「ますたぁ、お待ちしておりました」
今日の訓練が終わり、その足でマイルームに行くと清姫が三つ指をついて出迎えてくれた。
まるで僕のお嫁さんにでもなったようだった。
(イヤイヤ、そうじゃなくて・・・・・・)
「清姫、どうやって入ったの?」
清姫、頼朝さん、ハサンちゃんが僕のマイルームに侵入することはよくあることだ。
ただ、最近は見境がなくなってきたのでロマンやキャスタークラスのサーヴァントたちに頼んでセキュリティを強化してもらったはず。
・・・・・・はずなんだけどなぁ。
「愛の力です」
「答えになってない」
「愛の力です」
「いや、だから」
「愛の力です」
(愛の力が万能過ぎる)
どうやって侵入したのかは聞くのは諦めた。(ついでに追い出すのも諦めた)
というか、知らない方が良いような気がする。
僕の精神衛生上。
サクッとシャワーを浴びて、部屋に戻る。
「まぁ、良いお体ですわ。最初の頃とは大違いですわ」
「男子、三日会わざればってやつでしょ」
最古参の一人である清姫はマスターが、まだなりたての頃を知っている付き合いの長いサーヴァントである。
「それで今日はどうしたの?」
いつもであれば寝ているときや朝方来ることが多いのだが、僕の意識があるときに部屋に忍び込むのは珍しい。
「いえ、ますたぁが不眠で困っているという話を耳にしましたので。その解消に来ました」
「不眠というほど大げさなものではないんだけどなぁ。ちょっと寝付きが悪いだけで」
「それを不眠というんです。さあ、準備をしておりますので布団の方に」
なんだか、いつにも増して積極的だなぁ。
「最初は耳のまっさぁじです。清姫の膝をお使いください」
「・・・・・・失礼します」
「はい、いらっしゃいませ」
なんだか、僕だけ意識しているみたいでちょっと悔しい。
「最初は耳を温めます。はい、ぎゅっ」
清姫の体温がじんわりと耳に伝わる。
あったかい。
「湯船につかられなかったのですか?随分、耳が冷えておりますわ」
「疲れてたからシャワーだけ」
「それはいけませんわ。しっかりと体を温めないと。それに湯船につかるのは不眠の対策にもなりますから」
それは知らなかった。というか、
「よく知ってたね。以外だったよ」
「ないちんげぇる様から色々と教えて頂きましたの」
そうだったのか。
「次は耳を引っ張りながら、ぐるぐる回していきます。痛かったら言ってくださいね」
グルグル グルグル グルグル
グルグル グルグル グルグル
ただ耳を引っ張られて回されているだけなのに、どうしてこんなにも気持ちが良いのだろうか。
自分でやっても、こんなに気持ちよくならないのに。
「・・・・・・。やっぱり、こういうことは他人にしてもらった方が気持ちいいね」
「言って頂ければ、いつでもして差し上げますわ。ますたぁ」
ちょっと、いやメチャクチャ心引かれる提案だ。
ただ、それをお願いすると引き返せなくなるような気がする。
いろんな意味で。
「・・・・・・考えておくよ」
「ふふっ、ぜひお願いしますわ。さあ、次は人差し指と親指で耳を挟んで揉んでいきます」
モミモミ モミモミ モミモミ
モミモミ モミモミ モミモミ
「耳にはたくさんのつぼがあるそうです。その中には安眠に効果のあるものもあるんだとか」
「・・・・・・それは、知らなかった・・・・・・よ」
「あら、目がとろんとされていますわ。眠たくなってきましたか?」
「・・・・・・ちょっとだけ。・・・・・・」
「我慢は必要ありませんわ。さぁ、まぶたを閉じて」
もう無理だった。重いまぶたを開くことを放棄し、清姫の言葉に甘える。
「そう。それで良いですわ。さぁ、まっさぁじも最後。耳を折りたたんで、もう一度温めて終わりです」
クニッと耳を折りたたまれ、その上から手の平で包まれる。
やっぱり、あったかい。
「それではますたぁ、おやすみなさい。後のことは清姫にお任せください」
「おや・・・・・・すみ・・・・・・」
「はい。良い夢を」
やっぱり清姫は尽くしてくれるイメージ。
ただ、裏切るとすごいことになりそう。
ストックがなくなったので、ここからは頻度がぐんと下がります。