異世界で勇者してた親友がTSして帰ってきた件 作:(๑╹◡╹)ノ
春休みが終わろうとするその日。
街は青白い光に包まれた。
何処か既視感を覚えるその光に訳も分からず焦燥感に駆り立てられていると…
「いかん! これは我が来た時と同様の女神の力… もしやミサキが!?」
ディハルトが叫びだした。
そう、そうだ。
これはコイツが俺ん家の中庭に出現した時と同じような光なのだ。
おい、落ち着け! ミサキがどうしようって言うんだ!?
俺に説明するのももどかしいのだろう、ヤツは俺の手を引いて玄関に駆け出す。
抵抗するつもりはないが、俺はなおもディハルトに呼び掛ける。
ことが親友に関することだって言うなら黙ってはいられない。
最近様子がおかしかったこともある以上、尚更だ。
「黙ってついてこい! 我一人では、ミサキを止められないかも知れんのだ!」
ミサキを止める? それは…
どういうことだ、という思いは消えないがそれ以上にディハルトの真剣な言葉に押し黙る。
俺は、黙って靴を履きドアを開けてヤツに頷いた。
わかった。いこうぜ。案内を頼めるか?
「それでこそ、だ」
ディハルトがニッと笑う。
イケメン過ぎて腹が立つな、コイツ。
「急ぐぞ! 出来得る限りの説明は駆けながら行う! 我についてこい!」
この数日ですっかり着慣れたサイズの合わないジャージ姿でシューズの紐を締める。
そのどこぞのお笑い芸人もかくやというひょうきんなスタイルは不思議と様になっていた。
走りながら説明を受ける。
世界を渡るには大量のマナ(魔力のようなものらしい)と女神の祝福が必要であると。
マナだけでも、女神の祝福だけでも、どちらか一方だけではダメであるらしい。
異世界フェアリアースはマナが豊富な世界である。
しかし、この世界にはマナがほとんど存在していないらしい。
「だから、我はこの世界から元のフェアリアースへと帰る見通しが立たなかったのだ」
カレーにつられたからではなく?
「つられたからではなく! 決してスパゲッティに目がくらんだわけでもない!」
よっしゃ、これからおまえの食事三食枝豆だけでいい?
「すまん、ある! カレーとスパゲッティとカップ麺は最高だ! あと銭湯も実に良い!」
正直でよろしい。
そして女神の祝福の残滓は、異世界への転移後に固着する。
それが異世界の言語を理解せしめ特殊な力を発揮する勇者特有の能力へ変化するのだとか。
角質が変化するようなモンなのかね。
俺は帰還当初の旅塵塗れのミサキの姿を思い出す。
しかしミサキはともかく、ディハルトがこっちで言語に不自由しない理由は理解できた。
「この世界ではマナが少ないから油断していた。しかし今更女神の祝福を求めるなど…」
確かに、それは俺も気になる。気になると言えばもう一つ。
「……なんだ?」
女神の祝福は、ひょっとしてこの世界由来のものなのか?
「……そのとおりだ。フェアリアースはとっくに女神の祝福を失っていた」
………。
「だからこそ、異世界から勇者を喚ぶことに躍起になっていた。なんとも醜い話だろう?」
………。
俺は返す言葉もないまま、ディハルトの自嘲を受け止めた。
どういったきっかけがあったかは分からない。
けれど、当事者ではない俺が賢しらに悪く言うことなんて出来ないと思ったからだ。
……ディハルトのようにいいヤツもいるって知ってしまったならばなおのこと。
つまり、ミサキの目的がなんであれ。
この世界のマナの希薄さを何らの手段で補い、女神の祝福を行使しようとしているわけか。
「そういうことだ。ここ数日のミサキの様子はおかしかった。見過ごすことはできん」
応ともよ。
たった数日前のやり取りが、俺の脳裏にリフレインする。
──ボクは… 男の姿で戻ってきた方が、良かったかな?
バカ野郎。
バカ野郎が、ミサキ。バカ野郎が、“俺”!
考えるまでもないだろ!
アイツがどんな姿だって、アイツは俺にとって何よりも大事な…──
そうして俺たちは
……本当に、ここなのか?
半ば以上、確信を込めて尋ねる。
廃ビルに立ち込める、【異世界勘】なんてモンがない俺でもハッキリ感じ取れるほどの異常。
「分かりきった問いかけをするな。……
俺の返事を待たずスタスタと中へ入っていくディハルト。
その姿に慌てたのも一瞬のこと、俺も自らの両頬を強く張って気合を入れて後に続いた。
……ここで一体何が起こっているのだろうか。
中に入ってから何度か崩れそうな階段を上がり、やがて屋上に到着した。
うろこ雲の下、青白い光と相対している少女が一人… ミサキだ。
「ミサキ!」
ディハルトの呼び声にビクッと背を震わせたミサキが、ゆっくりこちらを振り向いた。
「キミたち、どうしてここにッ!?」
すると、ミサキを挟んで向かいの青白い光に変化が生じる。
……いや、よく見るとそれは人であった。
──ッ!?
間違いない。
アレは、あの時行方不明になったはずの事故に遭いそうになっていた女の子だ。
一体どういうことなんだ?
考える暇もあればこそ、なんだか嫌な予感がする。
まるでこれまでのミサキともう会えなくなるような、漠然とした不安感。
女の子は俺たちの動揺をよそにそっとミサキに手を向けた。
ミサキぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!!
瞬間、俺は走っていた。弾かれたように走っていた。
絶叫しながら走っていた。
考える前に身体が動いていた。
我ながら大馬鹿だと思う。けれど、後悔なんてあるはずがない。
「し、親友どうしてここに… って、ちょっと!?」
ミサキを、親友を、抱きしめて思いっきり地面に転がる。
堅く目をつむり、『その時』を覚悟して待つ。
「馬鹿者が… しかし、その意気やよし」
その声に目を開けると、両手を広げながら俺たちの前に立ちはだかるディハルトがいた。
「我も我なりにミサキを愛していたが、先に動いたのは貴様だったな。……ミサキを頼む」
「と、とにかく今は離してちょっと… って、ディハルト後ろ後ろぉおおおおお!?」
直後、青白い光を照射されるディハルト。
「ぐわぁああああああああああああああッ!?」
「あぁああああああああああ…」
ややあって、光が収まるとそこには俺とミサキ、倒れてピクリとも動かないディハルト。
そして…
「……今ので力を使い果たしてしまったようじゃ。すまないの、勇者ミサキ」
あの日、確かに事故に遭っていたはずの女の子が困り顔を浮かべてそうつぶやいた。
おまえ、よくもディハルトを…
「安心せい。
肩を落としながらも、怒りを示そうとした俺に彼女は事務的に説明してくれる。
「あのね、親友。……彼女は女神様なんだよ」
女神様?
……いや、確かに符合するか。
フェアリアースに女神がいないならば、女神の祝福とは一体何処で生まれたのか。
そもそも、女神はどうやってこの世界から異世界に勇者を送り込んでいたのか。
それらは全て『女神はこの世界にいる存在』だったと考えれば辻褄が合う。
「神と人とでは物事の捉え方の尺度が異なるとは言え、そなたらには迷惑をかけた」
俺の心を読んだかのように、女の子… 女神様がそう告げる。
「どうしてもあの世界を滅ぼしたくなくて、色々無理を重ねたが… やはりいかんな」
彼女なりに摂理に反しているという自覚はあったのだろうか。
無機質な瞳には諦念と倦怠が宿り、力なく言葉を重ねた。
やがて女の子の身体の末端から糸がほつれるかのように、徐々に青い光に分解されてゆく。
「後のことは勇者ミサキに聞くと良い」
「え? こ、ここで丸投げ? ちょ、ちょっと待ってよ。ボクは…」
最後の最後、顔を残すのみとなった女の子の視線がこちらに向く。
「……友人と仲良くな」
その言葉を最後に、一際大きな光を残して女の子は跡形もなく消え去った。
ほれ、手。
……ひとまず、気不味そうな顔をしているミサキに手を貸して立たせる。
「その、ごめん」
理由を聞いても良いか?
「それは… うん。全部ボクのせいなんだ」
はて? コイツに迷惑をかけられたことなんてないが。……逆ならあるかもだが。
そんなことを思いながら俺は先を促す。
「その、ボク、おかしいんだ。ディハルトと上手くやってるキミにイラッとしたり」
「いや、キミが優しい人だって知ってるけど、なんだろう。胸がモヤモヤして…」
「あと、一緒に銭湯行ったり急速に仲良くなっていってるのにボクは…」
「マフラーを貰ってから、なんか、キミの顔をまともに見られなくなったし… それで…」
「だから、その、あの、ちゃんとした形で戻らないとって思って女神様に交渉をですね」
……うん! 最後言ってる意味がわからないけど、多分、全部俺のせいですね!
もう帰ってこないんじゃないかと半ば諦めかけてた親友が美少女になって戻ってきた。
確かに感情がバグってしまっても仕方ないと客観的には思う。
しかし、だ。
異世界から帰ったばかりで心細いであろうと親友に対し、見せるべき素振りではなかった。
こういう時こそ親友である俺がドッシリ構えてミサキの不安を払ってやるべきだった。
すまなかった、ミサキ。
自身の非を認めた俺は深々とミサキに頭を下げる。
隅っこで倒れているディハルトが目に入る。……後で回収してやらんと。
そんなことを考えている俺のもとに目をキラキラ輝かせたミサキが詰め寄り手を取る。
「ホント!? ホントにいいんだね!? ボクは、ボクのままで大丈夫なんだね!?」
応ともよ! 不安にさせて悪かったな、親友! これからもよろしく頼むぜ!
「ありがとう、親友! じゃあ、ディハルトみたいに一緒にお風呂入ってくれるよね!?」
……それはちょっと。
「あれっ!?」
思わず想像しそうになった美少女の裸体を思考から追い払いつつ、俺はNOの構えを取る。
「う、うぅ…」
咄嗟に目を逸らしてしまったことが功を奏したのか、ディハルトのうめき声に気付く。
おい、大丈夫か!? しっかりしろ! 女神様は人体に害はないって言ってたけど…
「う、うぅ… 胸が苦しい… すまない。我はもうダメだ… ミサキと、仲良くな…」
おいコラ、しっかりしろ! このディハルト野郎! ジャージの前開けるぞ! いいな!?
返事を待つのももどかしく、急いでジャージの前チャックを降ろした俺は…
ばいんっ!
と、なにやら『柔らかいもの』に顔面をぶっ叩かれた。
ごっふぁ!?
「わぁー! し、親友ー!?」
妙に弾力のあるそれに跳ね上げられる。
しかしそのままコンクリートに後頭部を叩きつけることなくなんとかフォローをされた。
ミサキさまさまだな。
ったく、いきなりなんてことをしてくれる。
そう抗議をこめてディハルトを睨みつけようとした俺の目は思わず点となってしまう。
「フハハハハハ! 胸の苦しみから解放されたぞ! 我、復活! フハハハハハハハハ!」
この数日間でよく知る羽目になった男と同様の高笑いを上げる人物は。
なんと長身でスタイル抜群の金髪美女であった。
そりゃ前チャックを留められた男物のジャージなんて着せられたら胸が苦しいでしょうよ。
そう言いたくなるほど立派な胸部装甲をお持ちの女優顔負けの金髪碧眼の美女であった。
……でぃ、ディハルトなのか?
「フハハハハハハ! この美の化身を他に誰と見間違える! 良い! 感激の抱擁を許す!」
そう言って両手を広げて近付いてくるものだから心臓に悪い。
思わず距離を取ってしまう。
そんな俺の前にスッと影が差す。
見ると、ミサキが俺を守るように推定ディハルトの美女に威嚇をしていた。フシャー、と。
「それ以上近寄ったら『敵』と認識するからね、ディハルト」
「あ、はい」
ディハルトは秒で負けた。
しかし、なんだってディハルドが急に女に。……女で、いいんだよな?
「フハハハハハハ! いきなり何を言い出すかと思えば我は男、ってこの巨大な胸は一体!?」
ばいんばいんの自分の胸を弄びながらディハルトが驚く。いや、気付いてなかったんかい。
「ひょっとして…」
なにか心当たりでも? ミサキ。
「ボクが女神様に男に戻してくれるようにお願いしたから…?」
うん、100%それですね。身代わりになってビーム浴びてたし。
「フハハハハハ! まぁ、良いだろう! 我が美貌に陰りなし! フハハハハハハ!」
良いんかい。……はぁ、なんかどっと疲れた。
まぁ、それはそれとして。問題は山積みかも知れないけれどさ。
「……うん」
帰ろうぜ。一緒に、さ。
「フハハハハハハハハ! 一件落着、であるな! フハハハハハハハハ!」
やかましい。
内面は全然変わらないディハルトの後頭部をスパンッと叩きつつ、帰路につく。
いつものように高笑いをするアホ王子(姫?)と、諦めたような苦笑いを浮かべる俺。
その横を歩くミサキの笑顔は、夕焼けの中でキラキラと輝いているように感じた。
家に戻ると、ちょうど見覚えのある車から人が降りてくるところであった。
「おう、今帰った… っと、こちらの娘さんたちは?」
親父が俺に問いかけてくる。
さて、どっからどう説明したものか。……とても、とても長い話になりそうだ。
そうだな、父さん。母さんも。まずはおかえり。旅行、楽しかった?
「あぁ、それはもちろん。土産も買ってきたぞ」
それはなにより。……あぁ、こっちもすごいことがあったんだ。あ、風呂壊れてるから。
「へぇ、中で聞こうか。お客さんなんだろ? 母さんも… って、今なんと?」
……あ、あはは。じゃあ、先に入ってるから! ミサキもディハルトも、はやく!
二人を急かすようにして、俺は家の中に逃げ込んだ。
それから俺たちは久々の母さんの夕食を囲みながら話をした。
ミサキが帰ってきたこと。女になってたこと。
なんかディハルトも(呼んでもないのに)やってきたこと。なんか女になってしまったこと。
賑やかな客人のちゃちゃ入れもあって、些細な脱線もしながらであるが話は続いた。
「我はコイツと『裸の付き合い』をした! よって願わくばここに置いていただきたい!」
……ディハルト? ちょっと黙ろうか?
「フハハハハハハハハ! 大丈夫だ! 肉体労働も厭わぬぞ! 存分にこき使ってくれ!」
……ディハルト? ディハルトさん? なんかミサキの笑顔が怖いんですけどぉ!?
……うん、些細な脱線だったはずだ。
途中、兄(姉?)を迎えに来たミサキの妹のルリちゃんまで巻き込んで夕食会は続いた。
「……すみません、私までご相伴に預かってしまって」
「いいのよぉ! お母さんにはこっちから連絡を入れておいたから!」
母さんはミサキを失ってからのルリちゃんを特に気にかけていた。
だからこそ、ルリちゃんも表面上はあまり落ち込まずに日々を過ごせていたように思う。
しかし、そうか。
行方不明だった兄が急に戻ってきたんだもんな。そりゃ一時帰省くらいするか。
父さんがルリちゃんの酌を恐縮して受けながら話題を振る。
「ルリちゃんも良かったねぇ、お兄さんが帰ってきて。戻ってきたのはその関係で?」
「……はい。春からの転入手続きもありまして」
転入? ……あ、ひょっとしてミサキのための。
「え? ボク? なんで?」
おまえさぁ…
思わず呆れてため息を吐いてしまう。この時期の急な転校なんて理由は一つだろ。
どっからどう見ても急に女になってしまった兄のフォローのために決まってるだろうが。
それを説明するために口を開こうとして、そっと腕に手を添えられる。ルリちゃんだ。
「いいんです、“兄さん”。兄がこんなだっていうのは分かっていますから」
静かに首を振られては俺としても返す言葉がない。
渦中にありながらはてな顔を浮かべている美少女の頭をはたきたくはなるが、それだけだ。
……無理はしてないんだね?
「えぇ。ただ、兄とは学年も違うために兄さんにもフォローをお願いできればと…」
応とも。ドンと任せてくれたまえ。用がなくてもいつでも話しかけてきてくれよな。
「はい。ありがとうございます、兄さん」
「ねぇ、なんか近くない? 二人とも近くない? ていうかルリの兄さんはボクだよね?」
残念でした。おまえがいないこの一年で実の兄妹顔負けなくらいに仲良くなりましたぁ!
「そうですね。ルリの兄さんは、もう、一人だけなのかも…」
ちょっとからかうつもりで大袈裟に話を盛ると、すかさずルリちゃんも乗ってきてくれる。
その様子を見て慌てて妹を取り戻そうとするミサキ。……新学期からは賑やかになりそうだ。
結局、あのまま3人は一泊することになり今は客間に通されている。
……多分ディハルトは居着く気満々だろうが。
今、俺は一人で自室から夜空の星を眺めている。
数日前からは想像もしなかった賑やか過ぎる、でも、それが嫌じゃない不思議な空気。
もう一度これを失ったとして、俺は耐えられるのだろうか。
「……それでも、もう
あぁ、そうだな。……って、誰ぇ!?
声のした方向を見ると、心なしかボロい姿になった例の女神様がWピースをして立っていた。
……女神様、意外とお茶目なんですね。
って、そうじゃない!
──消えたはずでは?
「うむ。力を使い果たして消える寸前だったが、なんとか首の皮一枚繋がったワケじゃ」
それはおめでとうございます。……どうしてここに?
「妾はもう女神ではなくなった。よって、下級神として徳の積み直しじゃな」
……それはいつか女神の座に返り咲くために?
「そうじゃが… くふっ、心配するな。もう、世界をかき回そうとは思っておらぬよ」
………。
「本当じゃよ。友に託された世界じゃから、せめて見守りたい。そう思っただけなのじゃ」
……あぁ、だから。
──……友人と仲良くな
なんて言葉を遺そうとしたのか、この女神は。
「その誰かに入れ込みすぎてしまう主の癖は美点であり、欠点である」
……でも。
「いいんじゃよ、程々で。……仮に妾が女神に戻れた時にあの世界が既に滅んでいたとして」
………。
「散り逝く花々を想い憂うことはあれどそれだけじゃ。それ以上でも、それ以下でもない」
……そういうものかもしれませんね。
「ん、今はそれで良い。あまり背負い込み過ぎぬようにの」
……はい。
「それではこれから宜しく頼むのじゃ」
んん?
そう言って幼女… もとい元女神は押し入れに上がり込もうとする。
ちょ、待て待て待て待てぇ!?
俺の大きな声(もといツッコミ)が家の中に響いたのか、俄に廊下が騒がしくなる。
「どうしたの、親友! なにかあった!? 超絶聖神武久剣で一刀両断しようか!?」
「姉さん、中二病は中学生で卒業してください。大丈夫ですか、兄さん。合鍵で開けますね?」
「フハハハハハ! やっぱり我、おまえと一緒に寝たいぞ! さぁ、扉を開けるが良い!」
うわぁ、なんかすごい勢いで扉がノック… いや、ぶっ叩かれているぞぉ。
「では、言い訳は任せた。……あ、妾この家の座敷童になったからそのつもりでよろしく」
…。
……。
………。
おまえら全員もう帰ってくれないかなぁ!?
俺の何気ない平凡な日常の日々は終わりを迎えた。
この連中がいる限り、きっと気の休まる暇もないほどに賑やかな毎日が続いていくのだろう。
それでも心から言えることがある。
もう戻ってこないと思っていた親友がこうして戻ってきて。
新しい時間を一緒に刻めることが何よりも嬉しいのだと。
だから覚悟を決めて扉を開けようと思う。新しい第一歩を『みんな』と進むために。
……あ、開ける前に破壊された。