異世界で勇者してた親友がTSして帰ってきた件   作:(๑╹◡╹)ノ

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(転編)

 おい、ミサキ。聞いてるか? 

 

 

「あ、うん。……ごめん」

 

 

 対戦ゲームの真っ最中だと言うのに気もそぞろなミサキに声を掛ける。

 そもそも一緒に遊ぼうと誘ってきたのはコイツの方だろうに。

 

 受験期間中はゲーム禁止という誓いを破ってまで相手してやってるというのにコヤツは。

 

 

 俺じゃなくて画面を見ろ、画面を。ったく、最初はなんの精神攻撃かと思ってたぞ。

 ……一体どーしたよ? やっぱあの寒空で待たせちまったせいで体調崩しちまったか? 

 

 

「う、ううん。そういうわけじゃないんだけど… って、別にそんなに見てないよっ!」

 

 

 そうかー? 結構ビシバシ視線が突き刺さってた気がしたが。

 

 

「なぁ、我もそれしたい」

 

 

 そこに、ベッドで体育座りしながら見学していたディハルトが口を挟んでくる。

 

 しかしジャージ姿の金髪イケメンって滅茶苦茶違和感があるな。

 まぁ本人が気にしていない以上は、あんまりあれこれ言うつもりもないが。

 

 

「あ、ディハルトの視線だったんじゃないかな? すごい興味ありそうだしっ!」

 

「うむ! 大層興味がある!」

 

 

 そうかな? ……そうかも。

 

 

 俺は何かを誤魔化すような口振りのミサキに若干の違和感を覚える。

 とはいえ、確かにディハルトの興味津々といった視線も圧が強い。

 

 ひとまずその言葉に納得しながら、俺は少し考える。

 このアホ王子にコントローラーを握らせて大丈夫だろうか? 壊したりしないよな? 

 

 なんせこの騎士王子様は我が家の浴室を破壊した前科持ちなのだ。

 慎重に対応しても、やり過ぎということはないだろう。

 

 答えあぐねる俺を見かねてミサキが助け舟のつもりだろう、口を開いた。

 

 

「だったらボクが代わるよ。キミとボクの二人で教えればディハルトも大丈夫だよね?」

 

「おお、ミサキも教えてくれるのか! うむ! 任せるが良い!」

 

 

 気合を入れて腕まくりをするディハルトを見てため息を吐く。

 こうなったらもはや止められそうもない。

 

 成り行き任せに乗っかるしかないか。

 俺はミサキと一緒にディハルトに操作を教えながら、協力モードにゲームを切り替える。

 

 対戦で負けてもコイツが暴れるとはもう流石に思ってはいないが、拗ねるかもだしな。

 かと言って曲がったことが嫌いなコイツのこと、わざと負けても機嫌を損ねることだろう。

 

 けれど協力モードだったなら? 

 敵は飽くまでCPUだし、フォローをすることで楽しませられる可能性も高い。

 

 見ればミサキも同意見だったようで苦笑いを浮かべながら小さく頷いている。

 ……言わずとも伝わるか。流石はミサキ、我が生涯の親友(とも)よ。俺は静かに親指を立てる。

 

 

 さぁーて、俺の接待プレイが火を吹くぜぇー! 

 

 

「フハハハハハハハ! その心意気や良し! 騎士王子ディハルト、推して参るッ!」

 

 

 よく分かってないだろうに相変わらずノリで生きてやがるな、ディハルト。

 ……コイツ、ある意味で大物なのでは? 最近そんなことを考えつつある俺です。

 

 

 

 

 

 意外や意外、教え込めばディハルトは中々筋がいい。

 

 

「フハハハハハハハ! この程度、アスリンの罠に誤ってかかった時に比べれば瑣末事よ!」

 

 

 それゲスリン… じゃなかった、アスリンさんに命狙われてない? 大丈夫? 

 

 

「フハハハハハハハ! 安心せよ! うっかりミスを責めるほど我は狭量ではないぞ!」

 

「大丈夫だよ、親友。アスリンとはその後ちゃんと気を付けるよう『お話』したから」

 

「うむ! ミサキに注意された後は涙ながらに謝罪してきてな。強い反省の色が伺えたぞ」

 

 

 ……お、おう。

 そうだな。助け合い、許し合うのが仲間だもんな? 

 

 

「うむ! 分かっているではないか!」

 

「そうだとも。やだなぁ、親友ったら! ……まぁほとんどが同行者兼監視役だったけどね」

 

 

 助けて。

 

 とても可愛らしい美少女顔なのに、ミサキさんの笑顔がなんだかとってもドス黒いの。

 気のせい… うん、気のせいだと良いな。

 

 そこに当のミサキさんが笑顔を止めてディハルトに尋ねる。

 

 

「そういえばディハルトはどうやってここに来たの?」

 

「うむ! 王家の秘宝… 宝石のようなものだったが、ソレを使って女神に願ったのだ!」

 

 

 そこは俺も軽く聞いただけだから気になってたけど… へぇ、マジで女神様いたのか。

 あまりにも突拍子もない話ばかりだから、てっきりイマジナリーな存在だと思ってたよ。

 

 しっかし万能だなぁ。

 

 

「ちょっと… 大丈夫なの? 変な呪いとか貰ってない?」

 

「我を案じてくれるのか、ミサキ! なに、心配には及ばん! 我は不死身だ!」

 

 

 ハハハ、転移時の事故で女にされちまったミサキが言うと重みが違うな。

 

 しかしマジな話、大丈夫なのか? 

 ていうかそんな便利アイテムあるなら勇者に頼らずに自分でやれよ、魔王退治。

 

 

「全くだな! 使い切りだったみたいで、もはやその力は喪われたようだが!」

 

「へぇ…」

 

 

 一瞬ミサキの視線が鋭くなる。

 俺が首を傾げていると、ミサキが俺の視線に気付いて頬をかきながら視線を逸らした。

 

 

 どうしたんだ? 

 

 

「あぁ、いや。別にどうってこともないけど、その… あぁ、そうそう! コホン」

 

 

 周囲の視線が集まっていることに気不味くなったのか、咳払いを一つして告げる。

 

 

「ディハルトは仮にボクの説得が成功したとして、一体どうやって帰るつもりだったの?」

 

「………。フハハハハハハハ!」

 

 

 このアホ、笑って誤魔化しやがった。

 ノープランとかマジないわー。

 

 周囲の空気が弛緩したものに変化する。

 俺とミサキのジト目に気付いたディハルトが殊更に響く高笑いを上げる。……うるせぇ。

 

 

 っと、ボスが来たぞ! 気合い入れろよ、アホ王子! 

 

 

「アホは余計だ!」

 

 

 良いから画面に集中しろ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……じゃあ、そろそろボクはお暇させてもらうね」

 

 

 宴もたけなわといったところだが、窓を見れば外が暗くなりつつあるのは見て取れる。

 

 あれから俺とディハルトはゲームに熱中した。

 時間はあっという間に過ぎていった。

 

 しかし一方で、ミサキの方はあれからゲームを交代することはなかった。

 それどころか会話についてもほとんど入ってこなかったように思える。

 

 なんか後ろでゴソゴソしてた様子だが、退屈させてしまったかも知れない。

 ……一応何度か交代するように水を向けたのだが。

 

 

『ボクのことは気にしないで。……二人の協力プレイを眺めるってのも悪くはないさ』

 

 

 と、眩しいものを見るような笑顔で言われてしまっては二の句を告げるはずもなく。

 申し訳ないとは思いながらも、久方振りの男友達とのゲームに熱中してしまったのだ。

 

 家の門まで見送ったところで、ミサキが少し俯いたまま言葉を紡いでくる。

 

 

「……ねぇ、親友」

 

 

 どうした? 親友。

 

 

 ディハルトがいる時はまだマシなのだが、二人きりになると最近妙に歯切れが悪くなる。

 鳴り響く鼓動に少しばかり居心地の悪さを感じながら、ソレを匂わせずに言葉を返す。

 

 

「ボクは… 男の姿で戻ってきた方が、良かったかな?」

 

 

 それは…──

 

 

 考えなかったはずがない。しかし、俺たち二人の暗黙の了解で避けてきた話題。

 俯きがちなミサキの… 親友の表情は陰になっていて見えない。

 

 俺の言葉は意味も成さぬままに、街灯にぼんやり照らし出された夜道へと溶け込んでいく。

 

 

「ううん、ごめんね。バカなことを聞いちゃった。……じゃあ、また」

 

 

 ──あっ、オイ! 

 

 

 俺のそんな煮え切らない態度こそが答えだと受け取ったのだろう。

 

 ミサキはなんてことないと言わんばかりの笑みを浮かべ、クルリと背を向ける。

 思わず手を差し伸べる暇もあればこそ、彼女はそのまま駆け出していく。

 

 ……俺の右手は虚しく虚空を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……“彼”の部屋でゲームをしてから数日。

 

 ボクは誰も訪れぬであろう廃ビルの中で待っていた。

 この行動は荒唐無稽な想像に基づいている。確証なんてありはしない。

 

 だから来なくたって構わない。

 その時はディハルトから拝借してきたコレを壊すだけだ。

 

 なんも意味も為さないかも知れないが嫌がらせになるかもしれない。

 そんな捨鉢な気持ちで待っていたけれど…──

 

 どうやら、【賭け】には勝ったようだ。

 

「それを壊されては、困るな」

 

 幼い女の子特有のソプラノボイス。

 しかし、内面にはどこか老獪な気配を滲ませているその声の主に視線を動かす。

 

 ボクは確信を込めて声をかけた。

 

 

 来てくれたんだ。

 

 

 そこには想像通り、一人の少女が立っていた。

 忘れもしない、一年と少し前の事故当日そのままの姿かたちで。

 

 家族の話やネットで情報を集めた結果。

 あの事故でいなくなった人間は二人いた事が判明した。

 

 一人はボク、そしてもう一人は事故に巻き込まれたとされる少女…

 

 

「おうとも。お主のお陰で助かった」

 

 

 その言葉にはきっと『あの事故』以外の意味が込められているのだろう。

 

 

 キミが、【女神様】なんだね? 

 

 

 ボクの確認に少女は、いや… 女神様はニタリと笑みを浮かべた。

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