がいるんだろう? どうか分かってやってほしい。

 

 

 俺の淡々とした言葉がリビングに響き渡る。

 声を失っていたディハルトだが、やがて我に返って顔を真っ赤に染めて怒り始める。

 

 

「我の家族は、我のことなど! ……いや、言っても詮無きことか」

 

 

 激昂しかけるも、なんとかそれを抑える様子を見せる。地雷を踏んでしまったのだろうか? 

 だとしたらすまないことをした。

 

 

「気にするな。とはいえ、我も『はい、そうですか』と引き下がれぬ」

 

 

 それは何故だ? 

 勇者だからというのであれば、アイツは立派に押し付けられた義務を果たしたはずだ。

 

 終わった後もなお利用するために追い回すというのならば…

 

 

「フン、勘違いも甚だしい。……いや、仕方ないことか」

 

 

 しかし、ディハルトは吐き捨てるように… そして自嘲するように、口にした。

 

 

「父上と兄上が何を考えてるかまでは知らぬが、我にとってはミサキは特別な女性なのだ」

 

 

 父上と兄上… 国王と兄王子に当たるのか。

 コイツも色々と大変だったのかも知れないな。

 

 少し遠い目をしながら騎士王子は言葉を続ける。

 

 

「我にとって、ミサキだけが我という個人を見てくれた。例えただの『仲間』であれ…」

 

 

 流石にミサキの方に自分への恋慕の情がないことくらいは理解しているのだろう。

 その表情はどこか寂しげであった。

 

 

 で、どうするんだ? 帰らないと言っても行くあてはあるのか? この世界の金は? 

 

 

「それは…」

 

 

 何も言えずに深刻な表情で黙り込むディハルトに聞こえるよう、盛大なため息を吐く。

 

 

 計画なしに突っ走るからこうなるんだ。

 冒険の最中だってそれでミサキを散々困らせていたんじゃないか? 

 

 

 返す言葉もないのだろう。ギュッと拳を握りしめたまま、ディハルトは俯いている。

 いよいよバツが悪くなって、俺は再度ため息とともに言葉を漏らす。

 

 

 同じミスを繰り返さないよう、ここで身の振り方をよく考えておくんだな。

 春休みが終わるまで… 俺の家族が帰ってくるまでで良いなら、ここで暮らしても構わない。

 

 

 バッと顔を上げるディハルト。そこには信じられない、という表情が張り付いてる。

 ……あぁ、俺も信じられないよ。自分のバカさ加減がな。

 

 

「……いいのか?」

 

 

 俺の気が変わる前に肯いておいたほうがいいぞ。

 そうすればいよいよ俺も後に引けなくなる。

 

 

 そう告げれば、二度三度と慌てて首を上下に振ってくる。

 ……ったく、分かりやすいやつだ。

 

 これは、そう、危険な異世界人を野放しにしないよう手元においておくための措置。

 やむを得ない事情による緊急措置というものだ。

 

 自分自身の心に向け苦しい言い訳をしながら、俺は三度目のため息を吐くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、貴様! 浴室の水が止まらなくなったのだが! もちろん我は悪くないぞ!」

 

 

 そして、我が家の風呂はバカ王子によって壊されてしまう憂き目に遭うのであった。

 あの野郎、やっぱり叩き出しておくべきだったか。

 

 ディハルトとの暮らしは、良くも悪くも退屈だけはしない刺激に満ち溢れている。

 だからこそ俺は、気付くべきなのに気付くのが遅れてしまったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 ……この世界へ帰ってこれて幸せいっぱいのはずのミサキの変化と、その思い詰めた表情に。




すみません、すみません…。

終わりませんでした…。
次で終わるようにがんばります… 申し訳ありません…。

よろしければまた来週…。

(2020/02/16追記)
申し訳ありません、申し訳ありません…

風邪が重く今週の更新は難しそうです…
伏してお詫び申し上げます…
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