楽しんで頂ければ幸いです。
「マスター、酷いクマだけど大丈夫?」
朝食の時、料理を担当しているブーディカさんに声をかけられた。
どうやら、他人から見ても酷いクマのようだ。
ここ数日、激しめのトレーニングが続いていた。
その影響で神経が興奮しているせいか、昨夜は微睡みと覚醒を行き来し、しっかり睡眠をとることができなかったことを告げる。
「そっか。でも、今日はお休みでしょ?ゆっくり出来るんじゃない?」
確かに休日ではある。
しかし、休日にゆっくりできた試しがない。
なにかしらのトラブルが起こるのだ。
特異点の話だけではない。
サーヴァント同士のトラブル、悪巧みなどの解決もしなければならない。
ゆっくりしたいが、状況が許さない。
とりあえずは何もないことを神に祈るだけだ。
……その神が悪巧みの親玉であるときもあるので祈ったところで効果があるのかは甚だ疑問ではあるが。
「あははは。ここには神様もいるものね。私もマスターがゆっくりできるように祈っておくよ」
結局、二人の祈りが通じることはなかった。
この日は、
修復が終わるや否やエリちゃんとネロちゃまによる
(いつものことながら、ツイてない)
サブクエストのせいでお昼は携帯食料になってしまったので、余計に待ち遠しい夕食の時間である。
いつもの通り、ブーディカさんから配膳をもらう。そこで手紙が挟まれていることに気づいた。
開けてみると、ただ一言。
『今夜、部屋においで』
そう書かれていた。
「いらっしゃい、マスター。遅かったね?」
「ちょっとね……」
手紙に書かれていた通り、俺はブーディカさんの部屋に来てしまった。
「……さすがに整理されてますねぇ」
「こら、あんまり女性の部屋をジロジロ見ないの。嫌われちゃうよ」
「……気を付けます」
椅子に腰をかけると、ブーディカさんはお茶を入れてくれた。
「これ、ハーブティですか?」
「そうよ。ラベンダーのハーブティなの。リラックス効果があるそうよ」
華やかで落ち着きのある香りが広がる。
「おいしい?」
「はい、とても」
エミヤ謹製のクッキーを食べながら、僕たちは団欒の一時を楽しんだ。
「このお茶会のために呼んだの?」
楽しい団欒の時間は終わり、マスターはその部屋に呼んだ理由を尋ねる。
まさかと彼女は首を横に振り、ベッドに指差す。
「あそこに寝て、マスター」
マスターはベッドにうつ伏せで寝かされ、ブーディカは彼に跨っていた。
「ほら、モゾモゾしないの。ふんふん、やっぱりトレーニングしてるだけあって、いい身体になってる」
サワサワと彼女の手が僕の身体を撫でる。
まるで、壊れやすいものを扱っているかのような手つきでくすぐったい。
「でも、ちゃんと休息を取っていないせいか疲れてる感じがするわ」
ブーディカは太ももに手のひらをあて、ゆっくりと体重を掛ける。
点ではなく、面で圧をかける。
なんのことはない行為。
しかし、それでもマスターの口からは声が出てしまう。
「気持ちいい?」
ブーディカの問いかけにマスターは首を縦にふることで答える。
その様子を見て、彼女は微笑む。
「痛かったら言ってね」
ただ圧をかけるのではなく筋肉を外側に広げ、もう一度、内側に押し込む。
グッグ ググー グッグ ググー
グッグ ググー グッグ ググー
両足が終わる頃には、マスターは完全にリラックスモードに入っていた。
「次は腕、いくわね〜」
今度は押すのではなく手のひらを添えて、左右に振り始める。
サッサ サッサ サッサ サッサ
サッサ サッサ サッサ サッサ
腕から力が抜けていく。だらんとした腕を彼女は足と同じように圧をかけていく。
グッグ ググー グッグ ググー
グッグ ググー グッグ ググー
腕が一通り終わると、次は手のひらだ。
「次は手よ。毎日、酷使してるんだから、ちゃんと労ってあげないとね」
そういって彼女は手を揉んでいく。
モミモミ モミモミ モミモミ
「爪の根本はツボになってるから、しっかり押してあげないとね」
クックッ クックッ クックッ クックッ
「最後に指の根本から先にかけて、しごいていくわ。これで血行がよくなるのよ」
ギュッギュッ ギュー ギュッギュッ
もう限界だった。マッサージに加えて、良い香りのする布団にブーディカさんの体温のせいで僕の意識は夢の世界へと旅立っていった。
なお、次の日。
ブーディカの部屋から出てきたところを目撃されてサーヴァントたちに根掘り葉掘り聞かれましたとさ。
ブーディカさんはママというよりは近所のお姉さんという感じがする。
甘やかしてくれそう。