そこそこの夜の時間。
なかなか寝付けないマスターは適当に小腹を満たして、温かい飲み物を飲めば眠れるだろうという浅はかな思惑を胸に訪れていた。
心配だったのはサーヴァント。
最近、酒好きなサーヴァントたちが夜中調理場を占拠することがあるらしい。
我らがコック長のエミヤはそれが悩みの種になっていると愚痴を零していた。
(誰もいませんように)
彼らも悪い人たちではないのだが、酔っ払っているときに絡まれるのは非常に、非常にめんどくさい。
絡まれたあげく酒を飲まされて撃沈。
翌日、ナイチンゲールにこってり怒られたのは記憶に新しいところだ。
(よかった。誰もいない)
どうやら、彼らは休肝日のようだ。
冷蔵庫の中を確認するが、大したものが入っていない。
大方、食糧庫の方にあるのだろうが取りに行くのは面倒だ。
幸い、炊いた米と卵があるので誰しもが一度は風邪の時にお世話になったはずの雑炊を作っていくことにする。
「先輩、なにをしてらっしゃるんですか?」
そんな矢先に、見つかってしまった。
まさか、マシュが夜中に来るとは。
「小腹が空いたんだ。マシュは?」
「わ、私も……そのお腹が……」
僕と同じ理由でここを訪れたようだ。
怒られずに済みそうだ。
「……食べる?」
「……いただきます」
お腹をクゥと鳴らした彼女の顔は真っ赤で、とても可愛らしかった。
「マスター謹製、簡単雑炊。ご賞味あれ」
「いただきます」
それほどお腹が空いていたのか、無言で雑炊を食べ進めるマシュ。
「あの、美味しい?」
「はい、とても。優しい味で食べやすいです。先輩の国の料理ですか?」
「そうだよ。本当は体調が悪いときに食べるものなんだけどね」
「なるほど。だから、こんなにシンプルな味付けで食べやすいんですね」
なにやらマシュがモジモジしている。
「おかわりあるけど、食べる?」
「是非、お願いします!」
結局、ほとんどマシュに食べられてしまった。
その後、二人でホットミルクを啜りながら、互いの近況を話していた。
最近、あまりマシュと顔を合わせられていない。
単純に互いが忙しいのだ。
マシュはメディカルチェックやカルデアの業務があるし、僕はサーヴァント同士のトラブル解決や突発的に発生する特異点の対応がある。
こうやって、ゆっくりと顔を突き合わして話をするのは久しぶりだ。
「それでですね、アンデルセンさんが――」
「あ、それ言いそう!」
二人の夜の語らいはエミヤが来るまで止まる事はなく、二人はキッチリ怒られた。
マシュは何かしてくれるんじゃなくて、何気ない普段の生活の中の仕草や行動で癒やしてくれそう。